ω・`)俺達は平穏に過ごせないようです(`・ω
1 名前: ◆9SAojckYCw :2009/08/30(日) 22:28:48.34 ID:YDZD8X8I0
カタカタ ('A`)「『投下開始』っと……」

2 名前:以下、本編を投下する前に雑談をお送りします:2009/08/30(日) 22:31:13.61 ID:YDZD8X8I0
('A`)「引越しのドタバタで結局選挙に行けなかった……」

( ^ω^)「……今日も読み飛ばしていい雑談からだお。本編は二レス先だお」


     ○      ○     ○

(´・ω・`)「この話のまとめサイトは、『もうすぐ一周年おめでとう』のブーン文丸新聞さんと――」

http://boonbunmaru.web.fc2.com/rensai/peaceful/peaceful.htm

ξ ゚听)ξ「『もうすぐ半周年おめでとう』の( ^ω^)フェスティバロスwwwさんです。ありがとうございます」

http://boonfestival.web.fc2.com/notpeace/list.html


川 ゚ -゚)「一話が二つあるのは気にしない。前回までの三行あらすじはこちら」

・ブーンは空が飛べるけど、その設定は活かされてない。
・ツンが桜過ぎる。
・段々と一話の容量が多くなっていきます。今回も多いよ! ('(゚∀゚∩

('A`;)「……最後のはあらすじなのか?」


ξ ゚听)ξ「次のレスは注意事項」

3 名前:以下、本編を投下する前に雑談をお送りします:2009/08/30(日) 22:35:01.60 ID:YDZD8X8I0

・このお話はフィクションです。だから聞き覚えのある曲や団体名があってもきっと本物とは違う訳で……
 ……あれ、何か玄関先に黒い服の人達が (※ここから血に塗れていて読めない)

・ゲーセンでのむやみな連コインは他のお客様に迷惑です。

・選挙に行くのは国民の義務らしいです。


('A`;)「本当にすいませんでしたっ! ってか投下の度に鯖落ちしてる気が……」

( ^ω^)「次のレスから本編開始だお!」
5 名前:以下、雑談にかわりまして本編をお送りします:2009/08/30(日) 22:38:40.64 ID:YDZD8X8I0
この三日間、俺は暇を持て余していた。
部屋のカレンダーには、空を気持ち良さそうに泳ぐ鯉のぼりの姿。
俺もそんな風に泳げれば……そういや本当に泳げる友人がいたな。


今日は世間で黄金週間などと呼ばれる期間の三日目、その夕方。
始まりの週末と合わせると五連休なので、ちょうど折り返しの日にあたる。
……まあ俺には、適当にゴロゴロして過ごす以外の選択肢が無いのだが。

ブーンとツンは、各自の家庭でそれぞれ小旅行。クーとショボンも予定があるらしい。
他にこれといって親密な友人がいない俺としては、適当に暇を潰すしかなかった。
いい加減今やっているゲームも飽きてきたな……


そんな事を考え始めた時、携帯からメールの着信を知らせる音が流れ出す。
このやたら陽気な音楽は……たしかブーンからだったな。
最初と比べると大分馴れてきた手付きでメールを開いた俺は、文面に目を通した。


『明日ゲーハーで遊ばないかお?』



        俺達は平穏に過ごせないようです


     (´・ω・`)<今回は、『その3:塊オンザロック』だよ。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 22:41:05.91 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

枠手家通りの中心にある総合アミューズメント施設、『ゲーハー』。
七階建ての建物内には、ゲーセンやカラオケ、ビリヤードやボーリング場などが入っている。
お値段もお手頃価格であり、学生の間でもかなりの人気スポットらしい。

待ち合わせの日の11時、俺はその施設前にあるバーガーショップ、『ペロコレハ』に入った。
この地方内で有名なチェーン店であり、今回の待ち合わせ場所でもある。
適当にセットメニューを頼んだ俺は、店内のテーブル席を見回した。

( ^ω^)ノシ「ドクオー、ここだおー」

奥の方のテーブル席に、ブーンとツン、ショボンの姿が見える。
確かクーも来る事になっていたはずだが……まだ来てないのか?
山盛りになった包み紙をトレイに置くブーン。その隣に座った俺は、昨日までの事を聞いてみた。

('A`)「よお、お前ら。この三日間はどうだった?」

( ^ω^)「おっおっ、偶然旅行先でツンとばったり会ったんだお!」

('A`;)「えっ、でも旅行先って隣県だったんだろ?」

ξ ゚听)ξ「バカね、ブーン。だから仕込みに決まってるって何度も言ってるでしょ?
       あんたの親と家の親とは、昔から繋がりがあるんだし……」

まあそうだろうな。話を聞くと、泊まった宿まで一緒だったらしいし……
幼馴染で家は近所、しかも両親公認の仲……正にsnegな話だな。
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 22:44:09.54 ID:YDZD8X8I0
('A`)「で、ショボンの方は?」

(´・ω・`)「ああ、僕は母方のお婆ちゃんの家に泊まりに行って来たよ。
       晩御飯に食べさせてもらったもみじ鍋、美味しかったな……」

(; ^ω^)「もみじを鍋にするなんて……ショボンの婆ちゃん凄いお」

ξ ゚听)ξ「……ブーンは桜鍋も一緒に食べた方がいいわね」

ちなみに桜鍋は馬肉、もみじ鍋は鹿肉を使った鍋のことだ。

(* ^ω^)「おっおっ、確かに桜なら美味しそうだお!」

ξ;゚听)ξ「……まさかあんたがここまでとは思わなかったわ」

(;´・ω・)「っていうか、木曜の授業でハロー先生が鍋の話していたよね?」

( ^ω^)「実はその授業の間、ずっと寝てたんだお」

ξ ゚听)ξ「……へー、睡眠学習って訳。いい御身分ですね」

(; ^ω^)「ツン、さり気に足を踏まないでほしいお……」

本当に学習能力が無いな、ブーンの奴は……

ハロー先生とは、かなり風変わりな教師だ。
なぜかというと――

     @=     @=     @=

9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 22:47:02.02 ID:YDZD8X8I0

      【VIP高校の教師達】

初めての現代文の授業の時、俺は教科を間違えたと思った。

ハハ ロ -ロ)ハ「Hallo, Q組の皆さん。 Nice to meet you.」

金髪、白い肌、流暢な発音……どうみても外国の方だった、しかも巨乳の。
クラス内の空気も似たような感じで、教師に対して疑問に思っているようだ。

/ ゚、。;/「あのー、すいません。現代文の授業ですよね……?」

ハハ ロ -ロ)ハ「Yes, that's right! 私が現代文のteacherである、Hallo Morningです。
       Halloが名前で、Morningが苗字……よろしくお願いします」

……どう見ても英語教師だろ、常考。

ハハ ロ -ロ)ハ「この国で暮らして、彼是10 years ほどになります。
       なぜ祖国を離れたかというと、それは魅力的なOriental foodの影響です。
       Sushi, sukiyaki, curry rice, okonomiyaki ……どれもdelicious」

なんか典型的な日本食のイメージだな……カレーを除いて。

ハハ ロ -ロ)ハ「そしてこの国にいる内に、素晴らしいliteratureに目覚めた訳です。
       こうして私はこの国の大学に入り、現代文のteacherとなりました」


……と、こんな感じのハロー先生。幸い、授業内容は普通だった。
ただ、時々ルー口調になるのは正直勘弁してほしい。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 22:50:07.03 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

( ><)「それで、この場合の公式は……」

俺達の担任である和寒内ビロード先生は数学教師である。
授業はそこそこ解り易く、質問に行くと丁寧に説明してくれるという中々いい教師だ。
ただ――

( ><)「そうそう、こんな話があったんです。昨日、よく行く定食屋にですね……」

この様に話が脱線しがちである。しかもかなーりどうでもいい話。
近所の人が犬を飼い出したとか、卵が安かったとか。
中でも多いのは……

( ><)「そしたらちんぽっぽ先生が、僕に対して微笑んでくれたんです!
      もうあの時の僕は幸せだったんです!」

と、彼の同期である教師の話。この話が始まると、下手をすれば授業が丸一時間潰れる。
現に他の数学教師とは進行に差がついているらしく、授業が駆け足気味になってしまっているのだ。
また、HR時での伝達事項での間違いが多い教師でもあり、担任としての評価はやや低い。

( ><)「で、一緒に御飯を食べた後、バーまで付いて来てくれたんです!
      もう……あの時は感無量だったんです! すっごく幸せだったんです!
      かなり財布は寂しくなっちゃったけど、それ以上に楽しかったんです!」

どことなく憎めない教師ではあり、一部の生徒からは『ビロちゃん』とか呼ばれている。
まあ不当な贔屓などが無い分、担任としてはいいのかもな……

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 22:53:09.41 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

(*‘ω‘ *)「じゃあ、教科書の17Pを開くっぽ」

で、こちらが噂の愛媛ちんぽっぽ先生。担当は英語。
隣のクラスにあたるW組の担任でもある。

(*‘ω‘ *)「それで、この文章はSVCの型に当たるという訳だっぽ」

……どこかで聞き覚えのある様な語尾が特徴的。
年齢は和寒内先生と同じく30代手前なはずだが、とてもそうには見えない。
低めの身長に童顔なので、未成年に間違われる事まであるらしいが――

(*‘ω‘ *)「そうそう、昨日行きつけの定食屋に行くと、和寒内先生と偶然会ったっぽ。
      上手い事言い包めたら、定食代を出して貰った上、ただ酒にありつく事が出来たっぽ。
      男って単純な生き物だから、女は今の内に色々と術を身につけておくべきだっぽ」

……可愛い顔して、かなりえげつない事を言ってくる。
クラスの一人が、和寒内先生との仲を聞いた事があったのだが……

(*‘ω‘ *)「……まあ荷物持ちぐらいにはなるっぽ。
      変な男も寄り付いてこないし、いないよりはマシっぽ」

……さすがにこの事実は、和寒内先生には伏せられているらしい。
あの先生がこの事を知った場合、学校を一ヶ月くらい休みそうだしな……

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 22:56:03.17 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

川д川「家を借りる時……色々と注意しなければなりません」

家庭科の教師、貞子先生はかなりのオカルト教だ。

川д川「そう、例えばやたらと不動産が薦めてくる物件。
     交通の便良し、設備良し、周りの施設も充実。でも安ーい……
     こんな部屋が一部屋だけ空きがある場合……どう思いますか、そこのあなた?」

从;゚∀从「えーっと、かなりお買い得なんじゃねーの……?」

川д川「…………確かにお買い得ではありますね。
     ……でも、自殺者の怨念は凄まじいですよ?
     彼らは途中で自ら生を絶つほど、この世に恨みを持っていますから……」

从 ゚∀从「あのさ、今の時代に怨ねn――」

川д゚川「お黙りなさい!!」

从;゚∀从「…………」

川д川 ブツブツ(全く、近頃の若者は……)


……こんな貞子先生、なんと既婚者で二人のお子さんを持つとか。
一体どんな夫や子供なのか、クラス内での議論は尽きない。

     =@     =@     =@

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 22:58:05.76 ID:YDZD8X8I0

ξ ゚听)ξ「ちょっとドクオ、何ボーっとしてるの?」

('A`;)「んあ、すまない。考え事を……」

ξ ゚听)ξ「さっさとそれ飲み切っちゃいなさい。皆あんたを待ってるんだからね」

周りを見ると、既にいつでも出れる用意をしているようだ。
……ってあれ? クーがまだ来てないのだが――

ξ#゚听)ξ「あんたねぇ、ちゃんと人の話を聞きなさいよ!」

(´・ω・`)「彼女は一時過ぎ辺りに来る事になったって、ツンが言ってたよね?
      人の話はちゃんと聞こうね。でないと……」

ツンも怖いが、ショボンもかなり怖い。声にドスが効いている。

('A`;)「わ、悪かった! ちょっと待ってくれ!」

アイスティーを一気飲みする俺。ぐおっ、氷の欠片が喉にっ……

( ^ω^)「そういえばゲーハーで何をするのかお?」

ξ ゚听)ξ「そうね、まずはカラオケ辺りがいいんじゃない?」

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 22:59:01.13 ID:YDZD8X8I0
( ^ω^)「カラオケかお! 最近歌いたかった曲があるんだお!」

ξ ゚听)ξ「ドクオとショボンもそれでいい?」

('A`;)「あー……まあいいぜ」

個人的に歌うのは好きだが、やはり初めてのメンバーだと緊張するな。

(´・ω・`)「カラオケか……実は初めてなんだよね」

ξ;゚听)ξ「えっ、今まで行った事がないの?」

(´・ω・`)「うん。あまり歌えないかもだけどいいかな?」

ξ ゚ー゚)ξ「別に大丈夫よ……ってか、身近にド下手なのがいるしね」

そういいながら、チラチラとブーンの方を見るツン。
……まあそれなら大丈夫かな?

(* ^ω^)「よし、じゃあさっさと移動するお! 楽しみだお!」

……やたらノリノリだな、ブーン。

17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:00:16.84 ID:YDZD8X8I0
ゲーハーの六階と七階は、丸々カラオケボックスになっている。
料金は一部屋辺りの請求であり、ビル内の他施設との相互割引もあるらしい。

リモコンとマイクの入った籠をぶら下げた俺達は、指定された部屋へと向かう。
防音対策が優れていて、廊下にいる時でも、部屋から洩れる声などがほとんど聞こえなかった。
……ただ一つの部屋を除いて。

('A`;)「なあ。そこの部屋さ、やたら音洩れ激しくないか?」

ξ;゚听)ξ「……そうね。それに何か聞き覚えがある声だし」

(; ^ω^)「……こっそり覗いて見るかお?」

俺達は中から気付かれない程度に、少しだけ覗いてみる。


  ノハ ‐∀‐) 〜♪       (;、;∩川

…………うん、俺は何も見てない。

部屋に着いた途端、ブーンはリモコンに噛り付き、早速入力を始めている。

( ^ω^)「おっおっ! じゃあ行くお!」

ξ;゚听)ξ「ちょっと、少しは落ち着きって物を……」

ツンがそんな事を言う間には、既に一曲目が流れ始めた。
この曲は……何か聞き覚えのあるような……
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:03:02.13 ID:YDZD8X8I0

   【ここからしばらくハイパーカラオケタイム】

     ♪     ♪     ♪

  ( ^ω^)「いつか見たー あの夢をー」


  ξ ゚ー゚)ξ「どうかー 私とー ワルツをー」


  ('A`)「走った 曲がった そこらじゅう駆け巡ってみた」


  (´・ω・`)「岬ー 巡りのー バスはー」


  ( ^ω^)「愛が愛をー 重すーぎるって理解を拒みー」


  ξ ゚听)ξ「ずっとー 君とー 生きてくんだねー」


  ('A`)「おっそっろいの Tシャッツ、Hey!」


  (´・ω・`)「あなたはー もう 捨てたのかしらー?」

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:06:01.72 ID:YDZD8X8I0

  ( ^ω^)「布団の中でー  5+5 簡単だー」


  ξ*゚D゚)ξ「こおおおおなああああああああああゆきいいいいいいいいっっっ!! ねえっ!」


  ('∀`)「生まれるあーいっ 日にー焼ーけーた肌ッ!」

     *     *     *

川 ゚ -゚)「やあ、遅くなってすまない」

ξ ゚听)ξ「お疲れ、クー。今入れたら、ちょうどショボンの後に歌えるわよ」

川 ゚ -゚)「うむ、分かった。ピピピっとな……」

     ♪     ♪     ♪

  (´・ω・`)「今春が来てー 君はー キレイにー なったー」


  川 ゚ -゚)「猫かと思ってよく見りゃパン しかも一斤一斤」

     *     *     *

ξ;゚听)ξ「ねえクー、その曲何なの?」

川 ゚ -゚)「むっ、ツンは知らないのか……」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:09:17.35 ID:YDZD8X8I0
     ♪     ♪     ♪

☆⌒ (F ^ω^)「悲劇だぁーって かーまわない あーなたといきたいっ!  ギアスッ」


  ξ ゚听)ξ「どこかー もの寂しい 秋には 君のピエロにー」


  ('A`)「だけどー 周りを見渡せばー ひとりぼっちで」


  (´・ω・`)「美しい人生よー 限りない喜びよー」


  川 ゚ -゚)「マヨネーズを入れてみろっ マヨネーズを入れてみろっ」


  (  ゚ω゚)「STAND UP TO THE VICTORY !!」


  ξ ゚听)ξ「明日ーにかーかる 橋は脆く崩れそうでー」


  ('A`)「『バランスの取れた食生活 十分な睡眠時間』」


  (´・ω・`)「テレビもねぇ! ラジオもねぇっ!」


  川 ゚ -゚)「おー 駄目人間として 生きるー 愚かさをー」

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:12:08.05 ID:YDZD8X8I0

     △     △     △

(* ^ω^)「あー、満足したお!」

(*´・ω・)「うん、中々カラオケっていいものだね」

('∀`*)「歌は文化の極みらしいしな!」

……しかし、ここまでバラバラな選曲も珍しいだろうな。

( ^ω^)「そういえば、ドクオの歌ってた曲って何だお?」

……やっぱり一般への知名度は低いのか?
個人的に『美』の曲はそこまで悪くないと思うんだがな……

ξ;゚听)ξ「ねえクー。一体何だったのよ、あの歌?」

川 ゚ -゚)「……よく叔父さんの家で流れてる曲だ。
     何度も聞いているうちに、いつの間にか覚えてしまってな」

('A`;)「叔父さんって……あの人か…………」

街中で会った事があるのだが、かなりの変わり者だった。
……あれは確か一週間ほど前だったかな?


     @=     @=     @=

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:15:02.61 ID:YDZD8X8I0

     【クーの叔父】

それは、俺達五人が帰宅途中、駅に向け歩いている時の事だ。

从‐[゚]∀[゚]ハ「やあやあクーにゃん、おひたし! 元気してたかい?」

上はアロハ、下は短パンにサンダル……怪しさの塊みたいな男が話しかけてきた。
歳は大体三十後半ぐらいだろうか……正直、まともな一般人には見えない。
そんな怪しさバリバリの人に話しかけられたクーだが、彼女はいつもの調子で返事を返す。

川 ゚ -゚)「……生憎だが私は『クーにゃん』という人物ではない。
     残念だろうが、他のクーにゃんをあたってくれ」

从‐[゚]∀[゚]ハ「おやおや、冗談が上手くなったねぇ。おや、そちらの彼女は……」

怪しい男は眼鏡を輝かせながら、じっとツンの顔を見詰めている。
勿論ツンはいい気はしてないだろう。段々顔が険しくなってきているし……

ξ;゚听)ξ「なっ、何ですか…………」

从‐[゚]∀[゚]ハ「……うん、完璧! 100点満点! パーフェクト! 正に黄金比!
        ねえクーにゃん、こんな娘いるんだったら教えて欲しかったなー☆」

川  - )「そうか、そんなに死に急ぎたいのか……」

从;[゚]∀[゚]ハ「OK、悪かった。だからその立て看板にかかった手を離して」

ヤバい、クーが怒っている……ってか、クーが怒る所初めて見たな。

24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:18:03.54 ID:YDZD8X8I0

川 ゚ -゚)「……で、何の様なんだ? これ以上貴重な時間を費やしたくないのだが」

从‐[゚]∀[゚]ハ「厳しーなー。もっと昔みたいに甘えt ……ごめん、何でもない。
        いやー、買い物の帰り道でさ、偶然クーにゃんと会っただけさー。
        べっつに深い意味や用事は無いよー。 …………本当に」

金髪に染めた前髪を手で玩びつつ、男は答える。

(´・ω・`)「ねえクー、今更だけどこの人誰かな?」

川 ゚ -゚)「……親戚の叔父さんだ。名前は植岡」

从‐[゚]∀[゚]ハ「つまらない叔父ですが、何かの時はよろしく。クーにゃんとは仲良くしてやってね」

そうか……やっぱりこの人が噂の叔父さんか。
話に何度かは聞いていたが、予想以上の変人っぷりだ。

从‐[゚]∀[゚]ハ ノシ「じゃあねー、僕は仕事の途中だからー」


川 ゚ -゚)「……ふう、災厄は去ったか」

仕方ないかもしれないが、クーの叔父さんは酷い言われ様だったな……
今までクーがこの人の話をする時、なぜ嫌そうな顔をしてたか分かった気がする。

     =@     =@     =@
26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:21:08.48 ID:YDZD8X8I0

……結局の所、クーは叔父の事をどう思ってるんだろう?
とりあえず完全に嫌っている訳では無さそうな……いや、やっぱり嫌いなのか?


ノハ*゚ー゚)「やっぱカラオケは最高だよなっ!?」

ミセ;゚ー゚)リ「そうね、そうかもね……」

('、`;川 ボソボソ(……もうアンタとは行きたくないわ)

俺達が会計を済ませた時、後ろから聞き覚えのある声が……

ノパ听)「あれっ、クー達じゃないかっ!? お前らも来てたのか!?」

川 ゚ -゚)「ん……何だ、ヒート達か。奇遇だな」

ミセ*゚ー゚)リ「こんにちは〜」

( ^ω^)「あれ、二人だけかと思ったら、ミセリも来てたのk……痛っ、なんで殴るんだお?」

ξ#゚听)ξ ヒソヒソ(覗いてた事がばれちゃうでしょ!)

(; ^ω^) ヒソヒソ(ご、ごめんだお)
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:24:07.15 ID:YDZD8X8I0

ノパ听)「なあ、クー達はこれからどーするんだ!?」

川 ゚ -゚)「私はよく知らないんだが……ツン、どうするんだ?」

ξ ゚听)ξ「そうね、とりあえず下のゲーセンにでも行こうかと……」

ノパ听)「よし、アタシ達も行くぞっ! いいよなっ、二人とも!?」

('、`;川「いいわよ……ってか、反対してもどうせ無駄なのよね」

ミセ*゚ー゚)リ「というか、このグループと一緒に行動なの? 別にアタシは賛成だけど」

ξ ゚听)ξ「あら、前提からしてそうだったんじゃないの?」

( ^ω^)「人数が多い方が楽しいに決まってるお!」

('A`)「……まあこっちもOKみたいだしな」

流石にクラスの全員と親密な付き合いがある訳は無いので、こういう時に仲良くならないとな。
ええっと、やたら元気なのがヒートで、後は確か……

     @=     @=     @=

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:27:03.65 ID:YDZD8X8I0

     【クラスメイト+α】

('、`*川「ねえちょっと。ドクオ君ってさ、独身県から来たのよね?」

('A`)「……ん、まあそうだけど」

……あれは確か、入学式の数日後だったかな。
授業が終わってブーン達の元へ行こうとした時、前の席にいる女が呼び止めてきた。
黄色の帽子を被ってるのと背が高めなのが特徴で、名前は確か…………何だっけ?

('、`*川「具体的にはどこ辺りなの? やっぱり独身市?」

('A`)「いや、もっと山奥の根蔵市って所だ。練炭市の隣って言えばいいかな?」

('、`*川「なるほど、根蔵市ね。どうもありがと」

('A`)「……んで、何で急にそんな事を聞いてきたんだ?」

('、`*川「あなたが独身出身って聞いてたから、何処から来たのか気になってね。
       ちょうど練炭市に親戚が居るから、独身へは何度か行った事があるのよ」

('A`)「へー、練炭か。やっぱりブドウを食べるのか?」

('、`*川「叔父さんがブドウ農家でね、毎年秋に送られて来るのよ」

('A`)「それは羨ましいな……」

練炭市はブドウ栽培が盛んな土地であり、「黒炭」と呼ばれる品種で有名である。
隣の市という事で結構食べる機会があったが、濃厚な甘みが堪らない品種だ。

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:30:01.69 ID:YDZD8X8I0
('、`*川「あら、でも根蔵市って事は肉をよく食べてたんじゃない?」

('A`)「あー駄目駄目。根蔵牛なんて滅多に食べれなかったよ」

俺の地元である根蔵市では、「根蔵牛」というブランド肉が有名だ。
グルメ番組で『幻の肉』と紹介されるほど超絶に美味いのだが、その分激烈に高い。
正直練炭市のブドウの方が、食べた回数は圧倒的に多かったな。

('、`*川「へー、地元の人でも中々食べれない物だったのね……」

('A`)「ああ。あんなのは金持ちの道楽の為にある様なもんだな」

( ^ω^)「おっおっ、何の話をしてるのかお?」

俺の様子を見にきたのか、それとも食べ物の話に釣られてきたのか……
目の前の女子はブーンの方に語りかける。

('、`*川「どうもー、伊藤ペニサスです。よろしくね。
     ……悪いけどまだ名前覚えてないから、教えてくれない?」

あーあー、そういやそんな名前だったな……すっかり忘れていた。
まあ彼女の自己紹介の時、俺は別の事でいっぱいいっぱいだったからな……


席の位置の関係上、その後も彼女と何度か話す機会があった。
彼女を一言で表すならば、「普通」という言葉が一番似つかわしいだろう。
まあ他の奴らが個性的過ぎるんだがな……

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:33:20.10 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

(’e’)「ちょっとドクオ君、机運んでほしいッス」

('A`)「OK、そこの端を掃き終わるまでは待ってくれ」

<#ヽ`Д´>「こいつの机重すぎニダ! どうなってるニダ!」

俺達の学校では、縦の列ごとに班になり、週換えで掃除をする。
俺達の班は、俺を含む男子三人と……

(*゚ー゚)「でさー、昨日その喫茶店に行ってみた訳よ。そしたらね……」

('、`*川「えー、嘘でしょー?」

教室の前で話し込んでいる、女子二人だ。

(’e’#)「ちょっとそこ! ちゃんと手伝うッス!」

(*゚ー゚)「えー。でももう黒板は終わったし、まだゴミは集まってないよね?」

('、`*川「最初に役割分担しようって言い出したのはジョーンズ君でしょ?
     『男子は掃き掃除と机運びをやるから、他の仕事は頼んだッス』って……」

教室掃除としては、主に机の移動や掃き掃除、黒板掃除や焼却炉までのゴミ捨てなどがある。
「焼却炉まで行くのは面倒」という考えだった俺達は、先ほどの様に分担をしたのだが……

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:36:11.75 ID:YDZD8X8I0

('A`;)「なあ、やっぱり掃き掃除と机運びは分けるべきだろ……」

(’e’;)「盲点だったッス……明日はちゃんと相談しなおすッス」

俺と一緒に机を運んでいるこいつの名前は、上場木間・S・ジョーンズ。
苗字は「うわばぎま」と読むらしい……なんて長ったらしい名前だ。
使いっぱしり口調ではあるが、別に虐められてるとかではなく――

( ФωФ)「ジョーンズ、まだ終わらないのであるか?」

(’e’)「いい所に来たッス! 手伝って欲しいッス!」

(; ФωФ)「ぬおっ、制服を引っ張るな! 伸びてしまうのである!
        解った、我輩も手伝うのである。だからこれ以上服を……」

(’e’)「さすが兄貴ッス! じゃあまずはそこの机を運んで欲しいッス!」

同じクラス内の杉浦ロマネスクという奴を、かなり慕っている様だ。
何でも中学が同じで、その時に絶大な恩を持つような何かがあったとか……
生憎二人と同じ出身の奴はいないので、何があったかは本人達に聞き出すしかないが――

('A`)「なあ、中学時代杉浦とは何があったんだ?」

(’e’)「それだけは秘密ッス……ただ、もしその事が無かったら、今自分はここにいないッス」

……本当に一体何があったんだ? 凄く気になるのだが。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:39:19.69 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

ある日の放課後。俺が廊下を歩いていると、後ろから急に話しかけてくる人物がいた。

ミセ*゚ー゚)リ「ねえねえ、ドクオ君。委員長見なかった?」

('A`;)「ん? いや、見なかったが……」

クラス内の女子だが、特に今まで接点が無いはず。何故こんなにフレンドリーなんだ?

('A`)「なあ、たしか話をするの初めてだよな?」

アセ;゚ー゚)リ「あれ、そういえば……あっ、ごめん! 馴れ馴れしかったね」

('A`)「いや、別にいいんだが……渡辺さんなら職員室じゃないか?」

記憶が確かなら、彼女はHRで和寒内先生に呼び出されていたはずだ。

ミセ*゚ー゚)リ「さっき和寒内先生に会ったけど、もう帰ったって言われちゃったの」

('A`)「そうか……俺には他に心当たりは無いな」

ミセ*゚ー゚)リ「そう。じゃ、ありがとうね! あっ、そうそう、忘れる所だった。
      アタシの名前は日暮ミセリよ。この機によろしくね!」

そう言い残し、風の様にミセリは去って行った。
……そういえばどうして俺の名前を知っていたか、結局聞きそびれたな。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:42:39.42 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

週三回ある体育の授業は、二クラス合同で行う。

( ゚∋゚)「よーし、じゃあ次は柔軟運動だ! 二人組を作れー!!」

体育教師であるクックル先生の掛け声により、ペアを作り出す皆。
で、俺達のグループは三人な訳だが……

(´・ω・`)「よし、じゃあジャンケンで決めようか。勝った二人がペアで」

( ^ω^)「おっおっ、望む所だお!」

で、結果俺が負け。なぜかこういう勝負には弱いんだよな……
適当にうろついていると、まだペアになってない人物を見つけた。

('A`)「なあ、一緒にやらないか?」

\(^o^)/「イイヨー」

で、柔軟運動が始まった訳だが……

('A`;)「お前って恐ろしく体が硬いな……ええっと――」

\(^o^)/「オワタだよー。昔からこうだよー」

('A`;)「しかし足首にさえ手が届かないのは問題だろ……」

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:45:03.01 ID:YDZD8X8I0

( ゚∋゚)「はっはっはっ、どうしたーお前らー?」

('A`)「いや、相方の体が硬くて……」

( ゚∋゚)「よーし、じゃあ先生が背中を押してやる。いくぞー!」

\(;^o^)/「あ、ちょっとマッテー……」

( ゚∋゚)「ほれ、1、2の3ー」



 ◎ ◎
◎   ◎  ティウンティウンティウン
 ◎ ◎


(; ゚∋゚)「…………」

('A`;)「…………」

( ゚∋゚)「よ、よーし! 次は腕立て伏せだー!」

('A`;)「スルーかよ!」


……ちなみにオワタは、次の授業には平然とした顔で出ていた。

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:48:08.92 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

(*゚ー゚)「ねぇねぇ、ギコくーん! 学食行こうよー!」

(,,゚Д゚)「よし、解ったぞ! 今日は何食べるんだ?」

(*^ー^)「えへへっ、ギコ君と同じ物がいいなー」


ξ;゚听)ξ「相変わらずあの二人は甘々ね……」

(; ^ω^)「見ているこっちの身にもなってほしいお」

('A`;)「……甘々といえば、あの二人もそうだろ」


( ∴)「ビコ君。お弁当持って来たよ!」

( ∵)

( ∴)「でさー、昨日その飼い犬がね――」

( ∵)


ξ;゚听)ξ「どうしてあの二人は付き合っているのかしらね?」

(; ^ω^)「ゼアフォーさんにも謎が多いお……」
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:51:02.42 ID:YDZD8X8I0

     ○     ○     ○

この学校は放任主義なのか、携帯の持ち運び自体に対する罰則は無い。
(※ただし授業中に使用していたり、着信音が鳴り響いた場合は別である)
なので休み時間に携帯を使用していても、特にこれといった問題は無いのだが……

( ´_ゝ`)「フフフーン。おっ、早速目当ての画像発見」

( <●><●>)「流石ですね、兄者さん」

(* ´_ゝ`)b「おうよ! 何しろ俺の苗字は『流石』だしな!」

ノートPCを持ってきて、無線RANでネットサーフィンを楽しむのはいかがな物か。
以前和寒内先生に見つかった時は、咄嗟に学術関連のページを開いて言い訳していたな。
まあそれで納得してしまう和寒内先生もどうかと思うが……


('A`;)「全く、わざわざ高校内でネットをしなくても……」

( ^ω^)「こないだギャルゲーっぽい物をやっているのを見たお」

ξ ゚听)ξ「……あんた達もやっぱりそんなのが好きなの?」

(; ^ω^)「そ、そんな事無いお!!」

嘘付け、こないだゲームショップで手に取ってたのを見たぞ。
まあ俺のPC内にもいくつかあるので、人の事をとやかく言えないがな……
40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:53:03.14 ID:dl43Cw4N0
× RAN
○ LAN

41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:54:05.14 ID:YDZD8X8I0

( ´_ゝ`)「よーし、さっそく次の画像を……」

( <●><●>)「待ってください。それは――」 ガガガガガ

(; ´_ゝ`)「……OK、ブラクラゲット」

( <●><●>)「『流石だよな、俺達』と返して欲しいのはわかってます」


川 ゚ -゚)「……喉が渇いたな。自販機まで行ってくる」

('A`)「あ、俺もいいか?」

(´・ω・`)「奇遇だね。ちょうど僕もお茶が欲しいと思っていたんだよ」

( ^ω^)「ボクは別にいいお。教室でゆっくりしてるお」

ξ ゚听)ξ「……私も残るわ。三人で行ってらっしゃい」



('A`;)「ったく、なんであの二人は付き合わないのかねー?」

(´・ω・`)「色々照れ臭いんじゃないかな? きっと……」

川 ゚ -゚)「もうちょっとツンが素直になればいいのにな」

42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:58:06.88 ID:YDZD8X8I0
俺達が一階の自販機前に着いた時、意外な人物がいた。

ζ(゚ー゚*ζ「ねえねえ、今度の休み何処行くー?」

( ´_>`)「んー、適当に枠手家通りでもうろつくかな?」

さっきまで教室にいたはずの兄者がそこにいた。
……しかも、どことなくツンに似た少女を引き連れてだ。

('A`)「あれ、さっきまで教室にいたよな? 何時の間に?」

( ´_>`)「ん、誰だ? 悪いが見覚えが……」

そこで兄者らしき人は何かに納得したらしく、俺達の方を向いて言葉を続ける。

(´<_` ) 彡「なるほど、兄者の奴と勘違いしてるんだな。
        俺は弟者。兄者は俺の双子の兄だ、一卵性のな」

外見上は瓜二つだが、そう言われると確かに雰囲気が違う気もする。
兄者独特の、梅雨時の様なねっとりとしたオーラではなく、朝の高原の様に爽やかな空気って感じだ。

(´・ω・`)「へー、一卵性の双子って初めて見たよ。
      ちなみにクラスは? 僕達はQ組だけど」

(´<_` )「隣のW組だな。次の体育ではよろしくな」

そういや、明日の体育はW組と合同だったな。

43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/30(日) 23:59:10.41 ID:YDZD8X8I0

そこまで言った時、隣にいた少女が急に語りかけてきた。

ζ(゚ー゚*ζ「君達Q組なの? じゃあツンって子知らない?
       アタシみたいに金髪をくるくる巻いている――」

川 ゚ -゚)「ツンとは友人だが……どうした?」

ζ(゚ー゚*ζ「そう。もしかしてあなたが噂の……
       あっ、ごめんね。ツンは私の従妹なのよ」

川 ゚ -゚)「……なるほど、だからツンと似てるのか」

確かにツンと良く似ているが、決定的に違うポイントがある。
……胸の中にスイカでも入れてるのか? この女は。

ζ(゚ー゚*ζ「アタシの名前は瓜実デレ。ツンをよろしくね」

(´<_` )「……おっと、次は移動授業だったな。急ぐぞ、デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあまたねー、クーさん達!」


川 ゚ -゚)「なんで彼女が私の名前を知ってたか教えてもらおうか、ツン」

ξ;゚听)ξ「そ、それはデレとこないだ電話でちょっと話をして……」

一体俺達の事を何て吹き込んだのやら……

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:00:29.33 ID:/LRdmQwo0

     ○     ○     ○

ハハ ロ -ロ)ハ「OK、ではMr.モララー、textbook の24P、続きから読んでください」

( ・∀・)「解りました。『私はその、人気メニューがナポリタンという(ry」

ハハ ロ -ロ)ハ「Good ! ではモララー、一体彼女は何を知ってしまったと思います?」

( ・∀・)「……それはですね、おそらく途中でお皿を取り替えたというのが――」


(*‘ω‘ *)「じゃあ宝名、この文を訳すっぽ」

( ・∀・)「『ある物事に頼りすぎると、人間は進歩しない』……ですかね?」

(*‘ω‘ *)「完璧だっぽ! じゃあ次は津出、この文を――」



('A`;)「しかし、モララーの奴は凄いよな……」

(´・ω・`)「スポーツも出来るし、性格も悪くない……完璧な人間っているもんだね」

ξ ゚听)ξ「でも何か裏がありそうなのよねー……」

('A`)「そうか? 考え過ぎだろ」

川 ゚ -゚)「余りに優秀なので、脳の何処かで拒否反応を起こすのではないか?
     『そんな完璧な人間はいない。何処か裏があるはずだ』とでも……」

45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:03:09.14 ID:/LRdmQwo0

( ^ω^)「そうだお! 絶対何か裏があるお!」

(´・ω・`)「……ねえ、新速市にある『JPG』って企業知ってるよね?」

('A`)「知らないはずないだろ?」

JPGとは、この国でも最大手に当たる大型総合メーカーだ。
主に家電でお馴染みだが、重機やバイオ、コンピューターなど手掛けている範囲は広い。
余談だが、家の父親の勤務先も、JPGの関連会社である。

(´・ω・`)「……モララーは、そこの取締役の孫らしいよ」

('A`;)「なっ――」

(; ^ω^)「なっ――」

ξ;゚听)ξ「「「なんだってーー!!」」」('A`;(^ω^ ;)

御曹司……圧倒的な響き……
誰だよ、天は二物を与えずなんて言ってた奴は……

(; ^ω^)「勝ち目が無いお……」

('A`)「まあ元気だせよ。別に敵って訳じゃないんだし……」

     =@     =@     =@

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:06:02.76 ID:/LRdmQwo0

     ○     ○     ○

ゲーハーの一階から四階までは、ゲームセンターになっている。
俺達はまず二階、おもに大型ハードや体感ゲームがあるフロアに移動した。
そこで目に付いたエアーホッケーで、二人組に分かれてトーナメントをしたのだが……

ノパ听)「くらえええっっ!! 必殺、鼠花火!!」

('、`;川「きゃあっ!」

(;´・ω・)「一点も取れないなんて……圧倒的過ぎる」

ノパー゚)「よーし!! やったな、ドクオ!!」

('A`;)「……ってか、俺は何もしてないがな」

俺と組んだヒートが鬼神の様な強さで、一方的な勝負となってしまった。

アセ;゚ー゚)リ「一回戦も完封だったしね……」

川 ゚ -゚)「目で追えないスピードのディスクなんて返せる訳ないだろ」

ξ ゚听)ξ「じゃあ次は――」

( ^ω^)「おっおっ、あれはどうかお?」

ブーンが指し示したのは、ガンシューティングゲームの筐体だった。
どうやら四人同時プレイが可能なようだが……
機体横の『難易度:インフェルノ級』という赤文字が気になって仕方ない。

47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:09:01.68 ID:/LRdmQwo0
ξ ゚听)ξ「ブーン、それだと四人までしか出来ないでしょ?」

( ^ω^)「それもそうだお……」

ノパ听)「いや、アタシはやってみたいぞっ!」

ミセ*゚ー゚)リ「死んだら交代制にすればいいんじゃないかな?」

('、`*川「とりあえず、さっさと始めましょ」

ゲームのストーリーは、ビルを占拠したテロリストを殲滅するという物。
話し合いの結果、初期メンバーは俺、ヒート、ペニサス、ブーンとなった。
この手のゲームは一応数回ほどやった事があるのだが……

(; ^ω^)「やばいお! 凄く難しいお!」

('A`;)「ぐっ、一般人が邪魔だ!」

ノパ听)「あれっ、画面が真っ赤に染まったんだが……!?」

川 ゚ -゚)「ヒート、交代の時間だ」

民間人を間違って撃つとライフがごっそり減るので、正確に敵のみを狙わないといけない。
ほんの数分で、ヒートに続いてブーンもゲームオーバーとなり、ツンと交代した。
そして何とか、一面の中ボスまで辿り着いたのだが……
49 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:12:13.46 ID:/LRdmQwo0
('A`;)「ちょっ、手榴弾なんて卑怯だろ!」

('、`*川「あ、ゴメン。私やられたわ」

敵は時々手榴弾を投擲してきて、こちらのライフを凄い勢いで削ってくる。
それを防ぐには、空中で打ち落とすしかないのだが……

('A`;)「あんな小さい的なんて無理だろ……駄目だ、死んだ」

(´・ω・`)「よし、僕に任せて」

俺の代わりにショボンが入り、コインを投入する。そして――

(´・ω・`)「…………」

('A`;)「なっ!」

あっさりと敵の投げた手榴弾を打ち落とすショボン。
その後もショボンの目まぐるしい活躍は続いていく。

('A`;)「凄い、人質の隙間から敵を……」

(; ^ω^)「……恐ろしく正確なヘッドショットだお」

ノパ听)「なんか凄いぞ、ショボン!!」

他の三ヶ所は次々とローテーションしていくが、ショボンは初期からほとんどダメージを受けてない。
特に凄いのが、誤って民間人を撃つことが全く無いのだ。

50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:15:35.51 ID:/LRdmQwo0

そして最後の敵を倒し、画面にエンドロールが流れ出す。

('A`)「やったな、ショボン!」

ノハ*゚听)「かっこよかったぞおおぉぉっ!!」

(´・ω・`)「いやぁ、ただのまぐれだよ……」

川 ゚ -゚)「いやいや、間違いなく君の実力だよ」

( ´_ゝ`)「うむ。過去最難関と歌われるこのゲームを、ノーコンでクリアするとは……」

( ^ω^)「きっとSPとかになれるぐらいの才能があるお!」

次々とショボンに賛辞を送る俺達…………ってちょっと待て。

ξ ゚听)ξ「ねえあんた、何時の間にグループ内に溶け込んでるのよ?」

( ´_ゝ`)b「ステージ2が終わる頃だ。ミセリちゃんが『アタシもうダメ〜』って甘い声をあg……ゲフォッ!」

イカ#゚ー゚)リ「何気持ち悪い声真似してんのよっ!」

ミセリの拳を腹に受け、その場に崩れ落ちる兄者。
床の上でビクビクと悶えながらも、まだ活力は尽きてないようだ。

(; ´_ゝ`)「あ、あと2cmずれていたら危なかった……」

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:18:10.92 ID:/LRdmQwo0
('、`*川「まあまあミセリ、そんな早く手を出さなくてもいいじゃない。
     確かに兄者君が気持ち悪いのは分かるけどさ」

(; ´_ゝ`)「あれ、俺の言われ様酷くね……」

ξ ゚听)ξ「大丈夫かしら、立てる?」

兄者の頭元まで行き、手を差し伸べるツン。
結構乱暴な面が目立つツンだが、意外と優しい所もあるんだよな。

(* ´_ゝ`)「あ、ありがとうな…………アオノ シマシマ」

ξ ゚听)ξ「…………!!!!」

……彼の目線が何処に向いていて、何を見たのかは言う必要は無いだろう。

ξ#゚Д゚)ξ「地獄へ落ちろおおおぉぉぉっっ!!」

兄者の頭が、本来曲がってはいけない方向へと蹴り飛ばされる。
完全に白目を向き、ダウンする兄者。しかしその後も、ツンの猛攻は止まる事がない。

ξ# )ξ「君がっ! 死ぬまでっ! 殴る事をっ! やめないっ!」

兄者の襟首を掴み上げ、余った拳で幾度も顔を殴打する。
……ってかツン、JOJ○知らなかったんじゃないのか?


ミンチより酷い事になった何かを残し、俺達は違うフロアへと向かった。

52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:21:03.69 ID:/LRdmQwo0

     ○     ○     ○

三階は昔ながらのディスプレイ型ゲームと、音ゲーが入っているフロアだ。
とりあえず適当にうろついてみる俺達。

('、`*川「ねえ、あそこ凄い人だかりが出来てない?」

見てみると、格ゲーのある一角に異様なほどの人だかりがある。
どうやら手強いプレイヤーが連勝しているようだが……

(=゚ω゚)ノ「おっ、ブーン達だょぅ。こんにちはだょぅ!」

( ^ω^)「おっおっ、ぃょぅも来てたのかお」

ってか、知り合いとの遭遇率高過ぎだろ、常識的に考えて……

サト*゚ー゚)リ「まあ美府市内での遊び場ベスト3に入るらしいしね、ここは」

('A`;)「解説サンクス。というか心の声を読むなよ……」

川 ゚ -゚)「で、これは何の騒ぎなんだ?」

(=゚ω゚)ノ「ほら、あそこだょぅ」

人だかりの方を指すぃょぅ。といっても見えないんだが……

(=゚ω゚)ノ「よし、じゃあついてくるぃょぅ」

53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:24:03.11 ID:/LRdmQwo0

俺達は人混みを掻き分け、台の元まで向かう。
2対2の某MS対戦ゲーム(初代)で、ちょうど試合が終わった所の様だ。

从(#゚Д゚ノ〈「こんな所でっ! 私はぁぁぁっっ!!」

>リ;`∀´)ゝ「くっそ! こっちだって二人がかりだってのによっ!」

ヽd`ー´)「……おいお前ら、連絡が入った。帰還するぞ」

負けた二人組を引き連れ、台から離れて行く緑髪の男。
そしてその反対のテーブルには、よく見知った顔がいた。

マト#>д<)メ「あんまりゲーセンで叫ぶなよ、見苦しい……」

( ´ー`)「全くダーヨ。あ、ぃょぅったらどこ行ってたんダーヨ?」

(=゚ω゚)ノ「お待たせだょぅ。ブーン達に会ったんだぃょぅ」

( ^ω^)「どうもだお!」

('、`*川「あら、マトマト君とネーヨ君じゃない」

( ´ー`)「……女引き連れすぎダーヨ」

('A`;)「たしかにな……」

54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:27:12.00 ID:/LRdmQwo0

(=゚ω゚)ノ「で、今何勝目なんだょぅ?」

マト#>д<)メ「今ので確か27連勝だな」

('A`;)「すげぇ! 今の補正半端ないだろ!」

このゲームはある程度連勝すると、受けるダメージなどに補正が入るようになっている。
せいぜい俺の知ってる限りでは、二桁に行くか行かないかぐらいが限界だと思っていたが……

(´・ω・`)「あっ、次の対戦相手が入ったみたいだよ」

マト#>д<)メ「じゃあなー、また休み明けにな」

あまり邪魔しちゃ悪いし、さっさと移動する。
立ち去るついでに、対戦相手をチラッと見てみるかな。


i,,ゝ;´Д`)i「なあ、本当にお前一人で大丈夫なのか?」

W ´∀`)「やめてよね。本気を出したら僕が負けるはずないだろ……」 ジョインジョインフリーダムゥ


…………マトマト達が勝てればいいんだがな。

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:30:02.01 ID:/LRdmQwo0

その後幾つか音ゲーをプレイし、今は四階のエレベーター前、自販機スペースで休憩中。
疲れた体に自販機のアイスが染みるぜ…………ミントチョコうめぇwwwwww

( ^ω^)「さーて、じゃあどうするかお?」

ξ ゚听)ξ「そうね……この中でメダルゲームやりたい人いる?」

(´・ω・`)「…………反応が無いみたいだね」

ノパ听)「じゃあさ、一階のプライズコーナーに行かないかっ!?」

('、`*川「確かカラオケのレシートで、一回無料で出来たよね」

川 ゚ -゚)「よし、次は一階だな」

エレベーターから出てきた人達とすれ違い、俺達は一階を目指す。


W ゚∀゚)「僕達は……どうしてこんな所へ……来てしまったんだろう……」

i,,ゝ;´Д`)i「おいっ、しっかりしろ!」


     @=     @=     @=
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:33:48.84 ID:/LRdmQwo0

     【同日同時刻、とある神社で】

lw´‐ _‐ノv「ガバディガバディガバディガバディガバディガバディ――」

(*゚∀゚)「シュー、ちょっと聞きたいことが…………何を叫んでるんだよ?」

lw´‐ _‐ノv「いや、目の前に前髪が垂れ下がってうっとおしいからな。
       口からの風圧によりどっかにいかないかなーとか……」

(;*゚∀゚)「……普通に手を使えばいいじゃん!」

lw´‐ _‐ノv「つー。甘い、その考えは甘すぎるぞ。例えるならゴーヤの蜂蜜漬けぐらい甘い。
       もしかしたらこの手段が圧倒的に楽かもしれないじゃ……喉乾いた、水くれ」

(;*゚∀゚)「明らかに疲れているし……あとガバディじゃなくてカバディな。
     それにゴーヤの蜂蜜漬けって甘いのか苦いのか……あっ、そうだ」

lw´‐ _‐ノv「……どうした?」

(*゚∀゚)「紅茶を飲もうと思ったんだが砂糖壷が見当たらねーんだ。シューは知らないか?」

lw´‐ _‐ノv「ああ、それなら正面玄関の下駄箱の上にあるぞ」

(*゚∀゚)「なんでそんな所に……まあ取ってくる。シューも飲むか?」

lw´‐ _‐ノv「大盛りのつゆだく、砂糖一杯で」

(;*゚∀゚)「飲み物につゆだくも何もないだろ……少し待ってろよ」

58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:36:08.86 ID:/LRdmQwo0

lw´‐ _‐ノv「……行ったか。そう、それでいい」

lw´‐ _‐ノv「………………」

lw´‐ _‐ノv「…………あ、そういえば……」

lw´‐ _‐ノv「…………まあいいか」

lw´‐ _‐ノv「………………」

「ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」

lw´‐ _‐ノv「ペロッ、これはつーの叫び声……」

ドテドテッ バタッ

(*;∀;)「シュー、砂糖壷の中に変な虫がっ!!」

lw´‐ _‐ノv「どれどれ、見せてみなさい」

(;*゚∀゚)「あんな気味悪い壷持ってこれるかよ! シューが来てくれ!」

lw´‐ _‐ノv「えー、コタツから出るのめんどい……」

(;*゚∀゚)「そもそも何でこの陽気の中コタツに入っているんだよ!
      5月なんだしいい加減収めろよ! シューの額とか汗でびっしょりだし!」

59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:39:01.98 ID:/LRdmQwo0

lw´‐ _‐ノv「と、いう訳で現場まで来たのだが……」

(;*゚∀゚)「ムリ、マジで無理。シュー頼んだ」

lw´‐ _‐ノv「了解した、パカッとな」

(*゚∀゚)「……どうだ、まだいるか?」

lw´‐ _‐ノv「なんだ、ただのアリジゴクじゃないか……」

(*゚∀゚)「……アリジゴク?」

lw´‐ _‐ノv「ウスバカゲロウ(薄翅蜉蝣)はアミメカゲロウ目(脈翅目)ウス (※長いので中略) 別できる。
       このグループの一部の幼虫はアリジゴク(蟻地獄)と呼ばれ、軒下等の (※長いので以下略)」

(;*゚∀゚)「……そんなwiki丸写しの薀蓄はいいから、どっかに捨ててきてくれないか?」

lw´‐ _‐ノv「まあ仕方ない。つーがそこまで言うなら逃がしてやろうではないか」

(*゚∀゚)「……しかし何で砂糖壷の中にそんな虫が――」

lw´‐ _‐ノv「せっかくアリ対策の為に入れておいたんだがな……」

(#*゚д゚)「元凶はお前かあああぁっっ!!」

     =@     =@     =@
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:42:16.14 ID:/LRdmQwo0

     ○     ○     ○

( ^ω^)「……よし、ここだお!」

ブーンがボタンを離し、次のボタンへと手をかける。
そしてゆっくりとアームが降りていき……

ξ ゚听)ξ「……引っ掛りさえしなかったわね」

(# ^ω^)「この台の設定がきつ過ぎなんだお!」

様々なぬいぐるみが入っているこのUFOキャッチャーは、カラオケなど店内施設利用者専用の物らしい。
店員にレシートを見せる事により、人数分の回数プレイ出来るという仕組みだとか。

川 ゚ -゚)「いや。現に私やツン、ペニサスは取れたぞ」

二頭身な猫のぬいぐるみを、手でこねくり回しながら答えるクー。

(´・ω・`)「むしろ設定は凄く甘いはずだよ……ほら」

そう言いながら、あっさりとぬいぐるみを取るショボン。
ウナギとトカゲの間の子みたいなその人形を、ショボンはヒートに手渡した。

ノパ听)「えっ、いいのかっ!?」

(´・ω・`)「さっき欲しがっていたみたいだからね。 ……別に僕は欲しい物が無かったし」

ノハ*゚听)「ありがとなあぁぁぁっっ!! 大事にするぞおおぉぉっっ!!」

64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:45:26.08 ID:/LRdmQwo0
('A`)「よーし、じゃあ俺は……」

……かと言って、俺も別に欲しい物が無いんだよなー。
とりあえず簡単そうな位置にある、あの銃を持った犬っぽいぬいぐるみでも狙って――

ミセ*゚ー゚)リ「…………」

('A`;)「…………」

……ほんの一瞬だったが、隣から熱い視線が送られてきた。
そういやミセリは海亀のぬいぐるみを狙って、取るのに失敗したんだよな……

('A`)「よし、じゃあいくぞ!」

かなり難しい位置にあるが、その亀を狙うしかないな。
よし、横移動はこれぐらいで…………どうだ!?

ミセ*゚ー゚)リ「おおっ、凄い!」

狙い通りにガッチリとアームが甲羅を掴み、ぬいぐるみが持ち上げられていく。
その後も危なげなくぬいぐるみは空輸されていき、穴へと落ちていった。

('A`)「ほらよっ」

ミセ*゚ー゚)リ ノシ「ありがとうねっ! 大事にするよー!!」

満面の笑顔を浮かべてぬいぐるみを抱きしめながら、俺のの右手をシェイクしてくるミセリ。
大声を上げながらそんな事をやるから、仲間内どころか周りの目線まで集まって来ているし……

65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 00:48:05.12 ID:/LRdmQwo0
('、`*川「中々やるじゃない、ドクオ君」

川 ゚ -゚)「ヒューヒュー」

(´・ω・`)「いやあ、やるもんだね」

ξ ゚听)ξ「……全くね」

( ^ω^)「凄かったお!」

(=゚ω゚)ノ「かっこ良かったょぅ!」

マト#>д<)メ「まあ設定は劇甘だったしな。とれて当然だろ」

((#)´_ゝ`)b「Nice UFO.」

从 ゚∀从「ははっ、いいもん見せてもらったぜ!」



('A`;)「……いやいやいやいやいや!! ギャラリー多過ぎだろ!!」

一緒に行動していた計八人はともかく、ぃょぅ達に兄者、そして――

从 ゚∀从「いいじゃねーか。なあ、渡なb……あれ?」

/ ゚、。 /「渡辺さんなら、先ほどから行方不明ですよ」

ハインにダイオード……しかも話によると渡辺さんも来ているようだ。
69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:00:10.81 ID:/LRdmQwo0
从'ー'从「ふぇぇ〜っ、やっと見つけたよ〜」

/ ゚、。 /「あ、お帰りなさい」

从'ー';从「あれれ〜、いっぱい人がいるよ〜」


ξ;゚听)ξ「全部で15人、クラスの半分以上がこの場に……」

('A`;)「……ある意味壮観だな」

いくら人気スポットとは言え、エンカウント率高過ぎだろ……

从 ゚∀从「なあお前ら。そろそろ五時を過ぎるんだが、早めの晩飯といかないか!?
      安くて美味い店を見つけたからさ、折角だし一緒に行こうぜ!」

急にそんな事を言って来るハイン。まあさっきのアイス位なら消化出来てるしな……

( ^ω^)「おっおっ、どうするかお?」

川 ゚ -゚)「私は大丈夫だが……皆はどうだ?」

('、`*川「……まあいいんじゃないの?」

ミセ*゚ー゚)リ「特に反論も無さそうだしね」

(´・ω・`)「よし、じゃあ僕らは行く方針で」
71 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:03:07.13 ID:/LRdmQwo0

从 ゚∀从「よーし、決まったか?」

( ^ω^)「おっおっ、僕らは大丈夫だお!」

マト#>д<)メ「俺達も大丈夫だ! ところで場所はどこだ?」

从 ゚∀从「確か、『バーボンハウス』って店だったな。割と近くだぜ」

……よりによってバーボンハウスかよ。

(;´・ω・)「ねえ。その店ってさ、かなり小さくない?」

从 ゚∀从「……あー、そういやそうだった気もするな」

ξ;゚听)ξ「そもそもこの連休の最中やってるのかしら?
       あそこの店長、割と気まぐれだったはずだけど」

从 ゚∀从「あれ、もしかして知ってるのか?」

( ^ω^)「知ってるも何も、色々と馴染みが深い店だお」

(;´・ω・)「……ちょっと従兄さんに電話してくるよ」

無事に席が取れればいいのだがな……

     =@     =@     =@

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:06:02.47 ID:/LRdmQwo0

     【平穏な日々?編】

(; ^ω^)「もう駄目だお! 死ぬお!」

ξ ゚听)ξ「ほらほら! 泣き言を言う暇があるなら手と頭を動かすの!」

('A`)「なあ、この文ってどう訳せばいいんだっけ?」

川 ゚ -゚)「ああ、そこはだな……」

学校が始まってから初の日曜は、ブーン宅での勉強会となった。
やはり週明けにテストがあるのは事実の様らしく、こうやって対策に追われている訳だ。
各自が適当に教科書や参考書を持ち寄り、好き勝手な教科をやっている。


ハ ・ω・)ハ「お茶菓子持って来たんよ」

ξ ゚ー゚)ξ「あっ、おばさん。ありがとうございます!」

ハ ・ω・)ハ「別にいいんよ。これからもブーンと仲良くやってほしいんよ」

(´・ω・`)「いえ、こちらこそ」

('A`)「勿論です!」

ハ ・ω・)ハ「あらあら、うれしいんよ。じゃあ頑張ってほしいんよ」
74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:09:03.48 ID:/LRdmQwo0
川 ゚ -゚)「鳴くぜウグイス平城京……だったかな?」

ξ ゚听)ξ「クー、それを言うなら平安京よ」

('A`;)「そもそも『鳴くぜ』だと、語呂合わせの意味ねーじゃん……」

クーが社会関係が駄目だとは聞いていたが、これほどだとは……

川 ゚ -゚)「そもそも何で縄文時代が弥生より先なんだ?
     どう見ても縄文土器の方が綺麗ではないか」

いや、それはクー個人の感性だろ……

( ^ω^)「ツン、やっぱりわかんないお!」

ξ#゚听)ξ「あー、もう! だからね、まずはこの公式を利用してね――」

(; ^ω^)「それがわかんないから聞いてるんだお!」

川 ゚ -゚)「まあ落ち着け、二人とも。いいかブーン、まずはこの記号だが……」

クーの説明は非常に解り易く、ブーンにもようやく理解できたようだ。
しかしなぜピンポイントで社会系が駄目なのかね、クーの奴は?


その数日後に予告通りテストがあったのだが、どうやら皆そこそこの点数を取れたようだ。
一応成果があったみたいで良かったな……

75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:12:03.35 ID:/LRdmQwo0

     ○     ○     ○

ある朝俺が高校に着くと、下駄箱の中に妙な手応えがあった。

('A`;)「こ、これはまさか……」

ピンク色の封筒、丸い字で『ドクオ君へ』と書かれた文字、封をしているハート型シール。
……遂に我が世の春が来たのか!!
トイレの個室に入り、慌てて手紙を開くと、そこには可愛らしい文字がこう並んでいた。

『 放課後の午後4時、体育館裏にある新しい倉庫の前まで来てください  砂緒 』

('A`;)「…………砂緒って……」

砂緒の姓を持つ知り合いで、可能性があるのは三人いるが……正直誰と考えても微妙だ。

まずはクー、彼女の性格から考えると絶対口頭で伝えてくるだろう。
わざわざこんなまどろっこしい真似はしてこないはずだ。

同じ理由でヒートも却下。そもそも彼女の字は、もっと躍動感が溢れていたはず。
こんな可愛らしくまとまった字では無く、それこそ手紙を飛び出すほどの大きな字だった。

一番こんな事をやりそうなのはシューだが、彼女にしては文体が普通過ぎる。
もっと難読かつ不可解な文のはず……いや、逆に手紙だと普通なのか?


もしかして……いやいや、やっぱねーな。あいつがここにいるはずないし…………
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:15:04.01 ID:/LRdmQwo0
午後4時。俺は手紙で指定された、最近作られたばかりの体育館倉庫前にいた。
わざわざ俺を呼び出す暇人の顔を見てみたいし、万が一の事があったら……

('A`;)「しかし、見事に誰もいないな……」

一応砂緒姓の三人にはそれとなくカマを掛けたのだが、良好な反応は得られなかった。
……やはりこの手紙はイタズラで、今頃どこかの物陰から笑われてるのかもな。
アホらしくなってきたな、とっとと帰るか。

「あの、すいません……」

俺がそんな事を考え始めた時、倉庫の方から声が聞こえてきた。
聞き覚えの無い女の声、少なくとも砂緒三姉妹のものではない。

「すいません……ドクオ君ですよね……?」

辺りをよく観察すると、倉庫の入り口が薄く開き、中から人が覗いているのが見えた。
かなーりホラーチックなのだが、まあそれはともかく――

('A`;)「どなたですか? いや、マジで」

「あっ、すいません……多分ドクオ君はご存じ無いと思います。
 とりあえずこの中に入ってきてください……」

倉庫の扉の隙間が増し、人影が奥へと引っ込む。
……やや嫌な予感はするが、好奇心には逆らえない。
俺は新築同然の倉庫へと足を踏み入れた。

78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:19:03.34 ID:/LRdmQwo0
倉庫内は予想以上に真っ暗で、入り口から差し込む光以外、主な光源は見当たらない。
電灯を点けようとスイッチを弄るが、まだ通電してないのか全く反応しなかった。

川:::::::::::)「ドクオ君、こっちに来て……」

まだ作られたばかりで物資が運び込まれてなく、がら空きな倉庫の奥。そこにJKらしき人影がある。
かろうじて見える長い黒髪はクーを彷彿とさせるが、背丈的にいって低すぎるな。

('A`;)「お、俺に何の用ですか?」

川::゚:::::::)「ふふっ、あなたがドクオ君なのね……結構冴えない顔」

よし、幽霊にしては生々し過ぎる。生きてる人には間違いないな。
まあ俺は幽霊を見た事がある訳ではないが……いや、それより――

('A`)「あなたが呼び出したんでしょ? 何でそんな事を……」

よく見るとその人の右手には、何かが握られている様にみえる。
くそっ、暗くてよく見えないな……

川::゚:::::::゚)
「だって……私はあなたの事よく知らないから……」

('A`)「知らないって……誰かから頼まれ事でも――」

79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:22:10.15 ID:/LRdmQwo0

その時、彼女は右手をゆっくりと持ち上げた。
入り口からの反射光の中に、持っていた物が浮かび上がる。

川::゚ :::::゚)「まあね、結局は誰でも良かったの……」

('A`;)「…………マジかよ」

彼女が手にしていたのは、大きな刃渡りを持つ出刃包丁。
あれなら冷凍のブロック肉でもばっさり切る事が可能だろう。
刃で入り口からの光が反射し、顔元が映し出される。

川 ゚ 々゚)「一度でいいから、人の中身見てみたかったの……」

爽やかな笑顔を浮かべているが、その中には狂気が見て取れる。
俺が取った行動は勿論――

('A`;)「失礼しました。ではさよなら!」

今までの俺なら足が竦んでいただろうが、数日前に似たケースにあったばかりだ。
その経験を活かして入り口の方へと身を翻し、逃げ出そうとするが……

川 ゚ 々゚)「……無駄」

まるで自動ドアかの様に扉が閉まり、俺の退路は断たれる。
扉に張り付き、引き戸を強く引くが、全く動く気配を見せない。

('A`;)「ッ――!」
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:24:12.13 ID:/LRdmQwo0
何とかこじ開けようとしていた時、強烈な殺気を感じ、俺は扉から飛び退いた。
それとほぼ同時、扉や壁から一斉に生え出してくる物がある。
こういう時のホラーでの定番は、青白い腕と相場が決まってるのだが……

川 ゚ 々゚)「うふふっ、あはっ、あははははは」

('A`;)「……どんだけ包丁好きなんだよ」

室内の電灯が一斉に灯り、俺は信じたくは無い光景を目にする事になった。
壁にビッシリと並ぶ包丁の刃。おそらく百、いや千本は下らないだろう。
たしか中世にこんな拷問器具があったような……あれ、何でハインの顔が思い浮かんだんだ?

川 ゚ 々゚)「じゃあ、中身見せて。まずはやっぱりお腹からかな?」

('A`;)「や、やめてくれ……大体何で俺なんだよ!? お前違うクラスだろ?」

川 ゚ 々゚)「……何となく。学生便覧から適当に選んだだけ」

何となくで殺されてたまるか!!

('A`;)「そもそもお前誰だ! まだ質問に答えてないだろ?」

川 ゚ 々゚)「あはっ、忘れてたね。『砂緒くるう』よ、覚えてー……」

('A`;)「どこのクラスだ?」

川 ゚ 々゚)「……一年W組。ドクオ君の隣ね」

……なんで会話が成り立つんだ?

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:27:01.86 ID:/LRdmQwo0
川 ゚ 々゚)「もう魚を捌く日々には飽き飽きなの。やっぱり生の人間って興味ない……?」

('A`)「……理科の授業でカエルの解剖とかやっただろ? それじゃ駄目なのか?」

川 ゚ 々゚)「私の学校ではやらなかった……動物愛護団体が五月蝿くて。
      理科の教科書を見ながら、ずっと楽しみにしてたのに……」

('A`)「その団体の名前は?」

川 ゚ 々゚)「……シーシェ○ード」

どうしてオーストラリアの反捕鯨団体が地元の中学校に乗り込んでくるんだよ!

川 ゚ 々゚)「じゃあ、もういいかな?」

('A`)「いや、駄目だろ。どう考えても……」

川 ゚ 々゚)「でも私は見たいの……ちょっと我慢すれば、あっと言う間に終わるから」

いや、我慢出来る奴なんていないだろ。色んな意味で終わるし。

('A`)「なあ……考え直せないか、俺達」

川 ゚ 々゚)「無理ね。もう遅いのよ……」

…………なんだ、この会話?
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:45:15.70 ID:/LRdmQwo0
川 ゚ 々゚)「いいかな? もういいよね? 中身見ても……」

('A`)「いや、だから勘弁してくれって」

川 ゚ 々゚)「……残念ですが、あなたに付き合う余裕はありません」

('A`;)「いやいや、さっきまでノリノリだっただろ!?」

川 ゚ 々゚)「私は過去を振り返らないの。今までずっとそうしてきた……」

……なんかもう駄目かな、色々と。

川 ゚ 々゚)「じゃあ、氏んでちょうだい」

いらない配慮するなよ――って包丁を持った腕を振り被るな!

川 ゚ 々゚)「Arrivederci (訳:さよならだ)」

('A`;)「何でイタリア語なn――うおっ!」

突如入り口の扉が吹き飛び、反対の壁へとぶち当たる。
そこから差し込む太陽の光の中にいたのは……


ξ ゚听)ξ「そこの人! これ以上手は出させな……って、またドクオなの!?」

待っていましたよ、プラナス・チェリーさん。
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:48:26.64 ID:/LRdmQwo0

     □     □     □

ξ ゚听)ξ「…………これは」

ちょうど班内の掃除が終わる頃、私の心の中にざわめきが生まれた。
何度か経験はしてるが、未だに慣れることはないこの感覚……
間違い無く、何者かが近くで魔力を使った証だ。

『メールだぽ』

ブレザーの中に入れた携帯から、あいつの声が聞こえてくる。
正確には携帯本体ではなく、それに付いているフワフワのストラップからだけど。

( ^ω^)「ん、どうしたんだおツン? 急に携帯を取り出して……」

ξ ゚听)ξ「あ、ごめん。急用が出来たから、先に帰っていい?」

( ・∀・)「別に構わないんじゃないかな? もう後はゴミを集めるだけだしね」

ξ ゚ー゚)ξ「ごめん! この埋め合わせはまた今度ね!」

( ^ω^)「帰り道に気をつけるんだお、ツン」

廊下を横切り、階段を駆け上がりながら、私は携帯を握り締める。
屋上へと続く扉――勿論普段は閉鎖中――の前に立った私は、口から言葉を放つ。

ξ ゚听)ξ「『春風と共に――』」

その言葉と同時、私の体が明るい光に包まれる。

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:51:11.65 ID:/LRdmQwo0
淡い桜色の光が晴れた頃には、私の服装が変わっていた。
この学校指定の無難なブレザーから、ピンクと白を基調としたゴスロリファッションへ。
……この格好もまだ慣れないのよね、まあ仕方ないけど。

変装が終わると共に、携帯が光の粒子へと変わり、上下へと伸びる。
同じく光が薄れた時、そこにあったのは先端に桜の飾りが付いたステッキと――

./・ω・ ヽ「よし、じゃあいくぽ」

その上で器用にバランスを取る、毛玉状の謎の生き物、ぽ。
ぽは定位置である私の肩へと跳び移ってくる。どうやって跳ねてるのかしら、あの体で……?

ξ ゚听)ξ「……やっぱり魔力の反応は校内?」

./・ω・ ヽ「どうやらそうだぽ。多分体育館の裏辺りだぽ」

ξ ゚听)ξ「じゃあさっさと終わらせるわよ。『桜開き』」

ピンク色に発光するステッキを扉の鍵に触れさせる。
たったそれだけで普段は厳重に閉じられている扉が開き、殺風景な広い空間が視界の前に広がった。

ξ ゚听)ξ「思うんだけど、これって犯罪にならないのかしらね……」

./・ω・ ヽ「ツンが悪用しなければ問題ないぽ」
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:53:22.09 ID:/LRdmQwo0
屋上へ飛び出た私は、魔力の発生源に向かって跳躍していく。
グラウンドからは丸見えになる位置取りだが、こちらを見て騒ぎ立てる人はいない。
着ている服の影響で、遠距離から見た人がいても『当たり前の風景』と認識する様になってるからだとか。

ξ ゚听)ξ「……でもこのデザインはどうかと思うわ」

ピンクと白のゴスロリ調に、これでもかというほどのヒラヒラなレースの飾り。流石にね……

./・ω・ ヽ「正直ぽは似合うと思うぽ」

正直嬉しくない。まあそれはともかく――

ξ ゚听)ξ「……よし、この中ね」

降り立った私の目の前、倉庫の中から魔力の感覚が伝わってくる。

ξ ゚听)ξ「一気に行くわよ。『桜並木』」

まずは魔法を存分に発揮できるよう、フィールドでこの倉庫を包み込む。
私の魔力を安定させる他に、外部との接点を薄くするという効果もある。

./・ω・ ヽ「まあ封絶みたいなものだぽ」

ξ;゚听)ξ「何を呟いてるのよ……『桜玉』」

持っていたステッキの先、桜の花をモチーフとした飾りの部分に、ピンクの光球が灯る。
私が一番使い易いと思う魔力の性質、『爆発』を高純度で集めたものだ。

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:56:02.27 ID:/LRdmQwo0
./・ω・ ヽ「よし、じゃあやっちゃうかぽ」

ξ ゚听)ξ「言われなくても!」

膨らんでいく光球がバレーボール辺りになった所で、ステッキを野球のバットみたいにスイングする。
遠心力によって光球は弾き飛ばされ、跳んで行く先は体育倉庫の扉。
光球が扉に接触した瞬間、魔力による圧力が光球から発散され、扉が倉庫内へと弾け飛ぶ。

ξ;゚听)ξ(……中の人大丈夫かしら?)

まあいいわ、とりあえず内部に突入!
私がまず見たのは、包丁を突きつけている女子と、突きつけられている男子。
二人がこちらに気を取られている隙に、女にステッキの先を向けながら言葉を放つ。

ξ ゚听)ξ「そこの人! これ以上手は出させな――」


川゚ 々゚ ) つ=ニニフ  ('A`;)


ξ;゚听)ξ「って、またドクオなの!?」

('A`;)「または無いだろ……とにかく助けてくれ!」

102 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:58:11.39 ID:/LRdmQwo0
川 ゚ 々゚)「邪魔するなら…………あれ、デレ?」

デレを知ってるって事は、彼女と同じクラスなのかしら?
そういえば、体育の授業で見た顔のような……

川 ゚ 々゚)「でも胸が無い……偽者?」

ξ#゚听)ξ「……ぶち殺すぞ、ゴミめ」

./・ω・;ヽ「その言葉使いはどうかと思うぽ」

ξ#゚听)ξ「『乱れ桜』ッ!」

私の周りにある空中上に、魔力で作られた結晶体が数個生み出される。
ステッキを軽く振ったのを合図に、それぞれがタイミングをずらしながら、嫌な女に向け飛んで行く。

川 ゚ 々゚)「あははっ、いっぱい来るー……」

……けど向こうも負けては無い様子。
女の少し前辺りで、結晶は横から飛んできた何かによって軌道を変えられ、女の脇へと逸れていった。

ξ ゚听)ξ「これは……包丁?」

今頃気が付いたんだけど、壁一面にはビッシリ包丁が生えていて、その中の一部が飛んできたみたい。
…………って事は、もしかしなくても――

川 ゚ 々゚)「じゃあ次は、私の番ー……」
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 01:59:01.87 ID:/LRdmQwo0
ξ;゚听)ξ「ッ! 『桜重ね』っ!」

('A`;)「うおっ!」

咄嗟の判断でドクオの隣まで駆け寄り、全方位型のバリアを展開する。
次の瞬間から、壁から飛んできた刃がバリアに当たる音が、絶え間無く響いていく。

川 ゚ 々゚)「あははっ、床一面包丁だらけ……」

ξ;゚听)ξ「ったく、向こうは何本在庫があるのよ」

攻撃が始まってから30秒は経過したけど、包丁の波が途切れる気配は無い。
よく観察してみると、床に落ちた包丁は数秒経つと消え去り、再び壁から生えてきてるみたい。

('A`)「ツン、大丈夫か?」

ξ ゚听)ξ「魔力は問題ないけど……このままだと反撃の糸口が掴めないわね」

('A`;)「頼むぜ。もしこの間みたいな事があったら……」

……あのナイフ男の時、あっさりと防壁が破られた話かしら。
大丈夫。あれはぽ曰く、男が特別な魔力を流し込んで、防壁を破壊したらしい。
かなりの実力差でもない限り、こんな飛び道具にそれだけの魔力を仕込むのは無理なはず。

('A`)「なあ、バリア内から攻撃する手段は無いのか?」

ξ ゚听)ξ「あったらとっくの昔にやってるわよ」

しかし、このままだと動きようがないわね……

105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:00:03.97 ID:/LRdmQwo0
('A`)「なあ、何で彼女は無事なんだ?」

ξ ゚听)ξ「……どうやらあの女の後方からは、ナイフが飛んできてないみたいね」

('A`)「そこを攻める事は?」

ξ ゚听)ξ「無理ね。このバリアを解かないと攻撃できないし……蜂の巣になりたい?」

('A`)「お断りしま……あれ?」

ξ ゚听)ξ「ん、攻撃が止んだの?」

絶え間なく飛んでいた包丁の雨がバッタリと止まった。
敵の魔力が尽きたのかと、少し安堵の息を漏らす私。だが――

川 ゚ 々゚)「攻撃が効かない……じゃあ次はイカさんでー」

壁一面を覆っていた女の魔力が、彼女の足元まで移動する。
そして彼女の周りから地面を突き破って、生え出してくる八つの物体があった。

('A`;)「に、日本刀……!?」

ξ;゚听)ξ「いや、烏賊って事は――」

柳刃包丁にも似た、人の背丈を越す細長い刀身。
ドクオが話した様に日本刀に見えなくもないけど、どちらにせよ違う点がある。
刃は普通勝手にウネウネと曲がりくねったり、伸縮したりしない。
107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:03:12.51 ID:/LRdmQwo0
川 ゚ 々゚)「人呼んで…………触手☆アタック……?」

ξ;゚听)ξ「あんた絶対今考えたでしょ!」

緩やかに伸縮を繰り返していた包丁達が、身を縮めるように短くなり、切っ先をこちらに向ける。
薄々感付いてた通り、次に来た行為は力を溜めてのバリアへの突撃だった。
障壁へと次々にぶつかる包丁、もとい触手達。正直言って――

ξ;゚听)ξ「やっぱさっきよりは数段重いわね」

('A`;)「なあ、大丈夫か?」

ξ ゚听)ξ「まあこの位なら……なんとかね」

あの刃物男が使った対魔力因子。このバリアの天敵だけど、それを相手が使う気配はない。
敵の攻撃がやや散漫になった分、上手く隙をつけばようやく反撃出来るかも……

川 ゚ 々゚)「これでも効かないなら……合体で……」

ξ;゚听)ξ「なっ……!?」

相手の触手が前方へと集まり、一つへと絡まり、纏まっていく。
一気に膨れ上がった敵の魔力の塊は、そのまま私へと向かい、猛進する。
やってきた事はさっきと同じだけど、結果は大きく変わって――

ξ;゚听)ξ「嘘ッ! バリアにヒビがっ!!」

川 ゚ 々゚)「砕け散れ……」

108 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:06:07.97 ID:/LRdmQwo0

     *     *     *

くるうのその言葉と同時、ツンが早口で何かを詠唱する。
すると今までツン達の全体を覆っていたバリアが前方に集まり、密度を増した。

ξ ゚听)ξ「これならそう簡単には……」

川 ゚ 々゚)「……甘ーい…………」

ξ;゚听)ξ「え……?」

バリアに押し止められていた包丁の束が、数本解れて放射状に広がる。
慌てて次の呪文を呟くツン。だが包丁の動きは素早かった。

バリアの脇を突破した包丁達は、ツンの体へと次々と刺さっていく。
驚愕の表情を浮かべたまま、動きが固まるツン。

それと同時、バリアが砕け散り、一際太い包丁群が更にツンを襲う。
勢いに乗ったそれは腹部を突き刺しただけに留まらず、後方の壁まで体を押し流し、磔にする。
力なく垂れ下がった腕からステッキが剥がれ落ち、床と接触した軽い音が響いた。

( A ;)「そ、そんな……」

川 ゚ 々゚)「あははっ、遂に……じゃあ次は……」

先ほど分かれた細い触手達がツンの腹を切り裂き、内部を抉り出そうと動く。
ドクオはただ、それを目で追うことしか出来なかった。
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:10:04.79 ID:/LRdmQwo0
ツンのお腹に刺さった包丁が左右へと動き、傷口を広げる。
そして広げられた先からは――

川 ゚ 々゚)「…………え……」

驚愕の表情を浮かべ、固まるくるう。

本来なら赤黒い血が吹き出て、様々な臓物が溢れ出すはずの傷口。
しかしそこからは、ただ桜色をした粒子が大量に零れ落ちるのみであった。

呆然としていたくるう。しかし彼女は後方からの気配により我に返り、側面へと飛び退く。
はたしてその後ろには、獲物を振り下ろした無傷のツンの姿があった。

ξ ゚听)ξ「ちっ、勘が鋭いわね」

ステッキの先から粒子が伸びた、薙刀のような形状の武器を構え直すツン。
それと同時、磔にされていた方のツンが桜色の粒子へと分解し、空気中へと拡散していく。

川 ゚ 々゚)「身代わりだったなんて……よくも私の純情を……」

ξ ゚听)ξ「っていうか、血が出てない段階で気付きなさいよ。
       さて……じゃあそろそろ決着をつけましょ」

くるうも包丁を構え直し、張り詰めた緊張が二人の間を漂う。
数刻の睨み合いを得て、先に動いたのはツンだった。

111 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:13:49.16 ID:/LRdmQwo0

手元のステッキを上段から振り下ろすツン。当然くるうとの間合いは遠いが――

ξ ゚听)ξ「『桜裂き』っ!」

同時に唱えた詠唱により、先端の粒子部が数倍に伸び、くるうを襲う。

川 ゚ 々゚)「……無駄な事…………」

しかしくるうの判断も素早かった。
まずは手元の包丁で攻撃を受け止めながら、後続の触手群で完全に勢いを殺す。
更には残った二本の触手がステッキ本体に絡みつき、硬化する。

川 ゚ 々゚)「あははっ、これで……」

完全にツンのステッキを絡め取ったくるう。
更に粒子を押し止めていた触手群の一本が、ツンへと一直線に襲い掛かる。

ξ ゚听)ξ「……仕方ないわね」

その攻撃に対してツンが取った行動は、ステッキから手を離しての回避だった。

ξ ゚听)ξ「もっと確実な時に使いたかったんだけどね……『舞桜』ッ!」

しぶしぶ放った言葉と共に、ツンの姿が掻き消える。
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:16:31.19 ID:/LRdmQwo0
川 ゚ 々゚)「えっ……」

くるうは突然ツンの気配が消えた事に戸惑うが、背後からの凄まじい殺気を感じ取る。
防衛のため触手を自分の後方へと展開するくるう、しかしそれだけで止まる相手では無かった。
桜色の粒子を全身に纏い、襲い来る触手群を腕で払い除けながら、くるうへと迫るツン。

ξ ゚听)ξ「これで……」

くるうの目前まで辿り着いたツンは、構えていた拳をくるうの腹部へと突き出す。
急所は外れたが、ボディへの一撃を喰らい表情が歪むくるう。だが、彼女はまだ秘策を残していた。

川  々 )「……あははっ、捕まえたー……」

ξ;゚听)ξ「えっ…………っぐ!」

突如ツンの後方の地面から新たな二本の触手が生え、ツンの両脚へと突き刺さる。
ツンが全く予期していなかった攻撃は、脹脛を貫き、彼女の自由を奪った。

川 ゚ 々゚)「後は…………っ!?」

今のツンは激痛により、身動きが取れないだろうと油断していたくるう。
しかしその考えは、目前まで迫ったツンの拳によって否定される事となる。
慌てて後方へと跳ぶ事により間合いを開け、攻撃を回避するくるう。

ツンの腕が届く範囲から外れたくるうは、勝利を確信した。
目の前のツンは間違いなく実体であり、そして自分の切り札により動けなくなっている。
後は離れた所から触手群で攻撃すれば、魔力の尽きかけた彼女を――

そんなくるうの考えは、叶えられる事が無かった。

114 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:19:11.86 ID:/LRdmQwo0

ξ  )ξ「これで……吹き飛べえぇぇっ!!」

ツンの振り切った拳、その先から大規模な魔力の塊が放出される。
距離を置くため跳んだ事で、空中にいるくるうには回避する手段など無い。
成す術も無く膨大な魔力に身体が蹂躙され、後方の壁へと叩きつけられる。

壁から剥れ地面へと沈み込むくるう。それと同じくして、触手群が黒い粒子となって消え去っていく。
くるうが薄れ行く記憶の最後で見たものは、その場へと倒れこむツンの姿だった。


     □     □     □

「……い、生きてるか!? しっか……」

私の肩を掴んで、ガクガクと揺さぶってくる人物がいる。
うるさいわね、すっごく疲れてるんだからもうちょっと寝させてよ……

「……かぽ? 早く意識を……」

……そうだ、寝てる場合じゃない! 早く事後処理を――

ξ;‐凵])ξ「…………ん……」

('A`;)「ツン! 大丈夫か!?」

重い目蓋を開け最初に目にしたのは、少し涙目になってるドクオの顔。
彼の肩に乗っているぽ共々、本気で心配を掛けちゃったみたい。

115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:22:18.40 ID:/LRdmQwo0
ξ;゚听)ξ「大丈夫……と言いたくはあるけどね。あいつは?」

./・ω・ ヽ「ツンが無事で良かったぽ……あの女は、まだそこに倒れてるぽ」

ぽの目線の先を追いかけようとするが、脚に走った激痛によって阻まれる。
脚の怪我をみようとして、傷口に巻かれた布切れに目が止まった。

ξ ゚听)ξ「これって……もしかしてドクオが?」

('A`;)「あっ……いや、血がドパドパ流れてたからな……」

巻かれた布をよく見ると、大きなハンカチを二つに裂いてあるみたい。
ほとんどが血に染まってるけど、一応止血の役割は果してる。

ξ ゚听)ξ「ありがとね……とりあえず、ステッキがどこにあるか知らない?」

('A`)「ほれ。ぽが必要だって言ってたからな」

ドクオから手渡されたステッキを受け取り、脚の傷口へと先端を向ける。
とりあえずこの脚から何とかしなければね……

ξ;‐凵])ξ「『桜……泉』」

……呪文を唱える時、危ない事に一瞬意識が飛び掛けた。
脚からの失血や疲労も問題だけど、やっぱり魔力が尽きかけてるのが大きいわね……
脚を覆った魔力がじんわりと温まり、傷が癒えていくのが沸々と実感出来る。
117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:25:34.16 ID:/LRdmQwo0
五分ほど安静にしていると、傷口は大体塞がった。
後は普段なら部屋の完全修復までするんだけど……

ξ;゚听)ξ(これだけ魔力を消費してたら、とてもじゃないけど無理ね……)

私の切り札である『舞桜』は、体内に残った魔力の大半を身体に纏い、一気にカタをつける呪文。
身体の瞬発力の大幅強化、巨大な魔力の撃ち出しなど、切り札たる威力はあるけど、欠点も多い。

体内の魔力を制御するためのステッキを手放すので、必要以上の魔力を消費してしまうのだ。
(これはステッキが無くても使えるっていう利点でもある。現にここ二回ほどそうなったし)
持続時間の短さもあり、正に相手を『必』ず『殺』さないといけない技である。(まあ実際は殺さないけどね)

ξ ゚听)ξ「出来る事だけはやりますか……『桜染め』」

まずはくるうの記憶消去と浄化、傷の治療を行う。
……いくら敵だったとはいえ、死なれたら目覚めが悪いしね。
部屋全体のの証拠隠滅は無理だから、血痕だけは消して……後――

ξ ゚听)ξ「『桜返り』」

('A`;)「あっ、それは……」

脚の包帯代わりのハンカチを外し、呪文を唱える。
部屋全体は修復できないけど、これくらいだったら……

118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:28:15.36 ID:/LRdmQwo0

ξ;゚ー゚)ξ「ありがと、ドクオ。思わぬ所で助けられちゃったわね……」

('A`;)「いや、こんなの安物なんだから……それより大丈夫なのか?」

大分身体にガタが来ているので、多分表情にも出てるんだろう。
壁や床に残った傷は今度直すとして……

ξ;‐凵])ξ「ごめん、ドクオ。私とあの子を適当な所まで……」

('A`;)「あっ、おい!」

正直もう体力の限界……全身を覆う魔力を解いた私は、深い意識の底へと引きずり込まれていった。


     ○     ○     ○

ゆらゆらと揺れる私の体。幼い頃に味わった懐かしい感触。
誰かに背負われ、運ばれる安心感は、父の姿を思い出す。
頭を動かせば、ちょっと汗臭いけど昔から知っているアイツの香りが……

119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:31:21.71 ID:/LRdmQwo0

ξ;゚听)ξ「……って、ええっ!?」

(; ^ω^)「おおっ、目を覚ましたかお?」

ξ;゚听)ξ「なっ、なんでブーンがここにいるのっ!? ってかオンブって……!」

(; ^ω^)「ちょっ、ツン! く、首を絞めるの……は…………」

ξ#゚−゚)ξ「い、今すぐ降ろして! ……しかもここ街中じゃない!」

周りの人の微笑ましそうに見てくる目付きには、正直耐えられない。

(; ω )「……解っ……呼キュ……が…………」

ブーンから降りた私は、苦しそうに酸素を補給しているブーンに詰め寄る。

ξ#゚听)ξ「で、なんでアンタがいる訳!?」

(; ^ω^)「おっおっ、ドクオにツンを家まで運ぶよう頼まれたんだお。
      『和寒内先生に頼まれた用事を終えたツンが、疲れて休憩所で眠ってしまった。
       このままにしておくのもあれなので、家まで運んで欲しいんだ』って……どうしたんだお?」

ξ# )ξ ドクオコロスドクオコロスドクオコロスドクオコロス

いくら恩があるとはいえ、後で覚えてなさいよ……
130 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:55:27.60 ID:/LRdmQwo0
(; ^ω^)「正直ここまで運ぶのは重k――いや、とにかく大変だったんだお」

ξ ゚听)ξ「……まあとりあえず、ありがと。感謝はしとくわ」

(; ^ω^)「おっおっ、それよりツンも大変だお! 急に用事を頼まれるなんて……
      今度そんな事があったら、ボクにも一声かけてほしいお! 出来る事なら手伝うお!」

全くコイツは昔から……人の言った事を何の疑いも無く信じ込んで……
私を家まで運ぶなんて、そう簡単に出来る事じゃないだろうに…………
それでも実際にやって、私の態度にも文句を言わずに…………

ξ* )ξ「ほんと、ブーンなんだから……」

( ^ω^)「ん、何か言ったかお? 顔を伏せられたら聞き取り辛いお」

俯いた私に近づくブーン、私の顔を覗き込もうとしてきた所で――

ξ ゚ー゚)ξ「えいっ!」

<; ^ω^ >「ふおおっ、きゅふになにぅぉふるほ!」

不用意に近づいたブーンの両頬を摘まみ、軽く左右へと引っ張る。
ただでさえマヌケ面なのに、両目を白黒させながら戸惑うブーンが可笑しくて――

ξ*゚ー゚)ξ「っ、あははっwwwwww」

<; ^ω^ >「フン、笑わなひでほひいほ……」

周りからバカップルとかいう囁きが耳に入ってくるけど、聞かない事にする。
133 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:58:28.20 ID:/LRdmQwo0
ブーンのへちゃむくれた顔を見てると、今日会った嫌な事は全部何処かへと飛び去っていく気がする。
……肉厚のブーンの頬を摘むのは指が疲れるので、この辺で開放してあげるか。

( ^ω^)「ったく……ツンには油断が出来ないお」

ξ ゚ー゚)ξ「さて。じゃあ帰りましょ、ブーン」

ブーンのショルダーバックを奪い取り、家の方に向かって走り出す私。
今は人通りが多くて出来ないけど、今度アイツがよくやる様に両手を広げて走ってみようかしら?

(; ^ω^)「あっ、鞄返してくれお!」

ξ ゚ー゚)ξ「返して欲しかったら追いついてみなさい!」

(; ^ω^)「待ってくれおーー!」


体にはまだ疲れが溜まってるけど、私はどこまでも走れる気がした。
なぜなら私には、ずっと昔から一緒にいる、―――― なアイツが…………



          【次回に続く】

     =@     =@     =@

134 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 02:59:19.85 ID:/LRdmQwo0

('A`;)「いやいや、まだ終わらねーよ!!」

川 ゚ -゚)「どうしたドクオ、急に叫び出して……?」

('A`;)「いや、急になんか突っ込まなきゃいけない気がして……」

なんだったんだ、あの感覚……?
俺達計15名は、シャキンさんの好意によりバーボンハウスをほぼ貸切状態で使っている。
『これを機に知名度が増えて欲しい』ってのが口実らしいが……本当にマスターには感謝しないとな。


从 ゚∀从「やっぱ美味いな。お前の兄貴やるじゃん!」

(´・ω・`)「だからそれは本人に言いなよ……ほら、カウンターからこっちを寂しそうに見てるし」

从 ゚∀从「いやー、なんか本人に言うのは照れ臭くてな……」


ノハ*゚听)「うーまーいーぞおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!」

アセ;゚ー゚)リ「ああっ! なんかヒーちゃんの後ろから後光がっ!?」

マト;>д<)メ「ぎゃああっ、目がっ、目がああぁぁっ!」

(;=゚ω゚)ノ「マトマト、大丈夫かょぅ!」

135 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 03:00:29.62 ID:/LRdmQwo0

( ´ー`)「で、次はこのコップをこうするーヨ。すると……」

(; ´_ゝ`)「何ッ、コップの中からボールペンだと!?」

/ ゚、。 /「コップの対角線よりは明らかに長い。どうやって……」

('、`;川「それよりさ、そのボールペン私が先週無くした奴じゃない? キャップの傷に見覚えが……」


从;'ー'从「はぐはぐ、はぐっ……んー!!」

ξ;゚听)ξ「あまりかき込んで食べるからっ! 渡辺さん大丈夫!?」

(; ^ω^)「マスター! 水ッ、水だおー!」


('A`;)「どのテーブルも自由だな……」

川 ゚ -゚)「ふふっ、いいじゃないか。これだけ学外でクラスメイトが集まるのは珍しい事だぞ」

('A`)「まあそうだが……」


( ^ω^)「マスター、とりあえずこのミネラルウォーターを借りるお!」

(;`・ω・)「…………! 待てっ、それは!」
137 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 03:02:08.17 ID:/LRdmQwo0
川 ゚ -゚)「しかしこの店はよく利用するよな……」

('A`;)「なんだかんだで週に一度は来てるからな」

4月の下旬に夕方の定食を始めたバーボンハウス。
学生の意見を取り入れた成果はあったのかどうか謎だが、とりあえず評判は上々らしい。


从*゚ー゚从「フオオオオオッッ! ktkr!!」

(; ^ω^)「ちょっ、どうしたんだお!?」

(;`・ω・)「そのボトルにはウォッカが入ってると言おうとしたのだが……遅かったか」

ξ;゚听)ξ「ちょっ、渡辺さん! 何で私に襲いかk――」


ノパ听)「この魚フライもいいなっ! きっと産地は目黒だなっ!」

ミセ*゚ー゚)リ「……一応聞くけど、何で目黒なのよ?」

ノパ听)「だって、昔から『秋刀魚は目黒』って言うだろ!? だから美味しい魚は目黒産に違いないっ!」

アセ;‐д‐)リ「はあっ……全くヒーちゃんは…………」

138 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/31(月) 03:03:16.81 ID:/LRdmQwo0
< いやっ! そんな所に手を――

< よいではないか〜 よいではないか〜

< 何で悪代官……とにかく止めるお!


('A`;)「なんか向こうが酷い事になってるようだが……」

(;´・ω・)「……あとから兄さんには謝らないとね」

从 ゚∀从「ははっ、やっぱ大人数はいいな!」

川 ゚ -゚)「……まあそうだな」

まあ俺も同感だな。色々な人と繋がりを持つ事で、その人数分の様々な経験が出来る。
最も、死線を何度も潜り抜けるのはお断りしたいがな……

GWが終わると、まもなく梅雨が訪れる。
また色んな事があるんだろうが……もうちょっとは平穏でもいいんじゃないか?


     【今度こそ次回へ続く】


< やめ……服だけは……

< 渡辺さん、止めるお!

< ブーン君、そう思うなら凝視するのを止めて手伝ってくれ……

139 名前:【次回予告】:2009/08/31(月) 03:04:08.26 ID:/LRdmQwo0
('A`)「さーて、次回のお話は……」

lw´‐ _‐ノv「シューです。ゴールデンウィークも終わり、度重なる授業で鬱になる季節ですね。
       さて次回は、『ドクオ、納豆に目覚める』『高岡ハインの憂鬱』『クー、地底に帰る』の――」

('A`;)「はいはーい、ストップストップ! でたらめな予告しない!」

lw´‐ _‐ノv「……なんだ、ただのドクオか」

('A`;)「酷い言い様! ……じゃなくて、ここは部外者立ち入り禁止です!」

lw´‐ _‐ノvb「それなら何の問題もない。匍匐前進で入ったからな」

('A`;)「立って入らなかったらいいって訳じゃない!」

lw´‐ _‐ノv「そんなつれない事言うなよー……きゃるん☆」

('A`;)「かわいこぶっても駄目! しかもすげー棒読みだったし!」

lw´‐ _‐ノv「ふっふっふっ……しかしこのままでいいのかな?」

('A`;)「なっ、何がだ!?」

lw´‐ _‐ノv「いや、行数的な意味で」

('A`;)「ああっ、もうスペースが! くそっ、こんな所でっ、こんな所で――」

lw´‐ _‐ノv m9「次回もよろしく!」

140 名前:【次回予告】:2009/08/31(月) 03:05:26.81 ID:/LRdmQwo0
(゚A゚#)「終わって、たまるかああぁぁっっ!!」

            オーバー・ギアス
lw´‐ _‐ノv「何ッ!  限界を突破 しただと……」

('A`#)「指が逆! 限界をギアスとは読まない! そもそも次回予告が1レスという制限はない!」

lw´‐ _‐ノv「ドクオ君、遂に力に目覚めたのね……」

('A`#)「人の話聞けやぁーーっ!」


  我々に欠かせない食文化……それは米。そして米を作るためには、農家の力が必要だ。
  天候や病害など色々な物に左右され、人の力だけではどうにもならない米作り。
  そんな時、人は古来からある事を行ってきた。そして現代でもそれは続いている……

  次回:『恋の稲刈り』


lw´‐ _‐ノv「ニュータイプの修羅場が見れるぞ!」

('A`#)「見れねーよ!」
  _
( ゚∀゚)「乳タイプが見れると聞いて飛んできました!」

('A`#)「帰れ!」
142 名前:以下、本編にかわりまして後書きをお送りします:2009/08/31(月) 03:19:19.62 ID:/LRdmQwo0

投下終了! ずっと付き合ってくれた人、マジでありがとう!

次回の投下は9月の中頃を予定してますが……予定は予定です。
正直書き溜めの量が不安なので、充電しとかないとな……
……少なくとも9月のGWには投下する。うん、絶対に。

文丸さん、我侭を聞いて頂きありがとうございました。
フェスさんもありがとうございます。まとめ形式はフリーダムにお願いします。

それでは次回にまたー!
Back
inserted by FC2 system