第八話
3 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 21:33:38.38 ID:5xP1DJZQO
〜これまでの主な登場人物&精霊〜

(,,゚Д゚) ギコ=モナルド 人
元素 風
装備 ロングソード 銀の胸当て
父親を探すために精霊界を目指している青年。何かと不器用なムッツリスケベ。ツッコミ担当。今回出番ないんだ。

( ^ω^) ブーン 精霊
元素 風
装備 淡緑色のツナギ 風の宝玉の欠片
ギコの精霊。語尾に「〜お」とつける白い豚な精霊。だが、癒し系。風呂好き。


ノパ听) ヒート=スナオ 人
元素 火
装備 ハルバード 鋼の胸当て
なんとなくギコの旅について来た元気のよい女の子。
過去に何かあったみたいだが詳細不明。おっぱいにはこんにゃくが詰まってると思っていた。

从 ゚∀从 ハインリッヒ 精霊
元素 火
装備 レザーコート
ヒートの精霊。ちいさいくせにどこか大人びた雰囲気がある。しかし性格は中学生並。寝起き悪し。チキン。

( ・∀・) モララー=S=ファウス 人
元素 水
装備 ダガー 白い服
高価な機材をぶっ壊し、ロビー城の精霊研究施設をクビになった青年。たまにキレる。

4 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 21:37:42.94 ID:5xP1DJZQO
川 ゚ -゚) クール 精霊
元素 水
装備 水色のドレス
モララーの世話をするのが面倒でしょうがない。この物語のヒロインらしい。キャラ崩壊注意。

('A`) ドクオ=マダチェリー 人(?)
元素 ???
装備 ロングボウ ただの服 不細工な顔
VIP村に住む元狩人。今は精霊使いを目指しているが、今年で三浪目の29歳童貞。
かわいい女の子型の精霊とあんなことやこんなことをしたいらしい。

( <●><●>) ワカッテマス=アンダスト(ドルガルド?) ???
元素 地
装備 ただの服
ギコが精霊使いの試験を受けた時の試験官。詳細不明。

( ΦωΦ) ロマネスク=スギウラ 人
元素 風
装備 大剣 皮の服
突然ギコを襲ったおっさん。元ラウンジの傭兵。『闇』にさらわれたぽろろを助けるべく旅をしている。

从'ー'从 ワタナベ 精霊
元素 風
装備 白のワンピース
ロマネスクの精霊。ブーンの知り合い。なんかのんびりとしている。
6 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 21:41:18.61 ID:5xP1DJZQO
(゚、゚トソン トソン=ツムラ 人
元素 雷
装備 レイピア トライデント ラウンジの兵服
元ラウンジの傭兵でロマネスクの仕事仲間。通称『雷神』。ロマネスクを追って、ラウンジを去ったらしい。

<_プー゚)フ エクスト 精霊
元素 雷
トソンの精霊で、バカ二号。座右の銘は『成せばなる』。詳細不明。

ζ(゚ー゚*ζ デレ(エデン?) ???
元素 光
装備 ???
時々ギコに夢を見せていた精霊(?)詳細不明。

  _
( ゚∀゚) ジョルジュ(イグニール?) ???
元素 ???
装備 ???
おっぱいに触れることで相手の心を見ることができる。詳細不明。

7 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 21:45:13.31 ID:5xP1DJZQO
第八話 〜絆〜


クエスト屋……


(;・∀・)「えぇ!?本当ですか?」

( ∴)「ああ、本当だよ。赤髪の女の子ならこのクエストを受けてったよ」

(;・∀・)(ギコの言った通りヒートはクエスト屋に来たんだ……。いや、そんなこと問題じゃない!)

(;・∀・)「この村の詳しい場所を教えてください!」

( ∴)「あー……ちょっと待ってな。地図取ってくるから」

受付の男が部屋の奥に姿を消した。
一人になったモララーは落ち着きがなく、
左手親指の爪を噛んでいた。

(;・∀・)(キマイラだって……!?ヒート一人で敵うわけないだろう!!
なんでこんなクエストを受けたんだよ!)

(;・∀・)(相手がキマイラとなるとのんびりしてられないな……。
早くロマネスクさん達と合流しないと!!)

8 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 21:49:42.19 ID:5xP1DJZQO
( ∴)「ほら、兄ちゃん。地図あったぞ」

(;・∀・)「あぁ、ありがとうございます!」

モララーは受付の人の手から少々乱暴に地図を受け取ると走ってクエスト屋から出て行った。

(;・∀・)(急いでみんなと合流しないと!!)

モララーは走る。
ロマネスク達のもとへ。
僅かに感じるクーの気配を辿りながら……。


・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


ノパ听)「……」

ヒートは一点を凝視して立っていた。
また、ヒートの見つめる先にいる生物もヒートの方を見て動かずにいた。

ノパ听)「えーと……ライオン?……んなわけないか」

ノハ;゚听)「これがキマイラ……?デカイなー……」
10 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 21:52:41.13 ID:5xP1DJZQO
キマイラの目線はヒートよりも高く、両前足から覗く巨大な爪はまるでナイフのようだった。


ノハ;゚听)(あんなのに引っ掻かれたらひとたまりもないなー……)

ハルバードを構え、
いつ敵が動き出しても反応できるように神経を研ぎ澄ます。

キマイラはその大きな口から涎を垂らしながら、ヒートにゆっくりと近づいてきた。

ヒートはキマイラと一定の間合いを取り、
キマイラの一挙動一投足に注意を払う。


ノパ听)(一撃でも喰らったらアウトだ……。
集中しないと……)

沈黙が続く。
両者ともまだ目立った動きを見せていない。

そして、ついにキマイラが動いた。


「ウォオォォオォォォォオオォォォオォオォォ!!!!」
13 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 21:56:03.72 ID:5xP1DJZQO
ノハ;-听)「!!」

突然の咆哮。
ヒートは思わず耳を塞いだ。
だがそれでも鼓膜に振動が伝わる。

咆哮とともに四方に風圧が飛ぶ。
それは土埃を舞い上げ、ヒートに襲い掛かった。

思わず後退するヒート。
体のバランスが崩れ、膝を折る。

ノハ;-听)(うっ……。吠えただけなのにこんな衝撃がくるなんて……)

土埃のむこうで光る眼光。
二つの目玉が自分のもとに転がり込んできた獲物を狙う。


ヒートは体勢を立て直すべく立ち上がる。
そして、もう一度ハルバードを構えた。


……膝が笑っている。
ヒートは早くも逃げ出したい衝動にかられてしまった。

14 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 21:59:22.03 ID:5xP1DJZQO
旅に出立ての時ならこんなことにはならなかっただろう。
あの時はまだ自分と敵の力量もわきまえず、
ただ愚直に突っ込んで行くことができた。

だが、いつの間にか自分の力量を知り、
敵に負ける事を……



……仲間に醜態を晒すことを怖れるようになった。


ノパ听)(来る!)

キマイラが姿勢を低くし、飛び掛かろうと身構える。
多くの肉食獣がする構えと同じだ。

ノパ听)(どこに避けようか……)

こんなデカブツの攻撃をハルバード一本で防ぐことは不可能。
故に選択肢は回避だけとなる。

避ける方向は大まかに分けて五つ、
ヒートから見て前、後ろ、右、左、上だ。
16 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:03:25.28 ID:5xP1DJZQO
今回の場合、ヒート自身の跳躍力と敵の大きさを考えれば上が除外される。
また、敵の攻撃の勢いによっては後ろに回避するのは危険だ。

それは前も同様。
敵のいる方向への回避は上手くいけば相手の背後を取ることができる。
だが失敗すれば敵の攻撃をモロに受けることになってしまう。

つまり、前後方向の回避はまだ敵の攻撃パターンを見ていないため、避けるべきである。


そうなると残るのは左右方向への回避だ。
ヒートの利き腕は右であるから、
回避してから攻撃に転じるまでのムラを省くには右に回避するのが定石である。

ノパ听)(よし……右だな!)


キマイラが跳躍する。
綺麗な放物線を描きながらその爪は、その牙は、
ヒートに襲い掛かった。

ヒートはできるだけキマイラを引き付けてから右方向へローリングした。

ノハ#゚听)「でやぁ!!」

そしてすぐさま振り返り、ハルバードを横薙ぎに振るった。

17 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:06:26.84 ID:5xP1DJZQO
ガスッ、という音がしてキマイラの黒っぽい毛が数本舞う。

……ただ、それだけだった。


ノハ;゚听)「おぉ!?」

ハルバードを持つ手が痺れる。
まるで岩を叩いたような感触だ。

キマイラの体に刃は届かなかった。
その体は堅い毛により守られていたからだ。


堅い毛を幾重にも重ねた毛皮はまさに鎧と呼ぶに相応しい程の強度だった。


ノハ;゚听)「くっ……!」

ハルバードを構え直し、急いでキマイラの間合いから離れる。
両腕はまだ痺れていた。

ノハ;゚听)(どうしよう……)
19 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:09:23.72 ID:5xP1DJZQO
キマイラの体を斬ることはヒートの力では敵わなかった。
つまり攻撃手段が一つ減ったということだ。

幸いヒートの武器はハルバード。
斧のついた『槍』である。

まだ『槍』の機能がのこっているのだ。


ノパ听)(そうだ……。斬れないなら貫けばいい!)

ハルバードを少し短めに持つ。
そうしないと満足に刺突の動作が行えないからだ。

キマイラはもう一度低い姿勢をとる。
恐らくさっきと同じ攻撃だろう。

ノパ听)(なら……!)

……相手の勢いも利用できる。
キマイラが飛び掛かって来た時に槍を突き出せば、
キマイラ自身の体重が相乗して相当のダメージを与えられるだろう。

20 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:12:08.63 ID:5xP1DJZQO
ノハ;゚听)(だけど……できるのか?そんなこと……)

頬を汗が伝う。

日は少しかげってきているが、それでもまだ暑いはずだ。
それなのに、戦いが始まってからヒートはずっと寒気に襲われていた。



……怖いのだ。
目の前にいる巨大な獣が……。
ジワジワと近づいてくる死の足音が……。



しかし、今すぐこの場から逃げ出そうという気は起きなかった。


ノパ听)(証明するんだ……私はいらない子じゃないって……!!)

何度目かわからないフレーズを心の中で呟く。
すると、ハルバードを握る両の腕に自然と力が篭った。
22 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:16:34.77 ID:5xP1DJZQO
キマイラが跳躍する。
ヒートがハルバードを構える。

キマイラのガラス玉のような目がヒートを睨みつけた。
一瞬、ヒートの体がこわばる。


ノハ; )(怖くない……怖くない……)

キマイラがヒートに向かって牙を剥いた。
その狙いは武器を握る右腕だ。

ヒートの腕を食いちぎらんと大口を開けた。



ノハ )「お前なんか……」





ノハ#゚听)「怖くない!!」


……ヒートはハルバードをキマイラの口目掛けて突き出した。

23 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:19:27.79 ID:5xP1DJZQO
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

時間少し戻ってハイン達……


从; ∀从「はぁ……はぁ……」



从; ∀从「ヒィ゙ーーーードォ゙ォォ゙ーーー!!」


砂漠にハインの声が響く。

この乾燥した地で何度も叫んだのだろう。
その声はすでにガラガラだった。

(;^ω^)「ハイン。無理しちゃダメだお。喉潰れるお」

从; ∀从「うる゙せぇ゙……。クー、水くれ゙」

川 ゚ -゚)「私は便利な給水機か」
25 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:23:16.00 ID:5xP1DJZQO
川 ゚ -゚)「しかし……。ヒートの気配が辿れなくなったというのは……」

( ^ω^)「お?」


从; ∀从「ヒート!!ヒィ゙ーートォォ゙」


川 ゚ -゚)「あいつの精神状況が問題だな」

(;^ω^)「おー……」


最初はハインがヒートの気配を辿り、着実にヒートのいる方向へと進んでいた。
前に言ったかも知れないが、精霊と精霊使いは非常に密接な関係にある。

そのためどれだけ遠くに離れていても互いの位置をある程度は把握することができるのだ。



……本来ならば。


从; ∀从(くそ……ヒートの奴……どこにいるんだよ!!)
27 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:26:28.25 ID:5xP1DJZQO
川 ゚ -゚)「それよりも……よかったのか?」

( ^ω^)「何がだお?」

川 ゚ -゚)「モララーをギコのところに行かせて……。お前が行けばよかったのに」

( ^ω^)「……そりゃあ行きたかったお。でも、今はそれどころじゃないお」

川 ゚ -゚)「そうか……。しかし、ブーンが『ギコが起きたお!』と言った時は驚いた。
予想以上に回復が早かったからな」

(*^ω^)「おっ!ギコは強い子だお!」

川 ゚ー゚)「……そうだな」

クーは軽く微笑み、ブーンの頭の上にポン、と手を置いた。
はたから見れば二人はまるで姉弟のようで、
とてもほのぼのとしたものだった。



……こんな状況でなければ、の話だが。


从; ∀从「はぁ……はぁ……ヒィ゙ィ゙ィートォォ゙ー!!」
29 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:29:21.68 ID:5xP1DJZQO
川 ゚ -゚)「おい、ハイン。いい加減にしないと本当に喉が潰れるぞ」

从; ∀从「うる゙……せぇ゙……!!水……!」

川 ゚ -゚)「また飲むのか……。お前に取って水は害毒でしかないのに」

(;^ω^)「そうだお。火は水かけたら消えちゃうお」

从; ∀从「仕方ね゙ぇ゙だろ゙!喉がガラカラ゙で声がでね゙ぇん゙だから゙」

川 ゚ -゚)「なら叫ぶのをやめろ」

从; ∀从「……いや゙だ」

(;^ω^)「……」

川#゚ -゚)「お前な……お前が無茶したとこr(#`ω´)「ヒィィィィーーートォォォーーー!!」

川;゚ -゚)从;゚∀从「!?」

(;^ω^)「……けほ。ハインはちょっと落ち着くお!そうすればまたヒートの居場所がわかるだろうし……。
だからその間はブーンがヒートの名前を呼び続けるお!」

从;゚∀从「ブ……ン。お゙ま゙え……」

(#`ω´)「ヒィィーートォォォーーー!!いたら返事するおぉぉーーー!!」

30 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:32:34.45 ID:5xP1DJZQO
川 ゚ー゚)「……ブーンが頑張るなら私も頑張らないといけないな」

从;゚∀从「クー゙……」

川 ゚ -゚)「お前はしばらく大人しくしてろ。気持ちが落ち着けばヒートの居場所もわかるだろう」

从;-∀从「あ゙ぁ゙……すま゙ねぇ゙……」



……砂漠に二人の精霊の声が響き渡る。
しかし、その声はヒートに届くことはなかった……。


(;ΦωΦ)「……ったく。あの嬢ちゃんにも困ったもんだぜ」

(゚、゚;トソン「まったくです」

(;ΦωΦ)「いつもならギコがあいつのブレーキ役になってるんだが……」

(゚、゚;トソン「今回の原因は彼にあるらしいですからね」

(;ΦωΦ)「ブレーキ役がアクセル踏んでどうすんだよ……」

(゚、゚;トソン「ギコに直接の原因はありません。彼を責めないで下さい」

(;ΦωΦ)「いや、責めてないけどね」
33 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:35:20.41 ID:5xP1DJZQO
( ΦωΦ)「それよりワタナベ。風はなんて言ってる?」

从;'ー'从「ううん。……何も言ってくれない」

<_プД゚)フ「なんだそれ。ひねくれてんなぁ」

(゚、゚トソン「砂漠の風ですからね」

从'ー'从「いや、そういうんじゃなくて……。なんと言うか感情がないみたいで……」

( ΦωΦ)「砂漠の風だからな」

<_プー゚)フ「砂漠の風だもんな」

(゚、゚トソン「砂漠の風ですからね」


从'ー'从(砂漠の風ってそういうものなんだ……)



( ΦωΦ)「とにかく、だ」

( ΦωΦ)「ワタナベが風の声を聞けない以上、嬢ちゃんの手掛かりは全くないっつうわけだな」

(-、-;トソン「……ですね」

34 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:38:28.48 ID:5xP1DJZQO
( ΦωΦ)「手掛かりがないと探し用がないぞ……」

(゚、゚トソン「そんなことないでしょう?頭を使ってもダメなら足を使えばよいだけです」

( ΦωΦ)「足……か。せめて嬢ちゃんがどっちに行ったかわかればなぁ……」

(゚、゚トソン「では、何人かに別れますか?」

( ΦωΦ)「いや、ダメだ。お互いの位置を確認する術がない以上バラバラになるのは危険すぎる
それに、いつモララーが戻ってくるかわからないからな」

(-、-;トソン「ああ……そうでしたね」

がっくりとうなだれるトソンを見て、ロマネスクが大きなため息をついた。
確かに、何人かに別れてヒートを探すのは効率的だ。

だが、それによってたとえヒートを見つけることができたとしても、
仲間と連絡をとる手段がないため、別の人が迷子になりかねない。


( ΦωΦ)「さて……。どうしたものか……」

(゚、゚トソン「では、今はモララーの帰りを待ちましょう。
彼が戻ってこないと私達も移動できませんから」

( ΦωΦ)「……そうだな」

35 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:41:38.55 ID:5xP1DJZQO
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


ノハ;゚听)「ぐぅっ……」

左腕を押さえ、キマイラを見据えるヒート。
ハルバードはキマイラの足元に落ちている。



どうしてこうなったか。
あの時、ヒートは飛び掛かってきたキマイラの顔面に向かって突きを繰り出した。

が、
キマイラはその槍頭に噛み付き、ヒートの攻撃を防いだ。

ヒートは力づくで押しきろうとするがハルバードは全く動かず。
それどころかキマイラの体重により、それを持つことすら困難な状態になった。

キマイラに攻撃するのを諦め、ハルバードを手放し、逃げるしかない。
そう判断するタイミングを見誤り、ヒートは逃げるのが一瞬遅れた。

そのためハルバードから手を離し、横に回避しようとしたところでキマイラの攻撃を受けてしまったのだ。

36 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:44:26.02 ID:5xP1DJZQO
ノハ;゚听)(よかった……折れてはないみたいだ)

左手を開いたり握ったりして確認した。
出血はひどいが骨に異常はないようだ。

しかし折れてないもののその傷は深い。
しばらくまともに動いてくれないだろう。

三本の痛々しい爪痕が左の肩から肘にかけて伸びているのを見て、
「この傷は一生残っちゃうかなぁ」と、苦笑いした。


一方のキマイラはすでに攻撃態勢に入っている。
だが、今までの構えとは少し違う感じがした。


ノパ听)(なんだ……?)


左腕をかばいながら、十分な間合いを取る。
ハルバードがない以上、先ほどのようなカウンター攻撃はできない。

これからどう戦っていこうか考えていると、
突然、キマイラが吠えた。
38 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:47:16.38 ID:5xP1DJZQO
「ウォォオォオォォオオォォオォオオオォォォ!!!」


ノハ;゚听)「……っく!」


ビリビリと空気が震える。
キマイラから伝わってくる強大な『力』に全身の筋肉が緊張した。

咆哮が終わると、キマイラはこちらを睨み、
炎のブレスを吐きだした。

紅く燃える炎がヒートに襲いかかる。


ノハ;゚听)「のぉっ!?」


ヒートは炎をギリギリで回避した。
炎のブレスはヒートの横を通り過ぎ、木に直撃。

木はあっという間に炭になってしまった。



ノハ;゚听)「なんて炎だ……」

39 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:50:20.47 ID:5xP1DJZQO
キマイラは間髪を入れずに再びブレスを吐く。
今度はそれを余裕を持って回避した。


ノハ;゚听)(この位置ならあのブレスを避けるのは容易だ……。
だけど……)

ノハ;゚听)(攻撃どころか武器の回収すら出来ないんだよなぁ……)

武器が回収できねばヒートがキマイラを倒す確率は皆無となる。

だからといって何の対策も無しにハルバードを拾いに行ったらやられるのは目に見えていた。


ノハ;゚听)(どうしよう……)


せめてハインがいれば……。
そう思った刹那だった。






『ああもう!あんたは一人じゃ何も出来ないのね!この役立たず!!』

『いい?お母様に叱られたくなければ大人しくしてることね。
……もっとも、あんたが一人でここまで来れる訳無いけど』
41 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:54:43.91 ID:5xP1DJZQO

ノハ; )「……っ!?」

フラッシュバックする幼い頃の記憶。
胸が締め付けられ、視界がぼやける。




胸の奥の黒い塊が大きくなる。




ノハ; )(ダメだ!思い出すな!!消えろ!消えろっ!!)





大きくなる黒い塊を無理矢理押さえ付ける。
フラッシュバックしてきる記憶を無理矢理、押さえ付けた。

42 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 22:57:31.87 ID:5xP1DJZQO
ノハ; )(大丈夫だ!私が一人でこいつをやっつけられれば私の居場所ができる!)


いまだに大きくなろうとする黒い塊を、ヒートの強い『意志』によって胸の奥に押し込んだ。


キマイラがブレスを吐く準備を整える。
ヒートは両拳をギュッと握り、キマイラ目掛けて走り出した。


ノハ# )「おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」


ヒートに向かって飛んでくる紅蓮の炎。
ギリギリでそれを躱すも、炎によって熱せられた空気が肌を焼く。

それでもキマイラの懐へ突っ込んだ。
キマイラはブレスを吐くのをやめ、右前足を振り上げる。

ヒートはその動きを確認すると、スピードを緩め、敵の攻撃に対応する準備をした。
そして、キマイラの間合いに入った瞬間、攻撃を避けるためにローリングする。

ついでにハルバードの回収も済ませた。


ノパ听)(よし!これで攻撃できる!)
44 :>>41してきる×→してくる〇 ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:01:03.80 ID:5xP1DJZQO
せっかくキマイラの間合いに入ったのだ。
ハルバードを回収しただけでは終われない。


こちらに振り返るキマイラ目掛け、まずは鉤爪状の部分を振り下ろす。

……狙いは目だ。


しかし、キマイラは眼前に迫る凶器に気づき、後方へ跳んだ。
結果、ヒートの攻撃は空振りに終わる。

しかも上にむかってハルバードを振り上げたため、ヒートの胴ががら空きになってしまった。

二つの眼光がその様子をとらえ、無防備な体に牙を剥かんと迫りくる。


ノハ ー )


だが、ヒートは避ける様子を見せない。
その表情には余裕の色すら伺える。

そして……キマイラがヒートの間合いに入った時、ヒートが動いた。

45 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:04:51.76 ID:5xP1DJZQO
ノハ#゚听)「くらえぇぇぇぇぇ!!」


ヒートの両腕に力が篭り、
頭上に高々と掲げられたハルバードを振り下ろす。


同時に、キマイラがヒートの脇腹に牙を立てた。
噛み付かれた部分から血が吹き出す。

一瞬ヒートの表情が苦痛で歪んだが、
すぐに笑みを浮かべた。


ノハ )「これでもう私の攻撃は避けられないな……!」


ヒートが振り下ろしたハルバードに遠心力が加わる。
普通ならこんな大振りの攻撃など当たるわけがない。


……だが、キマイラはヒートに噛み付いた。
そのため、この攻撃を避けることができないのだ。

46 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:07:44.65 ID:5xP1DJZQO
ノハ# )「『肉斬骨断』っっ!!!!」


『肉を斬らせて骨を断つ』


敵に自分の肉体を傷付けられても、敵にそれ以上のダメージを与えること。





ヒートの腕力に、遠心力、重力。
これらが加わったハルバードの一撃は、
先ほどまで傷をつけることすらできなかったキマイラの左前足を簡単に両断した。



「ガァアァアアアァァアアァアァァァ!!!?」


キマイラの断末魔の叫び声があたりに響く。
切断面からはおびただしい量の血が吹き出していた。

ヒートもキマイラに噛み付かれた傷をおさえる。
幸いなことに傷は浅い。
48 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:10:32.48 ID:5xP1DJZQO
ノハ;゚听)「やったか……?」


キマイラは三本の足でギリギリ立っているようだ。
あれではまともに動く事はできないだろう。

少し安心して胸を撫で下ろす。
そして一度大きく伸びをした。




……ヒートは知らないのだ。
手負いの獣の恐ろしさを……。




三本の足でバランスを取りながら、キマイラはヒートを睨む。

その目はまだ死んでいなかった。
口からは紅蓮の炎が漏れ、鋭く強靭な牙が覗いている。

残った右の前足からは尖った爪がその存在を主張していた。
50 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:13:53.81 ID:5xP1DJZQO




「ウガラァァラアァアァァァァァアアアア!!!!」


ノハ;゚听)「!?」


キマイラの咆哮。
天に向かって紅蓮の火柱があがる。

その音に驚いたヒートはハルバードを落としてしまった。

キマイラの血走った目がそれを捉え、ブレスを吐く。

慌ててハルバードを拾ったヒートの顔前に迫る、炎。


ノハ;゚听)(やばい!!)

身の危険を察し、即座に身を伏せる。
炎はヒートの服を焦がし、後ろへ抜けていった。

51 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:16:08.39 ID:5xP1DJZQO
ノハ;゚听)「まだ戦うつもりか……。なんてタフな奴だ」


キマイラと目が合った。
血走り、赤くなったその目には怒りの色しか感じられない。

最初の威風堂々とした雰囲気は消え、かわりにあるのは純粋な殺意だ。


ノパ听)(でも足が一本ないのだから倒すのは簡単だよな……?)

少し背中がヒリヒリするが問題ない。
ヒートはハルバードを構えようとする。



しかし、それは叶わなかった。


ノハ;>听)「あぐっ!?」


左腕に鋭い痛みが走る。

酷い傷だったのにも関わらず無理して使ったからだろうか。
動かすことができない。

52 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:19:09.22 ID:5xP1DJZQO
ノハ;゚听)「はは……。参ったな……。条件はこっちも同じか……」


両者とも腕を一本失った状態だ。
どちらが有利ということはない。
ただ、キマイラは炎のブレスによる遠距離攻撃ができるという面を考えれば、
ヒートが戦いづらい状況にあるのは明白だ。


ノハ;゚听)(右手だけじゃハルバードを振れないしなぁ……)


結構な質量のあるハルバードを片手で扱うなど、大の男でも難しいだろう。
まして、そんな状態でキマイラの剛毛に傷をつけることは不可能に等しい。


ノパ听)「さて……どうしようか」

軽く言ったものの、そこに余裕はない。
半分諦めたからこそでた言葉だ。

勝機は薄い。
勝つためにはキマイラに強烈な一撃をもう一発お見舞いするしかないが、
先ほど言ったように右腕一本でキマイラにダメージを与えることは困難を窮めるのだ。
54 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:23:50.58 ID:5xP1DJZQO
それに対し、キマイラにはまだヒートに致命傷を与える攻撃手段はいくつもある。



ノパ听)(でも……絶体絶命というわけでもなさそうだ)


キマイラは先ほどから全く移動するそぶりを見せない。
おそらく、切断された左足が原因だろう。


ノパ听)(いくら強い攻撃であっても当たらなかったら意味がない……。
自由に動けない状態で私に攻撃を与えることは難しいはず……!
)


攻撃手段は数多くあるが、自由に動けないキマイラ。
自由に動けるが有効な攻撃を与えることができないヒート。

キマイラが動けないのなら、相手の間合いに入らなければ怖いのは炎のブレスだけ。
今のヒートとキマイラの距離ならそれを避けるのは簡単だ。


しかし、相手の間合いに入らなければこちらもキマイラにダメージは与えられない。

まぁ相手の間合いに入ったとしても、ダメージは与えられないだろうが。
56 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:27:05.62 ID:5xP1DJZQO
ノパ听)(そうだとしても今さら逃げるわけにはいかない……)

ノハ--)(攻撃を与えることはできないけど……うまく立ち回れば攻撃を受けることもないんだ)



ノパ听)(今ならキマイラの後ろを簡単に取れるしな!)

ダメージを与えられる与えられないに関係なく、攻撃を加えるチャンスはいくつもある。

運がよければ結構なダメージを与えられるかもしれない。


ノパ听)(まずは尻尾を狙おう……)

尻尾なら片手でも切り落とせるはず。
それに、尻尾というのは獣系の魔物にとってバランスをとるのに必要不可欠な部分である。
尻尾がなければ直立できなくなる魔物だっているくらいだ。


ノパ听)(尻尾を切り落とせたら戦況が変わるかもしれないな……)

片手でハルバードを構え、キマイラを睨む。
たとえ左腕が使えなくとも、お前なんか怖くないといわんばかりに……

57 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:30:19.55 ID:5xP1DJZQO
一定の距離を保ったまま、キマイラの後ろへ回り込んだ。
だが、キマイラは動かない。


ノパ听)(もしかして全く動けないのか?)


そうだとすればこの勝負、ヒートの勝ちは確実だ。
キマイラの背後にいれば、ブレスもくらわないですむし、
あの爪で攻撃されることも、噛み付かれることもない。


ノパー゚)(これなら……勝てる!!)

勝利を確信して、突撃。
狙うは灰白色の尻尾だ。

一気に間を詰めて、ハルバードを振り上げる。
あとは、振り下ろすだけだが……

「シャアアア!!」

ノハ;゚听)「んなぁ!?」(尻尾が……!?)


突如、尻尾がヒートに襲い掛かった。
ハルバードを振り上げた右腕に、尻尾が噛み付く。

鋭い痛みがヒートを襲った。

58 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:33:25.37 ID:5xP1DJZQO
ノハ;-听)「うぐぅ……!」


右腕から血が流れ出す。
手首を使って、ハルバードで尻尾を切り付けようとすると、
尻尾は本体のところへ引っ込んだ。
当然、ハルバードは空を切る。


ノハ;゚听)「こいつ……動くぞ!」

キマイラの尻尾はただの尻尾ではない。
……そう、意志を持った大蛇なのだ。


ノハ;゚听)「毒とか持ってないよな……」


さっき噛まれてしまった右腕が心配だ。
もしあの蛇が毒を持っていたとしたら、
右腕も使えなくなって戦闘不能になってしまう。


ノハ;゚听)「この尻尾……簡単にはやっつけられそうにないな……」

59 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:36:24.63 ID:5xP1DJZQO
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


(;^ω^)「ヒィ゙ィ゙ィィドォ゙ォォォ゙ォェ゙フゥ゙ァ!!」

川 ゚ -゚)「ヒートー。どこだー」

从;゚∀从「おい、クー。お前本気で探す気ねーだろ」

川 ゚ -゚)「ふ……私は“クール”だからな」

从;-∀从「……ったく。ブーン一人に任せやがって。ブーンがかわいそうだと思わないのか?」

川 ゚ -゚)「思わん」

从;゚∀从(言い切りよった!)

(;^ω^)「クー゙……水くれ゙お゙」





……ブーン達はまだ砂漠で立ち往生していた。
ハインは大分落ち着きを取り戻したようだが、
まだヒートの気配を感じることはできないようだ。
61 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:40:58.71 ID:5xP1DJZQO
(;ΦωΦ)「お゙い゙お゙い゙ブー゙ン゙……びどい゙声じゃね゙ぇ゙が」

(゚、゚;トソン「あなたもね」

<_プД゚)フ「俺はどんだけ叫んでも声枯れねぇぞぉぉぉー!
ブーンもロマも情けねぇなぁぁぁ!!」

从'ー'从「エクストくんすご〜い。
伊達に普段から無駄にでかい声だしてないね〜」

<_フ;゚ー゚)フ「……それ、褒めてんのか?」



( ΦωΦ)「じがじ……モ゙ラ゙ラ゙ー゙の゙奴遅い゙な゙……」


クーから水を受け取り、一口飲んだ。
冷たい水が荒れた喉を冷やす。


( ΦωΦ)「あ゙ー゙。水が上手い゙」

(゚、゚;トソン「その声で喋らないで下さい。胸糞悪い」

(;ΦωΦ)「……」

62 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:43:45.00 ID:5xP1DJZQO
すでに日はすこしかげってきていた。
ヒートを探しにきてから大分時間が経つ。

みんな疲労が溜まっているようで、少なからず表情に出ていた。




……クー以外は。


从;゚∀从「なんでお前は汗一つかいてないんだよ」

川 ゚ -゚)「ほら、私は水の精霊じゃん?
自分のまわりの温度調節なんておちゃのこさいさいさ」

从;゚∀从「温度調節……ってまさか砂漠に来てからずっとか!?」

川 ゚ -゚)「馬鹿なことをいうな。この国に来てからずっとだ」

从;゚∀从「お前……馬鹿だろ」

川 ゚ -゚)「誰が馬鹿だ」

从;゚∀从「お前だお前」

63 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:47:02.10 ID:5xP1DJZQO
この世界で精霊が力を使うには、人間の力を借りなければならない。
つまり、クーが常に力を使い続けているということは、
同時にモララーも常に力を消費しているということである。


从;゚∀从「モララーのこと考えてんのか?」

川 ゚ -゚)「いや、あいつの体力なんて考えてない
どうせモララーだし」

从;゚∀从「今、そのモララーを待ってるですけど!」

川 ゚ -゚)「……」



(゚- ゚ 川「……」

从#゚∀从「こっちを見ろぉぉ!!」


川 ゚ -゚)「ま、大丈夫だろ。モララーだし」

从#゚∀从「その自信はどこからくるんだよ……」

川 ゚ -゚)「現に、ほら。もうすぐそこまで来てる」

从 ゚∀从「は?」
65 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:50:27.24 ID:5xP1DJZQO
(;^ω^)「おっ!?」

最初にその姿を発見したのはブーンだった。
……砂漠の向こうからフラフラになって歩いてくるモララーの姿を。


(li ∀ )「やぁ……みんな……」

(;^ω^)「モ、モ゙ラ゙ラー!?」

(;ΦωΦ)「ヷダナ゙ベ!!モラ゙ラ゙ーを゙!」

从;'ー'从「は、はい!」

(li ∀ )「とりあえず……水をくれない……?」

(;^ω^)「クー!水だお゙!!」

川 ゚ -゚)「お安いご用さ」



……モララーはかなり衰弱していた。
この暑い中、クーのせいで常に体力と精神力を浪費したにもかかわらず、
地図を片手に、仲間のために必死に走ってきたためだ。
67 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:54:39.38 ID:5xP1DJZQO
(li ∀ )「……ロマネスクさん……これ……地図……」

(;ΦωΦ)「なんだごれ゙は?」

(li・∀・)「ヒートは……クエストを受注してた。その地図のバッテンの村にいるはず……」

(li・∀・)「今、キマイラと戦ってるはずだから……はやく行かないとヒートが危ない……」

(;ΦωΦ)「「!!!」」(゚、゚;トソン

(;ΦωΦ)「キ、キマ゙イラ゙だと!?」

从;゚∀从「なんだよ……そんなにまずい相手なのか?」

(゚、゚;トソン「えぇ、まずい相手です」


(゚、゚;トソン「『魔獣キマイラ』。獅子の頭、山羊の胴体、蛇の尾を持つといわれる怪物。
獣系の魔物の中でも上位に位置する強敵です。
稀に翼を持つタイプがいて、そのタイプのキマイラだと……私でも敵うかどうか……」

(゚、゚;トソン「そうでなくとも今の彼女がまともに戦える相手じゃありません。
昨日から戦ってるとしたら彼女はもう……」

从; ∀从「やめろ!それ以上は言うな!!」

68 : ◆4br39AOU.g :2009/06/10(水) 23:57:55.53 ID:5xP1DJZQO
ハインが両耳を塞ぎ、首をぶんぶんと振った。

从; ∀从「ヒートはまだ生きてる!!変な事を考えさせるな!!」

(゚、゚;トソン「しかし……その可能性は……モガッ」

( ΦωΦ)「ツムラ。黙れ」

ロマネスクの右手がトソンの口を塞ぐ。
トソンはロマネスクを睨みつけるが、
ロマネスクはそんなこと気にせず空いた方の手でハインの頭を撫でた。

( ΦωΦ)「そうだ。ヒートはまだ無事だ。」

( ΦωΦ)「急ぐぞ。ヒートを助けないとな」


ヒートの居場所が判明した今、モタモタしてはいられない。
最初に駆け出したのはハインだった。
そして、一行はそれに続いて走り出した……。


・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

69 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:01:27.17 ID:06zWegGAO
ノパ听)「さて……どう戦おう……?」

目の前には、大蛇。
そいつは同時にキマイラの尻尾でもある。

この尻尾を切り落とせば、おそらくヒートの勝利は確実だ。


ノパ听)「勝つ……絶対に……!!」

もう恐怖心はほとんどない。
ただ目の前の敵を打ち負かすことだけに集中していた。

尻尾の大蛇はおそらく噛み付くことぐらいしか攻撃手段を持っていないはず。

なら、恐れる事はない。


ノパ听)(あんな蛇なんか……たたっきってやる!!)

ハルバードを大分短めに持つ。
少々持ちにくいが、こうでもしないと斬るという動作は行えないからだ。


ノハ#゚听)「行くぞ!!」

70 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:04:21.52 ID:06zWegGAO
キマイラに向かって駆け出すヒート。
それに対して大蛇はヒートに牙を剥く。


ノハ#゚听)「喰らえ!」

ヒートに噛み付こうとした大蛇の顔にハルバードを振り下ろす。

しかし、大蛇はそれをかわし、ハルバードは空を切った。

そしてヒートのバランスが崩れた隙に、大蛇がヒートの右腕に巻き付いた。


ノハ; )「う……うぁぁっ!?」


ギリギリと強い力で右腕が締め上げられる。
骨が軋んで、悲鳴をあげた。


カラン、とハルバードが地面に落ちる。
右腕に力が入らなくなった。
72 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:07:38.49 ID:06zWegGAO
ノハ; )(やめろ……右腕をやられたら……!!)


勝ち目はない。
両腕を使えない状態でキマイラと戦えるわけがないのだ。

締め付ける力はなおも強くなる。
皮膚が切れて、血が滲んだ。


ノハ; )「くそ!離せ……離せぇ!!」

無理矢理腕を抜こうとするが、びくともしない。
左腕が使えない今、ヒートの行動は限りなく制限されてしまった。


今のヒートにできるのは声を上げることと、


死の恐怖に怯えることだけだ。



ノハ; )「離せ……!離っ……せぇ!」

73 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:10:03.87 ID:06zWegGAO
その時だ。


キマイラがゆっくりとこちらを振り向く。
そして、目が合った。



「ウォォオォオオォオォォォオオオォォォォォォ!!!」


ノハ; )「ひっ……!」

キマイラの咆哮。
次、キマイラが何をしてくるかはわかっている。


炎のブレスを吐くのだろう。


木を、一瞬で炭に変えたあのブレスを。


ノハ;;)「あ……、うぁ……」
75 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:13:11.39 ID:06zWegGAO
ヒートを襲う死の恐怖。
膝はガクガクと震え、歯がガチガチと鳴り、涙が溢れ出る。



怖い……?



何が……?



死が……?



いや、違う……





ノハ;;)(ギコ、ハイン、ブーン、モララー、クー……。
みんなに会えなくなるのが怖いんだ……)

76 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:16:30.50 ID:06zWegGAO
私は紅蓮の炎に焼かれて灰になるのだろうか?

そうなったらお墓も作ってもらえないじゃないか。

ギコにはいろいろ迷惑かけた。

勝手について来ちゃってごめんね。

勝手な行動して迷惑かけてごめんね。

……きちんと謝れなくてごめんね。





(,,-Д゚)『いや、ちゃんと謝ってくれよ』

ノハ;听)「……へ?」


とうとう幻覚まで見えたか。
私ももうダメなのかなぁ……。
79 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:19:38.61 ID:06zWegGAO
(,,-Д-)『……ったく。いつまで泣いてんだよ。お前らしくない』

(,,゚Д゚)『笑えよ。炎使いさん?炎使いが炎にビビって泣いてたんじゃ話にならねーぞ?』


ノハ;听)「ぁ……う……」



ギコの幻影が消え、代わりに視界に入ったのはキマイラの顔。

大口を開けて炎のブレスを吐く準備をしていた。


ノハ;听)(私は……炎使い……)


ノパ听)(そう……炎使いなんだ……。なんで炎を怖がらないといけないんだ……?)


ノパ听)(怖がる必要なんかない!私は炎使いなんだ!!)



ヒートが見つけた、最後の希望の光。
自分は、幼少の頃からの夢だった精霊使いになったのだ。

今の自分の武器はハルバードだけではないはず。

80 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:23:50.82 ID:06zWegGAO
キマイラの喉の奥が光った。
ブレスがくる合図だ。

ヒートは口を真一文字に結んで目を閉じた。



「ウガラァアアァァァァアァアァアアァァアアアァ!!!」


咆哮とともに発生する炎。
それはあっという間にヒートを包んだ。



ノハ# )「うぉ……うぅ……」


身体中が熱い。
だがその中に苦痛はなかった。


ノハ# )「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


さらに身体が熱くなる。
キマイラはヒートの異変に気づいたのか、右腕に巻き付けていた尻尾を離した。

81 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:27:06.29 ID:06zWegGAO
紅蓮の炎が色を変え、深青に染まる。

キマイラは身の危険を感じ、慌てて逃げ出そうとした。
しかし、三本足ではうまくバランスがとれず、
すぐに転倒してしまった。

ヒートはその間にハルバードを回収する。
ヒートがハルバードに触れると、それは赤く発光した。



ノハ#゚听)「これで……っ!!終わりだぁぁぁぁぁ!!!」

キマイラにむかってハルバードを振り下ろす。
赤く光るハルバードはいとも簡単にキマイラの体を両断した。




「ウガァアアアァアアアアアアアアアァァァアアァァ!!!!」


キマイラの断末魔が砂漠の地に響き渡る。

胴体を両断されながらも生に執着する獣の姿を表したような……そんな叫び声だった。

82 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:30:44.40 ID:06zWegGAO
ノハ#゚听)「ハァ……ハァ……」

ヒートの体を包んでいた炎がゆっくりと消えていく。
それが消えると同時に緊張の糸がプツンと切れた。


ノハ;゚听)「ハァ〜……」

まず出たのは安堵のため息。

自分が今生きているのが信じられない。
ハルバードをその場に投げ捨て、座り込んだ。


ノパ听)「私は……勝ったんだな……」

ノハ*゚ー゚)「ふふっ。勝ったんだ」


続いて沸き上がってきたのは喜びだった。
自分は弱くない。
いらない子なんかではないと証明できたのだ。


ノハ*゚听)「私はギコ達と一緒に旅してもいいんだ!」

83 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:35:24.57 ID:06zWegGAO
自分の価値を見出だせた。
それがどうしようもなく嬉しくて、自然と気持ちが高ぶった。



ノパ听)「……ん?」

ヒートが立ち上がると、砂漠の方からこちらに向かってくる人影が見えた。

先頭にいるのは……ハインだ。


ノハ*゚听)「ハイン!!」

ヒートが手を振りながら駆け寄る。
だが、左腕はまだだらんと下げたままだった。

从;゚∀从「ヒート……!!」

ノハ*゚听)「ハイン!来てくれたのか!」

(;ΦωΦ)「ヒート……。よかった。無事みたいだな」

(゚、゚;トソン「一時はどうなることかと思いましたよ」

ノハ*゚听)「へへ……ごめんなさい」

84 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:38:11.83 ID:06zWegGAO
(;ΦωΦ)「いや、そんなことより……あのキマイラ。お前がやったのか?」

ノハ*゚ー゚)「うん!」

(゚、゚;トソン「えぇっ!?あなた一人でですか!?」

ノハ*゚听)「おう!ちょっと辛かったけど頑張ったぞー!」

(;ΦωΦ)「すげぇな……」

ノハ*゚ー゚)「どうだ!すごいだろ!」

ノハ*゚听)「なー!ハイ―――」







―――パァン!
87 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:40:55.31 ID:06zWegGAO
(;ΦωΦ)「な……!」


(゚、゚;トソン「ちょ……!」





ノハ#)听)「……え?」






从# ∀从⊃「……ふざ……けんな……!!」
89 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:42:28.63 ID:06zWegGAO
从# ∀从「お前の顔なんか二度と見たくない!!
俺は精霊界に帰らせてもらうぜ!!」


(;ΦωΦ)「ハ、ハイン!?」



ロマネスクが止めようとしたが、間に合わなかった。
ハインは光の粒子となり、虚空へと消えた。





ヒートはただその様子を茫然として眺めていた……。



第八話 〜完〜
91 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:45:52.46 ID:06zWegGAO
第八話は以上です
質問等あればどうぞ



('A`) ……最近忙がしすぎでやばい
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/06/11(木) 00:50:02.23 ID:WfV00Hkc0


ドクオの出番はまだですか?

95 : ◆4br39AOU.g :2009/06/11(木) 00:54:29.61 ID:06zWegGAO
>>94
('A`) 出番はまだですがいつかきっと主要キャラになってみせます
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