第九幕
- 458 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:10:45.08 ID:RoiL6Hj7O
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
クーに背負われ、連れられた先は、町の地下を走る地下水道だった。
川 ゚ -゚)「襲撃、などという事は予測できたことだからな。
対策もきちんと練っておいた」
地上からハシゴを伝って降りながら、クーが言う。
川 ゚ -゚)「あの建物は地下水道の真上に建っていてね、秘密裏に地下水道に繋げておいたんだ」
_
( ゚∀゚)「クーさん!」
地下水道の脇に沿う細い通路にクーが足を着けると、ジョルジュが駆け寄ってきた。
- 461 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:13:03.44 ID:RoiL6Hj7O
- _
( ゚∀゚)「無事で何よりっす」
川 ゚ -゚)「当然だ。皆は?」
_
( ゚∀゚)「所定の場所で待機してますよ。
建物からの出入口も完全に塞いでおきました。
奴ら今頃大慌てっすね」
川 ゚ -゚)「そうか、ご苦労」
_
( ゚∀゚)「いえいえ……」
_
(;゚∀゚)「って、ちょ、どうしたんすかソレ!?」
ソレ、と言うのが自分を指しているんだろうなとは気付きながら、
一々気にすることもないと目を閉じたまま黙っていると、
ゴン、と鈍い音に続いて「ぐあ」とジョルジュが呻いた。
川 ゚ -゚)「「ヒッキー」だ。次にそんな発言してみろ、下水道に住むネズミの餌にしてやる」
_
(;゚∀゚)「……スンマセン」
川 ゚ -゚)「……重症だ、先に行ってショボンを呼んでくれ」
- 462 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:18:35.25 ID:RoiL6Hj7O
- (;´・ω・`)「これは手酷くやられたね……」
皆の集まっている下水道の十字路に運ばれたヒッキーを見て、ショボンは唸った。
(´・ω・`)「ちょっと痛むよ」
そう言ってヒッキーの身体に手を這わせる。
(´・ω・`)「肋骨は2、3……4本はおかしいな……。内臓は……大丈夫みたいだ」
腹部のあちこちを触診し、ヒッキーの反応を見てショボンが判断を下す。
一介のバーテンダーにしては慣れた手つきだった。
- 465 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:26:41.59 ID:RoiL6Hj7O
- (´・ω・`)「……よし、これで何とか」
ヒッキーに応急措置を施すと、ショボンは立ち上がった。
(´・ω・`)「物資が足りないから完璧じゃないけど、安静を保てば大丈夫のはずだよ」
(-_-)「……」
胸板は包帯でぐるぐる巻きにされていた。
(´・ω・`)「しかし、一体何をどうやったらこんなケガを負うんだい……?」
ただでさえ落ち込み気味な表情のショボンがさらに眉を下げて尋ねた。
(-_-)「……僕と同じ、実験を受けた人と戦った。
つー、と名乗ってた」
「つーだと?」
「マジかよ……」
その名前を口にした途端、下水道はにわかに騒がしくなった。
- 466 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:28:12.87 ID:RoiL6Hj7O
- 静かにしろ、と場を制したクーの説明で、ヒッキーはつーの正体を知る。
川 ゚ -゚)「……つーというのは教会お抱えの暗殺者だ。
あくまで秘密裏の、だがな」
(-_-)「……暗殺者……」
川 ゚ -゚)「そうだ。教会にとって邪魔な者を消すための、体のいい駒さ。
……あの場に倒れていたうちの一人がそうだったのか?」
ヒッキーは頷く。
川 ゚ -゚)「……そうか」
クーも、それ以上は言わなかった。
- 470 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:37:12.30 ID:RoiL6Hj7O
- (´・ω・`)「……頑固だね、君は。
昔のクーを見ているようだ」
ショボンが諦めるようにため息をついた。
川 ゚ -゚)「どういうことだ、それは」
憤慨した面持ちのクーがショボンに言及する。
(´・ω・`)「そのまんまだよ。
昔のクーに、彼がそっくりだと言ったんだ」
受け流すようにショボンは答えた。
_
( ゚∀゚)「はい、そこまでっすよ、二人とも」
ジョルジュが剣呑になる二人の間に割って入った。
_
( ゚∀゚)「何回そのやり取り繰り返すんすか?
ってか今そういう場面じゃないっすよ」
川 ゚ -゚)「……言われずとも分かってる」
クーは踵を返してショボンに背を向け、ショボンが肩を撫で下ろした。
川 ゚ -゚)「皆を集めてくれ、作戦を煮詰めよう」
了解っす、とジョルジュが答え、音の反響しやすい地下水道に考慮したのか、呼び掛けはせずに皆に寄っていった。
- 473 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:41:57.35 ID:RoiL6Hj7O
- (´・ω・`)「……君の意志は分かった。
でもせめて、その時までは安静にしないと、僕には責任を持てないよ」
再び向き直ったショボンが、諭すようにヒッキーに言う。
(-_-)「……分かった」
仕方なし、ヒッキーは再び横になった。
−−−−いよいよ、ってところだが、どーよ、満身創痍のヒッキーさん
(-_-)「……だから、関係ないって言ったろ……」
他人には聞こえないハインの声に、クー達には気付かれないように小さな声で答える。
−−−−痩せ我慢しちゃってからに。
ま、あのたれ目の言い分が正論だな。それまでは大人しくぶっ倒れてろ。
楽しい楽しいパーティーはこれからさ……
- 474 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 20:44:27.53 ID:RoiL6Hj7O
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
川 ゚ -゚)「作戦の概要は以前から皆に伝えてあるとおりだ。
我々はこのまま地下水道を通って教会大聖堂地下まで移動し、そのまま上へと出て大聖堂に侵入する。
ただし、計画が前送りになったため、現在教会内に潜伏中の同士との連絡を取り、連携が出来しだい作戦を実行する」
集まった仲間を前に、今からの行動について話すクーを、ヒッキーはその背後に横たわって聞いていた。
たまに向けられる幾人かの視線がわずらわしいので、目を閉じて狸寝入りを決め込みながら。
- 478 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:10:47.95 ID:RoiL6Hj7O
-
川 ゚ -゚)「順調に行けば、後十数分で準備は整うだろう」
しかし、よくここまで計画を水面下に隠し続けることが出来たものだと、ヒッキーは感心していた。
昨夜、その尻尾を掴まれたとはいえ、被害は殆どないし、
何より教会内にまで仲間を持っているとは驚きだった。
川 ゚ -゚)「各自、士気を高めておいてくれ。
だが、ここは地下水道だ、響かぬよう声は出すなよ……と言うのも可笑しな話だな」
その一言に場が静かに沸く。
川 ゚ -゚)「……必ず果たそう。我らの悲願を」
最後はきっちりと締めて、話は終わった。
- 480 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:14:27.06 ID:RoiL6Hj7O
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(´・ω・`)「お、帰ってきたね」
少しばかりの時間が流れ、沈黙の漂う場に、ショボンの声が聞こえた。
彼の言葉の通り、教会内の仲間と連絡を取りに行った仲間が足を忍ばせて戻ってきた。
川 ゚ -゚)「ご苦労だった……で?」
早速クーが歩み寄り、結果を問う。
「大丈夫です。日時変更に問題なし」
川 ゚ -゚)「……よし。10分後に行動を開始するぞ」
(´・ω・`)「……だ、そうだよ。
気分は良くなったかい」
いつの間にか近くに寄って来ていたショボンに聞かれ、ヒッキーは問題なし、と答えた。
- 481 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:17:03.75 ID:RoiL6Hj7O
- そういえば、この優男はこれからどうするのか。
皆とは違い、明らかに何処かに武力制圧を掛けに行くには不釣り合いな格好をしている。
夜な夜な襲撃を掛けられたのだから、寝巻姿ではないことだけでも良とすべきなのだろうが、
と考えていた矢先、そんなヒッキーの思考を読んだかのように、ショボンが苦笑しながら自らの立ち位置を語った。
(´・ω・`)「ちなみに、僕は戦闘の方はからきしでね。
今からも、後方支援なんて体の良い役割で、皆の最後尾にびくびくついていくだけになりそうだ」
(´・ω・`)「だから、こういう場面じゃ、正直な話、キミやクーのように勇猛果敢な人には感服するばかりだね。
まぁ、勇猛果敢でも、その行動の是非は別だけれど」
(-_-)「……」
- 482 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:18:29.09 ID:RoiL6Hj7O
- 川 ゚ -゚)「二人とも、時間だ。行くぞ」
(´・ω・`)「やれやれ、何とか生きて還らなきゃならないな」
川 ゚ -゚)「ショボン」
(´・ω・`)「なんだい」
川 ゚ -゚)「いざとなったら逃げ帰れよ」
(´・ω・`)「ああ、キミが死んだらね」
川 ゚ -゚)「真面目な話だぞ」
(´・ω・`)「いや、こっちも真面目な話だよ」
−−−−なんかまどろっこしい二人組だな。誰か片方のケツ蹴っ飛ばしてキスさせてやれよ。あっという間にベッドインだ
(-_-)「馬鹿じゃないの……」
下世話なハインのコメントに溜め息をつきながら、ヒッキーは身体を起こし、下水道の先の暗闇を見やった。
- 484 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:24:25.30 ID:RoiL6Hj7O
- 一度は拒否された。
二度目に救える保障もない。
けれど今、ヒッキーに出来ることはただ一つ。
彼女の下へ、何としても、たどり着く。
ただ、それだけだ。
- 488 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:32:23.76 ID:RoiL6Hj7O
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コツコツと無数の足音が不気味に響く中、一つの松明が下水道を歩くクー達を照らしだしている。
川 ゚ -゚)「……ここだ」
クーが足を止めたのは、本筋をそれて、上にあがる坂となっている脇の下水道への分岐点だった。
川 ゚ -゚)「この先が大聖堂の水路に繋がっている」
クーがヒッキーを見ながらそう説明したのは、他の全員は既に知っていることだからだろう。
端的な説明をした後、再び歩を進めると、上方に僅かに差し込む光が感じられた。
川 ゚ -゚)「先行して私とジョルジュが行く。合図が合ったら後に続け。」
そう言って、二人だけが前に進んで行く。
ヒッキーを先頭に置く残りの集団は、そこで待機した。
- 490 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:35:08.07 ID:RoiL6Hj7O
- 二人がしばらく進んでいき、光の射す場所に辿り着くと、ジョルジュが何やら手を上にかざして、そこを塞ぐ石板を三度ノックした。
すると、石板はゆっくりと光の射す隙間を広げるようにズレてゆき、
人一人が通れる隙間を確保したところで、上から手が伸びてきた。
最初にクー、次にジョルジュが手を借りて上に上がっていく。
それから数分経って、再び伸びてきた手が大きく振られた。
合図だ。
集団がクー達の上っていった抜け穴に駆け寄って、次々に大聖堂への侵入を果たしていった。
- 492 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:38:14.67 ID:RoiL6Hj7O
- 地下水路が通じていたのは、どうやら大聖堂の水源、と呼べる場所のようだった。
緊張感に包まれたその場所にいる数十人の仲間たちは、
先行して安全を確認するクーの手の動きを合図にしながら、大聖堂の中へ慎重に歩を進め始めた。
川 ゚ -゚)(ここで二手に分かれよう)
早くも現れた分岐路を手前に、クーの手の合図がそう告げて、
クーとショボン他少人数が右手に折れる通路、ヒッキー含む残りがそのまま正面に進んでいく通路に分かれることが決まる。
正面に進む方は陽動を引き受け、右手に折れる方が大聖堂の内部へ突き進み、
教会の堕落を暴くような証拠なり何なりを見つけだす、という形である。
幸運を、と言ったニュアンスで、クーとは別の道を行くジョルジュが親指を立てる。
クーが頷き、それぞれが二手に分かれた。
- 494 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:42:50.47 ID:RoiL6Hj7O
- クー達は、教会内に潜伏していた仲間があらかじめ用意してあった部屋に、一時的に陽動役が気を引くまで身を隠す手筈になっている。
後はヒッキー達が事を起こせば良いだけだ。
(-_-)「……」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
川 ゚ -゚)『キミは、ある程度……大聖堂が混乱する程度、陽動に協力してくれたら、自由にしてくれて構わない』
作戦を説明したのち、ヒッキーに声をかけたクーは、ヒッキーに陽動を引き受けるグループに入ってほしい旨を告げるとともに、そういった。
川 ゚ -゚)『聞いた話では、教会は人柱そのものに目的があるのだろう?
教会にこちらの事がバレている以上、人柱に対して何が起きるか分からないからな……。
人柱に対する行動の「時期を早める」こともあり得るだろう。
だから、陽動を済ませた後は、我々の事は気にしてくれなくていい』
ヒッキーにすればそれは願ってもいない話だったが、しかしそれでクー達の目的は果たせるのか。
川 ゚ -゚)『敵でもない誰かに何かを強要して目的を果たすのなら、それは教会と同じだろう、と私は思う。
キミには今夜だけで大きく助けてもらった。十分なほどに、だ。
キミにはキミの目的があるだろう。後は思う存分、我が道を進んでくれ』
- 495 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:46:28.01 ID:RoiL6Hj7O
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(-_-)「……」
甘いかもしれない、と思う。
しかしそれが彼女なのだろう、とも思う。
ならば、迷う必要は、ない。
先頭を走るヒッキーの視線の先、修道着に身を包んだ男が曲がり角から現れる。
「え?」
突然の遭遇に困惑する男に対し、心構えの出来ていたヒッキーの行動は素早かった。
接近して首根っこを引っ掴むと、力任せに床に叩きつける。
男は状況を把握する間もなく、強烈な衝撃に気を失う。
- 498 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:51:23.95 ID:RoiL6Hj7O
- _
(;゚∀゚)「スッゲ……」
後に続いたジョルジュ他が感嘆したが、さらに一息つく間はなかった。
「だ、誰かッ!!」
奥にいた修道女が叫び、助けを呼ぶ。
気付かれることが目的だ。支障はない。
このまま敵が来るまでに裏庭まで突っ込めば状況は大分楽になる。
脇道にいる修道女は無視して、ヒッキーはそのまま礼拝堂に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
川 ゚ -゚)「……始まったか」
同時刻。
にわかに大聖堂内が騒つき始めたのを察知して、クーは剣を抜いた。
川 ゚ -゚)「……行くぞ」
クーがドアに向け身構え、そして、
- 499 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:53:29.61 ID:RoiL6Hj7O
- バン!
裏庭に通じるドアを蹴とばし、ヒッキーは裏庭に飛び出した。
何事か、と言った表情の修道女やその他の人間がの視線を浴びながら、
ヒッキーはその身体を変質させた。
−−−−へい、ショータイムだぜ、平和ボケも目が覚める一発だ
雄叫びが裏庭に響き渡る。
邪魔者を恐怖させ、追い出すにはそれだけで十分だった。
逃げ惑う修道者と入れ替わるように、裏庭を囲む建物のうち、ヒッキー達が出てきた建物の向かいの建物から各々武器を持った男達が駆け出してくる。
_
(#゚∀゚)「ぶっ飛ばせッ!!」
ジョルジュが吠え、呼応するように仲間たちが突撃した。
- 500 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 21:58:16.78 ID:RoiL6Hj7O
-
−−−−ここまでが頃合いだな。
(-_-)「……」
自分の脇を駆け抜けて男達と激突するジョルジュ達を一瞥して、ヒッキーは踵を返した。
ジョルジュ達には申し訳ないが、ここからは自分の目的を果たさなければならない。
彼女の身に何かが及ぶ前に。
ヒッキーは彼女がいるであろう塔を目指して駆け出した。
- 502 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:02:18.04 ID:RoiL6Hj7O
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
来た道を戻ったので、ヒッキーは行く手を塞ぐ何者かに出会うことは無かった。
途中出会う、障害物にもならない人間を押し退けながら、ただひたすらに塔を目指し駆け抜ける。
そして−−−−
ドアを最早、ぶち抜く、と言った表現が正しいような開け方をして塔に辿り着いたヒッキーは、
同時に息を呑んだ。
- 504 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:07:36.80 ID:RoiL6Hj7O
- いない。
ベッドにも椅子にも部屋の隅にも壁にも天井にも何処にも、彼女はいない。
ただ、何の代わりか、一人のシスターが、塔の中の部屋を掃除しているような格好で、こちらを見て唖然としているだけだった。
(;-_-)「……」
間に、合わなかっ、た?
背筋を走る悪寒と同調するように、ヒッキーの身体が人間に戻る。
よぎる不安と焦り。
ヒッキーは呆気に取られているシスターに半ば反射的に掴み掛かった。
(;-_-)「どこだ!」
声を荒げてシスターを壁に押しつける。
「な、何を」
(;-_-)「彼女は、彼女を何処にやった!?」
- 505 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:08:11.63 ID:RoiL6Hj7O
- 「……彼女って、人柱?
なら教主様がたった今……」
(#-_-)「何処だって聞いているんだ!!」
掴む襟を締め上げてヒッキーは叫ぶ。
「れ、礼拝堂の地下よ!」
鬼気迫るヒッキーの様子に、シスターは悲鳴のような金切り声で答えた。
「人柱を捧げる場所よ!
時期を早めるって……でもあそこは原則立ち入り禁……」
そこまで言ったところで、シスターの言葉は呻き声で途切れた。
- 506 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:10:03.71 ID:RoiL6Hj7O
- (; _ )「……」
シスターの鳩尾に叩きこんだ拳を引き、崩折れる身体を手放し、ヒッキーは再び駆け出した。
今度は窓に向かって。
礼拝堂の場所はさっきジョルジュ達と別れた裏庭のさらに先の方にあるはずだ。
なら、外から回り込んだほうが得策。
−−−−ああ、デジャヴ
ヒッキーは窓を開け放つと、そこから身を乗り出し、建物の上を目指し壁を登った。
それなりの高さがある屋根にまで到達すると、泥棒さながらに駆け抜ける。
一望できる裏庭を見ると、そこにまだジョルジュ達の姿が有った。
しかし気に掛けている時間もない。
ヒッキーは視線を前に向ける。
屋根の段差を踏み切り飛び越えて跳躍。
礼拝堂が真下にあることを示す証と言える天窓を、着地の勢いに任せて踏み抜いた。
- 510 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:13:31.24 ID:RoiL6Hj7O
- ガラスの割れる音と天窓の鉄枠がひしゃげる音を同時に響かせ、
ヒッキーは天窓をブチ破って礼拝堂に着地した。
どうやら、ここは非戦闘者達の避難場所になっていたようで、
またしてもヒッキーに視線が集まる。
結局、裏庭と同じ光景がヒッキーの一吠えで繰り広げられた。
−−−−はいはいデジャヴデジャヴ
ハインがさもつまらなさそうに言う。
−−−−でさー、礼拝堂の地下って聞いたけど、何処から地下へ行くのか知ってんのか?
(;-_-)「……あ」
- 512 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/26(金) 22:17:12.62 ID:RoiL6Hj7O
- −−−−オイオイ……。
白けるぜ、マジで……コメディじゃねーんだからさぁ。
ちょっと熱くなったじゃんと思ったらこれだ
しまった、あのシスターに聞いておくべきだった、と思ったところでどうにもならない。
−−−−肝心なとこで抜けてんなー、やっぱりヒッキーはヒッキーか。
あの娘のことになるとてんでダメなんでやんすね
(;-_-)「……茶化さないでくれよ」
−−−−まぁ、セオリーで行けばだな。
礼拝堂の地下なんつー意味ありげな秘密の場所の入り口なんて定番過ぎて予想出来まくりんぐだろ。
明日使える無駄知識を持ち合わせてないヒッキー君には分からないだろうが、例えば礼拝堂に架かる無数の垂れ幕の裏側とかな
(;-_-)「……」
−−−−お、ビンゴ。お礼に10万寄越せ
無視。
今はイラついている場合じゃない。
ヒッキーは礼拝堂の真正面、壇の後ろ側に架かる垂れ幕の裏にあった、地下へ続く階段を駆け下りた。
-
-
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