第十一章
































 

637 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:25:58.99 ID:Hhfl2jb/O

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……閉じられたまま開かないはずだった。

「待てコラ」

(-_-)「!」

なのに、ヒッキーは額にデコピンを食らった。



いつの間にかヒッキーは真っ白な空間に佇んでいて、
向かい合うように、真っ赤な燃えるような長髪の、鋭い顔つきをした中性的な人間が立っていた。

从 ゚∀从「初めて人型で登場ハイン様だ、驚いたか」

そう言って、ハインと名乗ったそいつはニヤリと笑った。

(;-_-)「……ハァ?」
642 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:28:05.55 ID:Hhfl2jb/O
从 ゚∀从「切なくて、でも救いのある、なんて終わりは悪くはないがな……。
ちょっと待てよ、このクソガキ」
(;-_-)「……」

从#゚∀从「まず一つ目!オレのことを微塵も気にせずにめでたしめでたしで終わらせんじゃねーよ、このタコ!
恩を仇で返すを地で行くとはいい度胸だなぁオイ?」

いきなりハインは表情を一変させてまくし立て、ヒッキーに近寄るとヘッドロックを仕掛けた。

从#゚∀从「なぁ、せめて感謝の一言とか、あるいは謝罪の一言とか無いのか?無いの?無し?皆無?ゼロ?
久しぶりにイラッとしちまったよオイ、どうしてくれる」

(;-_-)「……すみません、ありがとう」

从#゚∀从「馬鹿言え、土下座した後に俺様の足を舐めてようやく許されるレベルだぞコラ」

(;-_-)「……馬鹿言ってるのはどっちだよ……」


646 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:30:10.51 ID:Hhfl2jb/O
从 ゚∀从「ケッ、初めに会った時よりも随分と生意気になりやがって。
あの時の何事にも流されていっちまうようなひ弱なヒッキー君はどこ行ったんだ」

(;-_-)「……知らない」

从 ゚∀从「あーうぜー。
最後は何かカッコ付けてたけどよー、お前全然格好よくねぇぞ。
根っこの部分じゃ変わってないな」

(-_-)「……何が言いたいんだよ」

从 ゚∀从「何を諦めてるんだ、お前」



647 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:30:39.59 ID:Hhfl2jb/O
从 ゚∀从「なぁ、何で死ぬの?教えてヒッキー君」

( _ )「……」

从 ゚∀从「あれだ、ラスボス倒して自分に負けてりゃ世話ないぞって話だ。
魔王から世界を守った勇者が自分のレベルに恐怖して自殺とかしたらお前………………結構面白いか、しまった」

( _ )「……」

从 ゚∀从「とにかく、お前は生きろ。
死ぬまで生きろ」


652 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:34:45.10 ID:Hhfl2jb/O
( _ )「……何でだよ」

从 ゚∀从「たりめーだ馬鹿。
生きてりゃいつか狂う?ハン、笑わせるな。超絶博識なオレが教えてやるよ。
人間は生まれながらに身体に異常を作り出すキラー因子を持って生まれてくんだ。
でも人類が全てその異常で死んじゃいねー。
決まってないんだよ、異常を生み出す身体だからその異常で死ぬなんてよ。
事故死とか殺害とかAIDSとか、他にも吐き捨てるほど死因なんてものはあるんだ。
分かるか? 狂うから死ぬって変だろ違うだろ可笑しいだろ、狂ったら死ねよ馬鹿」

(# _ )「……そんなの、そんなの詭弁だ」

从 ゚∀从「それを決めるのはお前だろ。
狂うのもお前!彼女を殺すかもしれないのもお前!
選択肢は全部丸ごとお前が選ぶんだよ!
現に今までお前はそうやってきたろうが」

ヒッキーの頭を引き寄せて耳元でハインが怒鳴り付ける。


653 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:36:22.26 ID:Hhfl2jb/O
从 ゚∀从「何処までネガティブなんだよ、お前。
あの棍棒小娘の言うこと頭から信じきってビビッてるのがまる分かりだぜ?
「愛しの彼女と死ぬまでイチャイチャ」ルートはきちんと用意されてんだ。
後はそこに怯えず一歩踏み出せるかだろ。
少しは自分に自信持て。「狂わずに彼女と生きるんだ」って覚悟決めろよ。
それだけの事は出来るようになったはずだろ」

(-_-)「……」

从 ゚∀从「……ま、ぶっちゃけると、お前が死んでも俺は死なねーし、無関係な話なんだが、
お前みたいな、端から見てて面白くて惨めで滑稽なやつ、死なせるのは俺の快楽主義に反するんでな。
オラ、とっとと生き返れ」

そうしてハインはヒッキーの身体を突き放す。

次の瞬間、ヒッキーは目覚めた。

658 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:38:26.12 ID:Hhfl2jb/O
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(-_-)「……」

……酷い茶番劇だ。戯言だ。笑い者だ。
……結局、僕は生きているのか。

目覚めたヒッキーが横たわっていたのは今度は瓦礫の中ではなく、綺麗なベッドの上だった。


663 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:42:02.00 ID:Hhfl2jb/O
(-_-)「……?」

身体を起こそうとしたとき、動かした左手が何かに掴まれているのを知った。

それは、ベッドの脇に座り込み、ベッドに俯いて寝ているしぃの手だった。

頭が一瞬熱を帯びて、ヒッキーは焦った。



川 ゚ -゚)「おはよう、ヒッキー」

(;-_-)「!」

声を聞いて慌てて視線を上げると、クーがドアを開けてたたずんでいた。

(*-_-)「……」

川 ゚ -゚)「目覚めて何よりだ。
……どうした、顔が赤いぞ」

(;-_-)「……いや何でも」

川 ゚ー゚)「そうか」

クーはニヤリと笑う。

バレてるな、とヒッキーは思ってなんだか情けなくなった。


665 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:43:17.40 ID:Hhfl2jb/O
川 ゚ -゚)「……五日だ」

(-_-)「……は?」

川 ゚ -゚)「君が眠っていた時間だよ。
一時は外傷、内傷、出血が激しくて生死の境を彷徨うどころか天国と地獄の境を彷徨っていたが……
何とかなったようだな」

(-_-)「……」

川 ゚ -゚)「峠を越えたとき、医者が目覚めるかどうかは君次第といっていたからな、私は起きると信じていたが……。
その娘は頑なに君の傍にいるといって聞かなかったよ。
まだ謝らなきゃいけない、だそうだ」

(-_-)「……」

改めて、しぃの寝顔を見る。

(* ー )「ん……」

すやすやと眠るその横顔に、思わずヒッキーの顔も綻んだ。

667 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:45:37.94 ID:Hhfl2jb/O
……狂わずに生きる。

今まで、出来るとは思えなかった。
でも今は、出来るかもしれないと思う。
いつか、出来ると確信出来る日が来るのだろうか。

川 ゚ -゚)「……医者とショボンを呼んでくる」

クーがそう言って部屋を後にする。

−−−−空気を読める女は悪くないな

(-_-)「……いたのか」

−−−−ハァ?当たり前だろ。
何?あれでお別れとでも思ったか?
残念、オレはお前が死ぬまで一心同体、離れられないのさ

(-_-)「……最悪だ」

−−−−ヒャヒャヒャ、これも運命だ、恨むなよ?
精々、俺の凶暴性に負けないように頑張るんだな。

671 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/27(土) 00:46:41.00 ID:Hhfl2jb/O
(-_-)「……」


生きる。

それはとてつもない時間をヒッキーの目の前に繰り広げ、その時間の膨大さに目が眩む。不安もよぎる。

けれど。

(-_-)「……やってみようかな」

どこまで行けるのか、試してみよう。
彼女と、一緒に。




 

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