( ^ω^)ブーンは、蒼い宇宙を目指すようです
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:56:35.41 ID:fNr5SdAx0



ここに地はなく、空もない。 
在るのは、暗闇に浮かぶ星々ばかり。



「」



「…」



「……!」



「…………!!」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:57:22.29 ID:fNr5SdAx0


深淵なる宇宙、そこに交差と衝突を繰り返す、二つの光があった。



(; ω )「VIP星!? だが、あのテラフォーミングは失敗して」

( A )「そう、頓挫していた、だが、ただ頓挫していると思っていたのか!?」



広大な宇宙を写すモニターには、星の輝きに溶け込むように駆ける流星が映る。



(# ω )「ヴィッパー……!? まさかお前は…!」

(# A )「気付いたか、だがもう遅い!!」



やがて、ハザード音と共に映し出される【 Warning!! 】の文字。




5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 16:58:51.92 ID:fNr5SdAx0



(# A )「計画はもう最終段階に入っている、後は、そう、こいつがあれば……!」

(# ω )「させない、それは、そんな事の為に造られた訳じゃない!」



ピピピ、と続く単音、そして低く軋んだ駆動音。
×印を象る翼を持った惑星間航行機から、メタルアームが展開。

二つの×印の翼を持った、前を行く同型機に接近、続けてアームがそのウイングを捕らえた。


(# ω )「こいつは、彼女の……ツンの夢だ!!」

(; A )「な、なんだと!? 馬鹿な、そんな旧式に追いつけるはずが!?」

(# ω )「だから、返してもらうお……メルトギアを!」


【 Warning!! Warning!! Warning!! Warning!!  】

惑星の衛星軌道上、徐々に重力に引かれ、両機ともに臨界へと近づいていく。
幸い、大気のない星であるため摩擦の恐怖こそない物の、このまま落下すれば無事ではすまない。
繰り返される同じ言葉は、そのまま現状の危機を示していた。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:01:17.78 ID:fNr5SdAx0


(; A )「くっ……まずい、これ以上もたついていては、軌道計算に狂いが…!」

(# ω )「もう諦めろ!! それとも、このまま仲良く事故ってみるかお!?」

(; A )「ふっ……諦める? 馬鹿め、自分の状況を見てからそういう口は叩くんだな」


アームに掴まれたウイングの結合部に、大きな亀裂が走る。


(# A )「KSKドライブ、起動!!」

(; ω )「っっ!! しまっ!!」


勢いよく射出されたクロスウイング、それにより、片や加速し、片や減速した。
これは非常時、重力圏からの緊急離脱の際に使用する分離型ブースターパックである。
本来ならば燃料を使い切った後に切り離すものだが、敢えてそうしたのにも、理由があった。


(; ω )「ま、まだだお!!」

( A )「悪いが、これで終わりだよ、こんな時の為に安全装置は切ってある」



8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:03:38.44 ID:fNr5SdAx0


それは、近年の宇宙ゴミの肥大化に基づき、デブリ法によって。



(#'A`)「まさか本当に追いつかれるとは思わなかったが……そのまま果てろ!! ナイトォ!!」



一部ブースターパックには、セミオートでの遠隔爆破装置が積まれているからだ。



(# ω )「くしょ……ドク、オォォオオオオオオオオ!!」




閃光。



小さな、この広い銀河においては、あまりに小さな輝き。
遠い星々に混ざり合い、二つの流星はこうして離れていった。



9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:05:34.99 ID:fNr5SdAx0

そう。

ここには、大地はなく空もない。 
在るのは、暗闇に浮かぶ星々のみ。


朝も、夜もなく。

惑星を二色に分ける、光と影がそこに在る。


太陽は登らず、暮れず。

道しるべとなって、変わることなく輝き続ける。



人はいつしか故郷を忘れ、暗い世界に安住の地を求める。


ここは人々の二番目の世界【2チャンネル】


蒼い星に憧れを抱いた日も、既に大半の人々の記憶は霞んでしまった。
けれど、それでも、あの海と大地を夢見た者たちも居た。

VIPスター、それが、人が生まれた故郷、かつての蒼い星の名だ。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:08:06.81 ID:fNr5SdAx0

その昔より、今はなき生命の星に思い馳せ、幾度となく行われた惑星再生、テラフォーミング。
しかし核によって焼かれた焦土にほんの施しは意味もなく、人々の関心も、そう長くは続かなかった。

次々と人が去り、見捨てられていく再生計画。

だが、それでも夢を諦めきれない男たちが居た。
彼等はヴィッパーを名乗り、やがて手段を選ばぬ行動を始める。


ドクオと言う男もその一人であった。



「……」


「…………」



(  ω )

そして、破損した機体の中、男はまだ生きていた。
一命はとりとめたが、まぶたに深い傷を負い、今は遠い夢の中―――――。



「…トー」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:10:45.02 ID:fNr5SdAx0


そうまでして、取り戻したかったのは。

そこに、彼にとっての何が。


誰が。



「ナイトー」



( ^ω^)「お?」

ξ゚ー゚)ξ「お?」


ξ゚听)ξ「じゃないわよ、何ぼさっとしてんの」

(;^ω^)「え、えーと……あれ、何してたんだっけ?」

ξ゚听)ξ「テスト航行に決まってるでしょ、ほら早く乗ってよ」
13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:13:41.93 ID:fNr5SdAx0
( ^ω^)「あ……そっか」

ξ゚ー゚)ξ「そうよ、今日もよろしくね、期待のエースパイロットさん?」

(;^ω^)「だ、だからそれはやめてくださいお……」


男の名を、ナイト=O=ホライゾン。 通称ナイトー。


第42回 ラウンジ星間レースにて、チームを総合優勝に導き、操縦部門MVP取得。
続けて、オリオン杯3連覇の偉業を達し。それらの功績から軍の上層部より選出され、
メルトギア搭載、惑星間航行機テストパイロットとなる。

これが、彼の持つ肩書きである。


ξ゚ー゚)ξ「どう?」

(;^ω^)「……出力あげると、CAUTION!!の文字が表示されるんですが……」

ξ゚听)ξ「ああ、それなら平気よ、ただ注意を促してるだけだから」


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:16:25.62 ID:fNr5SdAx0

(;^ω^)「だからそれ、なんか警告されてるんじゃないのかお!?」

ξ゚听)ξ「いいえ、注意よ、あくまでも」


そして女性の名をツン=D=デーレ。 通称ツン。

ラウンジの資源衛星の一つ、アスキートにある開発所の第一人者にして。
この宇宙の中でも数少ない核実験許可証を持ち、その研究を行っている。

そんな二人が行っているのは、核融合炉を使用した新型ドライブユニット。
つまりは核エンジンの開発、およびその実用である。


ξ゚听)ξ「陽電子フィルターでも、やっぱり磨耗が酷いわねぇ……」

( ^ω^)「磨耗するとどうなるんだお?」

ξ゚听)ξ「どうって……こう、放射能が」

( ゚ω゚)「危なーーーーーーーーーい!!」

ξ゚听)ξ「嘘よ」

ξ゚听)ξ「半分はだけどね」


15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:18:32.27 ID:fNr5SdAx0


('A`)「よお、二人とも頑張ってるな」


ξ゚听)ξ「分散させるには回転運動がてっとり早いし、いっそ軸稼動にして……」

ξ* ー )ξ「あ、そうだ……いっそ入れ物も変えちゃえばいけそうね、こう、コマ状に…ふ、ふふふっふふ…」

(;^ω^)「いやいやいやツン、半分ってそれ、本当に大丈夫なのかお!?」

ξ゚ー゚)ξ「ふにゅ?」

( ^ω^)(駄目そうだ……)


(;'A`)「無視しないで!!」


現在の星間飛行の基本は、惑星の磁力と引力を利用した、リニア式 スイング=バイ=システムと、
ばら撒かれた中継衛星からの、強力なマイクロウェーブエネルギー供給。


そして宇宙穴と呼ばれる銀河の裂け目を利用した、空間直結式 ワープ航法。

これらにより、少ない燃料、そして短時間での 超 長距離 惑星間 航行が可能となっていた。

17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:21:42.15 ID:fNr5SdAx0


だが、それにも問題はいくつか。


宇宙穴によって、片道に数年はかかると言われていた距離の問題は解決されたが、
その反面、それを使用できない短距離間の移動には、いくつもの障害が未だ存在した。


例えれば、その宙域への移動だ。

中継衛星などは星間を漂っているものであり、完全な固定化は不可能であるため、
いまだ単独での短距離間飛行の際には、高度な起動計算が要求されてしまう。

技術の発達によって、今では機械で簡単にできてしまうとは言え、
何らかのトラブルが起きた場合、後の対処はとても大変なものになってしまう。


余談だが、その事にちなんで【気をつけよう、宇宙はなかなかその場で止まれない】の標語が生まれた程だ。

19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:24:22.62 ID:fNr5SdAx0


話を戻して。


そこで、非常時には単独で短距離航行を行い、その問題を解決するために必要となる、
強力なエネルギーと、半永久的に稼動できるスペックを持つ、核融合炉が求められたのだ。


ξ゚听)ξ「何か用かしら?」

('A`)「いや、様子を見に来ただけなんだけどな」

ξ゚听)ξ「そう、じゃあこれ、ちゃんとした図面に書き直しておいてくれる?」

(;'A`)「うへ…やな時に来ちまったな……」

ξ゚ー゚)ξ「お願いね」

('A`)「へぇへぇ、んーと何々……タービン…いや、回転による停滞を利用してるのか…」

そして彼はドク=U=オー、このアスキートの数居るスタッフの一人。

研究員でもなく、当初はただの雑工員として働いていたが、
ある日、実は機械弄りから操縦まで、かなりのレベルで取得している事が発覚。
以来、彼もこうして時折やってきては一緒に考えたり、テストに付き合ったりしていた。


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:27:33.08 ID:fNr5SdAx0

そして二人は、意外性に感心するばかりで、最初から警戒する事を放棄し、
なぜ彼がそんな技術を持っているのか、そんな当たり前の疑問さえ、軽く流してしまった。


故に、とうとうその日、それは起きた。


休憩所にて仮眠をとっていた内藤は、けたたましく鳴る警報で目を覚ました。
そして大慌てで飛び起きると、ツンが居るであろう格納庫へと急いだ。


(;^ω^)(な、なんだお!? なんなんだお! この警報は……!)

身の毛を震わせるような、嫌な予感をひしひしと感じながら、
内藤はひた走り、まさかとうとう核による被害が、と最悪の事態を思い浮かべる。


だが、辿り付いた時、彼が見たのは思いもよらぬ最悪の事態だった。



21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:30:51.97 ID:fNr5SdAx0


(;゚ω゚)「ぁ……あ…っ」


格納庫の重力制御が狂ったのだろう、数人のスタッフが宙を漂っている、
それも、身体の各所を赤く染め、周囲に丸くなった赤い球体を舞わせながら。


('A`)「ん……ナイトーか、そういやお前が残ってたっけ……ち、いい所で」

(  ω )「な……なん…」

ξ;-凵G)ξ「…ない…と…」


何より息を飲んだのは、全身を丸めて、自身を抱きしめるようにしゃがむツンの、
乱暴に引き裂かれた衣服と、覗き見えてしまう艶かしい素肌。 そして、涙に濡れた表情。


ξ;凵G)ξ「ぐす……ぅ、く……」

(  ω )「………………」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:38:43.60 ID:fNr5SdAx0

('A`)「それとも、お前も殺しちまえば、ツンもちったあ大人しくなるか?」

そして、ツンに覆いかぶさっていた姿勢を正し、憮然とした態度でその場に佇む、ドクオ。
理解したくないという思いさえ、一瞬で掻き消すほどの激情が内藤に宿った。
そんなナイトーの様子を知ってか知らずか、ドクオは舌なめずりを一つに、言葉を続ける。

('A`)「俺さ、ツンの事、ずーっと狙ってたんだよ、いつか無茶苦茶に犯してやりたいってな」

('A`)「見ろよ、いつもはあんなに毅然としてても予想通り、ちょっと脅せばこの様さ」

(  ω )「………れ」

('A`)「だが、困ったことに股だけは開こうとしねえ、まあ俺としても殴るとかはしたくないわけよ
   せっかくこんないい女好きにできるんだ、綺麗なままで存分に味わいたいんだよねぇ」

(  ω )「……………まれ」

('A`)「それに技術も一流だ、だから最終的には一緒に来てもらうんだけど、その前にお楽しみってな
   まあ最初は嫌々って泣き喚いてるだろうけど、すぐによがって自分から腰振るように」

(#゚ω゚)「黙れ!! エロ漫画の読みすぎだてめえ!!」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 17:40:43.45 ID:fNr5SdAx0

('A`)「おおっと」

ξ;凵G)ξ「あうっ…!」


内藤が拳銃を抜こうと腰に手を向けるや否や、ドクオはツンの手を取り、
華奢な身体をつりあげるように、その場で起き上がらせる。

そして、ナイトーが銃を向けるのと、ドクオがツンを抱き寄せたのは、ほぼ同時だった。


('A`)「おっと、いいのか? ツンに当たるぜ?」

(#゚ω゚)「……!!」

盾にでもするように、ドクオはツンを前に出し、後ろから抱く形を取った。

見れば、ツンは見られている事さえ気にせず、潤んだ瞳でナイトーを見据えた。
シャツはブラごと正面から裂かれ、ジーンズは立ち上がった反動で膝の辺りまで落ちている。
余った片手でどうにか隠そうとするが手は足りず、胸元を抑えるもほどよく育った乳房が覗き、
下に至っては、腰のラインから小ぶりなお尻に、白いショーツが丸見えであった。
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 18:04:48.51 ID:fNr5SdAx0

と、その身体をドクオの手がまさぐり始めた。


ξ; )ξ「ひゃっ…!!?」

(*'A`)「はー……すべすべ、たまんねーわこれ」

あらわになった太ももを執拗にさすられ、ツンが身悶えるが身動きをとれず、されるがまま。
手はそのまま尻をこねるように撫で、腰へと這わせ破れた服を少しづつずり上げながら、
ついには、力なく震える手を押し退け、下から持ち上げるように乳房を揉みしだき始めた。

ツンは小さく悲鳴を漏らしながら、ぎゅ、と目を閉じ涙を零した。


(* '∀`)「フヒッ! フヒヒッ!! これちょっと最高なんですけどーーーーー!!!」

ξ;凵G)ξ「…やだ……やだよぉ………ない、と」

(  ω )「………ツン、動くなお」

ξ;凵G)ξ「え……」


28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 18:06:16.77 ID:fNr5SdAx0

そして、ドクオが欲望のままに視線をツンに向け顔を近づけていく。
そして、乾いた銃声が二度、格納庫に反響し、ドクオの絶叫が響いた。


(;゚A゚)「ぃぃぃぎぃああああああああああああ!!! がああああああああああ!!!!!」

(;゚A゚)「てて、てめぇえ!! なん、なんで!!」

(#^ω^)「そんだけ仁王立ちして、こんだけ狙える時間があれば、そりゃ撃つお!!」

間髪居れずにナイトーは床を蹴った、半無重力なのでそれだけで一気に距離は詰まる。
足に二発の弾丸を撃ち込まれ、もんどりうって倒れたドクオは、それを見るなり立ち上がり、
悪態をつきながらツンから離れ、逃げるようにその場を離れていった。

(;^ω^)「ツン!!」

ξ;凵G)ξ「な、ない…とぉ……」

(;^ω^)「大丈夫かおツン、どっか痛いとこないかお?」

ξ;凵G)ξ「ないとぉ!!」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 20:45:59.97 ID:fNr5SdAx0

ふらふらとおぼつかない足取りで、ツンはすがるように身を預けると、
堪えていたものを全て吐き出そうと、小さな子供のように泣いた。
ナイトーは警戒しつつも、ひとまず無事だった事に安堵の息をつく。

そして、泣きじゃくる背中を抱きしめようとするが、それよりも先にツンが身を起こした。
見ればまだ目は赤く、喋ろうにもしゃっくりも止まらず声は掠れてうまく話せない。
だが、それでも懸命に何かを伝えようとするツン、やがて彼女の指が一つの扉を指す。


(;^ω^)「第二デッキ……?」

ξ;凵G)ξ「ひ…っく……そ、いで……ほんとの、らいは……」

ξ;凵G)ξ「ぶ、ブーン……が…!!!」

(;^ω^)「ま、まさか……ドク、ブーンを…?」

ξ;凵G)ξ「行っ……て」

(;^ω^)「でも…こんな状態で放ってなんか」

心配するナイトーだったが、ツンは涙を落としながら彼の胸を強く押した。
明らかに弱りきった様子だが、それでもはっきりと、行けと言っている。
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 20:48:33.02 ID:fNr5SdAx0

ナイトーはしばし、彼女の目を見つめ、やがて強く頷くと、その場を後にした。

やがて走りにくい低重力の廊下を抜け、第二格納庫に到着してみれば、時既に遅し。
ドクオはメルトギア開発と同時に進行していた新型機、ブーンに乗り込んでいた。


そして、ナイトーを見るなり、ドクオは―――――。




――――そして、男の夢はここで夢は終わる。




(; ω )「……う…ん」


(;つωФ)「いっ……て、なんだ……なんか…目が変だお……いやそれよりここは…?」



 脳裏に浮かぶ 『…ツンは諦めよう、だが、こいつは、ブーンは俺が頂いた!!』 別れ際の映像。



(; ω )「あ、ああ…そうだ……あれから、追いかけて……それで……」


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 20:50:39.23 ID:fNr5SdAx0


いくつもの断片的なフラッシュバック、追いかける映像、どうにか捕らえた映像。
それから、無様にもウイングごと引き離される映像、そして。


(; ω )「それで…………逃がして、しまった……僕は……」

(; ω )「僕が……あ……あ、あ…あ、あ」

(#;ω;)「ぅぅぅううううぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!」









   。





47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 20:53:07.39 ID:fNr5SdAx0




【宇宙暦195年 5/2、ラウンジ第3衛星アスキートにて、強奪事件が発生】


【奪われたのは最新鋭の惑星間航行機と、研究中の新型ドライブユニット】


【犯人は、VIP星テラフォーミング計画の一員である】


【尚、当時のテストパイロットが奪還に赴くも、失敗】


【現在、核融合炉、メルトギアを搭載した新型機の行方は不明である】




【 並び、追跡に向かったパイロットの行方も、定かではない 】

49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 20:55:15.10 ID:fNr5SdAx0

あれから数日、強奪の事件はラウンジ星の軍関係者たちの間で、瞬く間に広まった。
そして当のナイトーは、ひとしきり叫んだ後、大破した機体の中で機を失ってしまい。


(  ω )「……?」


( ФωФ)「ここは……」


今に至る。


(;ФωФ)「ほ、本当にどこだ…」


そう、気付けばナイトーは布団に寝かされ、見知らぬ部屋の天井を眺めていた。

疑問を口にしながら周囲を伺うも、人の気配はなく、相変わらず部屋に見覚えは無い。
見れば酷く殺風景な部屋だった。ベッドと、小さなタンス、バケツとタオルがあるだけ。
立ち上がり、円形の小さな窓へと寄れば、外は星がまたたく宇宙の海が広がっていた。


50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 20:57:42.60 ID:fNr5SdAx0

( ФωФ)「……すごい跡になったな、これ」

窓に映る自分の顔、痛々しく残った傷跡をなぞれば、まだ微かな痛みがある。
他にも傷はたくさんあるが、特に目の部分が酷く、よく眼球は無事だったと感心していた。


「らららららんらんらん、たらららったたららら〜」

(*゚ー゚)「…ら?」

と、そんな時、入り口から何やら歌声、続けてドアが軽快な音を立てて開かれた。
次いで現われたのは、ツンよりも更に小柄な、例えれば悟リに見えなくも無い、
幼い容姿の少女であった、そしてナイトーを見るなり嬉しそうな笑顔を浮かべた。

(*゚ワ゚)「ああ、よかった! やっと起きた!」

(;ФωФ)「えと、君は…?」

(*゚ー゚)「あ、私はシィ=C=レモンと言います、シィって呼んでください」

(*゚ワ゚)「でも、フルネームで通して読むのだけは絶対にやめてね!」

( ФωФ)「シィ、かお……僕はナイトー=O=ホライゾンだお」


51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:00:33.27 ID:fNr5SdAx0

( ФωФ)「それと……この状況からして、もしかして僕は君に助けられたのかお?」

(*゚ワ゚)「だいたい合ってる、看病したのは私、でも助けたのは私じゃないよ」

( ФωФ)「そのへん、教えてくれる?」

(*゚ワ゚)「いいけど、それならデッキに行こうよ! ギコも居るし!」

( ФωФ)「ギコ…」

(*^ー^)「うん、この船の艦長だよ……っていうか、それよりー…」

( ФωФ)「うん?」

(*゚ワ゚)「なんかお兄さん、口調が変で面白いね〜、想像と全然違うや」

(;ФωФ)「変!? そ、そうかお……?」

(*゚ー゚)「うん! だって目つきとか、その傷とか凄いかっこいいのに
    そうだお〜って、絶対変だよー!」


(;ФωФ)(……変………変なんだ…)
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:03:02.36 ID:fNr5SdAx0

そんなこんなで、ナイトーはシィにつれられデッキへと向かった。
多少のぎこちなさはあるが、この時より口調を変え始めたのは語るまでも無く。

やがて着いてみれば、そこには正面にある大きなモニターに向かって、数名のスタッフが腰掛け。
すぐ先に居たのは、マントを羽織り、大きな猫耳ヘアバンドをつけた怪しい男だった。

(*゚ー゚)「起きたんだよ!」

(,,゚Д゚)「お、ちゃんと生きてたか、あんた」

(;ФωФ)「うわ、変態だ!!」

(;゚Д゚)「へ、変態ちゃうわ!!」

(;ФωФ)「うるさい! この猫耳つけながら腕組んで前を見据える変態め!!」

(;゚Д゚)「ちが、これはシィの趣味だ!! 俺だって嫌だけどうるさいからしょうがなく!!」

(*゚ -゚)「わるかったなぁ……」

と、最初からノリの良い彼の名はギコ=N=ハンニャ、聞けば彼はジャンク屋の主で、
この宇宙船、ネコネコハニャーン(シィ命名)の艦長であるそうだ。

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:06:37.45 ID:fNr5SdAx0

そして、スタッフ達のくすくす声とボソボソ声を尻目に、
話は無駄なく、かくかくしかじかテンポよく進み。


(,,゚Д゚)「………そうか、あんた、例の強奪事件の……」

(*゚ -゚)「かあいそう……」

( ФωФ)「……それで、アスキートは…今はどうなって…?」

(,,゚Д゚)「ああ、確かころ……」

言いかけて、ギコはちらりとシィの方を見た。
すると不思議そうに少女は首をかしげ、ギコはもう一度言い直した。

(,,゚Д゚)「ころころされたのは一部のドック作業班だけで、あとはみんな無事らしい」

(*゚ー゚)「ころころ?」

( ФωФ)「じゃあ、あの後は何もなかったのか……よかった」

(,,゚Д゚)「…んで、あんたはこれからどうすんだ?」

( ФωФ)「……」


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:09:00.83 ID:fNr5SdAx0

どうするか、を考えた時、浮かんだのは最後に見た彼女の姿だった。
あんなに辛そうな表情をしながら、それでも守ろうとした物。

このままで、いい筈がない。

不思議と迷いを感じることなく、ただするべき事だけが明確で、
ナイトーは何か決意を固めるように、一つ頷いた。


( ФωФ)「奪われた物を、取り返しに行こうと思う」

それに、ドクオが何を企んでいるのかは分からないが、あれだけの事をしたのだ、
きっちりと、割に合うまで、その代償を受け取ってもらおう。


( ,,-Д-)「……そうか…まあ、その、なんだ……」

と、そこでギコは目を細め、どこか言い辛そうに口ごもった。
ナイトーは、不思議に思い問いかけるも返事はなく、しばしの時が流れる。

やがて、後方のドアが開いた。
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:24:02.78 ID:fNr5SdAx0

入ってきたのは、小太りでいかにも温和そうな男だった。
視線が一斉に降り注ぐが気にした様子もない、神経も図太いらしい。

(;´∀`)「ギコぉ、やっぱあれもう駄目モナ」

(;゚Д゚)「お、おい」

(;´∀`)「コクピットブロックはまるごと焼けちゃってるし、
      たぶん装甲継ぎはぎしても、すぐに圧力に負けて使い物にならないモナよ…」

(;ФωФ)「…!」

(;゚Д゚)「モナー、待て、おい」

(;´∀`)「例の運ばれてきた人には悪いけど…部品抜粋くらいしかもう価値は…」


( ´∀`)「……モナ?」

(;ФωФ)「………そう……ですか」

( ;-Д-)「…あー」


59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:27:04.67 ID:fNr5SdAx0

馬鹿やろう、とギコが男を軽く小突くと、男はさも不思議そうに辺りを見回していた。

その言葉の意味を察したのだろう、ナイトーは視線を落とし、気落ちした様子で呟いた。
出鼻をくじかれ、このままでは出戻り同然、このまま逃げられたと報告するしかないのか。
そう思うと、ナイトーは溜め息の一つもこぼさずに居られなかった。


(,,゚Д゚)「……」

そしてギコの本心は、自分の船でこのままナイトーを目的地、VIPまで送ってやりたいと思っていた。
だがこの一件、どうにもきな臭い、ただの強奪事件で終わるとは思えないと、彼の勘はそう言っている。

見たところ、あの撃破されていた機体も最近の物だった。
つまり、新型を使って尚、彼は戦いに敗れたのだ。

ギコの、いや、ギコ達の目には、ナイトーという存在はそう映っている。

折角送ってもすぐに落とされ、無駄死にならぬ無駄運びでは洒落にならない。
それにあまり血生臭い物は、あまりシィに見せたくはない。

(,,゚Д゚)(……俺らは、慈善団体じゃねえんだ……わりぃが)

(,,゚Д゚)「じゃあ、とりあえず近くのステーションまでは送るからよ」

( ФωФ)「……ありがとうございます」


60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:29:27.20 ID:fNr5SdAx0

(,,゚Д゚)「聞いたな! 軌道変更だ!!」

( ・∀・)「進路よーし、安全確認よーし」

(*゚д゚)「えー!!」

( ,;゚Д゚)「えーってなんだシィ……嫌なのか?」

(*゚ワ゚)「やだよ! だってナイトーが居れば………あれ?」

ギコは後味の悪さを感じながら、ナイトーを近くで降ろす事に決め、シィはそれに抗議した。
だが、その時、シィは何やらしきりに周囲を気にしする素振りを見せ、酷く動揺を見せ始める。

(;゚ー゚)「あ、え、あ…駄目、ど、どうしよう…!?」

(;ФωФ)「ちょ、どうしたのシィちゃん?」


(;゚Д゚)「まさか……」

だが意外にも、その変化に戸惑うのはナイトーのみで、残る乗員はみな一様に表情を強め、
じっと緑の線がともる、レーダーと思わしきモニタを凝視していた。


61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:31:07.41 ID:fNr5SdAx0

遅れて、反応が点になって現われる、それも一つや二つではない、
四つ、六つ、更に増えていくこの点は熱源反応。

(,,゚Д゚)「来やがったか……おい、どこが安全確認よしなんだ」

( ・∀・)「実は適当に言った」

(;´∀`)「あ、あわわわわ……モナ」

(;゚ -゚)「ぎ、ギコ……」

(,,゚Д゚)「……心配すんな」


( ФωФ)「これは……宇宙海賊、ってやつか?」

(,,゚Д゚)「ああ…」

ナイトーも話には聞いていたが、実際に見るのは初めてだった。
その名の通り、奴等は宇宙を荒らし、他の船への襲撃を繰りかえす困り者集団。
近年になってその姿と、活動の幅を一気に増加させており、警戒が強まっている。


62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:33:13.68 ID:fNr5SdAx0

(,,゚Д゚)「数は!」

( ・∀・)「10機、どうもストーキングされてたみたいだよ、母艦らしき反応もある」

(;゚Д゚)「ちぃ……厄介な」

ステーションに向かう軌道に乗ったことが、追跡から逃れる為とでも思われたのだろうか。
まるで逃がさないとでも言わんばかりに、一気に仕掛けてきた。

まあ、それもその筈、シィが先ほど見せたような、あの不思議な察知能力によって。
ギコたちは今まで、そんな盗賊や、あらゆる危険から逃げ続けてきたのだ。

( ・∀・)「どうすんのさギコ? 逃げるにしても、流石にもう無理ってもんだよ?」

(;゚Д゚)「ぬ…ぐ……」

( ・∀・)「戦う?」

(,,゚Д゚)「……それは」

(;ФωФ)「あの…」

(,,゚Д゚)「ん? ……ああ、すまねえな、こんなのに巻き込んで、だが今は」

(;ФωФ)「あ、いや、そうでなくて、この船って戦闘用の飛行艇とかないんですか?」

(;゚Д゚)「はあ? まあ……あるにはあるが……」
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:49:27.74 ID:fNr5SdAx0

( ФωФ)「貸してもらえませんか? 助けてもらった恩も返したいですし
       ていうか、そもそも僕のせいっぽい空気ですし」

( ФωФ)「あのくらいの数なら……多分、何とかなると思うんで」


(;゚Д゚)(何を言い出すかと思えばこいつぁ……)

だがそれを許可すれば、少なくとも時間稼ぎにはなるかもしれない。

運がよければ逃げられるかも、とまで考えてから、その浅ましさにギコは拳を握った。
いくら見ず知らずの他人だからと言って、こんな事で命を捨てさせていいものかと。


(;゚Д゚)(そうだ、助けてやった意味がねえじゃねえか)


(; Д )(でも他に手はあるか…? うちのクルーは操縦はできても戦闘経験はねえし
     それなら、確かに少しでも経験がある奴に任せたほうが……)


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:51:25.36 ID:fNr5SdAx0

(;ФωФ)「ギコさん?」

(*゚ー゚)「ナイトー! それならこっちだよ、ついてきて!」

( ´∀`)「こんな事もあろうかと、既に準備はできてるモナ!」


(;゚Д゚)「ってうわ!? ちょっと待てシィ! あとモナー、お前ちょっとは空気読め!!」


そして、ナイトーはシィに手を引かれ格納庫へ向かった。
モナーが更にそれを追い、ギコも行こうとした所で、モニターに大きな人が映り、
続けて高らかな笑い声が響くと、反射的に足をとめ、ゆっくりと振り返った。

『ハーッハハハハハハインリーッヒ!!!』

(;゚Д゚)「……こ、この訳のわからん笑い声は……」



68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:54:09.12 ID:fNr5SdAx0

从 ゚∀从『やあやあジャンク屋の諸君! 元気してるかね? 私は元気だぞ』


( ・∀・)「敵母艦からの通信ですね」

(,,゚Д゚)「拒否れ」

( ・∀・)「手遅れだよ」

(,,゚Д゚)「つーか勝手に受信すんなよお前、マジで、怒るよ俺」

( ・∀・)「ごめん」

(,,゚Д゚)「許す」


从 ゚∀从『おいこら、無視すんな』
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 21:59:48.78 ID:fNr5SdAx0

(,,゚Д゚)「またあんたか…」

从 ゚∀从『おー、また私だよ、久しぶりだねえギコ』

宇宙海賊、その女頭であるハインリッヒその人である。
そして、ギコは元々この船のクルーであり、彼女は元上司だった。

(,,゚Д゚)「何のようだよ」

从 ゚∀从『そりゃー勿論、金目の物をいただきにね』

(,,゚Д゚)「元とは言え、部下だった奴にする事かね」

从 ゚∀从『おいおい、何を言い出すかと思えば…わかってないな』


从 ゚∀从『お前は、私達を裏切ったんだ、そうだろ?』

(,,゚Д゚)『……』

从 ゚∀从『なら、その結果はわかるよな? な?』


从 ゚∀从『裏切り者には、死、あるのみだよ』


72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 22:05:48.12 ID:fNr5SdAx0

(,, Д )「……っ」

从 ゚∀从『つー訳だ! どうせ抵抗したって無駄さ! 大人しく死んd』

ギコは俯き、忌々しげに唇をかみ締めながら、降りかかる言葉に耐えていた。
だが、映し出された映像は、話も途中にぶれ始め、すぐに途絶えた。

そして砂嵐が映るモニターに向かい、クルーの一人が指を向けた。


( ・∀・)「言いたい事はそれだけか、ふっ、じゃあな」

(,,゚Д゚)「通信切る前に言えよ、そういうのは」

( ・∀・)「だって怖いんだもん」

(,,゚Д゚)「怖がってる奴が通信むりやりカットすんな」

( ・∀・)「大丈夫、責任は全てギコにあるから」

(,,゚Д゚)「てめえ」
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 22:15:01.74 ID:fNr5SdAx0

一方、格納庫では。

ナイトーは既に戦闘用航行機に乗り込み、各所のチェックを始めていた。
型は最初に乗っていた物よりも三つほど落ちるだろうか、明らかに旧式である。

そんな時代遅れの一品で、これから10機もの相手をしようと言うのだ。
傍目に見れば無謀、あるいは捨て駒以外の何物でもないだろう。

機体の整備をしていたモナーも、それは感じていた筈だった、しかし。


(;´∀`)「大丈夫モナ?」

( ФωФ)「はい、準備終わりました」

(*゚ワ゚)「ファイトー!」

だが、不思議なことにその不安はあまり感じなかった。
何故ならシィが、あの危険を察知できる少女が、ナイトーと言う男を信用しきっているからだった。

( ФωФ)「それじゃあ、行ってきます」

( ´∀`)「ほらシィ、下がるモナ」

(*゚ー゚)「うんー」

78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 22:24:42.97 ID:fNr5SdAx0

+の形を象ったウイング部の背後から、輝く光が漏れ出した。
コクピットでは、各種計器が音を立て、パネルを軽快に叩く音が響く。

続けて正面のハッチが開かれる、既に空気は抜いてあるので干渉もない。
宇宙服を身に纏った少女が、手を振っているのがモニターに映る。

ナイトーはそれを確認すると一つ頷き、前を見据えた。


( ФωФ)「うん……なんだかこの機体、オリオン杯を思い出すな」

( ´∀`)「モナ?」

( ФωФ)「何でもないです、それじゃ、出ますお!!」

(;´∀`)「あ、ど、どうぞ! モナ!」

幾度か吹き出るバックファイヤ、そして機体を固定していたロックが解かれ、
宙に浮き上がると、何度か浮遊行為を繰り返し、そして、格納庫を飛び出していった。
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 22:31:48.75 ID:fNr5SdAx0

( ´∀`)「オリオン杯……?」

(;´∀`)「って……あれ? そういえば……確か前回の優勝チームの…」

(;´∀`)「あれ? あれは違うモナ? いやでも………あっ!?」

(;´Д`)「ああああああああああああああああああああああああっっ!!!!」

(*゚ー゚)「どうしたの?」

(;´∀`)「思い出した!! 思い出したモナ!!」

(;´∀`)「あのオリオン杯の三連覇を成し遂げたっていうパイロット! ま……まさか…」

オリオン杯、それはラウンジ星間レースなどと違い、一般的な競技ではない種目であった。

その内容とは、妨害、破壊、何でもアリの危険なレースであり、毎年死者も出ている。
つまりナイトーは、そのある種の実戦とも言える過酷な戦いを、三度に渡り勝ち抜いたのだ。


(;´∀`)「……そういえば、テストパイロットがどうとか、聞いたような気も…」

(*゚ー゚)「?」

(;´∀`)「こ、こうしちゃ居られんモナーーー!!」
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 22:40:40.74 ID:fNr5SdAx0

( ・∀・)「あ」

(,,゚Д゚)「あ?」


舞台は戻り、ギコたちが居る船の中枢デッキ。
今しがた、自分等の船から一隻の航行機が飛び出したのを、レーダーが捉えた。

( ・∀・)「ファマスが発進しちゃいましたよ」

(;゚Д゚)「げっ、ナイトーか!?」

( ・∀・)「そうみたい、通信繋いでみます?」

(;゚Д゚)(ど、どうする俺、止めるべきか、いやでも……)

(;-Д-)「……」

(,, Д )「あああああああ、もおおおおおおお!!!!」

(#゚Д゚)「ああ、繋げ! もういい、どうなっても知らん!!」

( ・∀・)「あいあいさー」

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 22:51:06.06 ID:fNr5SdAx0

ナイトーが乗り込んだ機体、ファマスには映像投影機は存在しない。
それゆえ、通信には音声のみでしか行うことはできない。
だが、その単純性のおかげか通信速度は他よりも速く、傍受もされにく物になっている。


(,,゚Д゚)「おい、聞こえるかナイトー!!」

『お…いや、はい、聞こえます』

(,,゚Д゚)「いいか、無理に戦おうとしなくていい、今は離脱を優先したい」

『そうですね、母艦もあるって聞きますし』

(,,゚Д゚)「こっちは、これより衛星ユトリサバの軌道に乗って、デブリに身を隠す
     んでそのままラウンジ軌道を目指すことにした、そこまで行けば連中も手は出せないからな」

『了解だぉ……です』

(,,゚Д゚)「だから5分だ、5分逃げ回ってくれ、そうすりゃ何とかなる」

『5分も……』

(,,゚Д゚)「ああ、どうだ、それでもやるか?」
87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 22:59:37.17 ID:fNr5SdAx0

『やります……ぜ』

10機を相手に5分間逃げ回る、それだけでも絶望的な話だ、
それに加えて、単独で戻って来いと言っている、事実上の死刑宣告に近い。

ギコは自分で言いながら、自分に嫌気を感じていた、だが、それが逃げる最善の手だ。
そしてナイトーは、一切の恐れを見せることなく、変わらぬ口調で受諾した。
ほんの拍子抜けを感じながら、ギコはそれを最後に通信を切る。

(;・∀・)「正気っすか?」

(,,゚Д゚)「るせえ」

(;・∀・)「大体、デブリ帯に入れば通信だってできなくなる、そしたら」

(#゚Д゚)「うるせえ! あいつがやるって言うのが悪いんだろ!!」

クルーからのちょっとした顰蹙を買いながら、ギコは目的地を復唱。
そしてレーダーで位置を確認しながら、この場からの離脱を指示した。
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:07:17.02 ID:fNr5SdAx0

と、そこへ小太りの男が、息を切らして駆け込んできた。
そして背中にはシィが掴まっており、到着すると元気に飛び降りる。

(*゚ー゚)「とーちゃく」

(;´∀`)「ぎぎぎギコォ!! 大変モナ!!」

(,,゚Д゚)「そのファイナルアタックライドみたいな呼び方は止めろ、どうした?」

(;´∀`)「それが、あのナイトーって奴、もしかしたら」

( ・∀・)「ギギギギコォ!! そのナイトーからもっかい通信がきてるよ」

(,,゚Д゚)「あ? ああ、受けろ、つーかその呼び方はやめろ」


『あ、聞き忘れてたんだけど』

(,,゚Д゚)「なんだ」


『5分稼ぐのはいいけど……別に、あれ全部落としちゃってもいいんだお?』

『いや…だろ?』


その言葉に、一同、唖然としたまま固まった。
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:15:54.93 ID:fNr5SdAx0

(*゚ワ゚)「とーぜんだよ! ナイトー!」

『おk、それだけ聞きたかった!!』

正確には、一人を除いて。シィだけは何故かその言葉に満面の笑みを浮かべ、答えていた。

やや遅れてギコがハッとしたように静止の声をかけるが、
それとほぼ同時、今度はナイトーの側から、通信は切られた。

(;゚Д゚)「……っ、何言ってんだよ、あいつ…そんな真似が」

出来る訳が、そう続く言葉よりも先にレーダーに反応。
ファマス機と敵機の光点が隣接、そして重なった。

そして、レーダーの波状反応による明滅、そのたった一度の間に、
敵機の光点が掻き消され、ファマスはすぐに進路を変えた。


(;・∀・)「え、い、一機撃墜!?」

(;゚Д゚)「おいおいおい、あれ本当にファマスなのか!?」

(;・∀・)「見りゃわかるでしょ!」
94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:26:22.85 ID:fNr5SdAx0

そうこうする間に、更に敵機の反応が二つほど消えた。
我が目を疑うばかりのギコたちを他所に、モナーはあれが本物であると確信する。

見ればレーダーに映る光点が、その並びを変えていく。
先ほどまでバラバラだった物が整列し、フォーメーションを組まれた。
あれは只者ではないと気付いたのだろう、多数対単独の状況に持ち込まれてしまう。

だが、それでも尚、ファマスの光点は消えることなく、
逆に次々と、敵機の反応を消していった。


やがて軌道計算の手も止まり、クルーが息を飲んで見守る中、終に。


(;・∀・)「……敵機、全滅」


一人が、ぽつりと零すように呟いた。


(;゚Д゚)「う、うそぉ……」

(*゚ワ゚)「わー! 勝った!」

( ´∀`)「モナ!」
97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:34:23.86 ID:fNr5SdAx0

これは時間にして、5分弱の間に起こったことである。
ギコたちは既に細かい退避航路をとることも忘れ、ただ呆然とモニターに見入っていた。
そして、何故かモナーはとても誇らしげに、先ほどの閃きを皆に伝えた。


(;・∀・)「聞いた事はあるよ……天才とか呼ばれてる奴の噂」

(;゚Д゚)「あいつが、そうだってのかよ……」

(*´∀`)「皆だって見たモナ!? 間違いないモナ!」

(*゚ー゚)「そうだよー!」

(,,゚Д゚)「シィ…」


(,,゚Д゚)(そういえば、シィのやつ、妙にナイトーに懐いてたっけ)

(,,-Д-)(……)

(,,゚Д゚)(……そういう、事なのか?)


98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:42:52.35 ID:fNr5SdAx0

その後、ハインリッヒ率いる宇宙海賊の母艦は。

从;゚∀从『お、覚えてろーーーーーーー!!』

との言葉だけを残し、この宙域を離れていった。


それからやや遅れて、ナイトーを乗せたファマスがハニャーンの格納庫に戻ってきた。
機体には、おびただしい数の裂傷と焦げ跡、そしていくつかの弾痕が刻まれてはいるが、
その形状には何の狂いもなく、見事なまでの勝利であった。

コクピットから降りたナイトーだったが、流石に疲れたのだろう、
額から汗をいくつも伝わせながら、ふらふらと機体によりかかっていた。

外から見れば楽勝だが、その内実、極度の緊張からの解放により、
ナイトーはもはや疲労困憊、今にも倒れる寸前であった。

(;ФωФ)(……なんとか、なったのかな)

(,,゚Д゚)「…おい、ナイトー、ちょっといいか?」
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/13(月) 23:50:21.70 ID:fNr5SdAx0

(;ФωФ)「……はい?」

(,,゚Д゚)「………まずは、礼を言っておく、助かったよ」

(;ФωФ)「恩を返しただけだぉ…さ、気にしなくていいです」

(,,゚Д゚)「それで、だな……あー、と」


ギコは何やら言いあぐねていたが、やがて意を決するように顔をあげ。
しばし、切り出す言葉を捜すように間延びした唸り声を漏らし。

(;゚Д゚)「あー、まだるっこしい、もういいや、単刀直入に言うぞ」

(,,゚Д゚)「もし何なら、このままお前をVIP星まで乗せてってやるが、どうする?」

( ФωФ)「え」

(*ФωФ)「え、ほんとに!? いいのかお!?」

(;゚Д゚)(喰いつきはええな、おい)

(,,゚Д゚)「ああ、だが一つ条件がある……それは――――」
104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/14(火) 00:01:08.30 ID:PhJDLiGI0

( ・∀・)「軌道計算おわり、進路よーし、安全確認よーし」

(,,゚Д゚)「それじゃ、目的地はVIP星、ネコネコハニャーン、出航!!」


『『あいあいさー!!』』


(;ФωФ)「このユニフォーム…ちょっと小さいような」

(*゚ワ゚)「似合ってるよ! これでナイトーもリッパなネコの一員だね!」


その日、ギコという男がナイトーの腕に惚れこみ、クルーの一人として迎え入れた。
こうして宇宙は、様々な思惑も、陰謀も、人の夢も何もかもを受け入れつつ、
今日も明日も、変わらぬ世界であり続けるのだろう。
107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/14(火) 00:04:51.48 ID:PhJDLiGI0


ここは、かつての蒼い星を忘れた人々が生きる、第二の故郷【2チャンネル】

その星の一つ、VIP星を目指して旅立った男の目指すのは、
物か、人か、あるいは場所か、それとも復讐を果たすことだったのか。

今はそれを知る術はなく、男を乗せた船は今もまた速度をあげていく。

果たしてその先に、彼にとっての何が、誰が。



(,,゚Д゚)「これでしばらくラウンジ星も見納めか、なあナイトー?」

( ФωФ)(……ドクオ…今度は……逃がさないお)

(,,゚Д゚)「おい聞けよ、人の話」

(,,゚Д゚)「…ま、いいか、何にせよこれで…」



108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/14(火) 00:11:33.83 ID:PhJDLiGI0

(,,゚Д゚)(こいつに貸しを作っておけば、後々役に立ちそうだし、
     あわよくば……このまま正規のクルーになれば頼もしい)

(,,゚Д゚)(それにさ………実は憧れだったんだよね…)


(,,゚∀゚)(凄腕のパイロットを従えた、一隻の艦長ってさ! やべえ超自慢できんぞこれ!!!)


(*゚ワ゚)「なんで一人でアヒャってるの?」

(,,゚Д゚)「アヒャってないぞ」

(*゚ー゚)「アヒャってたよ」




そう、この先に待ち受けるのは、果たして何なのか。


今はまだ、誰も、誰も―――――――。



110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/14(火) 00:12:18.25 ID:PhJDLiGI0







( ^ω^)ブーンは、蒼い宇宙を目指すようです


       第一話 「星追いのギコ」



            つづく





115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/04/14(火) 00:16:19.93 ID:PhJDLiGI0
途中に何度か離脱してすみません、というわけでお疲れ様でした。
本日の航行は以上になります、皆様、重力にお気をつけてお帰りください。
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