第九話
4 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:32:01.44 ID:zy6cCdaTO
〜主な登場人物&精霊〜

(,,゚Д゚) ギコ=モナルド 人
元素 風
装備 ロングソード 銀の胸当て
父親を探すために精霊界を目指している青年。何かと不器用なムッツリスケベ。ツッコミ担当。

( ^ω^) ブーン 精霊
元素 風
装備 淡緑色のツナギ 風の宝玉の欠片
ギコの精霊。語尾に「〜お」とつける白い豚な精霊。だが、癒し系。風呂好き。


ノパ听) ヒート=スナオ 人
元素 火
装備 ハルバード 鋼の胸当て
なんとなくギコの旅について来た元気のよい女の子。
過去に何かあったみたいだが詳細不明。おっぱいにはこんにゃくが詰まってると思っていた。

从 ゚∀从 ハインリッヒ 精霊
元素 火
装備 レザーコート
ヒートの精霊。ちいさいくせにどこか大人びた雰囲気がある。しかし性格は中学生並。寝起き悪し。
現在ヒートに愛想を尽かし(?)、精霊界に帰省。

( ・∀・) モララー=S=ファウス 人
元素 水
装備 ダガー 白い服
高価な機材をぶっ壊し、ロビー城の精霊研究施設をクビになった青年。たまにキレる。

5 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:34:03.60 ID:zy6cCdaTO
川 ゚ -゚) クール 精霊
元素 水
装備 水色のドレス
モララーの世話をするのが面倒でしょうがない。この物語のヒロインらしい。キャラ崩壊注意。

('A`) ドクオ=マダチェリー 人(?)
元素 ???
装備 ロングボウ ただの服 不細工な顔
VIP村に住む元狩人。今は精霊使いを目指しているが、今年で三浪目の29歳童貞。出番はまだ


( <●><●>) ワカッテマス=アンダスト(ドルガルド?) ???
元素 地
装備 ただの服
ギコが精霊使いの試験を受けた時の試験官。詳細不明。

( ΦωΦ) ロマネスク=スギウラ 人
元素 風
装備 大剣 皮の服
突然ギコを襲ったおっさん。元ラウンジの傭兵。『闇』にさらわれたぽろろを助けるべく旅をしている。

从'ー'从 ワタナベ 精霊
元素 風
装備 白のワンピース
ロマネスクの精霊。ブーンの知り合い。なんかのんびりとしている。
8 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:35:58.88 ID:zy6cCdaTO
(゚、゚トソン トソン=ツムラ 人
元素 雷
装備 レイピア トライデント ラウンジの兵服
元ラウンジの傭兵でロマネスクの仕事仲間。通称『雷神』。ロマネスクを追って、ラウンジを去ったらしい。

<_プー゚)フ エクスト 精霊
元素 雷
装備 なし
トソンの精霊で、バカ二号。座右の銘は『成せばなる』。詳細不明。

ζ(゚ー゚*ζ デレ(エデン?) ???
元素 光
装備 ???
時々ギコに夢を見せていた精霊(?)詳細不明。

  _
( ゚∀゚) ジョルジュ(イグニール?) ???
元素 ???
装備 ???
おっぱいに触れることで相手の心を見ることができる。詳細不明。

9 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:38:08.23 ID:zy6cCdaTO
第九話 〜いつまでも一緒〜



(,,>Д゚)「ふ……ぁ〜あ」


(,,゚Д゚)「うん。今朝もいい天気だ」


宿屋の窓から空を見た。
雲一つない青空……快晴だ。

(゚Д゚,,)「起きろよ、ブーン。いい天気だぞ?」

( ぅω`)「おー?」

(*^ω^)「おっ!朝だお!おはようお!」

目覚めたブーンは太陽に負けないくらいの眩しい笑顔を見せてくれた。
かわいいぜこんちくしょう。


( ^ω^)「おっ!あヒートを起こしてくるお!」

(,,゚Д゚)「ああ。頼む」

10 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:39:58.57 ID:zy6cCdaTO
……さて、俺達がこの町に来てからもう結構な月日が経つ。
俺の怪我もすっかり良くなった。

ヒートと違って目立った傷痕なども残らず、完治。
我ながら自然治癒力の高さは一級品だなと思う。


(,,゚Д゚)「……さて、朝飯朝飯っと」


部屋を出ると、丁度ヒートも起きてきたようで、ブーンと並んでこちらに歩み寄ってきた。


ノパ听)「おはよ。ギコ」

(,,゚Д゚)「おっす。よく眠れたか?」

ノパー゚)「まぁ……最初の頃と比べたら……ね」


彼女の口ぶりから察するに、まだよく眠れていないようだ。
心なしか、元気がないようにも見えるが……、
あの時の事を思えばずいぶん元気になった方だろう。


(,,-Д-)(あの時……ヒートがボロボロになって帰って来た日はひどかったな……)

11 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:41:53.72 ID:zy6cCdaTO
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜

あの時……


(,,-Д゚)「……ん?」


「……て!……つけ!」


(,,゚Д゚)「みんな帰って来たみたいだな」

痛む足を引きずり、ドアに手をかける。
聞こえてきたのは泣き叫ぶ女の声とそれをなだめる男の声だった。

(;ΦωΦ)「暴れるな!大人しくしろ!」

ノハ;;)「うわぁぁぁぁ!!離せっ!離せぇぇぇっっ!!」

(;゚Д゚)(なんか凄いことになってる!!)


大の男が傷だらけの少女を無理矢理押さえ付けて……
傍からみたら誤解されかれない構図だ。

12 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:43:38.93 ID:zy6cCdaTO
(;゚Д゚)「ヒート!?ロマネスクさん!?」

(;ΦωΦ)「ギ、ギコ!お前、怪我は……」

(;゚Д゚)「俺のことはいいだろ!ヒートはどうしたんだ?」

(;ΦωΦ)「事情は後で説明する!とりあえずヒートを押さえるのを手伝ってくれ!」

(;゚Д゚)「わかった!」

ノハ;;)「離せぇ!離してくれぇぇぇ!!」

(;゚Д゚)「ヒート!落ち着け!」


ヒートは両足をバタバタさせて抵抗してきた。
ロマネスクさんでも押さえられない程の力だ。
満身創痍の俺が押さえようとしても全く効果がない。


(;-Д゚)「いてて、怪我したところを殴るな」


駄目だ。
今の俺の状態じゃなにもできないな。

13 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:45:50.87 ID:zy6cCdaTO
(,,-Д-)(仕方ない、ちょっと痛い思いをしてもらうか)


(,,゚Д゚)「ヒート、すまん」

(;ΦωΦ)「え……?」

腰を落としてヒートの腹に拳を入れた。
鳩尾の少し下から心臓に向かっての突きだ。

ノハ;;)「ごふっ……!」

(;ΦωΦ)「おい!お前……何やって……!」

(,,゚Д゚)「大丈夫。気絶させただけだから」


ヒートは一瞬苦しそうな声をあげたが、すぐに意識を失ったようだった。
少々手荒だったかな?


(;ΦωΦ)「十分手荒だ!こいつも怪我してるんだぞ!」

(;-Д-)「あー……。でも、ほら。こうでもしないと大人しくならないと思って……」

(;ΦωΦ)「……まぁいい。とりあえずヒートをベッドに運んでくるから、
お前は医者呼んでこい」

(,,゚Д゚)「りょーかい」

14 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:48:06.35 ID:zy6cCdaTO
…………


( ∵)「はい。これでいいでしょう」

( ΦωΦ)「おお。ありがとう、助かった」

( ^.^)「いえいえ。これが私の仕事ですから」



(;-Д-)(どっかで見た顔だが……)

( ∵)「どうかしましたか?」

(;-Д-)「い、いや。なんでもありません」(もう何も言うまい……)

( ∵)「そうですか。……では私はこれで失礼します」

( ΦωΦ)「俺もちょっと出掛けてくるぜ」

(;゚Д゚)「は?ロマネスクさんも?」

( ΦωΦ)「おうよ。いろいろやらなきゃいかんことが多くてな。
ヒートが目を覚ましたら頼むぞ。またパニック起こされたらたまらん」

(;゚Д゚)(怪我人に押し付けるなよ……)

15 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:50:15.68 ID:zy6cCdaTO
( ΦωΦ)「じゃあな。頼んだぞ」

(,,-Д-)「はいはい」

素っ気ない返事をして、近くにあった椅子に腰を下ろした。


そういえば他のみんなはどこに行ったのだろう。
モララー達は何かを調べに行ったのかもしれないが、
ブーンやハインがいない理由はよくわからない。

(;-Д-)(……そういえばなんでヒートがこうなったのかロマネスクさんに教えて貰ってないな)


頬杖をついて、視線をヒートに移す。
まったくこんな怪我するまでなにやってるんだが。

……俺も他人のことは言えないがな。


両足……とくに右足を動かすとひどい痛みが走る。
右腕はいまだに肩より上に上がらない。
首に関してはガッチガチに固定してあるから、正面にしか顔を向けられないという始末だ。


また以前のように戦える日はいつになることやら。

16 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:53:02.80 ID:zy6cCdaTO
ノハ;--)「う……」

(,,゚Д゚)「お、気がついたか。ヒート」

ノハ;゚听)「ギ、ギコ!?ここは……?」

(,,-Д゚)「宿屋の個室だ。さっき暴れ回った記憶はないのか……?」

ノハ;゚听)「さっき……?」



ノハ;゚听)「そうだ!ハイン……ハイン!!」

(,,゚Д゚)「よーし。ストップ」


ベッドから飛び起き、部屋から出ようとするヒートの進路を塞いだ。

ノハ;゚听)「ギコ!どいてくれ!」

(,,゚Д゚)「馬鹿。そんな怪我でどこに行く気だ」

ノハ;゚听)「ハインのとこだ!」

(,,-Д゚)「ハイン?ハインに何かあったのか?」

ノハ;゚听)「う……」

17 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:55:48.07 ID:zy6cCdaTO
ノハ; )「……」

(,,゚Д゚)「?」


どうしのだろう。
ハインの事を聞いたら突然口をつぐんでしまった。

二人の間に何かあったのか?


ノハ;;)「うわぁぁぁぁん!!」

(;゚Д゚)「ヒ、ヒート!?」


また大声で泣き出した。
やっぱり何かあったようだ。

ノハ;;)「私が……!勝手に……!一人で……!戦って……!ハインは……!一人で……!」


ヒートは泣きながらいろんな単語を羅列していくが、
まったく意味がわからない。

(;゚Д゚)「とりあえず落ち着こうか。何が言いたいのかわからん」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 21:57:09.30 ID:QQDSxB97O
難しいな
精霊使いは頑丈で治癒力も高いから
結構な月日…三ヶ月はいかないよな…

19 :>>182ヶ月程度と思って下さい ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 21:58:31.49 ID:zy6cCdaTO
ノハ;;)「私は……!ただ……!みんなに……!」

(;-Д-)「ダメだ。聞いちゃいねぇ」

……まったく。世話のやけるやつだ
今何を言っても言葉は届かないだろう

(,,-Д゚)(なら……)


ぎゅ、

と泣きじゃくるヒートを優しく抱き寄せる。

「声が届かないのなら、体を使ってみなさい。
言葉はなくても言いたい事を伝える方法はいくつもあるんだから」

確か俺が幼い時に母親に言われた言葉だ。
母親が亡くなるちょっと前の事だからよく覚えている。


一方、ヒートは最初驚いたような表情をしていたが、
すぐにまた泣きそうな顔になり、
俺の胸に顔を埋めて泣き出した。

まるで子供のように大きな声でわんわんと。
何度も嗚咽を漏らし、
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにして……。
21 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:01:26.51 ID:zy6cCdaTO
(,,-Д゚)「落ち着いたか?」

ノハ - )「ん……」

(,,゚Д゚)「じゃあ何があったのか教えてくれないか?」

ノハ - )「わかった……」


ヒートは一言ずつ搾り出すように……ゆっくりと話し出してくれた。
遺跡で自分が何もできなかったことを不甲斐なく感じたということ、
自分はひょっとしてただの荷物ではないのかと思ったこと、
自分の存在価値を示すために一人でクエストを受けたこと、


……そしてそれがハインを傷つける原因になってしまったこと。


ノハ - )「トソンが言ってた。『精霊にとって、自分が主人に必要とされなくなるのは死ぬより辛く感じるものだ』……って」

ノハ - )「私は自分一人でも大丈夫だって……証明したかっただけなのに……ハインを傷つけちゃって……」


(,,-Д-)「……そうか」

大体状況は掴めた。
ハインは精霊界に戻り、ブーンはそれを追いかけていったのだろう。

22 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:04:08.26 ID:zy6cCdaTO
ノハ - )「馬鹿みたい……でしょ?」

(,,-Д-)「ああ、そうだな」

ノハ - )「私のこと、嫌いになった?」

(,,-Д-)「……あほか」

(,,-Д゚)「あのな?ヒート。俺達は『弱い』とか『足手まとい』とか
そういった理由で人を嫌いになんかならないし、
それ以前に誰もヒートの事を足手まといだなんて思ってない」

ノハ - )「そんなの……わからないよ」


(,,-Д-)「……少なくとも俺はそう思ったことはない」

ノハ - )「ほんとに?」

(;-Д゚)「ああ。つーか俺だってまだ魔物とまともに戦って勝ったことないし……
もしかしたらヒートより弱いんじゃないかって思うよ」

俺がそう言うと、ヒートは少し笑った。
少しは元気が出たようだ。


ノハ ー )「……ううん。ギコは強いよ」
24 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:06:40.02 ID:zy6cCdaTO
ノハ ー )「ギコには私にないものが全部ある。
勇気、判断力、誰かを護ろうとする強い気持ち……」

(;゚Д゚)「あんまり過大評価するなよな……
俺はヒートが思ってるよりは弱いんだから」

ノハ ー )「そう……。じゃあ一緒に強くなろうね」

(,,゚Д゚)「おうよ」

ノハ ー )「約束だよ」

(,,-Д-)「ああ。約束だ」





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜


(,,-Д-)「……で、現在に至る」

( ^ω^ )「誰に言ってるんだお?」

25 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:10:18.95 ID:zy6cCdaTO
……あのあと自室に戻った俺はブーンから色々話を聞いた。
ブーンはその時精霊界でハインを説得していたらしい。
それから毎日のようにブーンは精霊界に行っているが、
ハインが戻ってくる様子は見られないようだ。

ヒートは少しずつ元気を取り戻していき、最近ではいつものようにとんでもないことを言い出すようになった。
その度にこっちは反応に困るのだが……

そうだとしても元気がないのよりはマシか。

モララーとトソンさんは調べたいものがあるとかでロビー国に行っている。
いつになったら帰ってくるのやら……

ロマネスクさんは何をやってるのか知らない。
ちょくちょく帰ってきては俺をいじるだけいじってまた出ていく。
……何がしたいんだあの人は。



ノパ听)「で、今日はどうするんだ?」

朝食の目玉焼きを食いながらヒートが問い掛けてきた。
……口に物をいれたまま喋るな。

( ^ω^)「ブーンは今日も精霊界にいくお」

ノパー゚)「そうか。頼んだぞ」
27 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:12:31.40 ID:zy6cCdaTO
ノパ听)「ギコは?」

(,,゚Д゚)「んー……。特に用事はないけど、ちょっと体を動かしたいな」

ノパ听)「じゃあ走りに行くか?」

(;゚Д゚)「やだよこんなくそ暑ぃのに」

ノパ听)「じゃあまたここで留守番か……」

(,,-Д゚)「ヒートはどこか行きたい場所あるか?」

ノパ听)「……………………」

(,,-Д-)「特に行きたいところはなし、か」

やることがないなら仕方がない。
自室でゆっくり休むことにしよう。

そう考えて席を立ち上がった時、ヒートが口を開いた。





ノパ听)「なぁ……」

28 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:14:09.91 ID:zy6cCdaTO
(,,゚Д゚)「ん?」

ノパ听)「聞いてほしい話があるんだ。今日の昼、私の部屋に来てくれないか?
できれば……一人で」

(,,゚Д゚)「あ、あぁ……」


ヒートの声は少し震えていた。

(,,゚Д゚)(話……ってなんだ?)

自分の部屋に戻りつつ考えを巡らせる。

今のヒートの様子からすると、明るい話題でないことは確かだ。
と、なると他人には聞かれたくないヒートの秘密か、
俺にとってよろしくない話か……。


(,,-Д-)(まさか……もう一緒に旅ができないとか言い出すんじゃあ……)


そんな馬鹿な。
ヒートに限って有り得ない話だ。
31 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:15:57.25 ID:zy6cCdaTO
でも、万が一そうだったとしたら

俺はどうするのだろう



引き止めるか?

ヒートが決めたことなのに?



ならば「はい、さようなら」と送り出すのか?

一年近く共に過ごしてきた仲間だ。
そんなあっさりとお別れできるわけない。


(,,-Д-)(そういえば……俺一人の旅のはずだったのにヒートは勝手について来たんだったな。
俺が連れて来たわけじゃないから今後どうしようがヒートの勝手だろう……)



(,,-Д-)(でも……)
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/26(日) 22:17:08.71 ID:QQDSxB97O
もっ、もう一年経ったのか!?

33 :>>32暦は僕らと違いますから(後付け) ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:18:40.71 ID:zy6cCdaTO
それで、自分は納得出来るのだろうか。

ブーンがいて、ヒートがいて、ハイン、モララー、クーがいて、俺がいる。

正直、この中の誰かが欠けると、俺は俺でいられなくなるかもしれない。
特にヒートは、旅立ちの時から一緒にいた。

もし、ヒートがいなくなったら……


(,,゚Д゚)(やめよう。まだヒートがいなくなると決まったわけじゃないんだ)

(;-Д-)(……いや、それ以前に「みんなに嫌われたくないから」
って無茶するようなやつがパーティーから離れるわけがないよな)

(,,-Д-)(うん、そうだよ。まったく何を心配してるんだ俺は)

自分に言い聞かせ、ベッドに身を預けた。
昼までまだ結構な時間がある。
俺は静かに目を閉じ、夢の世界へと堕ちて行った……。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・

34 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:20:12.41 ID:zy6cCdaTO
( ・∀・)「あったあった。これだ」

(゚、゚トソン「『英雄狐の伝説』ですか?」

( ・∀・)「うん。ちょっと気になることがあってね〜……」





モララーとトソンはロビー城の図書室にいた。
モララーが棚から取り出したのは『英雄狐の伝説』のT〜]T巻。
その見た目はヘッドラインにあったそれと全く同じだ。



( ・∀・)ノ□「で、ここにあるのがヘッドラインでぬs……いただいてきた本です」

(゚、゚;トソン「なんか聞いちゃいけないものが聞こえた気がするんですけど……」

( ・∀・)「研究に多少の犠牲はつきものだよ」

(゚、゚;トソン「は……はぁ……。しかし何故いまさらそんな本を?子供の時に読まなかったのですか?」

( ・∀・)「読んだよ〜。腐るほど」

(゚、゚;トソン「ならどうして……」
36 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:22:02.71 ID:zy6cCdaTO
( ・∀・)「話を聞くより、見たほうが早いんじゃないかな」

そう言ってモララーは本を開いて机に置いた。
二冊とも同じページを開いてある。


( ・∀・)「読んでみてよ」

(゚、゚トソン「私は幼少期にこれを全て暗記させられましたから見なくても暗唱できますが……」

( ・∀・)「いいから。読んで」

(゚、゚トソン「……わかりました」


トソンは一瞬怪訝そうな表情を浮かべ、ヘッドライン共和国の方の本を手に取った。
そして開かれたページの文章に目を通していく。




(゚、゚トソン「……特におかしな点は見つかりませんが?」

( ・∀・)「……。じゃ、次はロビー国の方を読んでみて」

(-、-トソン「わかりました」

37 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:23:37.20 ID:zy6cCdaTO
軽くため息をついて、ロビー国の方の本を手に取った。
最初はさもめんどくさそうな表情で見ていたが、ある一文を読んだ時、トソンの表情が変わった。


(゚、゚;トソン「あれ……?」


その一文は、トソンの記憶にある本の中にも、先ほど読んだ本の中にも含まれていない文だった。
そして、その後の展開も全く知らない話で構成されていた。


(゚、゚;トソン「なぜ……話の内容が違うのですか?」

( ・∀・)「『狐、雷龍を手なずけ、雷龍の背に乗り精霊界まで行けり』と『狐、精霊界へ行くべく次元の剣を求め、妖の住まう洞窟へ行けり』」

( -∀・)「……さて、どうして内容が違うんでしょうか」

(゚、゚;トソン「そんなことわかるわけないじゃないですか」

( ・∀・)「では僕が考えた仮定を聞いてもらおう」


( -∀・)「まず、最初にこの本のこと。
この本はフォックスが体験した様々な記録を伝記として記したものとされてるよね?」

(゚、゚;トソン「えぇ……そうですね」

( ・∀・)「うん。確かにそうだ。
だけどこの本にはもう一つ役割があった。
それが、『精霊界への行き方』だと思うんだ」

38 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:25:17.98 ID:zy6cCdaTO
(゚、゚;トソン「精霊界への行き方……ですか」

( ・∀・)「うん。次に、内容の不一致の理由。
さっきのトソンさんの様子だと、ヘッドラインの本とラウンジの本の内容は同じだったみたいだね」

(゚、゚トソン「えぇ……あの部分に関してはそうですね」

( -∀・)「そこで仮定1」


( ・∀・)「ロビー国のこの本に精霊界に行くための道のりが記されている」

(゚、゚トソン「しかし、『次元の剣が〜……』の部分以外は同じでしたよ」

( ・∀・)「ところがギッチョン」

(゚、゚トソン(ギッチョン?)


( ・∀・)「他にも違う部分があるんだよね……二箇所」

(゚、゚;トソン「なんですって?」


モララーはトソンに本を渡し、問題のページを開いた。

( ・∀・)「まずはここ。『雷を司る龍を敗りける』
ヘッドラインの本にはこう書いてあるけど……」
41 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:27:25.34 ID:zy6cCdaTO
(゚、゚;トソン「あれ……?ここは火龍を倒すシーンだったと思いますが」

( ・∀・)「……」





( ・∀・)「えっ?」

突然口を挟んできたトソンの口から飛びだしたのは、モララーにとって予想外のセリフだった。
ロビー国の本には水龍との戦闘が書かれている。
つまり、ラウンジ、ロビー、ヘッドラインの三国それぞれ別の話が書かれているのだ。

( ・∀・)(仮定1は没だな……)

(゚、゚;トソン「どうしました?急に固まって……」



( ・∀・)「仮定2!!」

Σ(゚Д゚;トソン(続きは!?)

( ・∀・)「それぞれの国にあるこの本を全部見ればなんかわかるかもしんない!」

Σ(゚Д゚;トソン(すごい漠然としてる!!)

42 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:29:36.82 ID:zy6cCdaTO
( ・∀・)「これに関してはまだよくわからないんだ……。
ラウンジの本とこの二つの本にそれぞれ違う内容が書いてあるってことは……」


( -∀・)「精霊界への行き方は複数あるか……。
または一つしかない精霊界への行き方をこの本に巧妙に隠したか……」

(゚、゚トソン「隠したと言いますと?」

( ・∀・)「英雄フォックスが本当に通った道ではなく、
誰かが適当に考えた物語を書き連ねた」

(゚、゚トソン「なぜそんなことを……」

( ・∀・)「人間が簡単に精霊界へ立ち入らないようにするためじゃないかな?」

(゚、゚トソン「……なるほど。確かに、精霊界に心の悪しき人が何人も行ったら大変ですからね」

( ・∀・)「そ。でもせっかく見つかった精霊界への行き方だ。
後世に遺しておきたいと思うはず」


(-、-トソン「……つまり、一部の人間しか精霊界に行けないようにと、本の内容をいちいち変えて作ったのですか」

( ・∀・)「そういうこと。おそらくその人は5つのパターンの物語を作り、
ロビー、サロン、ラウンジ、ヘッドライン、ビーの五国にそれぞれ渡したんだろう。
そして、それぞれの国の中でそれを量産して……」

(゚、゚トソン「別々の物語のまま伝えられた……と。
なるほど、そういうことですか」

43 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:30:46.26 ID:zy6cCdaTO
( ・∀・)「ま、あくまで僕の推理だけどね」

モララーは本を勝手に自分の荷物の中に詰め込んだ。
そして、後ろの本棚に空いた不自然なスペースには、
別の本棚から適当な本を取ってきてカモフラージュした。


(゚、゚;トソン(なんと幼稚な隠蔽工作……)


(゚、゚トソン(しかし……先ほどの彼の推理は凄かったですね。
さすがはロビー国が産んだ若き天才、モララー=S=ファウスと言ったところでしょうか)

(-、-トソン(あの短時間で筋の通った大胆な仮説を立てるとは……。
敵に回すと少々恐ろしいですね)

(゚、゚トソン(なぜそんな彼がギコ達と旅をしてるのかはわかりませんが……しばらく監視しておいたほうがよいでしょう)


(゚、゚トソン(……もし、次にまた戦争が起こった時のためにも……)




・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

44 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:32:48.38 ID:zy6cCdaTO
〜精霊界〜


(;^ω^)「ふぅ……ふぅ……あちぃお」

从 ゚∀从「火山なんだから仕方ないだろ。
……てかお前また来たのかよ」

( ^ω^)「おっ!ハインがいないと楽しくないお!みんな一緒がいいお!」

从 ゚∀从「何度も言ったろ?俺は当分人間界には行かねぇよ」

( ^ω^)「ヒートも淋しそうだお。早く戻ってきて欲しいお」

从#-∀从「だから何度も同じこと言わせんなっつうの!」

ハインが叫び、火の玉をブーンにむかって飛ばした。
そしてそれはブーンの体のあちこちに直撃する。


(;゚ω゚)「熱いお!痛いお!」

从#゚∀从「俺の気が変わるまでぜってぇ向こうの世界には戻らない!!
ヒートにもそう伝えとけ!!」

(;^ω^)「そんな……」

45 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:34:02.97 ID:zy6cCdaTO
おかしい
と、ブーンは思った。

普通の精霊ならばこんな長期間、主人と会わないでいられないはずないのだ。
ハインも相当淋しくて仕方がないはずなのに……。


从 -∀从「もう俺から言えることはなんもない!さぁ帰った帰った!」

( ´ω`)「お……」


今日も話を聞いてもらえそうにない。
そう判断したブーンは大人しく帰ることにした。




( ^ω^)「……ハイン。みんな君の帰りを待ってるお」

从 -∀从「……ふん」

( ^ω^)「……いつでも、帰ってきて欲しいお」

从 -∀从「……」

46 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:36:03.85 ID:zy6cCdaTO
ブーンは最後にそう言って、光の粒子に変わった。
火山に柔らかな風が吹き、緑色の光の粒子を運んでいく。

ハインはそれを見送ってから火山の奥へと歩いて行った……。


从 ゚∀从(まったくブーンの奴もよくやるぜ……。風の精霊のくせに『炎の山』にくるなんてな)


今ハインがいる場所は『炎の山』。
炎の精霊が多く住む地だ。
地下には溶岩が溜まっており、そこから熱が上がってくる。

そのせいでこの山の気温は異様に高く、炎の精霊以外の精霊達はこの山に住むことができないのだ。


そんな気温が高いのにも関わらず、
炎と相性の悪い風の精霊がここまで足を運ぶのは理解し難いことだった。




从 -∀从(ヒートが淋しがってるのか……。なんとなく予想がつくけどな)

从 ゚∀从(でも俺は帰れないんだ……
まだ……帰る資格はないんだ)

47 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:37:50.24 ID:zy6cCdaTO
  _
( ゚∀゚)「よう、ハイン。今日もまた浮かない顔してるな」

从;゚∀从「おわっ!ジョルジュ!」
  _
( ゚∀゚)「なんだよ。そんなにビックリしなくてもいいじゃないか」

从;゚∀从「突然後ろから話し掛けられたらビックリするだろ」


そうか?と、頭を掻くジョルジュ。
この男、ハインとは幼なじみの関係で、
ハインが人間界に来る前はよく二人一緒にいた。

  _
( ゚∀゚)「で、まだ帰んないの?」

从 ゚∀从「なんだよ。俺に早く帰れってか?」
  _
( ゚∀゚)「おう。何があったかは知らんが、契約済の精霊が人間と離れるのはよくないことだからな」

从 ゚∀从「はん。おまえには関係ないね」
  _
( ゚∀゚)「……ならば仕方あるまい身体に聞くしk……」
                   _
从#゚∀从つ#)∀゚)メメタァ!≡≡≡

48 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:39:43.42 ID:zy6cCdaTO
(;#)∀゚)「お、俺の眉毛!」

从#゚∀从「何普通に胸触ろうとしてんだよ!ぶっ殺すぞ!」

アッタアッタ
(#)∀゚)つ-「心読もうとしたんだよ」
 _
(∩)∀゚)
  _
(#)∀゚)+
_
 ≡≡≡ブフォッ!(#)∀(#⊂从∀゚#从

(;#)∀(#)「目が……目がぁぁぁぁ!!」

从#゚∀从「胸に触らなくたってお前なら心読むことくらいできるだろ!
つーかそれ以前に人の心読むな!
あと今の顔なんかムカついた!」

(;メ゚∀(#)「なら話せよ。俺とお前の仲だろ?」

从#゚∀从「だから関係ないって……!」

(メ゚∀(#)「関係なくねぇよ」


从;゚∀从「っ……!」

49 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:41:47.02 ID:zy6cCdaTO
突然真剣な顔をするジョルジュ。
ハインはそんな彼のを見て言葉を詰まらせた。
……自分の知ってる幼なじみの、あまり知らない部分を見た気がした。

オ、コンナトコロニアッタ
(メ゚∀゚)っ-

 _
( ∩∀゚)

  _
(メ゚∀゚)+


幼なじみであるにも関わらず、ハインはジョルジュの事をちゃんと知ってるわけではない。
人間と契約していないのにしょっちゅう人間界に行く理由、
たまに精霊神に呼ばれるワケ、
よくわからんつけ眉毛、

そして何より、火の精霊には使えるはずのない、人の心を読む能力のこと。


知らないことだらけだ。

50 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:43:30.96 ID:zy6cCdaTO
  _
(メ゚∀゚)「幼なじみだろ?関係ないなんて言うなよ」

从 ゚∀从「……これは俺の問題だ。自分でケリつけなきゃ意味ないんだよ。
だからお前に話す必要はない」



  _
(メ゚∀゚)「……ぷっ」

从#゚∀从「なにがおかしい!」

  _
(メ゚∀゚)「悪い悪い。やっぱり人間と精霊って似た者同士がくっつくんだなと思ってよ」

从 ゚∀从「あぁ?どういうことだよ」
  _
(メ゚∀゚)「なんだなんだ?お前ヒートがなんで一人でキマイラのとこに行ったか知らないのか?」

从;゚∀从「……は?」

  _
(メ゚∀゚)「どうやら知らないみたいだな……」
  _
(メ-∀-)「まぁいい。一から説明してやるよ」

51 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:46:12.11 ID:zy6cCdaTO
  _
(メ゚∀゚)「ヒートはな、自分の仲間が必死に戦ってるのに、自分だけ傍観者になっていた。
それで自分は仲間の荷物になってるんじゃないかと思いはじめたんだ」

  _
(メ゚∀゚)「そう考えてあいつはどうしたか。
……仲間に自分が荷物じゃないことを証明しようとした。
だから『自分だけの力』で戦おうと思ったんだ。
だから、キマイラに単身で戦いを挑んだ」

从;゚∀从「……」


ハインの頭の中がごちゃごちゃになる。
ヒートが己の不甲斐なさを負い目に感じているのは知っていた。




自分も同じだった。



だからこそ、一緒に強くなりたかった。



だけどヒートは、自分に黙って一人で戦いに行った。
ぬけがけされたみたいで悔しかった。

52 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:48:10.96 ID:zy6cCdaTO
从 ∀从



おいてけぼりにされた。



辛かった。怖かった。



あのメンバーの中で、ビビって何もできないのは自分だけになった。



嫌だった。苦しかった。




だから、逃げた。



自分から。現実から。

53 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:49:50.92 ID:zy6cCdaTO
ヒートが淋しがってる、みんなが待ってる。



ブーンにそう言われて嬉しかった。



みんなが自分を必要としてる気がしたから。



でもそれを押し殺してわざとブーンに冷たくあたった。



今戻ったら、みんなに甘えてしまいそうだから。






  _
(メ゚∀゚)「どうした?ハイン」

从 ゚∀从「……なんでもねぇよ」

54 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:51:36.06 ID:zy6cCdaTO
  _
(メ゚∀゚)「……結局最後まで何も言わなかったな。
まぁ……どうしても言いたくないってのならもう聞かねえけどよ」

从 ゚∀从「……わりぃな」


ため息混じりのジョルジュ言葉によって、若干申し訳ない気持ちになった。

空を見上げると火山からモクモクと立ち込める煙が天を覆っていた。


从 ゚∀从「なぁジョルジュ」

  _
(メ゚∀゚)「ん?」


从 ゚∀从「強くなるにはどうすればいいかな」

  _
(メ゚∀゚)「……。『信じること』かな」


从 ゚∀从「信じる?何を?」

  _
(メ゚∀゚)「自分自身をだよ」

55 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:53:19.68 ID:zy6cCdaTO
  _
(メ゚∀゚)「自分を信じることは己の力の自信となる。
自信があれば仲間を信じることもできる。
仲間を信じることができればやっと強くなれる」

从 ゚∀从「……お前が難しいことを言うと違和感があるな」

  _
(メ゚∀゚)「失敬な」


从 ゚∀从「ははっ。だったら普段の態度改めろよ」

  _
(メ゚∀゚)「ますます失礼な奴だな。
俺の私生活が変だとでも言うのか?」
                 _
从 ゚∀从「突然家に来て『( ゚∀゚)おっぱいおっぱいしたいんですけど』とか言い出す奴が何言ってんだよ」

  _
(メ゚∀゚)+「それは過去の話さ」


从 ゚∀从「そうだ、もう一つ聞きたいことがある」

  _
(メ゚∀゚)「ん?」

56 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:55:08.88 ID:zy6cCdaTO
从 ゚∀从「お前、ヒートが一人で戦いに行った理由を知ってたけど……読んだのか?」

  _
(メ゚∀゚)「おうよ!」


从 ゚∀从「まさかヒートに変なことしてないだろうなぁ」

  _
(メ゚∀゚)「おうよ!変なことはしてない!
ただおっぱいはフニッてしてて柔らかかったぜ!」


从#゚∀从「ほぉ〜」

  _
(メ゚∀゚)「?なんで怒ってるんだ?」


从#゚∀从「ジョルジュ、ち ょ っ と こ い」

  _
(メ゚∀゚)「?」



……その日、ジョルジュは他人のおっぱいを触ることはよろしくない事を知った。

57 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:56:57.90 ID:zy6cCdaTO
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

〜宿屋〜

(,,-Д-)「zzz……」


( ;ω;)「ぶぇぇぇぇぇん!!ぎごぉぉぉぉぉ!!」


Σ(;゚Д゚)「な、なんだ!?敵襲か!?」


謎の騒音によって飛び起きた俺は、まずベッドから落下。
そしてその時の振動によって壁に立て掛けておいたロングソードが倒れ、
その柄が後頭部に直撃した。

(;+Д+)「あべふっ!!」

( ;ω;)「ぶぇぇぇぇぇん!!」

(;-Д゚)「ブーン?どうしたんだ一体……」


騒音の正体がブーンの泣き声だと理解したころには、頭の後ろにでっかいコブが出来ていた。

58 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 22:58:34.94 ID:zy6cCdaTO
( ;ω;)「火傷したおー!痛いおー!」

(;゚Д゚)「おーおー。ハインの奴やりやがったな」


ブーンの白い体には軽い火傷がいくつもできていた。
風の精霊が炎に弱いの知ってるはずなのに……ひどい奴だ。


(,,゚Д゚)「ちょっと待ってろ今火傷の薬を……」

(,,゚Д゚)「って自分で治せよ」


(;^ω^)「お?」

(,,゚Д゚)「自分で治せるだろ?その程度の火傷なら」


体の複数箇所に点々としてるが、本当に軽い火傷だ。
ブーンの力なら簡単に治せるだろう。


(;^ω^)「治せる……けど……その……」

(,,゚Д゚)「どうした?なんかまずいことでもあるのか?」

(;^ω^)「いや……そんなこと……ない……お……」

59 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:00:22.57 ID:zy6cCdaTO
(,,-Д゚)「何なんだ?一体」

(*^ω^)「い、いや……その……たまにはギコに甘えちゃおっかなっ……なんて……」

(,,゚Д゚)「……」


(*゚Д゚)「こやつめ」


荷物の中から火傷の薬を取り出し、ブーンに塗る。


(*^ω^)「おー……。ひんやりしてて気持ちいいお」

(*゚Д゚)「うりうり。ここか?ここがええのんか?」

(*^ω^)「あひぃ!らめぇ!!そこはらめなのぉぉぉぉ!!」

(*゚Д゚)「ほれほれ、ここはどうだ?」

(*^ω^)「はうぅっ!!気持ちいいのぉ!!
右足の太ももがひんやりしてて気持ちいいのぉぉ《ガチャ》(#`ェ´)「じゃかぁしぃ!!」

Σ(;゚Д゚);^ω^)

60 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:02:22.08 ID:zy6cCdaTO
(#`ェ´)「昼間っから騒いでんじゃないよ!ちょっと興奮しちゃった俺に謝れ!!」

(,,゚Д゚) ^ω^)「「ごめんなさ〜い」」



隣の部屋の佐藤さんに怒られたので、普通に薬を塗る。
指にゲル状の薬をのせ、傷口に優しく円を描くように塗っていった。

( ^ω^)「おー。塗ったところがスーッとするおー」

(,,゚Д゚)「俺のじいちゃんのお手製だからな」

( ^ω^)「今度ギコのじいちゃんにも会ってみたいお!」

(,,゚Д゚)「ああ。機会があったらな」


ブーンに薬を塗り終えたところで、窓を開けて空を眺めた。
太陽はほぼ真上にある。



(,,-Д゚)(もう昼か……早いな……)


(,,゚Д゚)「……昼ご飯食いに行くか」

61 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:04:44.97 ID:zy6cCdaTO
ヾ(*^ω^)ノシ「おー!ご飯だおー!」

( ^ω^)「ヒート呼んでくるお!」

(,,゚Д゚)「おう。よろし……」


(;゚Д゚)「ちょっと待った!」


( ^ω^)「お?」



……すっかり忘れていた。
朝、ヒートと約束したんだっけ。

(;-Д-)(ブーンがいなかったら忘れてたかもわかんね)


( ^ω^)「どうしたお?」

(,,゚Д゚)「あぁ……ヒートは俺が呼んで来るから、ブーンは先に飯食ってろ」

( ^ω^)「お?でも……」

(,,゚Д゚)「いいから。ほら、早く行きな」
63 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:06:06.86 ID:zy6cCdaTO
( ^ω^)「おー……。わかったお!」


元気良く返事をして、ブーンは小走りで食堂へ向かった。

(,,゚Д゚)(さて、俺はヒートのとこに行くか)


何を言われるかな?
金と恋愛以外の相談ならなんでも来いだが……。

そんなことを考えながらヒートの部屋をノックした。


(,,゚Д゚)「ヒート、入るぞ」

《どうぞ》


ヒートの返事を聞いて、ゆっくりとドアノブを回す。


……この時、ドアがとても重く感じられたのは気のせいだったのだろうか。

64 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:08:02.04 ID:zy6cCdaTO
(;゚Д゚)「……」



部屋を包む違和感。

その正体はすぐにわかった。



ノパ听)「とりあえず、その辺に座って」

(,,゚Д゚)「お、おう」



……ヒートらしからぬ、きっちりと整理された部屋。
荷物は一つにまとめられ、部屋の隅に置いてある。





……まるで旅行にでも行く人のようだ。

65 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:09:39.84 ID:zy6cCdaTO
(;゚Д゚)「や、やけに部屋が綺麗なんだな……」

ノパ听)「うん。荷物整理したからな」



……嫌な予感がしてやまない俺の心をよそに、ヒートは平然とした面持ちでいた。

椅子に腰を下ろすと、ヒートは俺と向かい合うような形でベッドに腰掛ける。

顔を上げる。
ヒートと目が合った。
驚くほど透き通った綺麗な目をしていた。



(;゚Д゚)「あの……そ、相談ってなんだ?」


頭の中では嫌な考えがいくつも跋扈していて、とても落ち着いていられない状態だ。
必死に平静を装うが、きっと慌ててるように見えるんだろうなぁ。




ノパ听)「どうした?気分が悪いのか?」

66 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:11:32.32 ID:zy6cCdaTO
(;゚Д゚)「……平気だ」


……もちろん、嘘だが。
ただ、今の俺には現実から逃げるような思考ができないのだ。


だって、仕方ないだろう。
ついこの前まで散らかっていた部屋が綺麗になっていて、
荷物を詰め込んだバッグが隅にキチンと置かれている状況を見たら、



予測できることは一つしかないじゃないか……。





ノパ听)「そろそろ本題に入っていいか?」


(,,-Д-)「……わかった」



ノパ听)「じゃあ……単刀直入に言うぞ」

67 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:13:45.23 ID:zy6cCdaTO
ノパ听)「私は……」















ノパ听)「……ギコ達と一緒には行けない」









……耳を塞ぎたかった。
そこから先を聞きたくなかった。

68 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:15:29.81 ID:zy6cCdaTO
わかっていた。
ヒートがどんな話をするのかは大体予想がついていた。



でも、俺の心はそれを否定した。
認めなかった。



必死に逃げ場を探した。
そんなものはなかった。





……つまり、俺には現実を受け止める事しか許されないのだ。



(; Д )「な、んで……突然……?」


口が重い。
喋るのが辛い。
70 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:17:25.86 ID:zy6cCdaTO
ノパ听)「……ごめん。びっくりしたよな」

(; Д )「当たり前だ!」

ノパ听)「……ごめんな。
でも、まず私の話を聞いてくれないか?」



言葉は無しに頷いた。
まだショックで胸が苦しい。

ヒートは咳ばらいを一つして、話しはじめた。





ノパ听)「……まだ、私が小さかった頃の話だ……」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜
73 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:18:46.70 ID:zy6cCdaTO
……サロン国のニュー速町からちょっと離れたところ。
そこに私の家があった。


∬´_ゝ`)「ハロー、ヒート。早く起きなさい」

ハハ ぅ ー゙)ハ「はい……」


ノハ--)「zggg……」


ハハ‘ ー‘)ハ「ヒート、起きなさい」


ノハ--)「んー……あと半日……」


ハハ;‘ ー‘)ハ「いつまで寝る気よ……」




……父と母、姉と私の四人家族で、幸せに暮らしていた。

74 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:20:17.84 ID:zy6cCdaTO
∬´_ゝ`)「ハロー、母さんはすぐ仕事に行かなきゃいけないから。
ちゃんと朝ごはん食べて学校に行くのよ。
あと、ヒートの事もよろしくね」
ハハ‘ ー‘)ハ「はい、お母様」




母はサロン城の科学研究部の部長で、いわゆるエリートだ。
姉はそんな母に似て、頭がよかった。


ハハ‘ ー‘)ハ「ヒート、いい加減起きないと朝ごはん抜きよ」

Σノハ;・勍)「起きる!!」



……残念ながら私は母に似なくて馬鹿だったけどね。
姉と一緒の学校に通っていたけど、ほとんどの授業には全然ついていけなかった。



そんな私が唯一得意だったのが武道の授業だったんだ。

75 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:22:30.17 ID:zy6cCdaTO
ノハ#・勍)「てりゃぁぁ!!」

(>д<)「ふぎゃっ!」



確か、学校では負け無しだった。
私はきっと父に似たんだろうね。


つまり、私は姉と正反対の性格だったんだ。
だから姉とは合わなかった。

喧嘩もしょっちゅうだったよ。



ハハ#‘ ー‘)ハ「だからなんでこんな簡単な問題もわからないのよ!
だからあなたは馬鹿なのよ!」

ノハ#;;)「うるさぁい!馬鹿って言うなぁ!!」

ハハ#‘ ー‘)ハ「あら、馬鹿に馬鹿って言って何が悪いのよ!?」

ノハ#;;)「ヒートは馬鹿じゃないもん!!」

76 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:24:15.90 ID:zy6cCdaTO
……それで、その喧嘩を止めるのは父だった。


ミ`・ー・)「ほらほら二人とも。喧嘩はダメだぞー」

ノハ・勍)ハハ‘ ー‘)ハ「「はーい……」」



父は精霊使いで、冒険者だった。
私も姉も、強くて優しい父が大好きだった。
それはきっと母も同じだったろう。


そんな父は私の事を家族の中で一番可愛がってくれたんだ。


ミ`・ー・)「ほら、ヒート。これがサラマンダーの鱗だよ」

ノハ*・勍)「すげぇー!燃えてるぞっ!!」


ハハ‘ ー‘)ハ「……」



……だから、姉は私に嫉妬したんだと思う。

77 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:26:00.96 ID:zy6cCdaTO
日を重ねる度に、姉の風当たりはどんどんひどくなっていった。



ノハ;・勍)「ねーちゃん!なんで起こしてくれなかたんだ!学校に遅刻しちゃうだろ!」

ハハ‘ ー‘)ハ「あら、あんたみたいな出来損ないに勉強なんて必要ないと思ったんだけど」

ノハ#・勍)「ヒートは出来損ないじゃない!」

ハハ‘ ー‘)ハ「何言ってるのよ。この前の幾何学と精霊学のテスト、10点を取ってきたのは誰だったかしら」

ノハ;・勍)「うっ……」

ハハ‘ ー‘)ハ「ほら、言い返せない。……あなたは『いらない子』だったのよ」

ノハ;・勍)「うぅ……ヒートは……いらなくなんかない……」




頭が悪い私は、口喧嘩で姉に勝てるわけがなかった。
そのうち私は姉に反抗するのを諦めたんだ。

78 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:28:21.48 ID:zy6cCdaTO
頭が悪くて、学校での成績も思わしくなかったものだから、母にも嫌われていた。

だから、父がいない時私は一人ぼっちだった。


毎日毎日、父の帰りだけを楽しみして過ごしていた。


ミ`・ー・)「ただいまー。帰ったぞー」

ノハメ*・勍)「おかえりー!!今日は何してきたんだー?」

ミ`・ー・)「今日はなー……」



学校でもまともに勉強せず、家では父以外と会話しない。
そんな生活を続けているうちに私の中の世界は、
父を中心に回る物に変わった。

いつしか父のようにいろんな冒険に行ってみたい。
そう考えるようになった。


頭は良くなくても、父に習った武術には自信があったから。

79 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:30:21.09 ID:zy6cCdaTO
そんなある日の事だった。
珍しく父が興奮して帰ってきた。



ミ*`・ー・)「大変だぞ!火龍がロビー国の郊外で目撃された!!」

ノハ*・勍)「本当かぁぁぁぁぁ?すげぇぇぇぇぇぇ!?」

ミ*`・ー・)「あぁ!待ってろよ!父さんが火龍を捕まえてきてやる!!」



『火龍を見たい』


私は昔から口癖のようにそう言っていた。
だから、家族で唯一私を愛してくれた父が火龍のもとに行かないわけがなかった。




……例え、その場所で内戦が起きていたとしても。

80 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:32:33.83 ID:zy6cCdaTO
ノハ )「……」


それから間もなく、父が死亡したという知らせが入った。

私は自分の世界の中心を失った。


母も姉も深く悲しんだ。
いつの間にか悲しみは『怒り』、『憎悪』に変わり、その矛先は私に向けられた。


∬ _ゝ )「あんたのせいよヒート……。あんたが火龍なんかに興味を持つから……あの人は……」

ノハ; )「か……母さ……」

∬#;_ゝ;)「あんたなんか生まれて来なきゃよかったのに!!」



……ギコにわかるかな?
自分の産みの親に『生まれて来なきゃよかった』って言われる辛さが……。


そしてその後も私に対するひどい仕打ちは続いた。

81 : ◆4br39AOU.g :2009/07/26(日) 23:34:28.30 ID:zy6cCdaTO
∬#´_ゝ`)「まだ皿洗い終わってないの!?いつまでやってるつもりよ!!」

ノハ;・勍)「え……。でもまだ始めたばっか……」

∬#´_ゝ`)「口ごたえするんじゃないよ!!ハローだったら一分で終わるわよ!!
なんでこんな事も出来ないの!?あなた本当に私の娘?」




母は理不尽な内容で文句を付け、何度も何度も殴ってきた。
私が口ごたえすると毎回のように姉の名前を出して比較された。


そんなある日、私は家を追い出された。
「二度と家に入るな」
そう言われた。
確か12歳の時だった。
私は行く当てもなく、あちこちウロウロとしていた。



ノハ )「……おなか、空いたな」


まず私に襲い掛かってきたのは空腹だった。
家でもあまりまともに食べさせてもらえなかったので、すぐに限界が来た。

夜になると恐怖感と孤独感に教われ、泣きそうだった。
85 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:01:26.08 ID:Gs5E0ErGO
幼い私が一人で生きていけるわけなかったんだ。
でもどうしても家に帰る気にはなれなかった。
それほど家での生活は辛かった。



そんなある日、ボロボロの私に話しかけてくれた人がいた。



/ ,' 3「お嬢さん。こんなところでどうされました?」

ノハ )「……」

/ ,' 3「お腹空いてるんですか?」

ノハ )コク

/ ,' 3「お家に帰らなくていいんですか?」

ノハ )「帰り……たくない……」

/ ,' 3「……。では、私の家に来ませんか?温かいスープくらいならすぐに用意できます」
87 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:03:42.60 ID:Gs5E0ErGO
腹を空かせてどうしようもなかった私は、その男の家にお邪魔することにした。

その男……アラマキの家は孤児院だった。

昔、戦争で孤児がたくさん出た時代があって、
その時孤児だったアラマキが孤児院の院長になったとか。



/ ,' 3「家に帰りたくない理由はなんですか?」

ノハ )「……」

/ ,' 3「……話せないのなら構いません。話せるときに少しずつ聞かせてください」



……アラマキは優しかった。
父から注いでもらった愛情とは違った形の愛があった。


そのおかげか、私はすぐに孤児院の仲間に入ることができたんだ。

88 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:05:31.29 ID:Gs5E0ErGO
私が家出した理由をアラマキに話すと、アラマキは「ずっとここで暮らしていいんですよ?」と言ってくれた。
嬉しかった。

孤児院のみんなもとても優しかった。



(*´_ゝ`)「ヒートちゃん!お医者さんごっこしようよ!」

(´<_` )「殺すぞ。兄者」



特に仲がよかったのは私よりいくつか年上の双子、
アニジャ=サスガとオトジャ=サスガだった。

アニジャの言ってることはよくわからなかったけれど、オトジャとのやり取りがなんとなくおもしろかったのは覚えてる。



私はこの二人を本物の兄のように慕っていた。
でも、一度冗談で『お兄ちゃん』ってアニジャに言ったらアニジャは鼻血出しながら気絶したんだよね。

あの時は本当に驚いたなぁ。

89 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:08:03.46 ID:Gs5E0ErGO
それからの生活は毎日が楽しいことだらけだった。
大嫌いな勉強や宿題に追われることも、誰かに怒鳴られることも、殴られることもなかった。



ある日……確か16歳の時だったと思う。
私はふと家族の事を思い出した。

家を追い出され、そのまま何も言わずに行方を眩ませてしまった。
きっと母も姉も心配してるだろうと思った。


だから、謝りたかった。



ノパ听)「アラマキ……」

/ ,' 3「なんですか?」

ノパ听)「……家に帰りたい」

/ ,' 3「……。そうですか。それはよかった」

ノパ听)「……ごめんなさい」

/ ,' 3「なぜ謝るのですか?家に帰りたくなったのはあなたの心の傷が癒えた証拠です。
喜ばしいことじゃないですか」

90 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:09:39.51 ID:Gs5E0ErGO
アラマキは優しく私の背中を押してくれた。
最後に「またいつでも来て下さいね」と言ってくれた。



そして、私は家に帰った。
四年ぶりだった。

もう太陽が沈みかけていたが、家の中には明かりが灯っていた。


私は恐る恐るドアを開け家へ足を踏み入れた。
懐かしい臭いがした。

台所から夕飯を作る音が聞こえた。
母がいる。


すると、途端に胸が苦しくなった。
昔の記憶がフラッシュバックしたからだ。


廊下を過ぎ、居間に出た。
台所からはトントンと野菜を切る音が聞こえた。



ノパ听)「母さん……」

91 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:11:56.44 ID:Gs5E0ErGO
母の包丁を持つ手が止まった。


∬ _ゝ )「誰……?」


四年前と変わらない声だった。
私は懐かしさに涙がこぼれそうになった。

でも、堪えた。
まず謝らないといけなかったから。



ノパ听)「お母さん……ごめ――」

∬´_ゝ`)「あら、ヒート?何やってるの?家に上がらないでって言ったでしょ?」


ノハ; )「……っ!?」




四年ぶりの母の言葉は、辛辣な物だった。
母は……この女は私が四年も行方をくらませても心配なんてしなかったようだ。

92 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:13:42.93 ID:Gs5E0ErGO
∬#´_ゝ`)「早く出て行きなさい!もうあなたは私の子じゃないのよ!」

ノハ; )「ぇ……ぅぁ……」



ノハ;;)「うぅぁ……」



涙が止まらなくなった。
私は母親に『捨てられた』
その事実が受け止められなかったから。


結局私は母親に何も言えないまま、家から追い出されてしまった。

私はそのあと近くの広場で涙が涸れるまで泣いた。
喉が潰れるまで泣いた。


涙が涸れても泣いた。
喉が潰れたけども泣いた。


頭の中がぐちゃぐちゃになって、何も考えられなかった。
死にたくなった。

93 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:15:21.35 ID:Gs5E0ErGO
ノハ )


私が泣き止んだ時には、太陽はすでに沈んでいた。


夜風が冷たかった。

どうでもよかった。

風でざわめく木の葉がうるさかった。

どうでもよかった。

星がきれいだった。

どうでもよかった。



家を追い出された。




どうでもよかった。

94 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 00:17:08.20 ID:Gs5E0ErGO
それでも私は生きていた。



どうでもよかった。




何もかもがどうでもよく感じた。



そんな私を現実に引き戻したのは、アラマキの言葉だった。


/ ,' 3『またいつでも来て下さいね』


ノハ )(そうだ……まだ私には帰る場所がある……)



崩壊しかけていた『心』がアラマキのおかげで、ギリギリその形を保った。

もしあの孤児院がなかったら……私は今こうやってギコと話してなかったかもね。
100 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 01:02:36.88 ID:Gs5E0ErGO
ノハ )「……」

/ ,' 3「おや……。……お帰りなさい。さぁ、もうすぐ夕飯ですよ」



孤児院に戻ったら、アラマキが『いつも通り』迎えてくれた。

きっと私に何があったか察したんだと思う。

『からっぽ』の私と

『いつも通り』の夕飯。

『いつも通り』のメンバー。




その『いつも通り』の風景が壊れかけた心を優しく癒してくれた。



私の『いつも通り』は全てあの孤児院での生活の中にあった。

101 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 01:05:10.01 ID:Gs5E0ErGO
ちびっ子達のケンカ、それを宥めるオトジャ。
私によくわからないことを言ってくるアニジャ、それをぶん殴るオトジャ。

そして言い争いを始める二人を眺めて笑う私とアラマキ。



少なくとも私の『元』家族よりは家族らしい生活。
12年間、ほとんど父のこと一色しかなかった思い出のフォルダは、
あの孤児院での日々ですごく色鮮やかなものになった。



ここが自分の居場所なんだって思えた。
ここが自分の『家』なんだって思えた。



そして私は本物の家族の事を心の奥底に封じ込めたんだ。



父のことだけを残して……ね。
103 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 01:08:23.57 ID:Gs5E0ErGO
18歳の誕生日。
アラマキは私に内緒で誕生日パーティーを開いてくれた。

それは同時に、私とアニジャとオトジャのお別れ会でもあった。



アニジャとオトジャは冒険者になる夢があった。
しかし、成年してもずっと孤児院に残って子供達の世話をいた。


『たたでさえ人手の少ない孤児院なんだ。俺らが抜けたらやっていけないだろ』
オトジャはそう言っていた。

『こんなロリっ子の宝庫から抜け出すわけないだろ!?』
アニジャはこう言って、すぐにオトジャにぶん殴られた。


二人ともあの孤児院の事が大好きだったんだ。
だから残る決意をしていた。


でも、アラマキはそんな二人に『自分の好きな事をやりなさい。子供達の事は私に任せなさい』と言って聞かせた。

確か、そのあとアニジャが『そんな老体に任せられないな』って言ったんだ。
そしたら突然アニジャが吹っ飛んで、壁に激突した。
オトジャと私がポカンとしていると、アラマキは笑いながら『ただの老いぼれだと思わないほうがいいですよ』と言った。

ちょっと怖かったな。

104 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 01:12:57.48 ID:Gs5E0ErGO
そんなことがあって、アニジャとオトジャは昔からの夢だった冒険者を目指すことにしたんだ。


私は18歳になったら精霊使いの試験を受けて、合格したら旅に出ると決めていから、
アラマキに吹っ飛ばされることもなかった。



(▼Д・)「ヒーちゃん誕生日おめでとう!」

(´・∀・`)「おめでとう!」

( ・`ー・´)「ヒーちゃんおめでとう!」

( ・`ー・´) + キリッ

ノハ*゚听)「みんな……ありがとう!私は……私は……」

ノハ*;;)「嬉しいぞぉぉぉぉぉぉ!!」

(/Д^)「あははー。ヒーちゃんおおげさだよー」

( ・`ー・´)ノ□「はい、ハンケチ」

( ・`ー・´) + キリッ

(´・∀・`)(まさしうぜぇ……)

105 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 01:18:03.70 ID:Gs5E0ErGO
みんなに誕生日を祝われて、嬉しくて泣いてしまった。
おおげさだと言われたけど、仕方がなかった。

もうすぐこの優しい子達ともお別れしなきゃいけないと考えたら涙が止まらなかった。



もちろん、その事を子供達は知らない。
言ったらきっと悲しそうな顔をすると思ったから。
私やアニジャ達の決意が鈍ると思ったから。




ノハ*゚听)「よぉぉぉーーっし!みんな、鬼ごっこやるぞぉぉぉーー!表出ろぉぉぉぉぉぉ!!」

(*´・∀・`)*・Д・)・`ー・´)「「わぁーい!!」」



( ・`ー・´) + キリッ

(#´・∀・`)「早く来いよ」

106 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 01:20:06.46 ID:Gs5E0ErGO
そして精霊祭の時……。
私はまずアラマキの姿を探した。
ここまで育ててくれたお礼を言いたかったからだ。

しかしアラマキはどこにもいなかった。



ノパ听)「なぁ、アラマキ知らないか?」

( ・`ー・´)「今日は用事があるとかで朝早くからどこかに行っちゃったよ」


( ・`ー・´) + キリッ


ノパ听)「そうか……」

( ・`ー・´)「ねぇ、ヒーちゃん」

ノパ听)「んー?どうした?」

( ・`ー・´)「今日でヒーちゃんとお別れなんだよね?アラマキが言ってたよ」

ノパ听)「……。うん」

( ・`ー・´)「そっか。また帰ってくるよね?」

ノパ听)「うん。いつか帰ってくるよ」

107 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 01:22:37.94 ID:Gs5E0ErGO
( ・`ー・´)「ホントだな!約束だからな!」

ノハ^竸)「おう。約束だ。……じゃあ私はそろそろ行かなきゃいけないから」

( ・`ー・´)「おう!いってらっしゃい!絶対また帰って来てね!」

ノハ^竸)「うん。バイバイ」


( ・`ー・´)「……約束だかんな」

( ;`Д;´)「約束……だかんな」


私は背中越しにまさしが泣いているのがわかった。
この孤児院で一番生意気で、一番プライドが高い子だったまさしが泣いていたんだ。

私ももちろん泣いた。
胸がぎゅうーっと締め付けられる感じがした。

でも振り返らなかった。
振り返ったら心が揺らいでしまうから。



私は少し早足で孤児院から出た。
孤児院から出たら駆け足でバス停へ向かった。
119 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:04:00.31 ID:Gs5E0ErGO
ノハ; )「はぁ……はぁ……」


バス停に着いた私は、とりあえず呼吸をととのえた。
次に涙を拭いて、自分に気合いを入れた。


ノパ听)(私は……精霊使いになるんだ!)

ノハ--)(みんなありがとう……。私……頑張るから……!!)

そして、バスに乗り込み、試験会場へ向かった……。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜


ノパ听)「あとはギコの知ってる通りだよ」

ノハ--)「それにしても筆記試験の試験官がアラマキだったことには驚いたなぁ……」

(;-Д-)(あの寝てた試験官か……)

120 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:06:35.72 ID:Gs5E0ErGO
俺は思わぬ形でヒートの過去を知ることになった。
おまけにヒートの心の傷のことを知ってしまった。


(,,゚Д゚)「……おまえの過去のことはわかった。……でもなんで俺達のパーティーから離れる必要があるんだ?」

ノパ听)「……私は……」


ノハ )「まだ『本物の』家族と『仲直り』してないんだ」


ノパ听)「家族とも仲直りできないのに、ハインと仲直りできるわけないじゃんか」


(,,-Д-)「そう……か」



ヒートの言いたいことはわかった。
『理由』もわかった。


(,,-Д-)「……仲直りしたら、帰ってくるんだな?」

ノパ听)「うん」
122 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:08:51.25 ID:Gs5E0ErGO
(,,-Д-)「……ヒートが帰ってくるまで、ここで待ってるわけにはいかないが、いいか?」

ノパ听)「うん」

(,,-Д-)「一人で大丈夫か?」

ノパ听)「……一人じゃないもん」

(,,-Д゚)「……えっ?」

ノパ听)「キマイラと戦ってるときにわかった。
私はみんなに支えられてる。
みんなと一緒じゃなくても、私はみんなと一緒なんだって」

(,,-Д-)「……そっか」


(,,゚Д゚)「絶対また会えるんだな?」

ノパ听)「うん」

(,,゚Д゚)「絶対だぞ」

ノパ听)「うん」

(,,゚Д゚)「本当に、絶対だぞ」

ノハ;゚听)「う……うん」

123 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:11:10.00 ID:Gs5E0ErGO
(,,-Д-)「なら……いい」


ヒートがいなくなるのはすごく寂しいことだ。
だけどこれは彼女の問題であって、俺がどうこう言えることではない。
それに彼女は絶対に帰ってくると言ってくれた。


……なら、十分じゃないか。


(,, Д )「絶対……だぞ……」


ノパ听)「……ギコ?」


(,, Д )「……泣いてねぇぞ」


ノパ听)




ノハ^竸)
125 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:12:36.58 ID:Gs5E0ErGO









チュ
ノハ*^ ), Д )









∩;゚Д゚)「な……っ!?」


ノハ*^竸)「へへ……」


∩;゚Д゚)「な、何を突然!?」

126 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:15:42.54 ID:Gs5E0ErGO
ノハ*゚ー゚)「約束」

∩;゚Д゚)「ほぇ!?」

ノハ*^ー^)「絶対帰ってくるから」

∩,゚Д゚)「……」





……それから俺はヒートに何も聞かなかった。
理由も確証もないが、ヒートは必ず帰ってくると確信が持てたからだ。


(,,゚Д゚)「金はあるな?最低限の水と食料も持ったな?地図は大丈夫か?」

ノパ听)「うん。大丈夫だよ」

(;゚Д゚)「知らないおじさんについていくなよ。変なキノコとか拾い食いするなよ。あと寝るときにはちゃんと火を焚くんだぞ」

ノハ;゚听)「おー……。お母さんみたいだな……」


( ;ω;)「おーん!おーん!」

(゚Д゚,,)「ブーンは早く泣き止め」
128 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:17:45.83 ID:Gs5E0ErGO
( ;ω;)「いやだおー!寂しいおー!」

ノパ听)「ブーン……」

(;-Д゚)「あのな、ブーン。今生の別れじゃないんだから泣くこたねぇだろ」

ノパ听)「ほぉー。ギコもさっき泣いてたよなぁぁぁ!?」

(;゚Д゚)「泣いてねぇっての!」


( ;ω;)「おーん!おーん!」

(;゚Д゚)「泣き止めっての!」


ノパ听)「……なぁブーン」

( ;ω;)「……お?」

ノパー゚)「私はブーンに笑って見送って欲しいな」

( ;ω;)「お……」

( うωと)グシグシ

( ^ω^)「おっ!!」

129 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:19:35.60 ID:Gs5E0ErGO
ノハ^竸)「よし、エライエライ」

( ^ω^)「おっ!!泣くのはヒートを見送った後にするお!」

(,,゚Д゚)(ヒート……。変わったな)


ちょっと前まではすごい子供っぽかったが、今のヒートは少し大人びた感じがした。


(,,-Д-)(これなら……安心できるかな)




ノパ听)「じゃあ……そろそろ行くよ」

(,,゚Д゚)「……気をつけろよ」

ノハ^竸)「うん」


ノパ听)「じゃあ……」




ノハ*゚听)「行ってきまああぁぁぁぁす!!!」

130 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:22:10.01 ID:Gs5E0ErGO
……


( ^ω^)「……行っちゃったお」

(,,゚Д゚)「……あぁ」

( ^ω^)「もう泣いてもいいかお?」

(,,゚Д゚)「……好きにしな」

( ^ω^)「……」

(,,-Д゚)「なんだ。泣かねえのかよ」

( ^ω^)「ギコこそ」

(,,゚Д゚)「俺は泣かねえよ?」





(,,-Д-)「だって……」
135 :代理:2009/07/27(月) 02:36:50.87 ID:LGIKyvG70












「俺達はみんな、いつも一緒なんだから」




〜第一章 完〜
141 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:57:51.32 ID:Gs5E0ErGO
無いなら寝る

猿死ね


川 ゚ -゚)「今回出番なしとはどういうことだ」


猿死ね
140 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/07/27(月) 02:57:37.91 ID:P9OdeZoQO
ドクオの出番は…?
142 : ◆4br39AOU.g :2009/07/27(月) 02:59:48.16 ID:Gs5E0ErGO
>>140

('A`)「なんと!次回は僕が出ます!」

('A`)「今度こそ精霊使いになってやんだかんな!」
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