第二章 第二話後編
4 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 22:42:17.85 ID:ZIJ2oyxcO
〜これまでの主な登場人物&精霊〜

(,,゚Д゚) ギコ=モナルド 人
元素 風
装備 ロングソード 銀の胸当て ???
父親を探すために精霊界を目指している青年。何かと不器用なムッツリスケベ。ツッコミ担当。
技:疾風 ブーメラン 風布 癒しの風 つむじ風 竜巻 圧風

( ^ω^) ブーン 精霊
元素 風
装備 淡緑色のツナギ 風の宝玉の欠片
ギコの精霊。語尾に「〜お」とつける白い豚な精霊。だが、癒し系。風呂好き。


ノパ听) ヒート=スナオ 人
元素 火
装備 ハルバード 鋼の胸当て
なんとなくギコの旅について来た元気のよい女の子。現在サロン国
技:火弾 火炎弾 火炎 炎牙 炎爆  肉斬骨断

从 ゚∀从 ハインリッヒ 精霊
元素 火
装備 レザーコート
ヒートの精霊。ちいさいくせにどこか大人びた雰囲気がある。しかし性格は中学生並。寝起き悪し。現在強くなるため、精霊界に帰省中。

( ・∀・) モララー=S=ファウス 人
元素 水
装備 ダガー 白い服
高価な機材をぶっ壊し、ロビー城の精霊研究施設をクビになった青年。たまにキレる。
技:氷柱 氷塊 液化 水蛇 氷結 水壁 凍結 ヒール

5 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 22:45:05.92 ID:ZIJ2oyxcO
川 ゚ -゚) クール 精霊
元素 水
装備 水色のドレス
モララーの世話をするのが面倒でしょうがない。この物語のヒロインらしい。キャラ崩壊注意。

('A`) ドクオ=マダチェリー 人(?)
元素 光
装備 ロングボウ ただの服 不細工な顔
VIP村に住む元狩人。ついに念願の精霊使いになれたが、早くもツンの尻に敷かれている。
技:隼 影縫い セイントアロー 癒しの光

ξ゚听)ξ ツン 精霊
元素 光
装備 白のワンピース
ドクオの精霊。ドクオの事は嫌いじゃないという貴重な存在。ツンデレ。

(´<_` ) オトジャ=サスガ 人
元素 無
装備 魔銃『青龍』 革の鎧
ヒートの幼なじみで、よきお兄さん。冒険者であり、『流石兄弟』の『龍』ことまともな方。
技:炎砲、氷砲、土砲、雷砲、風砲

( ´_ゝ`) アニジャ=サスガ 人
元素 無
装備 魔銃『白虎』 革の鎧
ヒートの幼なじみで、よくないお兄さん。冒険者であり、『流石兄弟』の『虎』こと変態。
技:

6 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 22:47:37.25 ID:ZIJ2oyxcO
( <●><●>) ワカッテマス=アンダスト(ドルガルド?) ???
元素 地
装備 ただの服
ギコが精霊使いの試験を受けた時の試験官。詳細不明。

( ΦωΦ) ロマネスク=スギウラ 人
元素 風
装備 大剣 皮の服
突然ギコを襲ったおっさん。元ラウンジの傭兵。『闇』にさらわれたぽろろを助けるべく旅をしている。
技:疾風 鬼牙斬 鎌鼬 つむじ風 風斬りノ刃
シンクロ 『mode-緑翼』 『mode-風刃』 『mode-そよ風』 『mode-風神』

从'ー'从 ワタナベ 精霊
元素 風
装備 白のワンピース
ロマネスクの精霊。ブーンの知り合い。なんかのんびりとしている。

(゚、゚トソン トソン=ツムラ 人
元素 雷
装備 レイピア トライデント ラウンジの兵服
元ラウンジの傭兵でロマネスクの仕事仲間。通称『雷神』。ロマネスクを追って、ラウンジを去ったらしい。
技:迅雷 雷撃 稲妻 磁変 トールの雷
シンクロ 『mode-雷神』

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:49:55.41 ID:ZIJ2oyxcO
<_プー゚)フ エクスト 精霊
元素 雷
装備 なし
トソンの精霊で、バカ二号。座右の銘は『成せばなる』。詳細不明。

( ><) ビロード=F=ラウナジア 人
元素 ???
装備 ???
ラウンジ王国の心優しい王子。詳細不明
技:

(*‘ω‘*) ちんぽっぽ 精霊
元素 ???
装備 ???
ぽっぽ!詳細不明

ζ(゚ー゚*ζ デレ(エデン?) ???
元素 光
装備 ???
時々ギコに夢を見せていた精霊(?)詳細不明。
技:光の壁 最後の審判

  _
( ゚∀゚) ジョルジュ(イグニール?) ???
元素 火
装備 ???
おっぱいに触れなくても相手の心を見ることができる。人のおっぱいを勝手に触るのはいけないことです。詳細不明。

8 :>>7 酉忘れてた ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 22:52:17.72 ID:ZIJ2oyxcO
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

〜精霊界〜


精霊界の中心に位置する巨大な神殿。
その一室では二人の男が話をしていた。


N| "゚'` {"゚`lリ「……最近の『闇』の動きはどうだ」


(   )「精霊界では何も起きてない。ただ……人間界ではなにやら不穏な動きがあるらしい」


N| "゚'` {"゚`lリ「むぅ……。人間界だと対処しづらいな……」


(   )「一部の人間が『闇』と戦っているという話を聞いている。
人間界のことは人間に任せておけばいい」


片方の男が腰に差した細長い刀を抜き、その刀身を撫でながら答える。
長い髭が特徴的な男だった。

9 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 22:54:38.75 ID:ZIJ2oyxcO
N| "゚'` {"゚`lリ「しかし……」


(   )「それより、俺達は『闇』が人間界で準備している『何か』の対策を練っておくべきだ」


刀を鞘に収め、男が精霊神に歩み寄る。
一歩あるく度に身に纏った鎧がガチャガチャと音をたてた。


(   )「奴らの目的はあくまでも精霊界の征服だ。
人間界にも結局はその目的のために行っているはず。
だから人間の心配なんかする必要はない」


N| "゚'` {"゚`lリ「……もっともな意見だな。
だが、お前はいいのか?聞けば人間界に子を残して来たというではないか。
『闇』の連中に襲われでもしたら……」


(   )「なに、あいつは生まれてきてはいけなかった存在。
死んでしまってもあんたは困らないだろ?」


N| "゚'` {"゚`lリ「生まれた命に善し悪しなどはない。
それに、その子が死んでも構わないと言うのならば、
大罪を犯したお前をここに置いておくわけないだろう」

(   )「ふっ……そうだな」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/09/23(水) 22:57:01.81 ID:ZIJ2oyxcO
(   )「いずれにしろ……俺の子がやすやすと『闇』に殺されるわけがない。
きっと向こうの世界で善戦してくれるさ」


N| "゚'` {"゚`lリ「……ならばいいが……」


(   )「よし。じゃあ俺は奴らの拠点の偵察に行ってくる」


N| "゚'` {"゚`lリ「……わかった。頼んだぞ。フサ」


ミ,,゚Д゚彡「任せておけ」



男は二本の刀を指で軽く撫で、精霊神の前から姿を消した。
人が消えた神殿は痛いほど静まっていた……。


・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

12 :>>11ああもう また忘れてた ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:00:12.33 ID:ZIJ2oyxcO
〜ラウンジ城闘技場〜


(`∵)『さぁみなさん!!またまたやって来ましたこの青年!!
一回戦では圧倒的な力によって一撃KOを決めた風使い!!
ギコぉぉぉぉぉ=モナルドぉぉぉぉぉ!!』
 _
( ∵)『相方のマシュマロみたいなのはブーンです』


観客席から歓声が沸き上がり、闘技場が揺れる。
やはり、その迫力には圧倒されてしまう。


(`∵)『そして!その大物ルーキーに対するのは……!!
ラウンジ傭兵隊二番隊隊長!!
ビスケットぉぉぉぉ=サンダースぅぅぅぅ!』
 _
( ∵)『相棒の名はたけしです』

<ル゚ ヮ゚ノゝ「うふふっ」

(ю:】


観客席からはもはや絶叫に近い歓声が聞こえた。
男っぽい野太い声が多く聞こえたのは気のせいだろうか。
14 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:03:05.65 ID:ZIJ2oyxcO
(;゚Д゚)「お、女ぁ?」

<ル#゚ ヮ゚ノゝ「なによぉ!女の子がこういうの出場しちゃいけないって言うの!?」

(;゚Д゚)「いや、そういうんじゃなくて……。ちょっとやりにくいな〜……なんて」

<ル;д;ノゝ「ぼ、ぼ、ボクなんかじゃ相手にならないってこと!?」

(;゚Д゚)「あー……。だからそうじゃなくて……」(……ボクっ娘?)


(ю:】「おうおう!なにビスケたんを泣かしてくれてんだよ!」


(,,゚Д゚)「うわ、しゃべった」


(ю:】「ギッタギタにしてやっかんな!!」


(,,゚Д゚)「うわ、しゃべった」

 _
( ∵)『あ、あのガキ。ビスケたん泣かせやがった』

(#`∵)『おいコラ!ギコ!!お前なにやってんだよ』

15 :なんかごめんなさい でも、ちゃんと勉強はしてるんだぜ… ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:06:03.05 ID:ZIJ2oyxcO
(#`∵)『お前なんか負けろ!!負けちまえ!!第二回戦第三試合開始!!』


(;゚Д゚)「実況が私情挟むなよ……。しかも試合開始がすっげえ投げやりだ」


……なにやら観客を敵に回したような状態で試合開始。
ビスケットは涙を袖で拭うと、こちらを指差し、大きな声で叫んだ。


<ル#゚ ヮ゚ノゝ「キミなんかすぐにやっつけてあげるんだから!
覚悟しなさい!」


……ビスケットの体が発光し、バチバチと音をたてる。
そして、物凄いスピードでこちらにむかってきた。


(;゚Д゚)「立ち直り早いな……。ブーン『疾風……」


ビスケットが腰の短剣を抜いて、掛け声とともに振りかぶる。
俺との距離は残り10mといったところだろうか。


(,,゚Д゚)「『Lv.1』だ!」

16 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:09:24.58 ID:ZIJ2oyxcO
疾風を発動、上空へ回避する。
ビスケットが振り下ろした剣は空をきった。


(,,゚Д゚)(さて、どう攻めよう……。
相手が女だとやりにくいよなぁ……)


雷使いは風使いと違い、空は飛べない。
それをいいことに空中でいろいろな考えを巡らせる。



(,,-Д-)(でもなぁ。あれでも隊長だしなぁ。
無傷で気絶させるのは無理……かな。仕方ないか)


(,,゚Д゚)(まぁ、相手は女だ。
いくらなんでも力で俺に勝ることはできないだろう。
だったら接近戦で……)

(;゚ω゚)「ギコ!!避けるお!!」


ブーンの声に反応して咄嗟に左へ回避。
すると、先ほどまで自分がいた場所を雷が通過した。
18 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:12:05.26 ID:ZIJ2oyxcO
(;゚Д゚)「うわぉ、あぶねえn」

(;゚ω゚)「まだだお!!ギコ!!」

(;゚Д゚)「なっ!?」


ブーンの声に驚いて、咄嗟に上を向いてしまった。

……そのため、回避が一瞬遅れた。


空が光ったと思ったら、次の瞬間には全身を熱が駆け巡っていた。
筋肉が収縮し、意識が飛びそうになる。


(; Д ) 「がっ……ぎぃ……!?」


普通の人間ならほぼ即死。
例え精霊使いであってもただならぬダメージだ。

神経が麻痺してるのか、体を動かそうとしても、ピクリとも動いてくれない。
そのまま何もできずに地面へ落下した。

19 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:15:55.88 ID:ZIJ2oyxcO
後頭部に衝撃を受ける。
これは痛い。

闘技場のゴツゴツした地面は、とても固かった。


(;-Д゚)「っつつ……」

(;^ω^)「ギコ!!」


ブーンが出した風が優しく体を包み込んだ。
幸いなことにブーンは雷の直撃を受けなかったようだ。


(;゚Д゚)「サンキュ、ブーン。少し楽になった」

(;^ω^)「ギコ。相手は術を出すスピードが段違いに速いお。
さっきみたいな稲妻でも連発できるみたいだお」

(;゚Д゚)「あぁ。空中は危険だな」


空中と地面では、雷が直撃するまでにコンマ何秒かの差がある。
このコンマ何秒の差は、俺達にとってなかなか大きいものだ。

20 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:18:25.56 ID:ZIJ2oyxcO
<ル;゚ ヮ゚ノゝ「あれれ?雷が直撃したのにピンピンしてる……」


(;-Д゚)「生まれつき雷に強い体質みたいなんでね」


若干痺れが残る右腕でロングソードを抜いた。
ビスケットは短剣を片手に身構える。


<ル゚ ヮ゚ノゝ「でも剣で切られたら痛いよね?
……切り刻んであげる!『瞬雷』!!」


刹那、ビスケットの姿が消えた。
疾風を発動しているのに、目で追えない速度だった。

右後方から気配を感じ、咄嗟にロングソードを振り上げる。


高い金属音が鳴り響いた。


<ル;゚ ヮ゚ノゝ「まさか反応できるなんて……。キミ、なかなかやるね!」

(#゚Д゚)「御託ばっか並べてると……足元を掬われるぞ!」

21 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:21:11.78 ID:ZIJ2oyxcO
ロングソードでビスケットの短剣を受けながら、足払いを仕掛ける。
案の定、人形のように細い足は簡単に払われ、
ビスケットがバランスを崩した。


(,,-Д゚)「ほらな。ま、しかしそっちから接近戦に持ち込んでくれるたぁ、嬉しいね」

<ル;゚ ヮ゚ノゝ「さっきのセリフ……そっくりキミに返すよ!」


一瞬の隙をついて、ビスケットがバランスを崩しながらも俺の足を払ってきた。
油断していた事もあって、簡単にバランスを崩してしまった。


(;゚Д゚)「うぉっ!?」


二人同時に転倒。
俺は思わず両手をついた。



<ル;//ヮ/ノゝ「ひゃうっ!?」


(;゚Д゚)「えっ?」

22 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:23:23.82 ID:ZIJ2oyxcO
ビスケットの声を聞いて、視線を下げる。
……俺の左手は、小さいながらも確かな感触を残すビスケットの右胸の上に置かれていた。



(;゚Д゚)「ごっめんなさいっっっ!!」

それに気づいた俺は、慌てて後方に飛び退く。
……ブーンの視線がなんだか痛い。
観客席からは罵声と一緒にいろんな物が投げ込まれてきた。

左手にはまだうっすらとあの柔らかい感覚が残っている。


<ル;//ヮ/ノゝ「うう……。こういうのはダメだよぅ……ずるいよぅ……」


(;-Д-)「ホントすみません……」



……ああ。
だから女との戦闘はやりにくいんだ。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

23 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:26:02.32 ID:ZIJ2oyxcO
( ・∀・)「ごめんねー。しばらく気絶しててねー」


モララーの足元には氷の塊と一緒に、気絶した見張りが転がっていた。
どれも頭部に何かで殴ったような痕が残っている。


( ・∀・)「さて、行くよ」

見張りが守っていた扉を開けた。
そこは少しだけ開けた空間になっており、近衛兵が数人壁際に立っていた。
彼らの隣には小さな精霊がそれぞれついている。

その奥にはもう一つ扉が見えた。
恐らく、あの先に国王がいるのだろう。


(近1)「何奴!!」


近衛兵の一人がモララーの存在に気づいた。
その声により、他の4人の近衛兵の視線がモララーに集まる。


( ・∀・)「わーお。みんなが僕らにくぎづけ」

川*゚ -゚)「なんだか照れるな」

24 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:29:16.74 ID:ZIJ2oyxcO
(近1)「何者だと聞いている!」


( ・∀・)「まぁまぁまぁ。そんなにカッカしないで。
まずは僕の話を聞いてくれよ」


(近1)「外には見張り役がいたはず……!どうやって入った」


( ・∀・)「話を聞いてくれる様子がないね……。
見張りの方々には仕事の疲れを癒してもらうために、
しばらくお眠りになっていただきました」


(近1)「き、貴様!!」


近衛兵の一人が槍を振り回し、モララーに襲い掛かってきた。


( ・∀・)「5人……か。いけそう?クー」

川 ゚ -゚)「できればやり合いたくないな」

( ・∀・)「同感だよ」

25 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:31:26.82 ID:ZIJ2oyxcO
( ・∀・)「『氷塊』」


大きな氷の塊が空中に出現する。
そしてそれは近衛兵の後頭部目掛けて落下した。


(近1)「おお!?」


氷の塊の接近に気づいた近衛兵は、槍を盾がわりにし、氷の塊を弾き返した。


(近1)「こいつ……!精霊使いだ!」

(近2)「……そのようだな」

(近3)「貴様の目的はなんだ!」

( ・∀・)「その質問待ってた」

モララーはポケットから一枚の手紙を取り出す。
その便箋の裏には豪華な金色のシールが貼ってあった。

26 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:33:38.84 ID:ZIJ2oyxcO
( ・∀・)「実は僕、王子様からある依頼をされちゃってさ。この手紙をもらったんだ」


手紙をヒラヒラとさせると、一人の近衛兵が警戒しつつモララーの手から手紙を奪った。


(近4)「これは……王子様の字だ」

(近5)「なん……だと……?」


( ・∀・)(お、これは戦わなくても済むパターンかな?)


(近1)「騙されるな!!筆跡を似せることなど簡単にできる!!
そいつが作った偽物の可能性の方が高いぞ!」


……残念ながら、モララーの淡い期待はあっさりと裏切られてしまった。
モララーがやれやれと肩を落とす。

5人の近衛兵はそれぞれの精霊を従え、槍を構えた。



(;-∀-)「あーあ。めんどっちいな」

27 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:35:33.03 ID:ZIJ2oyxcO
モララーが頭をボリボリと掻いた。
この先、もしかしたら悪魔との戦闘になるかもしれないので体力を温存しておきたかったが、
どうやらそうはいかないようだ。


( ・∀・)「……来いよ。5人まとめて相手してやる」


モララーの挑発。
近衛兵達は全員その挑発に乗ってきた。


「『火ノ槍』!!」 「『水ノ槍』!!」 「『雷ノ槍』!!」 「『風ノ槍』!!」 「『土ノ槍』!!」

近衛兵達が叫ぶと、それぞれの槍の穂先が変化した。
炎を纏った物、水の刃となった物、雷を纏った物、
風の刃となった物、岩が纏わり、もはや槍ではなく槌となった物。

( ・∀・)「五つの元素が全部揃ってるわけか……。
ホントに面倒臭いな……」


そう、モララーにとってこの5人は『面倒臭いモノ』以外の何物でもないのだ。
例え相手が国王側近の近衛兵達だとしても。

28 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:37:18.96 ID:ZIJ2oyxcO
( ・∀・)「まず一人」


突然、モララーがぽつりと呟いた。
近衛兵達は顔を見合わせてなんの事かわからないといった表情を浮かべていた。


(近2)「ん……?近1はどこだ……?」


一人の近衛兵の言葉で全員の顔が一気に青ざめた。
……すでに一人の近衛兵が戦闘不能の状態になっていたのだ。


そして、次に土の槍を持っていた近衛兵が苦しみ始めた。
続いて風の槍、雷の槍を使っている近衛兵がもがきだす。


(近2)「なっ……?お前ら……?」

( ・∀・)「……ふたぁり」


(近2)「!!?」
30 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:39:33.47 ID:ZIJ2oyxcO
モララーが薄ら笑いを浮かべながらカウントをする。

すると、土の槍を持った近衛兵がその場に崩れ落ちた。
口からぶくぶくと泡を吹いて。


(近2)「き、貴様!何をした!!」

( ・∀・)「気づかないかな?この空間の空気の違いに」


(近2)「空気……?……っまさか!!?」


( -∀・)「『霧蜘蛛』。この部屋にいる人間は蜘蛛の巣にかかった蝶と同じ……。
君のような同業者を除いてね」


(近2)「この部屋一体に霧を発生させ……。それを吸った奴らを窒息させたってのか……!?
馬鹿な!そんなことしたらお前の精魂が尽きてしまうはず……!!」


( ・∀・)「そうだね。普通にやってたらそうなるね」


二人が会話をしているうちに風の槍、雷の槍を持つ近衛兵が倒れた。
これで残ったのは水の槍を持つ近衛兵だけとなった。

31 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:41:38.53 ID:ZIJ2oyxcO
( ・∀・)「この霧にはちょっとした『機能』をつけておいてね。
人間の気道の1番細いところに到達したらその形を保って静止するっていう機能。
こうすれば僕が一々水滴を操作しなくたっていいだろ?」


(近2)「そんな……。し、しかしそれならばこんなに早くこいつらが窒息するわけないだろう!!
空気中に霧散している水滴なんてかなり微小な物だぞ!!」


( ・∀・)「あとは水の特性を利用しただけさ。
他の『水分』を吸着し、形を大きくする性質。
……つまり彼らの唾液や、吐息に含まれる水蒸気などが僕の作り出した霧にくっついて固まる。
そうすればどうなるかはわかるよね?」


(近2)「……貴様。ただ者ではないな」


( ・∀・)「これでも仕事クビになってるんですけどねー?」


(近2)「……」

( ・∀・)「……」


二人の会話が止まり、空気がガラッと変わった。
張り詰めた緊張がモララーの肌に刺さってくる。

32 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:43:28.39 ID:ZIJ2oyxcO
(近2)「……参るっ!!」


近衛兵が槍を前方に突き出し、モララーに向かって一直線に走り出した。


( ・∀・)「クー、『氷粒』」


モララーが創りだしたのは『氷塊』より一回りも二回りも小さな氷の塊。
大きさは握り拳程度だが、それでも当たり所によってはかなりのダメージを受けそうだ。

五つ、六つとモララーの周りに『氷粒』が生成される。
近衛兵も、モララーの攻撃に備えて少しスピードを緩めた。



( ・∀・)「いけ!!」


モララーが左手を勢いよく前方に振り下ろした。
そしてモララーの周囲をふわふわと浮いていた氷の塊が猛スピードで近衛兵目掛けて飛んでゆく。


(近2)「ふんっ!!」

33 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:45:24.24 ID:ZIJ2oyxcO
一撃目は近衛兵の槍によって簡単に防がれた。

二、三撃目は弧を描き、二つ同時に近衛兵の脳天を狙う。


(近2)「甘い!!」


近衛兵が槍を頭上で回転させる。
氷の塊は槍にぶつかって砕け散り、欠片が四方八方に飛んだ。

息つくヒマもなく、四撃目が近衛兵に迫る。
腹部目掛けて一直線に飛んでくるそれを横に回避、
続けて飛んできた五撃目を槍で粉砕した。


(近2)「まだまだぁ!!」


少し大きめなサイズの六撃目。
近衛兵は水の槍の先を氷に変え、氷の塊を貫いた。
そして、それを水に戻すと、勢いを失った塊が地面に落下した。


(近2)「これで……最後だ!」
35 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:47:29.70 ID:ZIJ2oyxcO
振り向き様に槍を一振り。
先ほど避けた四撃目をたたき落とした。

これでモララーが作り出した氷の塊は全て破壊したことになる。



……それも全てモララーのシナリオ通りだった。



(;近2)「むぅっ!?」


近衛兵の首が背後から何者かに掴まれた。

……モララーの脚だ。



( ・∀・)「最後の一撃、よく反応したよ。
でも……」


( -∀・)「敵に背中を見せるのは、どうかと思うな」

36 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:49:34.16 ID:ZIJ2oyxcO
(;近2)「ぐっ……!き、貴様ぁ!!」


モララーは両足でガッチリと近衛兵の首を挟み、
右手を地面に着いて器用にバランスをとっていた。

近衛兵が手に持つ槍の先を変形させ、モララーを攻撃しようとする。
だが、それよりも先にモララーが動いた。


( ・∀・)「『兜割り』」


右手を地面から離し、体を右に半回転する。
近衛兵は首を支点として体が回転、足が地面から離れてしまう。


そして、成す術なく左側頭部を地面に強打した。


(;近2)「がはぁっ!!?」


回転の勢いをそのまま頭部にダメージとして受ける。
当然、脳震盪を起こし気を失ってしまった。

37 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:51:34.45 ID:ZIJ2oyxcO
( ・∀・)「ふぅ……。予定よりちょっと力を使いすぎたかな」


近衛兵五人が転がる部屋で、モララーが呟いた。
全員死んではいない。
気絶しているだけだ。


( ・∀・)「『霧蜘蛛』で全滅させる予定だったけどなぁ……。
水使いがいるのは想定外だったな」


『氷粒』六つを操作したため、精神力の消費はかなりのものだった。
外部ダメージは皆無だが、精神力を大きく消費してしまったモノだから、
少しだけ体がダルかった。


川 ゚ -゚)「モララー」

( ・∀・)「大丈夫、問題ない。
さぁ、さっさと行こう」


少量の倦怠感はあるが、次の戦闘に支障はないとモララーは判断した。
倒れた近衛兵の横を通過して最後の扉に手をかけた。

38 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:53:16.11 ID:ZIJ2oyxcO
( ・∀・)「……」


扉を開けると、歓声……と言うかむしろブーイングのような声が辺りを包んでいた。
下ではギコと青い髪の女の子が戦っている。

その様子を豪華な玉座に座った国王が無言で見つめていた。


(付)「だ、誰だ君は!!」


腰の短剣を抜いて身構えたのは王子の付き人のようだ。
だが、モララーは彼と戦う気配を見せない。


(付)「おい!!質問に答えろ!!」


( ・∀・)「……離れて」


(付)「……は?」


( ・∀・)「王子を連れて、ここから離れるんだ。今すぐに」

39 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:55:25.48 ID:ZIJ2oyxcO
何度か悪魔と戦ったことのあるモララーにはわかった。
今目の前にいる国王は人間ではないということが。


(付)「貴様何を……!!」

(#・∀・)「うるさい!!言う通りにしろ!!」


モララーが声を張り上げた。
国王の左手がピクッと反応する。


(;><)「あ、あなたは……?」

横からひょこっと顔を出したビロード。
足元には精霊の姿も見受けられる。


( ・∀・)「君の手紙を読んだ者だ。今すぐここから避難してくれ」


モララーがそう言うと、邪悪な気配がより一層強くなった。
発信源は……国王だ。

40 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:57:28.53 ID:ZIJ2oyxcO
( `ハ´)「……ほぅ。やはりこの王子、気づいておったか」


(;付)「国王……様?」


(;・∀・)「危ない!伏せろ!!」


(付)「え……?」


モララーが叫んだ。
しかし、付き人は間抜けな返事を返すだけ。

そして、黒い閃光が彼の体を通り抜けた。


(イ//寸)ズル……


顔面から真っ二つになり、その場で崩れる付き人。
モララーの足元があっという間に赤で染まった、


(;><)「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

(#・∀・)「走れ!!」

41 : ◆4br39AOU.g :2009/09/23(水) 23:59:46.28 ID:ZIJ2oyxcO
扉を開け、慌てて中に入る。
次に倒れていた近衛兵の槍を使い、扉に栓をした。

ドォン!と大きな音がして扉が叩かれる。
槍がミシッと音をたてた。


(;・∀・)「いいか、ビロード。よく聞け」

(;><)「う……あぁ……」

(#・∀・)「ビロード!!」

(;*‘ω‘*)「ぽぽっ!?」

モララーの張り手がビロードの頬を打つ。
背後ではまた扉が叩かれ、大きな音をあげた。


(#・∀・)「シャキッとしろ!!この国の王子だろ!!」

(#)。><)「ハイ……なんです」

また扉が叩かれた。
槍の中心に亀裂が入る。
もうそんなに長くはもたないだろう。

42 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:01:29.02 ID:EhHjTeIUO
( ・∀・)「よし、いいか。よく聞けよ。
ここからちょうど反対側にある観客席にロマネスクさんがいる。
今すぐ君はそこへ行くんだ。僕が時間を稼ぐ」


(#)。><)「で、でも……。それじゃああなたが……」

( ・∀・)「僕のことなら心配するな。
危なくなったら僕も逃げる」


扉が叩かれる。
槍の亀裂が大きくなった。


( ・∀・)「さぁ!!行け!!」

( ><)「は……はいなんです!」


ビロードが後ろの扉から外へ出ていった。
無事にロマネスクのもとに辿り着ければ後のことは心配ない。


( ・∀・)「……だから、僕が時間を稼がないと」
44 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:03:40.46 ID:EhHjTeIUO
( ・∀・)「気絶した近衛兵達が邪魔だな……。隅っこに置いとこう」



扉が叩かれる。
ついに、扉を封じていた槍が折れてしまった。



( `ハ´)「……むぅ。王子は逃げたか」


( ・∀・)「うん。逃げたよ」


( `ハ´)「……。なぁ、人間」


( ・∀・)「ん?」


( `ハ´)「私が怖くないのか?私は悪魔だぞ?」


( ・∀・)「怖がってたら戦えないからね」

45 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:05:35.69 ID:EhHjTeIUO
( `ハ:::)「……そうか」


(:::::::)「魔界では恐怖公爵とか呼ばれてるのだが……。
少々ショックだ」



( ・∀・)「っ……!」



国王の体が黒に包まれてゆく。
そして徐々に強くなっていく魔力エネルギー。
部屋の温度が5℃ほど下がったように感じた。


そして、モララーの前に姿を現したのは……漆黒の衣装を纏った、美しい『悪魔』だった。
すらりと伸びた長い手足、雪のような白い肌……。
それでいて唇は血のような赤をしていた。


/ ゚、。/「……『闇』が一人。魔界の大公爵、アスタロト見参」


( ・∀・)(……すごい威圧感だ。
これは上級悪魔……いや、魔王クラスの魔力かな)

46 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:07:17.55 ID:EhHjTeIUO
/ ゚、。/「私が怖くないのか」


( ・∀・)「はっはっ。あんたみたいな綺麗な人を怖がるわけないだろう」


/*゚、。/「……褒め言葉として受け取っておこう」


( ・∀・)「ところで……本物の国王はどうした?」


/ ゚、。/「もちろん、死んでもらったさ」


( ・∀・)「……そうか」


/ ゚、。/「悔しいか?」


( ・∀・)「なぜ?僕はここの国王とは接点がないし……それに」


モララーの右手に冷気が集まる。
それは徐々に『氷の剣』を形成していった。



( -∀・)「……国王が人質に取られてなければ、僕も本気で戦えるからね」

47 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:09:23.06 ID:EhHjTeIUO
/ ゚、。/「ほう、この私と戦う気か。
いい度胸をしてるな」


( ・∀・)「……『アイスソード』」


モララーの右手には、白く光る氷の刃。
部屋の明かりに反射してキラキラと輝いていた。


/ ゚、。/「それが精霊の力か……。
なるほど、バアルが欲しがるわけだ」


( ・∀・)(バアル……?神話に出てくる東の魔王のことか……?)


/ ゚、。/「……さて、人間。そろそろお喋りも飽きた。
どうやって死にたいか言え」


( ・∀・)「腹上死」



/ ゚、。;/「……この質問にまともに答えたのはお前が初めてだ」

48 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:11:18.37 ID:EhHjTeIUO
/ ゚、。/「……せっかく理想の死に方を教えてもらったところで悪いが……
君のリクエストには答えられない」


なぜなら、と続け、腰から長剣を抜いた。
クレイモアーと言う種類の剣だ。

/ ゚、。/「……私は男だ」


クレイモアーを横薙ぎに一度振るうと、
剣圧により周囲に鎌鼬が発生する。


( ・∀・)「まぁまぁ、勘違いしないでくれ」


氷の剣で鎌鼬を防ぎながらモララーが口を開いた。
左手はクーの右手をがっちりと掴んだ状態で。



( ・∀・)「理想の死に方は腹上死と言ったが、
誰もここで死ぬとは言ってないぞ」


( ・∀・)「僕は世界の謎を全部解き明かすまで死なないつもりだからな」

49 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:13:31.82 ID:EhHjTeIUO
( ・∀・)「……死ぬのはテメーだ女顔」


/ ゚、。/「……無礼な。それが魔界の大公爵様に対する口の利き方か」


( ・∀・)「ごめんね。俺、生まれた時から両親がいなかったもんで、
そういう教育はされてないんだ」


/ ゚、。/「……ふむ、低級市民か」


( ・∀・)「家なき子と言ってほしいね。ハッピーエンドが好きだから」


/ ゚、。/「……人間界の童話などに興味はない」


/ ゚、。/「では……行くぞ!!」



アスタロトの纏う空気が変わった。
部屋中にビリビリと重圧が広がってゆく。


( ・∀・)「……クー」

川 ゚ -゚)「いつでもこい」

50 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:16:11.15 ID:EhHjTeIUO
モララーの、クーの手を握る力が強くなった。
手の平越しに互いの体温が伝わる。


( ・∀・)「魔界の大公爵、アスタロト」


川 ゚ -゚)「我々の力で、その汚れた魂を氷漬けにしてさしあげましょう」



( ・∀・)「「『シンクロ』」」(゚- ゚川




白い光が、部屋一面に広がった。




・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

51 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:18:18.63 ID:EhHjTeIUO
( ΦωΦ)「ふむ、ここまでは若干押され気味だな」


(゚、゚トソン「ビスケットは私が現役の時からなかなかの実力者でしたからね」


( ΦωΦ)「しかしまだギコは攻撃を仕掛けてない。
おもしろいのはここからじゃないか」


(゚、゚トソン「ギコが攻撃できれば、ですけれどね。
ビスケットの最大の武器は……あのスピードですから」


( ΦωΦ)「確かに速い。
だが、スピードならギコも負けないと思うぜ?」


(゚ー゚トソン「……それは面白くなりそうですね」




………………


(;-Д-)「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


<ル;゚ ヮ゚ノゝ「あの……も、もう謝らなくていいから」

52 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:20:26.93 ID:EhHjTeIUO
(;-Д-)「ごめんなさい、ほんっとごめんなさい」


<ル;゚ ヮ゚ノゝ「えっと……そんなに謝られるとこちらとしてもやりにくいから……ね?」


(;-Д-)「……はい」


<ル゚ ヮ゚ノゝ「じゃあ行くよ!!『雷電』!!」


(;゚Д゚)「んなっ!!」


閃光。
突然目の前にビスケットの顔が現れた。
相手と違ってまだ戦闘準備を整えてなかったため、反応が遅れる。

<ル゚ ヮ゚ノゝ「それっ!」


(;゚Д゚)(左かっ!?)


ビスケットの左脚から回し蹴りが繰り出される。
右腕を上げ、蹴りを受けようとするが
54 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:22:41.96 ID:EhHjTeIUO
Σ(゚Д(#;)「ほがぁっ!?」


……蹴りは、左頬に入った。


(;゚Д+)(かかと……?)



ビスケットが左脚を出そうとしたところまでは視認できた。

だが、その後。
高速で逆回転し、ノーガードの頭部左側へ踵を叩き込む動きは全く見えなかった。


<ル゚ ヮ゚ノゝ「まだまだ行くよ!!」

(;゚Д-)「くっ……!」


(#)Д)「がはっ!!」


右の拳が振るわれれば、左の拳が頬を刺す。
左の脚が上がれば、右の脚が腹を打つ。

可視の攻撃をちらつかせた後に不可視の打撃を加えてくるのだ。

55 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:24:56.92 ID:EhHjTeIUO
しかも、それだけではない。


(;メ゚Д゚)(右手が動いた……ってことは左がくる!!)


右腕が動いたのを見て、咄嗟に左腕から繰り出される攻撃に対処する準備をする。

しかし、防御に回した腕にダメージはなく、
代わりに左頬に鈍い痛みが走った。


(;メ-Д@)(……くそっ!!あの短時間で咄嗟の状況判断ができるのかよ!!)


可視の攻撃が見えてから不可視の攻撃が自分に届くまでコンマ1秒程度だろう。

その短時間で相手はこちらの動きを見て攻撃する箇所を変えることができる。


これが意味するのは圧倒的なスピードの差。
こちらが1動く間に相手は3も4も5も動くことができるのだ。

56 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:26:16.69 ID:EhHjTeIUO
(,メ-Д-)(だったら……!)


ならば、こちらもさらにスピードを上げればよい。
精神力の消費量がどれだけ多いかわからないから、序盤から使うのは危険だと思った。

だが、このままでは一方的に攻撃されて負けてしまう。


(#メ゚Д゚)「ブーン!!」


( ^ω^)「わかったお!」


ブーンの名を呼ぶ。
皆まで言わなくとも、言いたいことは伝わったはず。

その結果はすぐに体にあらわれた。


<ル#゚ ヮ゚ノゝ「早く倒れちゃいなよ!!」


ビスケット右脚が動く。
そして、右脚が地に戻り、左からものすごい勢いの蹴りが飛んでくる。


その動きを"視認"した。

57 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:28:19.99 ID:EhHjTeIUO
<ル;゚ ヮ゚ノゝ「えっ……?」


ビスケットの表情が固まった。
今まで一度も防がれることがなかった攻撃が防がれたからだろう。

今、自分の右手の中にはビスケットの白くて細い脚がある。
つまりビスケットの動きが完全に見えていたということだ。


(,,゚Д゚)「『疾風 Lv.2』」


疾風の第二段階。
風による外部的なサポートだけでなく、
全身の細胞の動きを活発化させる内部的なサポートを加えた状態だ。


<ル゚ ヮ゚ノゝ「うふふ。そうでなくっちゃね!!」


ビスケットの攻撃のテンポが上がった。
右、右、左、右、左、左。

どこからどの攻撃が来るか見えるため、攻撃を防ぐことはできる。

だが、せいぜい『防げる』程度。
今だ反撃の糸口は見えて来ない。

58 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:30:27.96 ID:EhHjTeIUO
<ル゚ ヮ゚ノゝ「ほらほら!防御してるだけじゃ勝てないよ!!」


その通りだ。
ビスケットの攻撃を防ぎ続けてきた結果、そろそろ腕が重くなってきた。

できるだけダメージを受けないような防ぎ方をしても、少しずつダメージは蓄積されていく。


(;゚Д゚)(くそ……。攻撃の手が緩まない。
なんかの術を発動してるのか?)


反撃の糸口どころか、隙すら見つからない。
この状態が続けば、先に倒れるのは自分の方だろう。


(,,゚Д゚)(……こうなりゃ力付くでこの状況を打破してやる!!)


(#゚Д゚)「いくぞ!!ブーン!!」

( ^ω^)「合点だお!」


(#゚Д゚)「『疾風……Lv.3』!!」
60 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:32:28.75 ID:EhHjTeIUO
Lv.3は単純にLv.2の強化版だ。
だが、断続的に使用する事を考慮すれば、これ以上の強化は危険。

つまり、Lv.3は疾風の最高段階だ。


<ル゚ ヮ゚ノゝ「やっ!」


ビスケットの左脚が迫る。
それを右腕で防ぎ、次の攻撃が来る前に右脚を出した。


<ル;゚ ヮ゚ノゝ「えっ!?」


ビスケットはその攻撃を、両手で防いだ。
そして俺はビスケットが防御することで作られた一瞬の隙に、
彼女の間合いから離れた。


(,,゚Д゚)(よし……!脱出したぞ)


<ル;゚ ヮ゚ノゝ「そんな……『雷電』が破られるなんて……」
62 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:34:16.51 ID:EhHjTeIUO
<ル゚ ヮ゚ノゝ「……キミ、なかなか強いんだね」


(,,゚Д゚)「どーも」


<ル゚ ヮ゚ノゝ「でもどうするの?接近戦では恐らく互角。
遠距離戦では技の発動速度が早い私の方が圧倒的に有利だけど?」


(,,-Д゚)「どうにかなるさ」


ブーンにアイコンタクトを取る。
……準備はいいみたいだ。


(,,゚Д゚)(今回のテーマは『スピード』……)

(,,-Д-)(いくぜ……新技その2だ!!)


ロングソードを前に構える。
その刀身は淡く緑色に光っていた。

63 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:36:14.49 ID:EhHjTeIUO
<ル゚ ヮ゚ノゝ「剣?その位置からじゃ、斬撃は僕に届かないよ!!」

<ル゚ ヮ゚ノゝ「たけし!『雷砲』!!」


ビスケットの眼前に金色の球体が生成される。
それは、いわば雷の砲弾。
数億ボルトの電気の塊なのだ。


<ル゚ ヮ゚ノゝ「ふっ飛べ!!」


雷砲が放たれた。

速い。
確かに速い。


(,,゚Д゚)(だが―――)


よけれない速度ではない。
ひらりと上空へ回避。
同時に、ロングソードを振りかぶった。


(#゚Д゚)「くらえっ……!!『隼斬り』!!」
65 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:38:25.54 ID:EhHjTeIUO
新技その2、『隼斬り』

『鎌鼬』を派生させた技。
剣を振らなければ発生させられないが、
スピードは『鎌鼬』より段違いに速い。

同時に三つの風の刃を作り出し、三方向から標的を狙う。
ドクオさんの『隼』に似た技だ。

<ル;゚ ヮ゚ノゝ「たけし!『稲妻』でそうさ……」


ビスケットが中途に言葉を切った。
風の刃がもう自分の目前にまで近づいていたのだ。

慌ててその場から後ろに飛びのいた。


<ル;  ヮ ノゝ「いっ……」


しかし、全てかわしきる事はできず、
三つの刃のうち一つがビスケットの右腕を切り裂いた。

パックリと裂けた肉から真っ赤な鮮血が溢れ出す。

66 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:40:24.27 ID:EhHjTeIUO
<ル;Д;ノゝ「うっ……うぇ……痛いよ……」

(ю:】「てめぇ!またビスケ泣かしやがったな!!」


闘技場内を飛び交うブーイング。
本気で戦う上で相手を傷つけるのは致し方ないことだ。

けれども、人を傷つけるのはやはり気分が悪い。
まして、女を傷つけるなんて心が痛まないはずがない。


(;-Д-)(……やりにくい)


<ル;Д;ノゝ「も、もぉ許さないんだからぁ!!」

<ル;Д;ノゝ「たけし!『雷陳鳥!!』」


ビスケットが泣きながらその技の名を呼んだ。
すると、空がだんだんと暗くなり、辺りに黒雲が広がった。


(,,゚Д゚)「!」

67 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:42:32.82 ID:EhHjTeIUO
空が一度光り、巨大な稲妻が頭上目掛けて落下してきた。
焦らず、雷の当たらない位置へ回避。
何もない地へ稲妻が落下する。

地響きが起きて、数秒遅れで爆音が響いた。


そして、爆音と共に空から姿を現したのは……

一羽の巨大な鳥だった。


「ギョルルルルルルルル!!」


(;-Д゚)「っく!」


耳をつんざく不快な鳴き声。
思わず両手で耳を塞いだ。


「ギョルルルルルルルル!!」


鳥は両翼を広げもう一度鳴いた。
それに呼応するかのように空を覆う黒雲から稲妻が落ちる。

68 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:44:15.00 ID:EhHjTeIUO
(゚、゚トソン「『雷陳鳥』……」


<_フ*゚Д゚)フ「すっげー!!かっけぇー!!」


( ΦωΦ)「精霊が術者の力をフルに利用して神獣となる……。
『召喚』か……」


(゚、゚トソン「『シンクロ』とは違い互いの能力を共有して力を使うのではなく、
精霊が一方的に人間の力を借りる型です。
私は『召喚』はあまり好きませんね」


( ΦωΦ)「『召喚』はどちらか片一方の最大限の信頼が得られれば誰でも使えるからな。
使用後の倦怠感はハンパないが……」


(゚、゚トソン「……つまり、ビスケットが100%の力を出してギコと戦っているというわけですね」


( ΦωΦ)「だな。あんな大技、ここ一番の場面でしか使わないだろう」


(゚、゚トソン(……ラウンジ傭兵団の隊長の一人であるビスケットをそこまで追い込みましたか。
やはりあなたの能力はまだまだ未知数ですね……ギコ)


……………………………

69 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:46:16.11 ID:EhHjTeIUO
(;゚Д゚)「なんだあの鳥……。すごいエネルギーだ……」


(;^ω^)「あれもきっと精霊の能力だお……。
その証拠にビスケットの顔色がおかしいお」


(,,゚Д゚)「本気を出したか……」


(,,-Д゚)「……だったら俺も本気で相手しないと失礼だよな」


鳥からは巨大な雷撃が何発も飛んでくる。
とりあえず全てをかわしきれているが、この様子ではビスケットに近づくのは不可能だろう。


(,,゚Д゚)「ブーン。あの鳥本体を叩くぞ」


(;^ω^)「と、鳥を!?無茶だお!!」


(,,゚Д゚)「ああ、無茶かもな」


(,,゚Д゚)「でもそうするしかない」

70 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:48:31.50 ID:EhHjTeIUO
雷撃が飛ぶ。
それをバックステップで回避し、腰に手をやる。


(,,゚Д゚)「動けないビスケットを狙って勝ったって面白くないからな」


腰に差した秘密兵器……ダガーを一本手に取った。


(,,-Д゚)「それに、俺には女を痛め付ける趣味はない」


さらに右手を後ろにまわし、ダガーを二本、三本と取っていく。


(,,゚Д゚)(対ロマネスクさん用に使わないでおこうと思っていたが……仕方ない)


同様に左手でも腰に差されたダガーを抜いた。
計六本。
両手の指の間に挟み、巨大な雷の鳥を見据えた。


(,,゚Д゚)「いくぞブーン。……俺達の必殺技……見せてやろうぜ!!」

(#゚Д゚)「『剣ノ舞』!!」


……六本のダガーを、雷を纏う鳥目掛けて投げ飛ばした。

71 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:50:14.57 ID:EhHjTeIUO
ダガーは真っ直ぐ、鳥に向かって飛んでいく。
たかが小剣六本だが、上手く使えば最強の武器になりうるはずだ。



(#゚Д゚)「……ブーン!『隼斬り』だ!!」


ダガーが淡緑色に光り、その刀身に風を宿した。
しかし、風の残撃を出すにはダガーを一振りせねばならない。
そのためにはもう少し準備が必要だ。


(,,゚Д゚)(これを……コントロール!)


鳥が放つ雷撃を避けながら、ダガーをコントロールする。
六本のダガー全ての動きを操作するのはかなりの集中力を要した。

一方、鳥はダガーを避けながらこちらに攻撃を繰り出してくる。
どうやらこちらの作戦には気づいてないようだ。


(,,゚Д゚)「よし!囲んだぞ!」

72 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:52:26.08 ID:EhHjTeIUO
六本のダガーは一つの円上に並び、巨大な鳥を囲んでいた。
それに気づいた鳥は円の中から逃げようとするが……


(,,゚Д゚)「逃がすか!ブーン!『風籠』だ!」


すぐさま生成された風の籠は、あっという間にダガーを飲み込み、
その中に鳥を閉じ込めた。


(,,-Д゚)「……踊れ」


強い風に囲まれた鳥は、その場から脱出することは出来ない。
そして、その風に飲み込まれたダガーはクルクルと回転しながら、
籠の中を縦横無尽に飛び回る。


そう、回転しながら。


「ギョル!?」


回転することで、武器を『振る』という条件を満たしたダガーは、風の刃を繰り出す。
あの限られた空間の中でダガー一本につき三つの斬撃が飛んでくるのだ。
74 :>>73修正 ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:56:22.82 ID:EhHjTeIUO
前からも、後ろからも、上からも、下からも。
それら全てを避けられるわけがなく、雷の鳥は徐々に傷ついていった。


( ^ω^)「おっ!エネルギーがだんだん小さくなってきてるお!」


(;-Д゚)「ああ、そうだな」


相手の鳥が倒れるのも、時間の問題だ。
だがここに来て力を使いすぎたためか、息が上がり、視界がぶれる。
『疾風』の最高段階を発動しつつ、六本のダガーそれぞれに『隼斬り』を付加、かつコントロールし、
雷の鳥の動きを『風籠』で封じたのだ。

ここまでよく持ってくれた方だろう。



(;-Д゚)(あと少し……あと少しだ……)



あと少しで試合が終わる。
それまで精神力が持ってくれればいい。

75 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 00:58:28.68 ID:EhHjTeIUO
その時だった。


「ギョルルルルルル!!」


雷の鳥の咆哮……いや、断末魔の叫びと言った方が的確だろうか。鳥が鳴いた。

同時に、『隼斬り』が直撃した確かな手応えを感じる。


(,,゚Д゚)「よし、『風籠』解除!!」


鳥を囲んでいた風が消え、ダガーが自分の手元へ戻ってくる。
鳥は力無く落下、地面に激突して大きな音をたてた。


そして、地面に落下した時には鳥の姿ではなく、元の精霊の姿に戻っていた。

あのまま攻撃を続けていたら、精霊界に強制送還させていたかもしれない。


(;゚Д゚)(ふぅ……。危なかったな……)


『疾風』も解除。
少しだけ体が楽になったように感じる。
77 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:00:34.67 ID:EhHjTeIUO
(,,゚Д゚)「さて……俺の勝ち、だろ?」


しかし、いつまで経っても肥子山の声が聞こえない。
どうしたのかと思い回りを見渡すと、短剣を片手にフラフラと立ち上がるビスケットの姿が目に入った。


<ル; ‐ ノゝ「まだ……終わりじゃないよ……」


(;゚Д゚)「おいおい……。フラフラじゃねぇか。
無理するなよ……」


<ル; Д ノゝ「誇り高きラウンジ精霊団二番隊隊長!ビスケット=サンダース!!
こんな場所で負けるわけに……ガハッ!?」


(;゚Д゚)「なっ!?」


吐血するビスケット。
その胸には一本のナイフが刺さっていた。


(* ∀ )「負け犬がキャンキャン吠えてるんじゃネェヨ。うるせぇカラ……」



そして、ナイフが投げられたであろう場所には、黒いフードを被った精霊らしき生物が立っていた。

78 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:02:27.84 ID:EhHjTeIUO
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


/ ゚、。/「……ほう」


白い光が晴れる。
そこにはクーの姿はなく、剣を片手に立っているモララーが妖しく笑っているだけだった。


( ・∀・)「『mode-氷帝』」


その体は淡く水色に発光していた。
周りには氷でできた菱形の結晶がフワフワと浮かび、部屋の明かりを反射して輝いている。



/*゚、。/「これは……美しい」


( ・∀・)「照れた」

79 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:04:13.76 ID:EhHjTeIUO
アスタロトが体をブルッと震わせる。
その頬は薄紅に染まっていた。


/* 、 /「美しい……。こんな美しい者が自身の血で汚れ、
臓物を腹から飛び散らせ、死んでいくのを想像したら……体の震えが止まらないよ……」


( ・∀・)「そうか、残念だね。それは君の妄想で終わってしまうのだから」


/*゚、。/「ふふふ……。せいぜいそう言っていればいいさ。直に現実になる」


言葉が終わると、アスタロトの剣から無数の黒い刃が飛んできた。


( ・∀・)「『氷壁』」


モララーの目の前に展開される、氷の壁。
それはアスタロトが繰り出した刃を全て防いだ。


/ ゚、。/「君は、この世界の『謎』を求めているのだろう?」


( ・∀・)「うん。そうだよ」

80 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:07:00.62 ID:EhHjTeIUO
/ ゚、。/「私はこの世界にある全ての『美』を求めている。
だから全ての『美』をこの目でみたい。
それまでは、私も死ねない」


( ・∀・)「ふぅん。僕と似ているね」


/ ゚、。/「残念だよ。君が味方でなくて」


/ ゚、。/「『黒の衝撃』」



アスタロトが剣を振るう。
すれと、巨大な漆黒の斬撃がモララーに向かって飛んだ。

そして、モララーが展開した氷の壁に激突、両者は粉々に砕け散った。


/ ゚、。/「見ろ、美しいだろう?粉々に散った氷の破片が、光を反射して輝いている。
まるでこの室内に雪が舞っているようだ」


( ・∀・)「それが君の求める『美』かい?」

81 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:08:31.33 ID:EhHjTeIUO
/ ゚、。/「……いや、違う。私が求めているのは死の美。
『死』というのは至高の芸術。
私はどのような『死』が最も美しいか探しているんだ」


( ・∀・)「ふぅん。『死の美』ね」


モララーの回りを飛んでいた氷の結晶が形を変え、槍となり
アスタロト目掛けて飛んでいった。

アスタロトはマントを翻し、それらの全てを相殺する。


( ・∀・)「この世界に存在する『謎』の中で、人類最大の『謎』とされるものがある」


( ・∀・)「それが、『死』なんだ。
僕は死の謎を解き明かすことが世界の謎を解き明かすことだと思ってる。
君が言う芸術性も『死』の謎の一つさ。
なぜ芸術家達は『死』に芸術性を感じ、死んでいくのか……とかね」


/ ゚、。/「追求テーマも同じとは……ますます殺すのが惜しい人だ」


突然、アスタロトが発する威圧感がなくなった。
クレイモアーを下げて構えを解き、無防備な状態になる。
83 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:10:16.36 ID:EhHjTeIUO
( ・∀・)「何のつもり?」


/ ゚、。/「『闇』に入らないか?」



アスタロトの口から出た言葉は、『闇』という単語。
現在では最も危ぶむべき敵の名だ。



( ・∀・)「あいにく、『闇』の連中は大嫌いでね。
それに彼らの崇高なる目的とやらも知らないし」


/ ゚、。/「私だって『闇』の連中の目的には興味はない」


( ・∀・)「じゃあ何で『闇』なんかに?」


/ ゚、。/「多くの『死』を見るためだよ。
多くの『死』を見て、その中から美しい『死』を探すために……」

84 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:12:25.38 ID:EhHjTeIUO
/ ゚、。/「『闇』に入れば我々魔王達に直々に魔力を授けられる。
やれる事の幅が大きく広がるぞ」

( ・∀・)「……誰でも『闇』の一員になれるのかい?」


/ ゚、。/「ああそうだ。心に闇を持つ人間なら誰でもね。
その闇が大きければ大きいほど強い魔力を手に入れる事が出来る。
今回はそんな人間をスカウトするために私が直々にやって来たんだ」


/ ゚、。/「王に成り済まして、心に闇を持つ人間を探し……部下達に伝える。
なんとも面白みのない仕事だ。
王の死に様も芸術とはほど遠いものだったしね」


/ ゚、。/「……話がそれたな。とにかく、『闇』は死について調べるには持ってこいの場所だ。
どうだ?悪い話ではないと思うんだが……」


( ・∀・)「そうだね……。いち研究員としては魅力的な話だね」


/*゚、。/「そうか!ならば……」




( ・∀・)「だが断る」
86 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:14:35.93 ID:EhHjTeIUO
/ ゚、。;/「な、なぜだ!?君にとって悪い話じゃないはずだ!」


( ・∀・)「確かにいち研究員としては魅力的な話だよ」




( ・∀・)「でも、いち人間である僕には……大切な仲間がいる。
仲間を裏切ることは何があってもできない」


/ ゚、。/「……せっかく同志を見つけたのに……本当に残念だ」


アスタロトが剣を構え直した。
全身からは再び巨大な威圧感が生じる。



/ ゚、。/「……美しく死んでくれ」


/ ゚、。/「『黒死蝶』」

87 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:16:38.74 ID:EhHjTeIUO
アスタロトの頭上に現れた黒い空間。
そして、その中から無数の蝶が現れた。

漆黒の羽を持った揚羽蝶のような蝶だ。


/ ゚、。/「舞え、黒死蝶よ」


ヒラヒラと優雅に舞う蝶。
その羽から落ちる鱗粉は金色に輝いている。


(;・∀・)「鱗……粉?……やばい!!」


本能的に蝶の鱗粉の危険性を察知したモララーは、自身の体を水の球で包んだ。
蝶の鱗粉を吸引しないように。


/ ゚、。/「気づいたか。君は聡明だな。
確かに、黒死蝶の鱗粉には毒が仕組まれている。
少しでも吸えば全身の神経が麻痺してしまう猛毒がね」


/ ゚、。/「でも、それだけじゃない」

88 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 01:18:13.97 ID:EhHjTeIUO
パチン、とアスタロトが指を鳴らした。
すると、蝶の動きがおかしくなる。

両の羽を水平に伸ばし、まるで蜂の様に飛びはじめた。


/ ゚、。/「切り裂け、黒死蝶」



羽を真っすぐ伸ばしたまま、モララーを包む水の球へと滑空。


(;・∀・)「っ!?」


モララーの頬を掠めた。
浅く切れた皮膚から血が滲み、水の中へ消えていく。



(;−・∀・)(ばかな!水の中なのに勢いを無くさず飛び抜けるなんて……!)


/ ゚、。/「黒死蝶はこの世とあの世の境目に生きる蟲……。
この世界からの物理的な干渉は全く受けない」
101 :ありがとうただいまごめんなさい ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:02:13.30 ID:EhHjTeIUO
(;−・∀@)クラッ「なんだって!?じゃあ蝶を攻撃するころも……はれ?」


/ ゚、。/「ふふ。蝶の毒が回ってきたようだな」


(;−・∀@)(鱗粉の毒……?掠っただけでこんなに……?)


(;−・∀・)(くっ……。仕方ない……)


モララーを包む水の球が形を変える。
モララーの体から離れ、頭上で滞空した。


/ ゚、。/「いいのか?そんなことをして。
黒死蝶の鱗粉を直接吸うことになるぞ」


(−・∀・)「……一気に決めさせてもらうよ」


……モララーの体が奇しく光り、部屋の気温が更に低くなった。
モララーの頭上にあった水の球も少しずつ凍ってゆく。

102 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:05:38.30 ID:EhHjTeIUO
(−・∀・)「……氷の刃に切り裂かれろ」


頭上の氷が木っ端みじんになり、小さな氷の破片となった。
鋭く、鋭利な氷の破片に……


(−・∀・)「『ダイヤモンドダスト』」


部屋に強い風が吹きはじめた。
氷の破片がまるでダイヤモンドの破片のような輝きを放ちながら、部屋中に吹き荒れる。


/ ゚、。;/「なんと美し……ってなんだこれは!!」


鋭利な氷の破片は小さな刃となり、アスタロトの体に傷をつけた。
頬、腕、脚。
雪のように白い肌に紅い線がついていく。
小さな傷だが、無数についたソレは徐々にアスタロトの体力を奪っていった。


(;−・∀・)「うぐっ!」


しかし、同様にモララーの体は黒死蝶によって傷つけられていく。

103 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:08:56.10 ID:EhHjTeIUO
氷の破片がアスタロトの肢体に傷をつけ、
黒死蝶の羽がモララーの体を切り裂いていく。
二人の体力はどんどん削られていった。


/メ゚、。;/「ふふっ……!美しいじゃないか……!
君のその美しい身体の回りを蝶が舞い、傷を増やしていく……これぞ芸術だ……!
もっと……見ていたいよ……!!」


(;−・∀@)「ははは。何を言ってるんだ。立っているのがやっとなくせに」


/メ゚、。;/「ふふふ……黒死蝶を呼び出すのには結構な魔力が必要でね……」


(;−・∀@)(やべ……ちょっとやられ過ぎたかな……。頭がボーッとしてきた)


/メ゚、。;/「……っ。……消えろ黒死蝶!!」



アスタロトが作り出した空間に、蝶が吸い込まれる。
全ての蝶が黒い空間に吸い込まれた時、ちょうどモララーの精神力にも限界が来た。
105 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:11:54.94 ID:EhHjTeIUO
ドサ、とその場に倒れるモララー。
クーとのシンクロが解けて光の球がモララーの体から飛び出した。


(;−・∀@)「へ……へへ……。なんだい。僕を殺すのが惜しくなったのかい?」


息も絶え絶えにモララーが言う。
対するアスタロトの体は少しずつ消えていっていた。


/メ゚、。;/「私は君が死ぬ姿を目に焼き付けたいんだ」


/メ゚、。::.「だが……残念ながらタイムアップみたいでね。
今、君に死んでもらっては困るんだよ」


/メ゚:::..「ふふふ……美しい上に強いなんて、ますます君の事が好きになったよ……」


:::....「また会える日を楽しみにしてるよ。だからそれまで死なないでくれよ?
……さらばだ、モララー」


アスタロトの姿が完全に見えなくなると、部屋が急に暖かくなったように感じられた。


川;゚ -゚)「モララー!!」

106 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:14:23.93 ID:EhHjTeIUO
モララーの元へ、クーが駆け寄る。
『シンクロ』を解除したというのにそのからだは氷のように冷たかった。


(;−・∀・)「……どうやら僕はあの悪魔に気に入られちゃったみたいだね」


川;゚ -゚)「あまり喋るな。体力を使うぞ」


(;−・∀・)「大丈夫さ。そのうち誰かが助けに来てくれるよ。
ただ……僕はギコの方が心配だな」


川 ゚ -゚)「あの悪魔が言っていたスカウトとかいう話か?」


(;−・∀・)「それに関しては心配してないよ。ギコだし。
問題はスカウトに来る悪魔がどれくらいの強さか、ということだよ」


(;−・∀・)「一応ロマネスクさんもトソンさんもいるし……大丈夫だとは思うけど……」


川 ゚ -゚)「きっと大丈夫だ。あいつを信じろ」


(;−・∀・)「……そうだね」

107 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:17:50.70 ID:EhHjTeIUO
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・

闘技場は不穏な空気に包まれていた。
いつの間にか空は厚い雲に覆われ、冷たい風が吹き抜けていく。


(;ΦωΦ)「なんだなんだ?何が起きたんだ?」


(゚、゚;トソン「最後の攻撃……ギコがやったみたいじゃないみたいですね」


(;ΦωΦ)「じゃあ、なんなんだあいつは……」


(゚、゚;トソン「……嫌な予感がしますね」


トソンが立ち上がる。
同時にある人物の声がロマネスク達の耳に入った。


(;><)「ロマネスク!!」


(;ΦωΦ)「ビ、ビロード!?」
(゚、゚;トソン「王子!?」

108 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:20:25.21 ID:EhHjTeIUO
(;><)「トソンもここにいましたか……。
それよりも大変なんです!悪魔が攻めて来るんです!!」


(;ΦωΦ)「なんだと!?嘘じゃねぇだろうな?」


(;><)「本当です!今もえーと……はっ!名前聞くの忘れてたんです!」


(゚、゚;トソン(王子なに言ってんの?)


(;><)「えーと……【( ・∀・)】こんな顔してる人が今悪魔と戦ってるんです!」


(;ΦωΦ)「モララーか!!どこで戦ってるんだ?」


(;><)「ここから反対側にある王族の観戦席です!は、早く助けてあげてください!」


(;ΦωΦ)「わかった。すぐ行こう」


(゚、゚;トソン「私も行きます!」
110 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:23:50.43 ID:EhHjTeIUO
( ΦωΦ)「お前はダメだ」


(゚、゚#トソン「なんでですか!!」


( ΦωΦ)「王子とギコを頼む」


(゚、゚トソン「!」


(#ΦωΦ)「行くぞワタナベ!フルスピードだ!」


从'ー'从「はいマスター!」



ロマネスクはトソンに一言だけ言い残し、その場から消えた。
疾風を使い、闘技場の空を走り抜けて行ったようだ。


(;><)「トソン……」


(゚、゚トソン「ご安心下さい王子。あなたは私が全力でお守りしますゆえ」
113 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:26:30.61 ID:EhHjTeIUO
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・


力無く倒れるビスケット。
後ろからは甲高い笑い声が聞こえてきた。

拳をにぎりしめる。
なぜボロボロだったビスケットにとどめを刺したのか。
純粋に腹が立った。



(,, Д )「ブーン、ビスケットを助けてやれ」


(;^ω^)「おっ……?ギコはどうする気だお?」


(,,゚Д゚)「決まってんだろ」


ロングソードを抜いた。
そして、背後の黒フードを睨みつける。


(#゚Д゚)「あいつをブン殴る!!」

114 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:29:38.69 ID:EhHjTeIUO
叫んで、地を蹴った。
ロングソードを横に水平に構え、黒フードの精霊に切り掛かる。


(#゚Д゚)「おらぁ!!」


(* ∀ )「アヒャヒャヒャ!!動きがデカすぎル!そんな攻撃が当たるわけないダロウ」


黒フードの精霊が軽快な動きで攻撃をかわす。
確かに、こんな攻撃は当たらないだろう。


(#゚Д゚)(だが……)


(;* ∀ )「ッ!?」


黒フードが攻撃をかわした先に蹴りを繰り出す。
右足に確かな感触を感じた。


(;* ∀ )「ヒャン!」


黒フードの精霊は地面にたたき付けられ、情けない声をあげた。
121 :どうやら俺は猿さんに気に入られてるらしいな ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:48:38.54 ID:EhHjTeIUO
(#゚Д゚)「食らえぇ!」


ロングソードを振り上げ、渾身の力で黒フードの精霊目掛けて振り下ろす。
その際、一瞬だけ黒フードの精霊と目が合った。



(;゚Д゚)「えっ……」



驚いて剣を止めた。
そして、相手の精霊も俺と同様の反応を見せた。

……フードの中から現れた顔は俺のよく知っている顔だった。



(;゚Д゚)「つー……ちゃん?」


(;*゚∀゚)「ギコ……」



時間が、止まった。
124 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:51:25.26 ID:EhHjTeIUO
闇の精霊、つー。
親父の精霊だ。

幼いときから一緒にいた、俺の姉のような存在。

なんでここに?
なぜ親父と一緒にいない?


いろんな疑問が頭の中をグルグルと回る。


わけがわからなくなった。


ただ言えるのは

このつーは、昔のつーとは違う

自分達の味方ではない、ということだった。



第二話 完
126 : ◆4br39AOU.g :2009/09/24(木) 02:54:07.72 ID:EhHjTeIUO
ごめんね
勉強してくるよ
でも多分もう一話だけ投下するかもワカンネ

質問あればどうぞ
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