- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:39:09.85 ID:pCVkXd/W0
- ( ^ω^)(゚、゚トソン 冬の恋はもの悲しいようです
――VIP中学への通学路――
僅かに肌寒さを感じさせる、冬の朝。
通いなれた通学路をブーンは歩いていた。
( ^ω^)「……」
特に変わり映えの無い朝。
だが強いて言えば、彼にとって一世一代の勇気を振り絞った一日、その朝だ。
ζ(゚ー゚*ζ「ブーン! おはよー!」
( ^ω^)「おっ。おはようだお」
いつもの幼馴染のデレ。
学校では可愛いと評判の女の子だ。
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:40:20.23 ID:TlYrpylh0
-
ζ(゚ー゚*ζ「今日告白するんだって?」
(;^ω^)「な、なんで知ってるんだお!?」
いきなりだった。
ブーンは、そのことは男友達以外に話してなかったのに、と思い、
ζ(゚ー゚*ζ「ふふん。女の情報網を嘗めないでくれる?」
彼女には敵わない、とも思った。
(;^ω^)「……そうだお、告白するつもりだお」
ζ(゚ー゚*ζ「相手誰?」
( ^ω^)「デレには関係ないお」
ζ(゚ー゚*ζ「まーたそれー? いつも関係ない、だね」
( ^ω^)「関係ないものは関係ないんだお」
ζ(゚ー゚*ζ「ふーん……」
少しの間を置き、
ζ(゚ー゚*ζ「トソンちゃんでしょ?」
デレは言った。
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:43:04.59 ID:TlYrpylh0
-
(;^ω^)「そこまで知ってるなら最初から聞くなお……」
ζ(゚ー゚*ζ「ごめんごめん」
( ^ω^)「……」
ζ(゚ー゚*ζ「……」
暫しの無言の後、二人はVIP中学へと到着した。
VIP中学は、公立校だが、綺麗な校舎と厳しい風紀により、評判のいい学校だった。
二人は無言を保ったまま下駄箱に行き、靴を履き替えた。
そのままブーンが教室へ向かおうとしたとき、デレが言った。
ζ(゚ー゚*ζ「きっと……実るよ」
( ^ω^)「……だおね」
ブーンは、少し気が楽になったように感じた。
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:45:20.47 ID:TlYrpylh0
-
――ブーンのクラス 昼休み――
('A`)「しっかしお前が告白ねー……」
給食のパンに齧り付きながら、ブーンの友達が言った。
(;^ω^)「うう、そういうこと言うから緊張してきたお」
('A`)「はは、青春だねぇ……」
( ^ω^)「そんなドクオはどうなんだお? 気になる子とかいないのかお?」
('A`)「ばっか、俺には彼女いるし」
( ^ω^)「え?」
('A`)「え?」
( ^ω^)「……」
('A`;)「じゃ、ちょっと行くとこあるから」
ブーンの冷たい視線を浴びた彼は、足早に去っていった。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:47:55.41 ID:TlYrpylh0
-
――トソンのクラス 昼休み――
昼の食事時で賑わう、教室。
(゚、゚トソン「はぁ……恋したいなぁ……」
('、`*川「あたしら……冴えないからねぇ……」
その一角にトソンとその友達が作り出していたのは、暗い空間。
(;゚∀゚)((居心地わりぃ……))(´・ω・`;)
それは、その空間の近くで給食を食べていた者にすら影響を与えていた。
(゚、゚トソン「クーちゃんにも彼氏できたっていうしね」
('、`*川「四組のしぃちゃんにもできたらしいよ」
(゚、゚トソン「「はぁ……」」('、`*川
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:49:54.99 ID:TlYrpylh0
-
( ゚∀゚)「なんなら、俺らが彼氏になってやろうか?」
(´・ω・`)「そうそうww お互い寂しいしね」
(゚、゚トソン「「はぁ……」」('、`*川
彼女二人の短いため息。
しかしそれが二人の男には何より響いた。
( ;∀;) ウッ
(;´・ω・`)「な、泣くなよジョルジュ……」
(゚、゚トソン「まぁ、あたしら二人が友達でいるうちは、彼氏とか作らないようにしよう?」
('、`*川「そうよね。できない、じゃなくて作らない、だもんね」
(゚、゚トソン「そうそう」
そこで、教室の入り口から、トソンを呼ぶ声。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:52:14.34 ID:TlYrpylh0
-
川 ゚ -゚)「トソン。三組の内藤君が話があるそうだぞ」
(゚、゚トソン「え?」
川 ゚ -゚)「渡り廊下で待ってるらしい、二人きりで話したいとさ」
(゚、゚;トソン「え? ええ?」
教室が、更に騒がしくなる。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:52:30.28 ID:TlYrpylh0
-
しかし、暗い空間。
('、`*川「……シネ」
(゚、゚;トソン「な、何か聞こえたよ!?」
('、`*川「なんもないわよ、行ったげなさい」
(゚、゚;トソン「う、うん」
友達の機嫌を悪くしてしまったようで、トソンに少しの罪悪感が生まれた。
だが、
('、`*川「……良かったね」
(゚、゚*トソン「うん!」
良い友達を持った、と彼女は思った。
- 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:54:23.48 ID:TlYrpylh0
- ――渡り廊下――
(゚、゚トソン「んーと……内藤君ってあの人かなぁ」
(;^ω^)「……お」
(゚、゚;トソン(こっちみた)
少女を一瞥した少年は、小走りで少女へと走り寄った。
(;^ω^)「突然ごめんお。内藤だお」
(゚、゚;トソン「うん、トソンです。話って、何かな」
(;^ω^)「えと……その……」
二人は、緊張からくる嫌な汗を感じながら、それも心地良いと感じていた。
両者間に流れる時間は、青春の一ページ。
(;^ω^)「この前廊下ですれ違った時から……」
少年が振り絞ったのは、僅かな勇気。
しかし初めてのベクトルへのそれは、慣れない彼にはやっとのことだった。
( ^ω^)「……好きでしたお。付き合ってください」
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 16:57:09.70 ID:TlYrpylh0
- 告白。
少女が想像し得えた未来の中では、最上の結果。
(゚、゚トソン「……」
だが少女は、必死で思考していた。
断ればチャンスが去っていってしまう、それでも、ここでOKをしていいものなのか。
しかし待ってくれと言うのは、勇気を出してくれた少年に対する逃げとなる。
(;^ω^)「どう……だお?」
(゚、゚;トソン「……ぅ」
催促に近い言葉を投げかけられた彼女は、小さな声を上げる。
(;^ω^)「……」
(゚、゚;トソン(……考えが纏まらない)
二人が気まずさを感じている、渡り廊下。
そこは、空気を読んだ生徒たちによって、二人っきり。
そして、二人は高揚と僅かな背徳を感じる。
それも悪くない、とも二人は思う。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:00:02.30 ID:TlYrpylh0
- (゚、゚;トソン(乙女の眼力では……。
身長、体型、顔、それを含む容姿は、上々。
付き合っても、楽しめそうかは別として、自慢の彼氏にはなる。
何より、自分に好意を抱き、告白してきてくれた)
一瞬の思考から弾き出された結果は、OKをすること。
しかし、
(゚、゚トソン(でも、なんだろう。何か、違う)
何故か、OKとは、言えない。
(゚、゚トソン「ごめん……ね。付き合えない」
( ^ω^)「……ぉ」
気まずい空間は崩れさる。
冬の寒い風が、二人の間を流れ、少年の思いを、少女の思考を刈り取った。
(゚、゚トソン「ほんと、ごめん」
そう言って、元来た道へと踵を返した少女は、逃げるように去って行った。
渡り廊下には、少年がただ一人で立ち尽くす。
残念に思う気持ちとは裏腹に、清々しい気分が、彼を包み、
( ^ω^)「おっお」
少しの笑顔を作り出した。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:02:13.25 ID:TlYrpylh0
- ――ブーンのクラス――
( ^ω^)(さて、何するかおね)
ブーンの恋は実らず、彼は暇を持て余していた。
時間は夕暮れの放課後である。
('A`)「おっ。ブーンじゃん」
( ^ω^)「お」
一人で物思いにふけていて、教室に誰もいなくなった頃。
彼の友達のドクオが、引き戸を開き、教室へと入ってきた。
('A`)「何? 一人?」
( ^ω^)「だお。一緒に帰ろうお」
('A`)「あー、すまん」
( ^ω^)「?」
ばつの悪そうな表情になり、謝ったドクオ。
同時に、扉の影から出てくる人影。
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:05:01.04 ID:TlYrpylh0
- 川 ゚ -゚)「おいドクオ、忘れものじゃなかったのか?」
('A`)「ああ、そうだったな」
( ^ω^)「あ」
川 ゚ -゚)「あ」
先程ブーンの為にトソンを呼び出してくれた女の子だった。
(;^ω^)「その節はどうも」
川;゚ -゚)「いえいえ、どういたしまして」
('A`)「お、あったあった」
川 ゚ -゚)「……その、残念だったな」
( ^ω^)「いや、いいお。なんとなくそんな気がしてたから」
川 ゚ -゚)「そうか。まぁ、次の恋を探せばいいさ」
( ^ω^)「だおね」
('A`)「よし、クー。帰ろう」
川 ゚ -゚)「それじゃ」
( ^ω^)「ばいばいだお」
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:08:08.79 ID:TlYrpylh0
- ドクオの彼女だ、とは聞かなくともわかった。
羨ましいと思う反面、あんな風になれそうにもない、とも思った。
( ^ω^)(付き合っても、楽しませられるかどうかなんて、わからないお)
告白に至る全ては、希望的観測の元の行動であったから。
ただ一度すれ違っただけの女の子に、一目惚れした。
それからは、見かける度に、胸が締め付けられるような思いになった。
名前は、すぐにわかった。
知ろうと思えば、すぐにわかることだった。
都村 トソン。
初めて聞いた名前だった。
クラスが離れていたこともあるが、あまり目立たない女の子だったからだ。
何度も話しかけようとした、だが、できなかった。
チャンスも、何度かあった。その気になれば、幾度と無く作り出せたであろう機会。
だが、いざ話かけようとすると、身体が固まり、声が出なかった。
だから、告白を決意した。
勇気を出した、と言えば聞こえが良いが、実際は逃げだった。
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:10:10.53 ID:TlYrpylh0
- ( ^ω^)(もっと仲良くなってからの方が……)
幼馴染のデレとなら、喋ることができる。
だが、他の女の子を目の前にしたら、それはかなわなかった。
どうしても、緊張してしまう。
ドクオの彼女と話をしたように、自然に振舞えれば、と思った。
しかし、
( ^ω^)(過ぎたことだおね)
反省はまた、次の機会に――。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:12:05.52 ID:TlYrpylh0
- ――トソンのクラス 放課後――
('、`*川「あんたバカねー。内藤君って、そこそこの男じゃない」
(゚、゚トソン「うーん。ペニサスちゃんを一人にできなくてさー」
('、`*川「バカなこと言わないの」
(゚、゚トソン「ごめん。でもバカじゃないって」
ブーンのクラスと同じ様に、トソンの教室には、生徒はほとんどいなくなっていた。
教室内にいるのはトソン自身と、その友達のペニサスのみ。
('、`*川「なんでダメだったの? いいじゃん、勇気出して告白してきてくれたんだからさ」
(゚、゚トソン「んー。なんていうか、運命の人じゃない?」
それはトソンの本心から出た言葉ではなかった。
だが、他に表現する術を、彼女は知らなかった。
('、`*川「何よそれー。あ、でもちょっと安心してるかもあたし」
(゚、゚トソン「あ、ひっどーい」
('、`*川「ごめん。嘘だって」
(゚、゚トソン「でも、ペニサスちゃんも彼氏いてもおかしくないのにね」
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:14:08.88 ID:TlYrpylh0
- ('、`*川「なんで?」
(゚、゚トソン「かわいいし」
('、`*川「ばっか。顔が良くても性格が悪けりゃ男なんて寄ってこないのよ」
(゚、゚トソン「それ自分で言いますか」
('、`*川「事実だし」
(゚、゚トソン「ふふ。そろそろ帰ろ?」
('、`*川「そうね。最近暗くなるのも早くなってきたし」
(゚、゚トソン「だね」
そう言って二人は教室の扉を開き、廊下へ出た――。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:17:10.03 ID:TlYrpylh0
- ――廊下――
(;^ω^)「あ」
(゚、゚;トソン「――ッ、内藤君」
少年と少女が、鉢合わせした。
ちょうど少女が廊下へ出たときのことだった。
('、`*川「ん? あ、先帰るねー、トソン」
(゚、゚;トソン「え、ちょ、待って……」
少女の呼び止めを、背中を見せながら手を振ることでペニサスは拒否した。
(゚、゚トソン「行っちゃった……」
(;^ω^)「あのー……」
(゚、゚;トソン「あ、はい!」
呼びかけられ、跳ねるように驚く少女。
( ^ω^)(やっぱりかわいいお)
と思うが、しかし少年は、自分にはその権利がないとも思った。
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:19:36.13 ID:TlYrpylh0
- ( ^ω^)「一緒に帰らないかお?」
(゚、゚;トソン「えと……」
( ^ω^)「友達として、だお」
(゚、゚トソン「……うん」
少女の趣味は、音楽を聞くこと。
少年の趣味は、小説を読むこと。
下駄箱までの会話で、二人が得た情報の内のひとつだ。
(゚、゚トソン(意外と面白い人だ)
少女は思うが、だが気持ちは変わらず、恋心には至らない。
( ^ω^)「寒いおね」
(゚、゚トソン「うん、もうすっかり冬だね」
学校の玄関を出て、屋外の風と気温を肌に受けた二人。
傾き始めた太陽と、下がり始めた気温、強くなり始めた風。
( ^ω^)「都村さん、方向どっちだお?」
(゚、゚トソン「方向? ああ、家は商店街の方だよ」
少女の言う商店街とは、VIP商店街のことだ。
言えば伝わる、この地域では馴染みの場所だった。
- 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:22:32.84 ID:TlYrpylh0
- ( ^ω^)「じゃあ、途中まで帰ろうお」
(゚、゚トソン「うん」
そこから、また他愛の無い会話が再開された。
( ^ω^)(まるで恋人みたいだおね)
冗談めかして、心の中で独り言の少年――。
(゚、゚トソン(あーあ、もしかしたら失敗しちゃったかも)
と、少し後悔をする少女――。
(゚、゚トソン「それでねー……」
( ^ω^)「おっおっおっ、すごいおね」
会話が弾む二人――。
そしてやがて訪れる、別れのとき――。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:26:47.91 ID:TlYrpylh0
- ( ^ω^)「じゃあ、僕はこっちだから」
(゚、゚トソン「うん。バイバイ、内藤君」
( ^ω^)「バイバイ、都村さん」
お互いが違う道を見据える。
( ^ω^)「……」
冷え込む夜空を見上げる少年。
(゚、゚トソン「……はぁ」
息を吐き、その白を目で追う少女。
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 17:28:09.48 ID:TlYrpylh0
-
少年の恋が終わりを告げ――。
少女は自らの思いに戸惑い――。
二人は、再び歩き出した――。
その日は、とても寒い、冬の一日だった。
( ^ω^)(゚、゚トソン冬の恋はもの悲しいようです
end
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