Mission 1

 

24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:03:25.17 ID:8kS36fk10
[搭乗員待機室 16時00分]

残った部下はナガセ少尉――
今日は地上にいた、若いパイロットが数人。それだけだ。

(,,-Д-)「文句の山ほどもあろうが、人手も足りん。」

隊長はあまり気乗りではないといった声で言った。
この場にいるパイロットは隊長とは付き合いが長いのか短いのかは知らないが、
別に大して気にも留めていないといった表情で聞いているようだった。

(,,-Д-)「明日から新米どもも、スクランブル配置だ。」

その声に反応して悪態をついている男が目に入ったが、隊長は続けた。

(,,゚Д゚)「それと、上では俺のそばから話さん。ナガセ。」

川 ゚ -゚)「はい。」

(,,゚Д゚)「お前は俺の二番機だ。目をつけてねえと何をしでかすか分からん。」

私の見たナガセ隊員の表情はふてくされているような、嬉しいような複雑な表情をしている気がした。
隊長の言葉こそ辛辣だが、その本意には相当の信頼があるはずだ。
二番機というのは編隊の中でも一番機のフォローもしなくてはならない。
確かな腕と、冷静な判断力。それらを持っていると隊長は判断したのだろう。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:05:56.95 ID:8kS36fk10
(,,゚Д゚)「あー、あとはそこのさっきからうるやい奴。」

隊長は先ほどから悪態をついたりと態度があまりよろしくない長身の若者に声をかけた。
その若者は自分が呼ばれていることに気付いていないらしい。

(,,゚Д゚)「おい、お前だそこのうるさいの。」

( ゚∀゚)「へ?俺ですかい?」

彼は未だ自分が呼ばれた理由が分かっていないようで、
額にはクエスチョンマークが浮かび上がっている。

(,,゚Д゚)「確かダヴェンポートだったな?」

( ゚∀゚)「ジョルジュ・H・ダヴェンポートです。」

(,,゚Д゚)「お前には俺の編隊に入ってもらうぞ。」

(;゚∀゚)「りょ、了解であります。」

(,,゚Д゚)「まぁ、そう肩張るなよ。しっかり絞ってやるから」

ダヴェンポートと呼ばれた隊員が下を向いてまた悪態をつくのを私は聞いた。

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:10:10.45 ID:8kS36fk10
(,,゚Д゚)「残りは――」

隊長は部屋内にいる隊員達を気だるそうに見回し、

(,,゚Д゚)「ブレイズ、お前だ。」

その場にいた全員が――ナガセ隊員を除いて――後ろを振り返ると、

(`・ω・´)「……了解です。」

ブレイズと呼ばれた男は頷いた。
私は彼の表情から感情を読み取れなかった。寡黙な男らしい。

(,,゚Д゚)「あー、他の連中は悪いが空を飛ばすことは出来ん。
もっと訓練を積まないと、落されちまうからな。勘弁してくれ。」

呼ばれなかった他の隊員は明らかにざわついているが、
隊長の判断は正しいように思えた。
中途半端な技術で空を飛ばせても、敵のいい的になるのがオチだ。
現に、あの時の空戦での新人達がそうだった。

(,,゚Д゚)「あー、ブレイズとダヴェンポートは何番機になるか決めとけ。」

それだけ言うと、短く、以上だ、といって出て行った。
それに合わせて他の隊員達も出て行く。
私も自動販売機が何かで飲み物でも買おう。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:13:08.32 ID:8kS36fk10






川 ゚ -゚)謳われない戦争のようです
Mission 1 SHOREBIRDS
《極西の飛行隊》





30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:16:07.98 ID:8kS36fk10
( ゚∀゚)「へへっ、ブレイズ、何で決める?」

そう言ってダヴェンポートは俺に話しかけてきた。
馴れ馴れしい気がするが、不思議と不快ではない。

(`・ω・´)「俺は何でもいい。」

( ゚∀゚)「じゃあ、ここは神様に決めてもらうってことで、くじだな。」

そういうとダヴェンポートは懐から紙切れを取り出し、3、4と数字を書いた。
それを小さく丸めて手の中にいれ、シャッフルする。

(`・ω・´)「……」

( ゚∀゚)「お前から先に選んでいいぜ?」

そういうとダヴェンポートは手を開く。
中には小さな紙の玉があり、どちらを取ろうか一瞬迷ったが、右を取ることにした。

( ゚∀゚)「……と、じゃあ俺は左だな?」

紙を開くと、そこには乱雑な字で4と書かれていた。
4、つまり4番機。4機編隊の中の最後尾を勤めることになった。
俺の任務はどうなるのだろうか。

31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:20:38.87 ID:8kS36fk10
翌日、基地内放送で呼び出しを食らう。集合場所は会議室。
召集をかけられたメンバーをみるに、どうやら俺は作戦につくみたいだ。

会議室に入り、指定された席につく。
しばらく黙って待っていると、隊長が入ってきた。

(,,゚Д゚)「わるいな、unkしてたら遅れた。」

隊長はなぜああも飄々としているというか、自分を貫いているのだろう。
そんな疑問をふと抱いたが、すぐにブリーフィングが開始されたので、
意識は自然とそっちへ向いた。

( `ー´)「諸君、楽にしたまえ……と、言いたいところだが、そうもいかん。」

そう言って切り出したのは、この基地の司令官だ。
でっぷりと太った姿はさながらアメコミ映画の悪役を彷彿とさせる。

( `ー´)「ゆゆしき緊急事態である。ブリーフィングを進める。」

そういうとバックスクリーンに映像が映し出される。
この基地と思われるところから少し離れたところへ映像が移動する。
話し出したのはこの基地の副司令補佐だったか……あまりよく知らない人物だ。

( ∵)「オーシア連邦領空に、再び国籍不明機が侵入した。」

またか、と思う。
隊長が演習中に国籍不明機と戦闘になったことは記憶に新しい。

32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:23:58.34 ID:8kS36fk10
( ∵)「進入したのは、高高度を行く戦闘偵察機であることが確認されている。」

映像にはおそらく敵機の機影であろう画像が映し出された。

( ∵)「警告にかかわらず領空侵犯を続行したため、オーシア沿岸防衛隊が、
SAM(地対空ミサイル)を既に発射した。」

随分やることが早い気がしたが、これだけ立て続けに似たようなことが起きれば、
流石に司令部も警戒を強めているのだろう、と納得した。

( ∵)「ミサイルは国籍不明機に命中したが、撃墜には至っていない。
被弾した機は一旦洋上への離脱を目指し、高度を下げつつも依然として
飛行中である。国籍不明機を細くし、正体を解明するために、地上へ強制着陸させよ。
なお、許可があるまで発砲は禁ずる。」

作戦の全貌は簡単に把握できたが、一つ気がかりなのは『許可があるまで発砲を禁ずる』という点だ。
下手したらこの前のような不意な攻撃を仕掛けられるかもしれない。
もし、そうなったら司令部の命令が発される前に撃墜されてしまうかもしれない。
上層部の人間はどこまでも俺らを駒としか思ってないらしい。

( ゚∀゚)「あ、質問いいか?」

声を上げたのはダヴェンポートだった。

( ∵)「何だ?ダヴェンポート少尉。」

( ゚∀゚)「もし、相手が先に攻撃してきて、撃墜されそうになったとしても、
あんたがたの許可とやらが降りるまで撃っちゃ駄目なのか?」
35 :>>34訂正:2009/01/12(月) 00:26:41.84 ID:8kS36fk10

しばらくの沈黙。考えることはやはり同じらしい。

( ・∀・)「駄目だ。」

そういったのはハミルトン大尉だった。
この基地の副司令を勤めている男は冷静に言った。

( ・∀・)「あくまで事を穏便に進めたいとの上からの指示だ。」

(#゚∀゚)「ッ……」

( ・∀・)「……それに君達なら落されない腕を持っているだろう?」

褒められているらしいが、納得は出来ない。
だが、ここで何を言っても無駄だろうと確信する。

( `ー´)「ふむ。では以上でブリーフィングを終える。幸運を祈る。」

司令官の言葉で解散となった。俺は隊長の下に近づく。
しかし、彼はさっさと出て行ってしまい、話をすることはなかった。

( ゚∀゚)「チッ……俺らは使い捨てかよ」

ダヴェンポートが俺の近くに来て言った。全くもって同感だが、ここは引くしかない。
俺らは二人で機体に乗りにハンガーへと向かった。
36 :>>34訂正:2009/01/12(月) 00:29:53.15 ID:8kS36fk10
整備員から話を聞くと、今回の任務に使用する機体はF-5Eだそうだ。
一般的な機体だ。練習機として使用したこともある。

機体の翼には闘犬をあしらったエンブレムが施されている。
サンド島中隊『ウォードッグ』として俺は空へ羽ばたく。

隊長の機体には少し変わったハートが施されていた。
彼の性格には似合わない気がするが、何か理由でもあるのだろう。

<<準備は整った。ウォードッグ発進せよ>>

管制室からの指示が出た。
乗り込みを終えている俺らは隊長を先頭に格納庫から出て行く。
ダヴェンポート――コールサインはチョッパー――のケツを追いかけて滑走路へと
F-5Eを進める。既に隊長は離陸準備を終え、加速している最中だった。

二番機、三番機と順に離陸していき、最後に俺の順番となった。

<<ブレイズ、離陸準備は整ったか?>>

(`・ω・´)<<こちらブレイズ、オールグリーン>>

<<了解。発進せよ>>
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:34:13.60 ID:8kS36fk10
速度計が徐々に加速していることを示しているのを確認し、
離陸可能な速度に達すると操縦桿を手元へ引く。

ふわり、と機体が滑走路から離れるのを体で感じ、上空へ向けて加速を続ける。

<<高度制限を解除する。頑張って来い>>

(`・ω・´)「……ふう」

一息おいて更に加速、高度を他の機と同じ2000フィートまで上げる。
ダイヤモンドフォーメーションと呼ばれる隊形を取り、目標地点まで飛行。
降り注ぐ日差しが、コックピットのガラス越しに俺の肌を差す。



いよいよ、俺の任務が始まる。






39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:36:05.38 ID:8kS36fk10
[ランダース岬沖 9月24日 11時01分]


(,,゚Д゚)<<こちらウォードッグ、ハートブレイクワン。これより目標に接敵する。>>

隊長の一声で緊張している全身が更に引き締まるのを感じた。


( ゚д゚ )<<こちら空中管制機、サンダーヘッド 了解>>

オーシア国防軍のAWACS――早期警戒管制機――の管制官は、
あまり音質がよくない通信にも関わらず異常な美声の持ち主だった。
しかしどこか硬い言い回しから何となく堅物だろうと予測できる。
だが、俺も人のことを堅物だ、と言えるほど明るい性格ではないと思う。

( ゚д゚ )<<強制着陸させよ。ウォードッグ各機、発砲は禁ずる。繰り返す、発砲は禁ずる>>

チョッパーが悪態をつくのが聞こえるが、仕方がないから諦めるしかない。

(,,゚Д゚)<<聞いたな、ひよっこども。>>

隊長のコールサインはハートブレイクワン。
レーダー上の味方を表す三角形のそばに小さな字でHTBKONEとなっている。

川 ゚ -゚)<<二番機了解。>>

ナガセ少尉が氷を思わせるような声で応答、続けてチョッパーが

( ゚∀゚)<<三番機了解っと。>>
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:40:07.98 ID:8kS36fk10
(,,゚Д゚)<<……四番!どん尻。おい、聞こえてるかブービー
ちゃんとついて来てるか?最後尾!>>

隊長の呼びかけにあるブービーという人物が俺だということに一瞬気づかなくて、
応答が遅れた。俺のコールサインはブレイズだ。

(`・ω・´)<<四番機了解。>>

(,,゚Д゚)<<返事だけは一人前だな。離されるな!>>

隊長の人を小馬鹿にするセンスは天下一品だと思う。
どこか彼は世間からズレている気がするが、彼のジョークは俺の緊張を弱めた。
隊形を維持したまま中高度での飛行を続ける。

( ゚∀゚)<<やれやれ、俺ぁ今回クジに勝って三番機で良かったぜ!>>

チョッパーが普段基地で会話をするときと同じテンション、といった声を出す。
それはスルーされるかと思えば、そうではなかった。

(,,゚Д゚)<<黙れ、ジョルジュ・H・ダヴェンポート少尉。お前も何かあだ名で呼ばれたいのか?>>

よく考えたら、ブービーというのは俺のあだ名で決定らしい。
たまたまクジで最後尾を任されたからといって、あまりにも不名誉なあだ名だと思う。

( ゚∀゚)<<自分は呼ばれるなら『チョッパー』であります。
それ以外では応答しないかも、であります。>>

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:43:33.46 ID:8kS36fk10
かしこまったようなふざけたような、そんな調子の声だ。

チョッパーはどこまでも自分のペースを保つみたいだ。
だけど彼よりも自分のペースを貫く人物がこの編隊の中にいるのに気付かないらしい。

(,,゚Д゚)<<それは実にお前らしい呼び名だが、
俺は心の中ではもっと別の名でお前を呼ぶ。いいな?>>

(;゚∀゚)<<勘弁してくれよ!>>

チョッパーもどうやら自分より隊長の方が上手(うわて)なことを把握したみたいだ。
チョッパーがもごもごと何か言いたそうな声を出していたが、
それはレーダー上に目標が確認されたことを示す音によって遮られた。

(,,゚Д゚)<<……お客さんだ、行くぞ>>

そう言って隊長の機体は針路を目標へ変更。
残りの機もそれに合わせて針路を変更する。

今回領域を侵して来た機体はSR-71。
高高度での偵察を目的とした機体で、愛称は「ブラックバード」。
機体としての性能はかなり高く、相当の高速飛行が可能だったはずだ。

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:46:58.88 ID:8kS36fk10
目標が視認できる距離まで近づく、するとSR-71の独特なフォルムが確認できた。
そして、同時に右翼後部あたりから煙が上がっているのも見えた。

本来ならば偵察機なだけあって高速で飛行するはずだが、今はそうでないという所をみると、
SAMによるダメージは思ったより大きかったということだろう。

(,,゚Д゚)<<許可あるまで発砲は禁ずる。いいか?>>

隊長からの確認だが、ここでNOという訳にもいかない。
この通信は管制機にも聞かれているのだ。下手したら減給も有り得る。

(`・ω・´)<<了解>>

川 ゚ -゚)<<了解>>

しかし、チョッパーは返事をしない。
ここで返事をしないのはいくらなんでも馬鹿だと思う。

(,,゚Д゚)<<返事がねえぞ。聞こえてるのか?>>

( ゚∀゚)<<……了解>>

やはり発砲許可が下りないことに対して不満をまだ抱いているようだ。
44 :>>43やるな……:2009/01/12(月) 00:49:49.39 ID:8kS36fk10
(,,゚Д゚)<<おしゃべり小僧チョッパー。>>

俺につけられたブービーよりひどい。
以前バラエティ番組である芸人が別の芸人につけたあだ名を彷彿とさせた。

(;゚∀゚)<<うっ。俺のあだ名はそれかい>>

チョッパーが苦笑いをしているのが目に浮かぶ。
しかし隊長はあだ名をつけるだけでは気がすまないみたいだ。

隊長が速度を上げ、俺らもそれに続く。
目標との距離はミサイルの射程距離から僅かに遠いほどとなった。

こういう任務では相手との距離が大事だ、とおやっさんが言ってたのを思い出す。
恐らく相手の機体の様子を見る限りは攻撃してくる、ということはないだろう。
しかし、万が一のことも有り得るから正直怖い。

(,,゚Д゚)<<お前は漫談の才能がある。ひとる、降伏勧告をやってもらえんか>>

隊長が何とも奇妙な提案をした。
この人からは緊張感が全く伝わってこない。これが経験の差なのか?

( ゚∀゚)<<どうかご自分で。>>

当然の返答だろう。

(,,゚Д゚)<<俺は人見知りの癖があってなぁ。>>

45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:53:26.58 ID:8kS36fk10
明らかにふざけているが、引く気はないらしく、
それを感じ取ったであろうチョッパーは気の毒にも降伏勧告をやらされることになった。
悪態を添えて、だ。

( ゚∀゚)<<ちぇっ。あー、あー、国籍不明機に告ぐ。
我々の誘導に従って進路を取れ。>>

訓練時に渡されるテキストに載ってあった文章をそのまま言うあたりが流石だ。

(,,゚Д゚)<<いいぞ。>>

隊長が冷やかしと言わんばかりに合いの手をいれる。

( ゚∀゚)<<あー、最寄の飛行場へ誘導する。了解したらギアダウンしろ。>>

何らかの反応がある気はしていたが、相手はすんなりとギアダウンした。
最善の結果なのに、拍子抜けというか。
何かあるんじゃないかと期待していた自分がいた。

その時、レーダーに新しい機影が移る。
何だ。何が起こった。敵襲か?
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:56:04.05 ID:8kS36fk10
( ゚д゚ )<<警報!>>

先ほどのサンダーヘッドが緊迫した声で言う。
どうやらまた何かマズイことが起こったみたいだ。

( ゚д゚ )<<さらに数機の国籍不明機が接近!方位280高度6000!>>

方位280というと……その方向は……
最悪のケースが頭に浮かぶ。しかしまずは目先のことに集中しなければ。

( ゚д゚ )<<高速の小型機4機!命令あるまで発砲は禁ずる!>>

この期に及んで発砲禁止か。
俺らが攻撃されることは秒読み状態だ。

(,,゚Д゚)<<海を越えて偵察機の帰還援護に来るとは、殊勝な奴らだ。
それ、方位280!ヘッドオン!>>

敵機へ向けて進路を取る。敵の数は――今のところ4機。こちらと同じか。
全機がこちらへ向けてかなりの速度で飛行しているのがレーダーで分かる。

(,,゚Д゚)<<いいか、俺がいいというまで発砲するんじゃねえ>>

隊長はそういいながらも機体の軌道は戦闘を今にも始めそうだった。
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 00:59:16.48 ID:8kS36fk10
高速で飛行。

敵機を視認するとF-5Eが4機。
つまり機体の性能差はない。
勝負を決する要因は、パイロットとしての腕だ。

ミサイルの射程距離まで近づく、しかし相手は撃ってこないし、こちらは撃てない。
機銃の射程距離に入る。

次の瞬間、連続的な射出音とともに銃弾がこちらへ向けられる。

(;゚∀゚)<<撃ってきたぞ!>>

高速でロールし、銃弾を回避。
強烈な重力の力を振り切って、急旋回し、敵機の後方へと位置を取る。

( ゚д゚ )<<命令あるまで発砲は禁ずる。>>

どうやらあくまで上の人間は俺らを人として見てないみたいだ。

(;゚∀゚)<<ふざけんな!向こうは実弾じゃねぇか!戦闘機だぜ。>>

通信を聞きながら、操縦桿を右に倒し、右方向から迫ってきた敵機の攻撃をよける。
ダダダダダ、という死のコンチェルトは容赦なく俺らに襲い掛かる。
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:02:33.46 ID:8kS36fk10
(,,゚Д゚)<<喋ってねぇで降りかかる火の粉を払え。>>

隊長が静かに言う。
これは、つまり、攻撃許可?

即座にインメルマンターンをし、敵機のケツを追う。

(#゚д゚ )<<こちらサンダーヘッド。バートレット大尉、それは命令違反だ!>>

確かに冷静になればそうであろう。
しかしこちらとて命令を遵守してみすみす死ぬことだけは避けたい。

(,,#゚Д゚)<<阿呆!これ以上部下を殺せねんだよ。>>

隊長は怒鳴った。
やはり、前回の演習での出来事は彼の心にかなり影響を与えていたみたいだ。
そう思いながら、機銃の射程距離にまで相手の機体を捕らえるよう加速する。

川 ゚ -゚)<<エッジ、交戦!>>

そういえば、ナガセ少尉の声を聞くのは了解、以外今日はまだだった。
Edge――刃――は彼女のクールな性格を現しているコールサインだと言える。

<<ハートのエースに気をつけろ。それ以外は雑魚だ。>>

敵の無線でいうハートのエースとは隊長のことだろう。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:03:54.50 ID:8kS36fk10

(,,゚Д゚)<<ブービー!全部堕とすぞ!>>

(`・ω・´)<<了解、ブレイズ交戦!>>

ガンの射程距離に入った。
敵機はロールを繰り返し来るであろう銃弾を避けようとしている。
隙あらば後ろを取ろうとしているための予備動作とも言える。

ミサイルの射程距離には入ってはいるが、ここで使うべきではないだろう。
隊長に自分の実力を見てもらいたい、という気持ちもあった。

レクティル内に敵機を収める。
相手と距離を一定に保つように加速、減速をこまめに繰り返す。

相手は必死に射程距離から逃れようとしているのが分かる。
だが、もうこの距離ならこちらの物だ。

レクティル内に再度捕らえ、トリガーを引く。
すると射出された20mm機関銃の弾丸は敵機へ向けて一直線に飛び、
その装甲を切り裂いた。

相手は右翼が半分もぎとられたような状態である。
すぐに失速、また飛行も安定しなくなる。

(`・ω・´)(申し訳ないが……)

レクティル内に捕らえた瀕死の鉄鳥に、トドメを刺した。
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:07:01.81 ID:8kS36fk10
( ゚∀゚)<<戦果上げちゃっていいのか?やっちゃうぞ、オレ。>>

(,,゚Д゚)<<やってみな。>>

(#゚д゚ )<<命令あるまで発砲は禁ずる!>>

爆音がしたので目を右に向けると、隊長がミサイルを敵機の左エンジンに突き刺していて、
その上更に近距離での機銃をいやというほど浴びせている。

川 ゚ -゚)<<応戦します。>>

敵機がさっきから更に増えている。
その間を器用に縫って飛び、左右にミサイルを放つ。
それは正確無比に相手のエンジンを粉砕した。

(`・ω・´)(……うまい)

素直にそう思うし、尊敬に値する技術だ。
しかし、同じ人間を躊躇なく撃墜していく姿には畏怖の念を覚えた。

ビー、ビーという機械音が示したのは、敵にロックオンされているという証拠だ。
どうやらボーっと眺めている間に後ろにつかれたらしい。

バレルロールと呼ばれるマニューバをして相手の後ろを逆に取ってやろうとしたが、
相手は実力者らしく、譲らない。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:09:13.36 ID:8kS36fk10
( ゚∀゚)<<おーいブービー!貸し作っておくぜ!>>

何だ?と思った直後には後ろにいた機体が火を噴いた。
煙の中から出現し、俺の機の上を颯爽と駆っていったのはチョッパーか。

( ゚∀゚)<<チクショー、思ったより空戦はキツイぜ……>>

確かにそう思う。
まず、緊張が半端ではない。
常に全身にに力を入れ、精神を集中させているため、
自然と汗が噴出し、段々とめまいが襲ってくる。

<<チッ、情報と違うじゃねぇか!新人じゃなかったのか?>>

そう言っているのは敵機のパイロットだ。

どうやらこちらは戦力は乏しいというような情報で来たらしく、
俺らの反撃に慌てている様子だ。

それもそのはず。敵機は次々と火を噴いて堕ちていった。

(,,゚Д゚)<<無茶はするな。死ぬぞ。>>

そう言いながら隊長は俺の右を抜けていった。
無茶なんてする余裕はない、なんて言おうとしたらミサイルが飛んで来て
回避するために汗が滲む手で操縦桿を倒す

58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:12:46.82 ID:8kS36fk10
(#゚д゚ )<<ック……ウォードッグ、すぐさま攻撃を中止するんだ!>>

サンダーヘッドが吼えているが、もう今更俺らの勢いを削ぐことは出来ないだろう。
射程距離に入った敵機へミサイルを二発発射。
すぐに減速してピッチを上げ、加速。

初めてのドッグファイトにしてはよくやれてると思う。

( ゚∀゚)<<敵機撃墜!よっしゃぁなんでも来いだ。>>

チョッパーもふざけてさえいるが、操縦の腕は確かだ。
相手の後ろを最短、最速で取り、迅速な攻撃をしている。

だが、やはり素晴らしいのは隊長の機体。
まるで機体を操るというより自分の手足を動かすかのような機動だ。

(,,゚Д゚)<<ラストワンはブレイズ、お前がやれ>>

隊長にそういわれたら否応にもやらねばなるまい。

<<っく……負けるか!>>

敵機が加速するのが視認でき、視界から消える。
それをすぐさま追うが、雲で視界が遮られてしまう。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:15:56.31 ID:8kS36fk10
<
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:17:40.24 ID:8kS36fk10
( ゚д゚ )<<……全ての国籍不明機の撃墜を確認。>>

サンダーヘッドの声は怒りを抑えてますよ、といった意味が込められているに違いない。
どうやら彼はこの状況なのにあくまで命令重視な石頭野郎みたいだ。

(,,゚Д゚)<<こちら隊長機、俺の声が聞こえるか?>>

川 ゚ -゚)<<各部損傷無し>>

( ゚∀゚)<<ちびっちまうところだったぜ>>

(,,゚Д゚)<<おい、ブービーどうした?>>

(;`・ω・´)<<大丈夫です。>>

どうやらまたぼーっとしていたみたいだ。
国のため、任務だからとはいえ、初めて人を殺したのだ。
敵機が爆散した時の轟音がフラッシュバックする。

あの時、あのF-5Eに乗っていたパイロットは確実に死んだのだ。

しかし、それはもしかしたら俺だったのかもしれない。
隊長や他の二人だってもしかしたら堕ちていたかもしれない。
生き残ったことに純粋に感謝すべきか。

さっきまで敵機を撃墜するために曲芸飛行すらしていた自分は、
まるで自分で無いような気がした。

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:18:21.68 ID:8kS36fk10
(,,゚Д゚)<<みんな生きてるな。よーしいい子ちゃん達だ。>>

俺らはひよっこ。
まだまだ子供扱いってことか。

操縦桿を倒して、隊長の後ろにつけ、編隊を組む。

(,,゚Д゚)<<4番機、ちゃんとついて来てるか?>>

(`・ω・´)<<はい。>>

(,,゚Д゚)<<よし、全員生還の今日の良き記念の日に、>>

なんだか嫌な予感がする。

(,,゚Д゚)<<今後、編隊内のどこにいてもお前のことはブービーと呼ぶ。いいな。分かったな?>>

思わず失笑した。
エンジン音が鼓膜を震わすのが心地よい。

( -∀-)<<やれやれだぜ。>>

チョッパーの悪態を聞きながら、速度計を見て、加速を確認。
さあ、基地へ帰ろう。

64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:20:15.61 ID:8kS36fk10
帰還してから、すぐに会議室へ召集をかけられた。

『サンド島基地隊員各位:
1.今戦闘に関連する一切の口外を禁ずる。
2.サンド島分遣飛行隊長ジャック・バートレット大尉、 基地司令部への出頭を命ずる。
Sep. 24, 2010
発令:E0111207/オーシア国防軍中央本部』

ハミルトン大尉から渡された紙にはそう書いてあった。

やはり、命令違反での交戦はまずかったらしい。
隊長はそれなりの罰を食らうだろう。
彼はまた昇進から遠のいたことになってしまう。申し訳なかった。

『口外を禁ずる』ということは、今回の宣戦布告無しでの攻撃を黙秘しろ、
無かったことにしろ、ということだ。

敵は何を考えているんだ。
上層部は何を考えているんだ。

これは、戦争だ。
攻撃を仕掛けられたのだ。

敵がやってきた方向は、ユークトバニア連邦共和国。
本来は、オーシアの同盟国だったはずだ。

嫌な予感が俺の胸中を蠢いた。

65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:20:54.17 ID:8kS36fk10
彼ら――ウォードッグ――は4機とも無事に帰ってきた。
ひとまず、私は安心した。

国籍不明機の墜落は、伏せられた。
戦闘機が撃墜したのは、空飛ぶ円盤だった、という噂すら流れた。
全く、情報操作の上手さに関してはこの国の軍部は素晴らしい。

公式には世界はまだ、平和のうちにある。
しかし、それもいずれは崩れるだろう。

最初の空戦を目にした私は島を出ることが出来なくなった。
どこまでも隠し通すように上の方々は決めたらしい。

それを告げるハミルトン大尉の申し訳なさそうな顔が目に浮かぶ。

夕日が私と隊長の長い影を作り出す。
隊長は格納庫のシャッターにもたれかけ、珈琲をすすりながら言った。

(,,-Д-)「譴責なんて珍しくもねえ。万年大尉さ」

そう言う彼の口調は自嘲をたっぷり含んでいた。
ベンチに座っている私からは、逆光で隊長の表情がよく見えない。

('A`)「……戦闘のあったことを伏せるのは、何者でしょうか?」
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:24:02.58 ID:8kS36fk10
(,,゚Д゚)「あのな、この海の向こうっていや――
ユークはムルスカの航空基地っきゃねえんだぜ」

隊長はきっぱりとした口調で言う。
分かりきっていることだが、それでも私は認めたくなかった。

('A`)「……ユークトバニアは十五年前の戦争以来の、友好国じゃないですか」

(,,゚Д゚)「だからよ。」

そう言ってから、彼は珈琲をすすり、続けた。

(,,゚Д゚)「あっちの中で、何が起こっているのか。
今頃釈迦力になって確かめようとしている連中もいる。
ホットラインがじゃんじゃか鳴ってるはずだぜ、この国のどこかでは。」

彼の言い回しは毒を含んでいて魅力的だった。

(,,゚Д゚)「悪戯に庶民の敵愾心煽るのが政治の仕事じゃねえのさ、
ただな、軍人の石頭に、理想は通じねえ。奴ら、口をつぐめと一言言いやあ、
この国の情けねえ秘密主義だ。」

それも仕方ないことなのかもしれない。
そんな風に思っていると、彼はポツリと言った。

(,,-Д-)「あんたには、すまねえことだけど。」

69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 01:24:42.29 ID:8kS36fk10
('∀`)「いや――あなた達といられるからいい。」

私は思わず自分の顔が綻んだのを感じた。
この基地の人々、特に隊長らはとても魅力的な人物だと思う。。
僅かな時間でも彼らといると、学生時代に味わった、不思議な感情が沸いてくる。

(´・ω・`)「一番撃ちたくないのは、隊長なんだよ」

('A`)「え?」

ふいに、後ろから声をかけられた。
確か、彼はこの基地の整備を担当している人物だ。
温厚そうな顔と少し太った体系が印象に残る。

(´・ω・`)「隊長には、ユークに恋人がいたのさ。」

(,,-Д-)「なあに、古い戦争の傷跡さ。」

やはり自嘲気味に放った言葉は飛び立つ夜間偵察機のジェット音にかき消される。
彼の遠くを見つめる目には、何が見えているのだろう。

ただ、彼が目を向ける方向には、ユークの大地があるのは確かだった。


MISSION ACCOMPLISHED
AND NEXT MISSION COME SOON...      
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