ω^)俺達は平穏に過ごせないようです('A
- 1 : ◆9SAojckYCw :2009/08/02(日) 21:00:21.54 ID:K3x+/vIP0
- カタカタ ('A`)「『もし立ったら投下する』っと……」
- 2 :以下、本編を投下する前に雑談をお送りします:2009/08/02(日) 21:01:45.61 ID:K3x+/vIP0
- ('A`;)「…………」
(´・ω・`)「…………」
川 ゚ -゚)「…………」
ξ ゚听)ξ「…………」
( ^ω^)「……立っちゃったお」
('A`;)「……まさか立つとは思いませんでした」
( ^ω^)「で、どうするお?」
('A`#)「ええいっ、立ったものは仕方ない! 投下すんぞっ!」
(´・ω・`)「……の前に、注意事項だよ」
- 3 :以下、本編を投下する前に雑談をお送りします:2009/08/02(日) 21:03:45.22 ID:K3x+/vIP0
- 【注意事項】
・この話は当然の如くフィクションであり、実際の地名、人物、団体、その他諸々とは関係ありません。
・部屋を明るくして、画面からある程度離れて見てください。 <@] ←こんなのが暴れても知りません。
「△フ
・車を運転しながらの閲覧は大変危険です。決して行わないでください。
仮に運転中に携帯を使ってるのが警察に見つかった場合、6000円以上の罰金が待っています。
(; ^ω^)「……激しくどうでもいいお」
川 ゚ -゚)「ちなみに前回までのあらすじを三行にすると……」
・これから投下するのが第一話なので
・当然あらすじもありません
・一行余った
ξ;゚听)ξ「必要ないでしょ、あらすじ……」
('A`)「おーい、そろそろ投下始めるぞー」
川 ゚ -゚)「ところでさっきから、「とうか」が「糖化」に変換されるんだが……」
('A`;)「そういう話は後にしてくれ。次のレスから始めるぞ」 - 5 :以下、雑談にかわりまして本編をお送りします:2009/08/02(日) 21:06:10.58 ID:K3x+/vIP0
-
桜が咲き誇る季節、俺は新たな人生のステージへと繋がる門の前に立った。
…………うん、我ながら厨臭くて大げさな言い回しだとは思う。
でもこの時の俺の心境と状況は、あえてこれぐらいの言葉で表したい。
なぜなら『高校への進学』と『他県への引越し』、この春俺にこの二つの事がおきたからだ。
親の都合により、地方都市である美府市に引っ越すという事が決まったのが半年前。
無事に中学の卒業式が終わり、長い間過ごした田舎町に別れを告げたのが半月前。
明日からの高校生活にやや緊張し、それと共に謎のwktkを抱えていたのが半日前。
そして今日は、俺が通うこととなる高校、「VIP高校」の入学式当日。
新居がある住宅街を出て、でかい川に架かる橋を渡り、市街地の端を突っ切った所に高校はある。
片道徒歩30分以上とかなり辛いが……まあ自転車が手に入るまでの我慢かな?
入試時に一度だけ通った校門を潜るが、周りに生徒の姿は全く無い。
愛用の腕時計を見ると7時半。教室への集合予定時刻は9時半……
遅刻をしないようにと目覚めてすぐに家を出たのだが、いくらなんでも早過ぎたか。
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:08:13.68 ID:K3x+/vIP0
- 正門前にある掲示板には、クラス分けと教室までの案内が書かれた紙があった。
名前が大量に並んでいる掲示板。当たり前だが俺の知っている名前は無い。
俺の出席番号は早いほうであり、あっさりと自分の名前を見つけることが出来た。
クラス分けをざっとみて思ったのだが、一クラス辺りの人数が少ない気がする。
実際に数えてみた所、29人。中学のクラスが40人前後だった所から考えても明らかに少ない。
その割にクラス数は12組もある。何組か減らしてクラス内の人数を増やせばいいのに……
掲示板を見終わり、一人寂しく教室に向かおうと歩き出していた時の事だ。
「ち、ちょっとどいてくれおー!! ぶつかるおー!!」
後ろからそんな叫び声が聞こえてきたと思った次の時だ。
俺は背中に強い衝撃を受け、前方に向け吹っ飛ばされる。
ついでに軽くだが意識も飛んでいき、気付けば俺はorzの体勢で地面に倒れこんでいた。
「ごっ、ごめんなさいだお! 怪我はないかお!?」
俺にぶつかってきた人物が謝ってくる。どうやら声色から見て男のようだ。
背中と手の平の痛みに耐えながら起き上がりつつ、言葉を返す。
あれだけの衝撃を受けた割には、手に軽い擦り傷をつけただけで済んだみたいだ。
「い、いや大丈夫だ……多分」
「そうかお! ぶつかってホントにごめんだお!」
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:11:18.64 ID:K3x+/vIP0
- 立ち上がって全身を確認したところ、心配していた制服の膝元も破れてない。
咄嗟に受身を取った十数秒前の自分にエールを送りたいな。
「いや、本当に何も問題は無い。あまり気にするな」
「そ、そうなのかお。とにかくごめんなさいだお。
……そっ、そういえば聞きたいことがあるお!」
俺はぶつかってきた奴の姿を目にする。ややぽっちゃりした体つきに、愛嬌のある顔立ち。
身に付けた青色のブレザーはパリパリの新品なので、新入生であることは間違いないだろう。
('A`)「何だ、聞きたいことって?」
( ^ω^)「新入生はどこにいけばいいのかお?」
これが、俺 ――鬱田ドクオ―― とブーンとの初対面だった。
俺達は平穏に過ごせないようです
( ^ω^)<『その1: INTO THE SKY』だお!
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:14:10.94 ID:K3x+/vIP0
- ('A`)「あっちに正門があるだろ。あそこにクラス分けが――」
三 ⊂二( ^ω^)二つ「ありがとだお!」
話が終わる前に、男は掲示板に向け走り出す。
俺が慌てて後を追いかけると、掲示板の前で嬉しそうにそいつは叫んでいた。
( ^ω^)「イヤッッホォォォオオォオウ! ちゃんと名前があったお!」
そりゃ名前はあるだろ、常識的に考えて。変わった奴だな、こいつは……
目の前の奴は後を追ってきた俺に気付いたらしく、嬉しそうに話しかけてくる。
( ^ω^)「ありがとうだお! 君も新入生かお?」
('A`)「ま、まあそうだが……」
( ^ω^)「おっ、やっぱりそうかお! ボクはQ組だったけど、君は何組なんだお?」
俺と一緒じゃないか。……まあ嘘をついてもしょうがないしな。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:17:24.13 ID:K3x+/vIP0
- ('A`)「同じくQ組だ」
( ^ω^)「おおっ、同じクラスだお! 凄い偶然だお、運命だお!
ボクの名前は内藤ホライゾン、気軽にブーンって呼んでくれお!」
('A`)「鬱田ドクオだ、ドクオでいい。よろしくな、ブーン」
俺は右手を相手に向け差し出す。握手は世界共通の挨拶だ。
( ^ω^)「おっおっ、こちらこそよろしくだお!」
そういいながらブーンは俺の右手を握ってくる。
……結構握力あるな、こいつ。
('A`)「そういやさ、どうしてホライゾンがブーンになるんだ?」
( ^ω^)「…………あれ、どうしてだったかお?」
('A`;)「どうして自分の渾名の由来を知らないんだよ……」
変わった奴だな、本当に……
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:21:57.12 ID:K3x+/vIP0
-
○ ○ ○
( ^ω^)「へー、じゃあドクオは県外から来たのかお!」
('A`)「ああ、だから知り合いが全くいなくてな……」
( ^ω^)「おっ、ボクは少しだけど知り合いがいるお。
同じクラスの人は後から紹介するお!」
他愛もない話をしながら廊下を歩く俺達。
俺たちはQ組だが、別にこれは17クラスまであるわけではない。
クラスの名前が『Q,A,W,S,E,D,R,F,T,G,Y,H』と分けられているからだ。
なぜこんなクラス分けなのかは、この高校の七不思議の一つらしい。
そんな噂話を入試の時に小耳に挟んだ。
そんなこんなで教室に到着。廊下に面した壁は大きなガラス張りで、教室内が丸見えだ。
時間的に俺たちが一番乗りかと思ったが、既に数人の生徒が室内で話している。
( ^ω^)ノシ「おいすー!」
教室の配置から見て後ろ側に当たる引き戸を開き、ブーンは中に入っていく。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:26:09.05 ID:K3x+/vIP0
- 教室の全員(とはいっても数人だが……)の視線が、一斉にブーンに集まる。
その中の一人、黒髪の女子と話をしていた金髪の女子がつかつかとブーンの元へ歩いてきた。そして――
「遅いっ!」ξ#゚听)ξ三つ)゚ω゚):;・':。 フラッグ!
なんという左ストレート・・・
後ろから見ただけで急所に入ってるのが分かってしまった
このブーンは間違いなく気絶してる
('A`;)「おーい、生きてるかー……?」
右頬に拳型の赤い模様がくっきりとついている。これはしばらく痕が残るだろうな……
俺はブーンをノックアウトした現行犯に目を向けた。
綺麗な金髪を、顔の左右でくるくると巻いているのが一番の特徴だろう。
少し鋭い目付きで仏頂面だが、おそらく笑えば可愛いはずだ。
やや低めの背丈に、体型は…………残念なようです。主に胸とか。
そんな事を考えていた時、目の前のカール少女は俺の存在に気がついたようだ。
ξ ゚听)ξ「あら、あんたは誰?」
('A`)「……さっき下で知り合ったものだ」
ξ ゚听)ξ「ふーん、あっそう」
それで終わりかよ。まあ膨らませようが無い話ではあるが……
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:29:09.98 ID:K3x+/vIP0
- ブーンを殴り倒した一部が残念な人は、倒れているブーンの脇腹を足でつつき始めた。
……さすがにこれはブーンが可愛そうだな。
('A`;)「おい、もう止めr――」
ξ#゚听)ξ「何よ、なんか文句あるの?」
('A`)「いえ、なんでもないです」
…………うん、俺弱すぎ。
(; ‐ω-)「う、うーん……世界が回ってるお」
おっ、ブーンが目を覚ましたようだ。
俺が動く前に、金髪ロールさんがブーンの腕を掴み、やや強引に引き摺り起こす。
ブーンはかなり重そうに見えるのだが、彼女はやけに軽々と持ち上げた。
ξ ゚听)ξ「おはようブーン、今の状況を三行ほどの量で説明してくれないかしら?」
( うω^)「ううっ…… ・今日はVIP高の入学式
・ツンとの待ち合わせに遅れる
・教室で割に合わない暴力を受ける……だお」
ξ ゚听)ξ「残念、最後のは間違い。60点ってところね。
一時間も待たせたんだから、これぐらいは妥当だと思うわ」
……俺が言うのもだが、こいつら何時に待ち合わせしたんだ? - 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:32:31.68 ID:K3x+/vIP0
- ξ ゚听)ξ「まあいいわ、私の気はもう晴れたから」
('A`)「なあブーン、この人は誰なんだ?」
( ^ω^)「ドクオ、こちらの暴r……じゃなくて、可愛い人はツンって名前なんだお。
ボクの大事な幼馴染だお」
『大事な』辺りから、ツンという少女の顔が一気に赤くなる。
ブーンの足が蹴られたように見えたのは、きっと見間違いだ。
……最近の幻覚はどうやら音声付らしいがな。
( ^ω^)「ツン、彼の名前はドクオっていうんだお。さっき校門で知り合ったんだお」
('A`)「鬱田ドクオだ。ツンさん、よろしくな」
ξ ゚听)ξ「よろしくね。あと ”さん” はいらないわ」
握手を交わしながら、ぶっきらぼうに返事をするツン。
呼び捨てでいいってことは、ある程度の好意は持たれているのだろう。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:37:12.55 ID:K3x+/vIP0
- 川 ゚ -゚)「……うん、なるほどな」
ふとツンの後ろをみると、女子が一人近づいてきていた。
確か彼女は俺達が教室に入ったときに、ツンと話をしていた人のはずだ。
黒いロングヘアーにポーカーフェイス、「可愛い」というよりは「美しい」顔立ちだ。
背丈はやや高め、体型はスレンダーとグラマーの中間というか、いい所取りというか……
多分ほとんどの男性は、彼女を美人だと判断するだろう。
川 ゚ -゚)「ふむふむ、それが噂の彼氏君か」
ξ;゚听)ξ「ちょっ、何言ってるのよクー! だからそんなんじゃないってば!」
( ^ω^)「おっ、この美人な方は誰だお?」
ξ ゚听)ξ「クーさんって名前の、隣の席の人よ。
誰かさんが遅れて暇だったから、ずっと話してたのよ」
川 ゚ -゚)「はじめましてだな、彼氏君と後ろの人。
私の名前は砂緒 クー、クーとでも呼んでくれ。
東戸成中学校出身だ。これからよろしくな」
( ^ω^)「内藤ホライゾンだお! ブーンって呼んでほしいお!」
('A`)「鬱田ドクオ、呼び捨てでいい。よろしく」
後ろの方で、ツンが必死に彼氏ってのを否定してるが無視だ。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:40:35.91 ID:K3x+/vIP0
- 一通り自己紹介も終わったみたいだし、教室を見回してみる。
(,,゚Д゚)(・∀・ )
すぐ目の前の席で、何かを話し込んでいる男二人組。
( <●><●>)
謎の機械を弄ってる男。
俺たちの他に教室にいたのはそれだけだった。
とりあえず黒板に張られている座席表に従い、自分の席に鞄を置く。
座席は出席番号順になっているようで、俺は窓際という高ポジションだった。
ちなみに他の三人の席は、教室の真ん中後ろ側に固まっている感じだ。
その後ツン達がいる席まで行き、4人で他愛もない話を始める。
出身校、これからの高校生活、俺の住んでた県の話など話題はたくさんあった。 - 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:45:03.32 ID:K3x+/vIP0
- ブーンとツンがこの街で遊べるスポットを話していたときだ。
(´・ω・`)「……やあすまない、そこは僕の席なんだけど」
勝手にツンの隣席に座っていたブーンに、席の持ち主らしき男性が話しかけてきた。
中肉中背の体つきに、ややしょんぼりとした大人しそうな顔つき。
(; ^ω^)「おおっ、ごめんなさいだお!」
慌てて席から離れるブーン。席の主は、なぜかすまなそうな顔をしている。
俺も勝手に他人の席を拝借しているので、一緒に立ち上がることにした。
(´・ω・`)「ごめんね、会話を遮ってしまって。
……ところで君たちは同じ中学校の出身かな?」
川 ゚ -゚)「いや違う。そちらの彼と彼女が一緒なだけで、後はバラバラだ」
(´・ω・`)「あまりに仲良く話してるから、出身校も一緒かと思ったんだけどね……
僕の名前は葉本ショボン。止減屋市の津虎中学校出身。
隣席と言う事で、これからよろしくね」
それからショボンも交えて、話を再開する事となった。
ふと時計をみると、いつのまにやら8時50分だ。
あれだけ人が少なかった教室も、半分以上の席が埋まっていた。 - 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:50:09.21 ID:K3x+/vIP0
- 多くの人は、手短な人と積極的に話しているようだ。
ソコデオレハサー
/ ゚、。/ 从゚∀ノル从
ソレハドウカト
…ッテワケッス
( ゚"_ゞ゚) (’e’ )ωФ )
イヤー、サイコウダヨ ム、ワガハイハシラナイガ…
イチオウニシチュウナンダケド
ノハ;゚听) ('、`;川
ナニイイイィィィッッ !
( ´_ゝ`) ……サスガダナ
つ⌒/⌒⊂
⌒ ⌒
……中には例外もいるようだが。
ア、アタッテル ズバリ、ダイヤノ6ダーヨ
(*゚ー゚);^o^)/ (´ー` )
アハハッ、スゴーイ
人はどんどん増えていき、教室内のざわめきは増すばかりであった。 - 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:53:16.29 ID:K3x+/vIP0
- ξ ゚听)ξ「やっぱり冷凍みかんが最高よ!」
( ^ω^)「いや、プリンだけは譲れないお!」
川 ゚ -゚)「懐かしいな。私は苺ヨーグルトが好きだった」
(´・ω・`)「クリスマスのときにケーキが出たことがあってね……」
('A`)「どんだけブルジョアだったんだよ、その小学校」
白熱した会話をしていると、教室の前方で誰かが騒ぐ声が聞こえてきた。
( ><)「時間なんです! 全員席に着いてほしいんです!」
よろけたスーツに弱々しい声、あまりパッとしない雰囲気。
…………おそらく担任の先生なんだろうな。
俺たちは会話を切り上げ、各々の席に向かう。
とはいっても、俺以外の4人はそれぞれの席が近いのだが……
教室の全員が席に着くのと、予鈴がなるのはほとんど同じだった。
( ><)「とりあえず皆さん、入学おめでとうなんです。僕の名前は和寒内 ビロードです。
担当は数学、これからの高校生活をよろしくお願いするんです」
静かになった教室に、和寒内先生の声が響き渡る。
軽い挨拶だけで終わると思ったその話だが、予想に反して長々と続いて行く。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:56:09.62 ID:K3x+/vIP0
- ( ><)「……つまり、どうしても個人は集団として見られるんです。
だから一人でも変なことをすればその集団全体が――」
……正直言って話が長すぎる。ほとんどの生徒はウンザリした表情だ。
生徒のモチベーションと反比例し、和寒内先生のトークは加熱していく。
( ><)「……進学や就職など、皆さん色々な目標を持っているはずなんです!
けれど、一番重要なn――」
从'ー';从「すいませ〜ん、遅くなりましたぁ〜」
和寒内先生のテンションが最高潮に燃え上がってきた時だ。
急に入ってきた女子により、先生の声が遮られた。
( ><)「初日から遅刻…………早く自分の席に着いてほしいんです」
从'ー'从「ふえぇ〜、わかりましたぁ〜」
( ><)「どこまで話したのかわかんないんです…………
ああっ、もうこんな時間なんです! 体育館前まで移動するんです。
着いたら一列に出席番号順で並んでてほしいんです!」
そう早口で捲くし立て、急ぎ足で和寒内先生は教室を出て行った。
どうしていいかわからず、しんと静まった教室。
しかし段々と生徒が立ち上がり、出口に向けて移動していく。
……とりあえずブーン達と合流するかな。 - 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 21:59:01.26 ID:K3x+/vIP0
- (´・ω・`)「いやー、遅刻してきた人には助けられたね」
('A`)「全くだな。後から礼でも言っておくか?」
ξ ゚听)ξ「やめときなさいよ、嫌味に聞こえるかもしれないから」
軽い冗談のつもりで言ったのだが、ツンに真面目な顔で釘を刺された。
まあ実行する気は、最初からこれっぽっちもないがな。
( ^ω^)「ん、きょろきょろしてどうしたんだお、クー」
川 ゚ -゚)「いや、さっきから気になる子がいて」
ξ ゚听)ξ「もしかしてあの子? やたら小さい……」
( ^ω^)「おっおっ、僕もHRのときからずっと気になっていたんだお」
('A`)「なあ、何の話をしてるんだ?」
( ^ω^)「おっお、ドクオは見てないのかお」
ξ ゚听)ξ「……あっ、いたいた。あの子よ、あの子」
ツンが指差す方を見る。別に何も…………アレ?
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:03:04.38 ID:K3x+/vIP0
-
( *゚)
('A`)「なあ、もしかしてあのちっちゃい子?」
廊下の前、生徒の間にチラッと見えたその女子。
なんかもう背が低いとかってレベルじゃなく……
('A`;)「……小学生?」
身長はおそらく130cmちょい、制服は絶対特注だろう。
川 ゚ -゚)「うむ、やっと気づいたか」
( ^ω^)「多分アメリカで飛び級しまくった天才児なんだお!」
(´・ω・`)「なんだい、そのギャグ漫画にありがちな設定は……」
ξ ゚听)ξ「じゃあ『全身黒服の男に薬を飲まされた』とかはどう?」
( ^ω^)「「バーローwwwww」」('A`)
川 ゚ -゚)「全身黒服……そんな不審者がいたら、即逮捕されるな」
そんな会話をしてる間に体育館に到着。
教師の指示に従い、クラスごとに出席番号で並び、合図と共に体育館に入る。 - 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:06:24.59 ID:K3x+/vIP0
- 吹奏楽部の豪勢な演奏の中、新入生は赤い絨毯の上を進んで行く。
体育館中に響き渡る、保護者や教師からの拍手の音。俺の母親もその中に入っているのだろう。
新入生が全員入り終わり、壇上に何か偉そうな人が立った。
その後、国歌斉唱、校長や教頭のお言葉、新入生の決意、etc……と、お決まりの事が続いたらしい。
なぜ『らしい』かと言うと、俺は校長の言葉辺りから記憶がないからだ。
薄暗い照明、校長のボソボソ声、やや暖かい室温……寝るなという方が無理だろう。
そんなこんなで式は終わり、今は教室への帰り道。
ξ ゚ー゚)ξ「やっぱり教頭の話が一番面白かったわね」
( ^ω^)「全くだお。シカゴでの話は爆笑したお」
('A`)「ん、何の話?」
(´・ω・`)「あれ、教頭先生の話を聞いてなかったのかい?
ほら、校長の後に話が……もしかして寝てた?」
……図星なだけに何も言い返せない。
くそっ、空白の一時間の間に何があったんだ!?
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:09:07.27 ID:K3x+/vIP0
- 川 ゚ -゚)「私もあんなに笑ったのは人生初かもな。
特に安売りのオレンジの件は腹筋が壊れそうになったよ」
( ^ω^)「おっおっ、『そのときボブに向けて、こう言ってやったのさ―――』」
ξ*゚ー゚)ξ「「『ニッパーだけは勘弁してください』」」(´・ω・`)
そのまま笑いだす三人。クーもどことなく笑っているように見える。
…………一時間ほど時間巻き戻らないかな。
('A`)「……ウツダシノウ」
川 ゚ -゚)「入学式早々に居眠りするという、自分の甘さを呪うんだな」
(´・ω・`)「また教頭が話をする機会があるかもしれないしね。
まあ今度は聞き逃さないように気をつけなよ」
('A`)「飴と鞭ありがとな、今度は聞き逃さないぜ」
( ^ω^) ボソボソ(あれ、確かあの話は入学式にしかしないって……)
(シーッ! そういうことは黙っておかないと)ボソボソ (・ω・`;)
なんか不穏な会話が聞こえてきた気がするが、全力で聞き逃しておこう…… - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:12:09.80 ID:K3x+/vIP0
- ○ ○ ○
教室に帰った後、俺はブーン達と別れ、自分の席に戻ることにした。
( ^ω^)「あれ、なんでだお?」
('A`)「ああ、一応近くの席の奴らとも仲良くなっておきたいからな」
ブーン達との交流も大事だが、近くの席との交友関係ってのは、言うまでも無く重要だ。
幸いなことに、隣の奴は一人でボーっとしてるようだ。話しかけるには絶好のチャンスである。
('A`)「入学式お疲れ様。俺の名前はドクオ、よろしくな」
( ∵) ('A`)
(∵ ) ('A`)
( ∵) ('A`;)
( ∵) ('A`;)「……よろしくな」
…………無表情で無口。何なんだ、こいつ?
一応無視はされてないようだが……
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:16:09.40 ID:K3x+/vIP0
- <ヽ`∀´>「ウッヒャッヒャッヒャ、なんだか大変そうニダ」
俺が隣の奴とのコミュニケーションに悪戦苦闘してると、俺の後ろにいる奴がいきなり割り込んできた。
<ヽ`∀´>「そいつはウリも話しかけたけど、なーんの反応も無いニダ。
…………おっと、ウリの名前は瓜楢ニダー、ニダ。
何か困ったことがあったら、このニダー様に任せるニダ」
えーっと、現在進行形で困っているのですが……
まあいい、とりあえずこちらと話しておこう。
('A`)「鬱田ドクオ、ドクオで構わない。よろしくな。
ニダーって呼んでもいいか?」
<ヽ`∀´>「ウリは心がとーっても広いから、別に気にしないニダ。感謝するニダ」
……なんか鼻につく話し方をする奴だな。
<ヽ`∀´>「ちなみにウリの隣、今後ろの人と話してるのは流石兄者、その後ろが白根ネーヨニダ。
ウリのすぐ後ろは……確かなんとかジョーズニダ。正直うろ覚えニダ」
……ごめん、結構親切な奴だ。
('A`)「わざわざありがとな」
<ヽ`∀´>「ホルホルホル、気にするなニダ」 - 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:20:01.90 ID:K3x+/vIP0
- 今度は前の女子と話そうとしたのだが、その隣の席の奴と話し込んでいる。
かなり盛り上がってるその会話の中へ、強引に入っていくほどの勇気はないしな……
仕方ないのでブーン達の元に行こうとしたが、生憎なことに和寒内先生が教室に入ってきた。
生徒が所定の席に着いた後、和寒内先生は話を切り出す。
( ><)「皆さん、入学式お疲れ様なんです。プリントを配るので、目を通してほしいんです」
配られてきたプリントには、授業についての説明や年間スケジュール、時間割などが書かれていた。
( ><)「それでは一枚ずつ説明するんです。
まずはこの青色のプリントを見てほしいんです……」
そうして和寒内先生の解説が始まっていく。
この高校の大きな特徴の一つは、文理の区別が無いことだ。
これはこの学校を設立した初代校長の意向で、
『これからの時代は総合的な力を身に付けるべきである』という考えかららしい。
……当然勉強範囲も広がるわけだが、まあそれは仕方ない。
受験したときから分かってたことだしな。
他にも色々と細かい事を読み上げていくが……
正直覚えきれないし、どうせその状況下になったら自然に思い出すだろう。
- 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:23:58.04 ID:K3x+/vIP0
- ( ><)「……という訳なんです。何か質問はないんですか?」
最後のプリントの解説がやっと終わる。
現在時刻11時50分。そろそろご飯が待ち遠しい時間帯になってきた。
今日の昼飯はどうするか……そんなことをぼんやり考え始めたときだ。
( ><)「質問がないみたいなので、ここで自己紹介にしようと思うんです。
では出席番号1番の伊藤さんからお願いするんです」
…………この恐怖の存在をすっかり忘れていた。
正直言って俺は自己紹介というものが大の苦手だ。中学のときなんかそれで……
ともかく俺の番号は2番、即行で考えなければ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛
('、`*川「伊藤ペニサスです。出身は西戸成中学校。
バレーボールが趣味です。これから三年間、よろしくお願いします」
前の席にいた帽子を被った女子が、そつ無く紹介を済ませて着席する。
もう後戻りは出来ない。大丈夫、俺はやれる子なはずだ!
周りの拍手が終わった頃を見計らい、俺は立ち上がる。
('A`)「鬱田ドクオです。独身県からこの春引っ越してきました。
この辺りのことはよく知らないですが…………」
ヤバイ、話の続きが出てこない……ええいっ、こうなれば!
('A`;)「とっ、とにかくこれからよろしくお願いします!!」
強引に話を終わらせ、大きく礼をした後に席へと着く。
拍手の音がなんか心に響くぜ…… - 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:27:03.52 ID:K3x+/vIP0
- 自己紹介はどんどん進んで行く。
大抵は当たり障りのない内容なのだが、いくつかめっぽう変わった奴らがいた。
その中でも特に印象深かったケースを、少しだけ挙げていこう。
まずは俺の隣、( ∵) ←こいつだ。
こいつは立ち上がり、周りに一礼したあと、そのまま何も言わず席についた。
終わりかどうか判断できず、教室の時間はしばらく止まる。
教卓で和寒内先生が怒ってたが、彼は全く気にしてないようだ。
結局彼の自己紹介は――
( ゴエエ )
(# ><)「もういいです、彼は五江枝 ビコーズって名前なんです。
出身は戸石中学校です。次の人お願いするんです!」
と、和寒内先生によって行われた。ちなみに次の奴だが……
(* ´_ゝ`)「了解! 俺の名前は流石兄者、ピンピンの高校一年せ……って皆高一だったな。 テヘッ☆
俺はただの人間なんかには興味無い! この中に宇宙人、未来人、超能りょきゅ者が……
ええいっ、とにかくこれから YO☆RO☆SHI☆KU なんだぜ!」
……と、別の次元で見事に時を止めて見せた。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:31:00.84 ID:K3x+/vIP0
- 次に印象深かったのが、苗字が砂緒の三人組。
朝の時にクーから聞いたのだが、砂緒という苗字はこの地方に多い苗字だそうだ。
……それでも一クラスに三人と言うのは、流石に珍しいことらしいが。
まあそんな余談はおいとくとして、なぜ印象に残ったかというと……
川 ゚ -゚)「東戸成中出身、砂緒クー。クーと呼んで構わない。
好きな食べ物は麺類だ。これからよろしく」
と言う感じでクーは自己紹介をしたのだが、
lw´‐ _‐ノv「半田鏝中、砂緒シュー。日本人なら米を食え。以上」
ってな感じで次の人の挨拶が終わってしまい――
ノパ听)「西戸成中学校出身の砂緒ヒートだっ!!
アタシはどちらかといえばパン派だっ!!
これからよろしくたのむぞおぉぉっ!!」
と、そんな流れで【砂緒=主食好き】の方程式が出来上がってしまったからだ。
ちなみに彼女達三人以降、自己紹介に『好きな食べ物』の項目が生まれた。 - 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:34:01.51 ID:K3x+/vIP0
- 廊下で見かけた小学生みたいなのは、ツンとブーンの間の席にいた。
クーとショボンはツンの両隣なので、二人はブーンのほうに振り返ると、
必然的にその子が目に入ることになる。
……ってか、何で俺は気がつかなかったのか不思議だ。
ツンの番が終わり、その子の順番になる。
恐ろしく背が低いってのも考えたが、顔つきやボディーラインはどうみても幼かった。
(*゚∀゚)「シカゴハイスクールの特待クラス、そこから転校してきた鶴亀つーだ!
年は10才ってこt……じゃなくて…………とにかく10才だ!」
子供特有のキンキン声で話を続けていく。
(;*゚∀゚)「飛び級やら色々やったけど、この春この国に帰ることになり、この高校に転入したって訳だ!
好きな食べ物は牡蠣とりんごジュース。よろしくなっ!」
アメリカからの帰国子女……さすが自由の国だな。
ブーンの予想は当たってたというわけか。
教室の拍手が鳴り止み、ブーンの挨拶が続く。
( ^ω^)「枠手家中出身、内藤ホライゾンだお! 好物はピーナッツとハンバーグだお。
特技はブーン、あだ名もブーンだお。気軽にブーンって――」
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:37:28.81 ID:K3x+/vIP0
- 从'ー'从「……と、いうわけでよろしくお願いしま〜す」
最後の渡辺さんの挨拶が終わり、教室に拍手が鳴り響く。
( ><)「これで全員の挨拶は終わりなんです。
出来れば皆仲良くしてほしいんです。
さて、明日についての説明なんですが……」
授業は三日後かららしく、それまでの間は色々企画などがあるらしい。
校内説明にクラス親睦会、クラブ紹介、和寒内先生の高校時代の思い出などなど……
段々と脱線しながら和寒内先生の話は続いていく。
そんな話を片耳に挟みながら、俺は三大欲の一つ、食欲と戦っていた。
ちくしょー、先生の高校時代の話なんてどうでもいいんだよ!
はーーやーーくーーおーーわーーれーーーー!!
( ><)「と、言うわけで無事に地区予選まで行ったんですが……
あれ、もうこんな時間なんです」
俺の邪念が通じたのか、クラスの空気を読んだのか。
はたまた廊下に見える他の組の帰宅姿で気付いたのか……
( ><)「それでは今日はこれで終わりなんです。気をつけて帰ってほしいんです。
えーっと、伊藤さん。号令をやってほしいんです」
伊藤さんによる号令が終わると共に、教室に開放感が訪れた。
全く、話の長い教師だぜ……
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:41:08.77 ID:K3x+/vIP0
- ('A`)「おーす、お疲れー」
( ^ω^)「おっ、お疲れだお」
ξ ゚听)ξ「ねえ、今日はこれからどうするの?」
入学式に来ていた保護者は、説明会などが夕方まである。
わざわざ親を待つ生徒はほとんどおらず、大半は知り合ったもの同士、親睦を深めているようだ。
(´・ω・`)「僕は二時過ぎから少し用事があってね。悪いけど今日はここで別れさせてもらうよ」
川 ゚ -゚)「私も今日はちょっとな……」
('A`)「俺は別に大丈夫だぜ」
( ^ω^)「ボk――」
ξ ゚听)ξ「うーん……じゃあお昼ご飯だけでもどう? 安くて美味しい店が近くにあるんだけど」
(´・ω・`)「……それなら別に構わないかな」
川 ゚ -゚)「私も同じくだ」
ξ ゚ー゚)ξ「よし、じゃあさっさと移動しましょ」
( ´ω`)「華麗にスルーされたお…………」
('A`)「……まあ元気だせよ」
- 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:44:08.00 ID:K3x+/vIP0
- 俺達は高校を出て、VIP市街地の方へと向かう。
他の学校も入学式なのか、初々しい学生達を多く見かける。
集団で帰っている中学生の集団とすれ違った時、俺はある事を思い出した。
('A`)「そういえばあの小さな子と何か話をしたのか? 正直気になってるんだが……」
ξ;゚听)ξ「あの子って……つーちゃんのことよね? ……まさかドクオってロリk――」
('A`#)「違う! 普通誰だって疑問に思うだろ!」
川 ゚ -゚)「私も気になってコンタクトを取ろうと思ったのだがな……
生憎彼女は隣席の人と共に、さっさと教室を出て行ったみたいだ」
(´・ω・`)「気がついたらいなくなっていたよね? まるで急に神隠しにでもあったみたいに」
四人の話によると、結局彼女達と話す機会は無かったらしい。
何でもその二人は朝礼の時から、いつの間にか席に着いていて、いつの間にかいなくなっていたとか……
式の時には席にさえついてなく、ツンとブーンの間は空席になっているという徹底ぶりだったらしい。
ξ ゚听)ξ「……まあ私達は自分の話に夢中だったしね」
( ^ω^)「また明日会えるお。だからドクオ、告白とかは明日でも――」
('A`#)「だーかーらー! そんな気はねえっての!」
言葉はもうちょい選んで話さないとな…… - 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:47:29.82 ID:K3x+/vIP0
- 10分ほど歩いた頃だろうか。小さな店の前でブーンとツンは立ち止まった。
……なぜかショボンがそわそわしてる様に見えるのは気のせいか?
ξ ゚听)ξ「この店よ」
川 ゚ -゚)「ん? 店の扉には『CLOSED』の札があるが……」
( ^ω^)「おっおっ、心配はいらないお!とにかく中に入るお」
扉を開け、俺達は中に入る。ドアについたベルの音が店内に響き渡った。
片手の指で数えれるほどのテーブル席と、カウンター席だけの小さな店。
暗めの照明とカウンターの奥に並んだ酒瓶…………ここってもしかしてバー?
カウンター内でコップを磨いていた男性が、ベルの音で顔を上げる。
年は三十路前後とやや若く見えるが、全身から漂う貫禄は、いかにも『マスター』という感じだ。
そのマスターは俺たちを一通り見回した後、やや渋めの声で語りかけてきた。
(`・ω・´)「やあ、ようこそ『バーボン・ハウス』へ」
( ^ω^)「おっおっ、約束どおり来たお!」
ξ ゚听)ξ「ちょっと人数が多いけど大丈夫?」
(`・ω・´)「ああ、別に構わない。食材は多く用意してある。
……しかし君達とショボンが一緒だとは、流石に想定外だったがな」
そういってショボンに目を向けるマスター。
ショボンはどことなくだが、ばつの悪そうな顔をしてる。
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:51:04.62 ID:K3x+/vIP0
- ξ ゚听)ξ「あれ、ショボンとマスターさんは知り合い?」
(´・ω・`)「……彼はシャキン兄さん。僕にとっての従兄弟さ」
( ^ω^)「へー、そうだったのかお。意外と世界って狭いもんだお」
(´・ω・`)「僕はむしろ、二人がどうしてここを知ってるのかが気になるけどね」
(`・ω・´)「さて、話の途中で悪いが、そろそろ料理に入らせてもらおう。
後から材料費として200円ほど頂くけど構わないか?
もちろん満足させるだけの物は作るつもりだ」
('A`;)「えーっと、今から何があるか解らないんだが……」
川 ゚ -゚)「ツン、ちゃんと話してもらえないか?」
ξ ゚听)ξ「分かったわよ。私がちゃんと説明してなかったのが悪いんだしね」
とりあえずカウンター席に着く五人。ツンの話を三行で纏めると、
・ バーの夕方の時間帯が暇なので、夜までの時間帯に学生も利用できるような定食を出すことを思いつく。
・ ブーンとツンの父は店の常連で、ツンとブーンは店に何度か来ていた。
・ 最近の若者の意見を聞きたいらしく、二人がメニューの試食をすることになる。
……との事らしい。 - 52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:54:28.92 ID:K3x+/vIP0
- ツンの説明が終わる頃、料理が運ばれてきた。
メインは鶏のスパイス炒め。カラフルな茹で野菜などと共に、白い皿に盛られている。
サラダが入った小鉢と黒い茶碗に盛られたご飯、それにスープ。
(`・ω・´)「今出した量が、実際に定食に出す一人前の目安だ。
味わって食べて、そして後から感想を聞かせてくれ」
皆お腹が空いていたのだろう。手早く食事の挨拶をすませ、我先にと箸をつける。
俺はまず、一口サイズに切られている鶏肉を口の中に放り込み、噛み締めた。
香辛料の香りと鶏肉の旨味が渾然一体となっていて、後から口に入れた米と絶妙に合う。
( ^ω^)「ハムッ、ハフハフwwww、ハフッww!!」
ξ;゚听)ξ「ちょっと、ブーン! 少しは味わいなさいよ!」
糸のように細いニンジンと大根の千切りに、カイワレが添えてあるサラダ。
柑橘系の香りがするドレッシングがかかった小鉢は、箸休めにちょうどいい。
川 ゚ -゚)「全体的にかなり上品な味だな。器も凝っている」
スープは野菜とベーコンをよく煮込んである、コンソメ風味のものだ。
鶏肉とサラダは味付けがやや濃いためか、薄味に仕上げられている。
(´・ω・`)「……うん、やっぱ兄さんは凄いや」
俺の抱いた感想は一つ、『美味い』だ。
それ以上の言葉は、俺の貧弱な辞書からは出てこなかった。
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:57:04.88 ID:K3x+/vIP0
- 皆が食べ終わる頃を見計らい、マスターがコーヒーを淹れてくれた。
(`・ω・´)「このコーヒーはサービスだから、まず飲んで落ち着いてほしい。
率直な味や量に対する感想と、あと値段の目安を教えてくれ」
( ^ω^)「いやー、美味しかったお。ただ量が物足りなかったお」
ξ ゚听)ξ「私にはピッタリだったわ。この内容なら800円以上でも構わないんじゃない?」
('A`)「でも学生にとっては高すぎるだろ。せめて600円以内にしてほしいぜ」
(´・ω・`)「ターゲットが学生ってのを考え直すのはどうかな?
一応、一般の客が出入りできる位置にあるんだし」
(`・ω・´)「んー、しかし学生さんに美味い飯を食わせたい、そんな考えもあるからな……」
ξ ゚听)ξ「けれどこの内容だと、一般の人も黙ってないと思うけど」
川 ゚ -゚)「一般用の値段と学生用の値段に分けるのはどうだ?
ほら、学割とかみたいな感じで」
(`・ω・´)「うーん、出来ればそれは避けたいな……」
こうして色々なアイデアを出しながら話は進む。
ちなみにマスターの淹れてくれたコーヒー、味は普通だった。
マスター曰く、「酒なら自信があるんだがな……」とのことらしい。
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 22:59:18.10 ID:K3x+/vIP0
- ( ^ω^)「やっぱり量をもう少し多くするべきだお!」
('A`)「いっその事、メニューに大盛りを作るのはどうだ?」
ξ ゚听)ξ「それはなんか安っぽいイメージがするのよね……」
(`・ω・´)「いや、別に構わない。別にそんな堅苦しい店ではないしな」
と、議論を白熱させていた時の事だった。
川 ゚ -゚)「マスター、ちょっと質問がある。そこの時計の時間は正しいのか?」
クーが壁に掛けられた時計を指差す。時計の針は12時45分を指していた。
あれ? でも学校を出たときは、既に12時半を過ぎていたような気が……
(`・ω・´)「ああ、あれは数日前から止まっている。直s――」
川;゚ -゚)「今何時だ!?」
かなり焦っているようだな。俺は腕時計を見る。
('A`)「1時50分だな」
川 ゚ -゚)「すまない、2時から約束があるんだ。今日はここで失礼する。
マスター、ご馳走様でした。それではまた明日」
自分の鞄を掴み、店を飛び出していくクー。おそらく、よっぽど大事な用事なのだろう。
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:01:14.83 ID:K3x+/vIP0
- ξ;゚听)ξ「凄い速さだったわね……」
( ^ω^)「おっ、そういえばショボンも何か用事があったんじゃないかお?」
(´・ω・`)「ああ、僕もそろそろ移動しなきゃいけないな」
(`・ω・´)「……そうか、じゃあ今日はもう終わりにするか。
次はいつ来れそうなんだ?」
ξ ゚听)ξ「確か明後日が半日で終わるから、その日はどうです?」
(`・ω・´)「ん、分かった。もう二、三人なら連れてきて大丈夫だからな。
あと今日の代金はその日に払ってもらおう」
('A`)「解りました。次の料理も楽しみにしてます」
ξ ゚听)ξ「じゃあマスターさん、また明後日ね」
(´・ω・`)「兄さん、またね」
(`・ω・´)「……気をつけろよ」
店を出て、帰路に着く俺達。いやー、しかし本当に美味しかったな。
明後日の朝食は食べ過ぎないようにしとこう。 - 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:04:13.44 ID:K3x+/vIP0
-
○ ○ ○
(;´・ω・)「ありがとね、わざわざ駅まで着いてきてもらって」
( ^ω^)「おっおっ、気にするなお!」
ξ ゚听)ξ「駅前の本屋にも少し寄りたかったからね。
そのついでって事にしといて」
この美府駅は県内の中心駅であり、計五つの路線を束ねている。
線路は高架橋で駅の二階に繋がっていて、一階の改札から二階の各ホームへと上がる形だ。
今まで田舎住まいだったので、初めてこの駅を利用した時、色々と衝撃を受けたのが思い出される。
(´・ω・`)「……ああそうだ、君達は携帯を持ってるかい?」
改札の手前で、携帯を取り出しながら呟くショボン。
電車にはまだ少し時間があるので、アドレス交換でもしたいのだろうが――
('A`)「悪い、今週末に手に入る予定だ」
( ^ω^)「おっおっ、ボクもまだ持ってないお……」
(´・ω・`)「そう。じゃあ手に入れたら教えてね」
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:07:18.96 ID:K3x+/vIP0
- ξ ゚听)ξ「私とクーは持ってるわよ。とりあえずアドレスを交換しましょ」
ツンの取り出したピンク色の携帯には、毛玉の白いストラップが付いていた。
丸くてふわふわ。思わずモフモフと触りたくなる様な飾りだ。
ξ ゚听)ξ「赤外線でいいわよね。クーのアドレスもいる?」
(´・ω・`)「本人が居ないからね、君のだけお願いするよ」
ボタンを押す手際の良さから、二人ともかなり扱いには慣れているようだ。
ξ ゚听)ξ「じゃあ、クーにショボンのアドをメールで送っておくわね。それでいい?」
(´・ω・`)「すまない、よろしく頼むよ。それじゃあまた明日ね」
そう言ってショボンは駅の構内に消えていった。
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:10:38.38 ID:K3x+/vIP0
- ξ ゚听)ξ「さて、じゃあ本屋に行きますか。当然ドクオも来るわよね?」
断られるのを考えてない、そんな口調だ。
まあどうせ最初から付いて行く予定だったがな。
( ^ω^)「あれ、ボクには聞かないのかお?」
ξ ゚听)ξ「何も言わなくても、どうせついて来るんでしょ」
( ^ω^)「おっおっ、それもそうだお」
駅前にある大型デパート、そこの五階は一フロア丸ごとが本屋になっている。
エレベーターに乗る俺たち。壁側がガラス張りで、駅前の景色が見渡せるタイプだ。
俺はぼんやりと窓の外を眺めていたが、とある光景が目に入ってきた。
川l|リ ゚) ([゚]ハイ从
('A`)「……クー?」
( ^ω^)「ん、どうしたんだお?」
('A`)「いや、クーが見えたような気がしたんだが……」
駅のロータリーで、スーツ姿の男と共に高級車に乗り込むクー。
たぶん何かの見間違いだろうが……明日聞いてみるかな? - 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:13:41.83 ID:K3x+/vIP0
- 五階に到着し、コミックが置いてある一角に向かう。
別に小説を読むのは嫌いではないが、買ってまでは読む気にはなれない。
それが俺のスタンスだ。両親はあまり快く思ってないようだが……
( ^ω^)「おっ、SBRの最新刊が出てるお!」
('A`)「ブーンも集めているのか?」
( ^ω^)「ん、ということはドクオも持っているのかお?」
('A`)「『おっと、会話が成り立たないアホが一人登場〜〜』」
( ^ω^)「『質問文に対し質問文で答えるとテスト0点なの知ってたか? マヌケ』」
( ^ω^)b d('A`)
ξ;゚听)ξ「理解不能だわ…………」
( ^ω^)「おっおっ、ドクオ聞いたかお」
('A`)「じゃあ理解『可』能に変えてやるかな……」
さあて、『男の世界』講義のはじまりだ!
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:17:21.41 ID:K3x+/vIP0
- ツンにJ○JOの魅力を熱く語り始めた俺とブーン。
しかし意見の食い違いにより、いつの間にか二人の間で議論が始まっていた。
(#^ω^)「だから、ちゃんと一部から読む方がいいんだお!」
('A`#)「いや、まず初心者は三部から読むべきだ!」
ツンは呆れ顔をしてるが、そんなことは関係ない。
これはもはや自分の魂を賭けた戦いだからな!
(*゚∀゚)「あっ……」
ξ ゚听)ξ「ん?」
lw´‐ _‐ノv「ころ餅」
そういえば最近食べてない。赤福は結構好きだったんだが……
……じゃなくて、教室で見た小さな子と、米好きな人がそこにいた。
名前が出てこないのは、その印象が強すぎるからだ。
ξ ゚听)ξ「あら、つーちゃんとシューさんだ」
( ^ω^)「おいすー、シューさんに2ちゃん」
(#*゚∀゚)「ちゃんはつけるなっ! あと絶対数字にだけはするな!」
……どうやら忘れていたのは俺だけらしい。
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:20:48.54 ID:K3x+/vIP0
- ( ^ω^)「おっおっ、こっちの住み心地はどうなんだお?」
(*゚∀゚)「えっ……ああっ、いい所だとおもうぜっ!」
ξ ゚听)ξ「日本語がかなりスラスラね。もっと訛ってると思ってたけど」
(*゚∀゚)「ああ、親父とお袋が日系の会社に勤めててさ、家での会話は日本語だったからだぜ」
たしかにスラスラではあるが、10歳の女の子にしてはやや乱暴な口調だ。
どんな家庭だったのかが非常に気になるところである。
('A`)「それにしても凄いな、10歳で俺たちと一緒の頭脳とは……なんか特別な勉強でもやってたのか?」
(;*゚∀゚)「あっ、いや、そんな訳じゃなくてな。なんか生まれつき物事を――」
lw´‐ _‐ノv「電車」
(*゚∀゚)「おっと、電車に遅れるといけないから今日はここまでだ。また明日なっ!」
少女漫画の新刊を掴み、レジに走っていくつー。ひょこひょこした走り方は見ていて微笑ましい。
('A`)「いやー、しかし印象とはかなり違うな。最初はもっとかわ――」
lw´‐ _‐ノv「川崎フロンターレ?」
('A`;)「うおおっ! まだいたのかよ!」
後ろから急に、米の人 (シューだっけ?) が話しかけてきた。
てっきり一緒にレジに行ったと思い込んでいたぜ…………
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:24:47.75 ID:K3x+/vIP0
- lw´‐ _‐ノv「油断、決め付け、先入観……それらは成長を侵害する」
(; ^ω^)「なんか深い言葉だお……」
lw´‐ _‐ノv「あとツンさん。名前はシューで構わない。シュールストレミングのシューだ」
ξ ゚听)ξ「え、ええ……私もツンで構わないわ」
lw´‐ _‐ノv「も一つほど、皆に頼みが。つーを子供扱いしてほしくない。
つーは高校に打ち解けようと頑張っている、だから……」
('A`)「そ、そうか……」
おそらくつーty……つーは、特別扱いをしてもらいたくはないんだろう。
……まあ難しい問題ではあるな。どう見ても子供にしか見えないし。
lw´‐ _‐ノv「ではつーが迷子になったらいけないから、ここで失礼。
また新たな太陽が昇るときにでも再会しようではないか」
おいおい、自分は子供扱いしていいのかよ……
突っ込む前にシューはレジの方へと消えていった。
('A`)「変わった奴だな……」
( ^ω^)「全くだお」
……いや、お前も結構変わってるとは思うぜ。
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:28:10.58 ID:K3x+/vIP0
- ('A`)「……さてと、じゃあさっさと漫画を買って移動しますか」
( ^ω^)「おっおっ、議論はどうするんだお?」
('A`)「『ああ、そんなこともあったね』」
( ^ω^)「荒木乙だおwwwww」
('A`)「っていうかs―― 『メールだぽ。はやくみるぽ』
ξ;゚听)ξ「ちょ、ちょっとごめんね」
ツンの鞄から聞こえてきた、なんか生々しい声により遮られる俺。
慌てて携帯を取り出してることから、かなり重要な人物からの着信音だろう。
画面をざっと一見したあと、ツンは間髪入れずに話を切り出してきた。
ξ;゚听)ξ「ごめん、急な用事が入ったわ! また明日ね!」
そう言い残し、階段の方へ駆け出していくツン。
エレベーターを使わない辺り、よっぽど急いでるんだろう。
( ^ω^)「ツーン、また明日だおー!」
('A`)「じゃあなー」
さーて、二人きりになった訳だが…………
俺がこれからどうするか考え始めたときだ。
( ^ω^)「ドクオ、ボクの家に来てみないかお?」
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:31:12.23 ID:K3x+/vIP0
- 駅から徒歩15分、市街地の端の方にブーンの家はあった。
通りの両側に小さな商店が立ち並んでいる、初めての場所なのにどこか懐かしみを覚える風景だ。
('A`)「へー、ブーンの家は酒屋をやってるのか」
内藤酒店と彫られた、きれいな木の看板。木目を生かした壁に、ガラスから見える橙色の照明。
日本酒やビールよりは、ワインとかの洋酒の方が似合いそうな店だ。
店の横でビールケースを運んでいた人に向かい、ブーンが手を振る。
( ^ω^)「ただいまだお、父さん!」
升^ー^)「お帰り、ホライゾン……おや、そちらの男の子は?」
なるほど、ブーンの父親か。確かにどことなく似ている気がする。
丁寧な言葉遣いの優しそうな人だ。
('A`)「今日友達になった鬱田ドクオです。よろしくお願いします」
升^ー^)「ははは、こちらこそ息子をよろしく頼むよ。仲良くしてやってほしいな」
挨拶をすませ、店の裏手にある家にお邪魔する。
( ^ω^)「さーて、じゃあスマブラでもやるかお」
('A`)「ふっ、ギッタギタにしてやっからよ!」
一人プレイで2000連勝の実力、見せてやるぜ! - 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/02(日) 23:34:04.86 ID:K3x+/vIP0
- ( ^ω^)「ハンマーktkrwwww」
('∀`)「ちょっwwwこっち来るなwww」
居間でゲームを楽しむ俺達。ちなみにブーンは私服に着替えている。
結局その一戦は俺の負けに終わり、一息ついていた時だ。
ハ ・ω・)ハ「今帰ったんよ」
( ^ω^)「あっ、お帰りだお、母さん!」
('A`)「あっ、お邪魔してます」
ハ;・ω・)ハ「あら、お友達さんが来てたの……
初めて見る顔ね。ホライゾンの母です」
('A`)「鬱田ドクオです、よろしくお願いします」
ハ ・ω・)ハ「ろくでもない馬鹿息子だけどよろしくね」
(; ^ω^)「ちょっ、それは言いすぎだお」
ハ ・ω・)ハ「ところで時間は大丈夫なの? もうすぐ日が暮れるけど……」
時計を確認すると、5時半を回っていた。
たぶん俺の母親も、もうすぐ家に帰る頃だろうし…… - 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:00:05.07 ID:DGFn03Qp0
- ('A`)「そうですね、じゃあそろそろ失礼します」
( ^ω^)「もう帰るのかお……そうだ、ドクオの家まで見送りしていいかお?」
('A`)「別に構わないが、ブーンはいいのか?」
( ^ω^)「おっおっ、問題ないお」
○ ○ ○
美府市は住宅地と市街地に分かれていて、その境界となるのが『湖手川』だ。
海に近いこともあり、川幅はかなり広く、架けられている橋の数も少ない。
そんな湖手川の河原にある道を、俺達は通っていた。
俺達は色々と話をしながら歩いている。ブーンは時々、
( ^ω^)「あそこのレストランのハンバーグは美味しいんだお!」
( ^ω^)「そこの古本屋は色々問題があるから、買っちゃ駄目だお」
( ^ω^)「ここのゲームショップは、掘り出し物が結構あるお!」
などと、街の情報を色々と教えてくれた。
やがて、朝俺が通ったのとは別の橋に差し掛かる。
車両専用の橋のすぐ横に、歩行者用の細い橋が架かるタイプだ。 - 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:04:08.32 ID:DGFn03Qp0
- その橋を渡ろうとしたとき、目の前に信じられない光景が飛び込んでくる。
橋の中心の辺り、手すりを乗り越えたところに人がいた。
⌒*リ;´・-・リつ
背丈からして、小学の高学年か中学生ほどの女の子だ。
右手で手すりを掴み、車道側の橋へと必死に左手を伸ばしている。
俺がブーンに声をかけようとしたとき、彼はもう走り出していた。
両手を真横に広げる独特のポーズ。しかもかなり速い。
慌てて俺も走り出すが、ブーンとの差は離されるばかりである。
⊂二(; ゚ω゚)二つ「そんな事をしたら危ないおおおおぉぉぉっっっ!!」
('A`;)「バカッ、叫ぶなっ!」
走りながら叫んだブーンの声に驚き、少女の右手が離れてしまう。
ブーンのすぐ目の前で、少女はこちらを見ながら、ゆっくりと外側へと倒れていき……
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:08:20.51 ID:DGFn03Qp0
- ('A`;)「んなっ!!」
ブーンが右手を支えにし、手すりを跨ぎ越える。
そのまま少女が落ちた方に向け、飛び込んでいった。
ブーンが姿を消してから数秒後あたりだろうか。
俺は二人が落ちた辺りから、慌てて下を眺める。
夕日が斜めに照らしている今、橋の間はちょうど影になっていて水面がどうなってるかさえわからない。
二人が流されてくるのではないかと思い、下流にあたる反対側から川を覗き込む。
しかし俺の願いとは裏腹に、流されてくる物体は何も無かった。
('A`;)「嘘だろ……」
考えられるのは一つ、川の底に沈んで浮き上がってこない。
それはつまり二人が………… - 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:13:10.12 ID:DGFn03Qp0
-
(゚A゚;)「嘘、だろ…………」
色々あった今日この日、最大の驚きを俺は目にすることとなる。
⊂二二( ^ω^)二二つ「ブーーーンwww」
ブーンが空を飛んでいた。……比喩とかではなく。
器用に背中へと少女を乗せながら橋の下から飛び出してきて、今は川の上を滑空している。
翼のように大きく広げた両腕は、時々上下に動きバランスを保つ。
夕日を背景にして、大きく空へ舞い上がるブーン。
やがてゆっくりと、対岸の河原にある公園へと着陸していった。 - 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:16:32.01 ID:DGFn03Qp0
- ○ ○ ○
⌒*リ´;-;リ「ごめんなさい、一人で取れると思って……」
( ^ω^)「おっおっ、今度からあんな危ないことをしちゃ駄目だお」
どうやらこの少女(名前はリリだとか)、帽子が風に飛ばされ、
対面の橋に引っ掛ったのを取ろうとしていたらしい。
ちなみにその帽子は既に俺が回収し、少女に渡してある。
⌒*リ´つ-;リ「川に落ちたと思っていたんですが……
ギリギリで助けてくれてありがとうございます」
リリは橋から落ちた時のショックで、気絶していたみたいだ。
俺が公園に着くころに意識が覚醒したらしい。
⌒*リ´・ー・リ「ホントにありがとうございました。もうあんな馬鹿なことはしません!」
ペコリと頭を下げ、リリは公園を走り去っていった。
( ^ω^)「さーて、じゃあボクらも帰るかお!」
('A`)「なあ、その前に話さなきゃいけないことがあるだろ?」
(; ^ω^)「……あー、やっぱ話さなきゃ駄目かお?」
当たり前だろ、常考。 - 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:20:27.70 ID:DGFn03Qp0
- 俺達以外には誰も居ない公園、適当なベンチに二人で腰掛ける。
点灯を始めた外灯の元、ブーンは話し始めた。
( ^ω^)「そう、全ての始まりは二年前の夏だったお……」
☆ ☆ ☆
(; ^ω^)「熱いおー……」
ボクは炎天下の中、道路を歩いていたお。
確かあれは……本屋に行くためだったかお?
( ^ω^)「空が綺麗だおー……」
ちょうど昼過ぎの、人通りのほとんど無い時間帯だったお。
ふと道端を見ると、ヌコたんがいたお。
『ニャー』 (^ω^ )「おっ、ヌコだお!かわいいおwww」
しばらくボクはヌコたんをいじくり回していたお。
とても可愛いヌコだったお。あそこまで人懐っこいのは……
ああ、すまないお。話を続けるお。
『ミ゙ャー !』 (^ω^ ;)「ああっ、どこに行くんだお!」
ヌコたんが急に、道路に飛び出したんだお。
その時、道路の向こう側から大型トラックが走って来たんだお! - 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:23:18.25 ID:DGFn03Qp0
- (; ゚ω゚)「危ないお!!」
トラックの運転手はブレーキを掛けたけど、間に合いそうになかったお。
そして次の瞬間ボクは……
タイヤの隙間を走り抜けていくヌコの姿を見たお。
いやー、スレスレを駆け抜けていって、本当にヒヤヒヤしたお。
その少し後、ボクは何となく『あんな綺麗な空飛んでみたいお』と思ったんだお。
そしたらなんと、身体が宙に浮いたんだお! あれはビックリだったお!
☆ ☆ ☆
('A`#)「 ち ょ っ と 待 て ! ! 」
(; ^ω^)「おっおっ、どうしたんだお?」
('A`#)「どうしたもこうしたもねぇ! 猫関係ないじゃないかよ!」
( ^ω^)「……そういえばそうだお」
('A`#)「後肝心の部分が軽すぎ! なんでそんだけで空が飛べんだよ!」
( ^ω^)「でも飛べちゃったものはしょうがないお……」 - 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:28:58.02 ID:DGFn03Qp0
- 一通り突っ込み終わった俺は、更にブーンに問いかける。
('A`)「どうして飛べるようになったか、心当たりは?」
( ^ω^)「全然だお。何か特別な物を手に入れたとか、誰かに力を授かったとか……
そんなイベントは全く無かったお」
('A`)「で……どうなんだ? その能力は」
( ^ω^)「どうなんだと聞かれても……とても気持ちいいのは確かだお」
('A`;)「いや、例えばどれだけ速く飛べるかとかさ……」
( ^ω^)「……実はあんまり飛んだことがないんだお」
……ブーンの話曰く、人に知られるのは嫌なので、あまり飛んだことがないそうだ。
気晴らしと実験のために、夜空を飛ぶことが何度かあったくらいだとか。
当然この事実を知るのは、ブーン本人だけだったらしい。
- 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:32:47.25 ID:DGFn03Qp0
- ベンチから勢い良く立ち上がるブーン、俺もつられて立ち上がる。
( ^ω^)「一応この事は内緒にしといてほしいお」
('A`)「まあそれは構わないが……」
(; ^ω^)「あと……こんなボクでも、これからも友達でいてくれるかお?」
('A`)「……当たり前だろ。それぐらいで縁を切るもんかよ」
何を言い出すかと思えば……ブーンなりに不安だったのだろうか。
( ^ω^)「ありがとうだお! これからもよろしくだお!」
('A`)「……ああ、こちらこそな」
沈み行く夕日の下、向かい合った二人の右手が前に差し出される。
朝に掲示板の前で行った様に……いやそれ以上の力でお互いの手が握られた。
- 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:35:26.52 ID:DGFn03Qp0
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○ ○ ○
ブーンとは、『夜になったし、お宅拝見はまたにするお』という事で、マンション下で別れた。
帰宅が遅くなったことにより、母親の機嫌はあまり良くなかった。
しかし晩の食卓で今日の話をしていると、どんどん上機嫌へと変わっていく。
J( 'ー`)し「ああ、内藤さんね。酒屋を営んでらっしゃるんでしょ?」
('A`)「あれ、なんで知ってるの?」
J( 'ー`)し「今日の懇親会でね、席が隣だったのよ。もうね、母さん達意気投合しちゃってね!
他にも津出さんとか矢田さんとか、あと鈴木さんとか……」
俺たちが親睦を深めると同時に、母は母で深めていたとは……
恐るべしはDNAということか……まあ一部は知らない名前だったが。
J( 'ー`)し「ところでドクオ、そのブーン君とは仲良くなれそう?」
('A`)「ああ、親友って呼べる仲になりそうだな」
J( 'ー`)し「今度は家に連れて来てね。絶対だからね」
俺の母は、人をもてなすのが好きだ。……それはもう尋常ではないほどに。
中学の頃に友人を連れてきたとき、母は四段重ねのケーキを作ったことがある。
あの時の友人の引きつった笑顔…………俺は多分一生忘れられないだろう。
('A`;)「ああ、分かったよ……」 - 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:56:01.58 ID:DGFn03Qp0
- 話が途切れたのを見計らったようにチャイムが鳴り、母が立ち上がる。
母は首を傾げながら玄関に向かったが、すぐに玄関から嬉しそうな声が聞こえてきた。
「あら、今日は遅くなるんじゃなかったんですか?」
「それが思ったより早く仕事が片付いてね……」
どうやら一家の大黒柱が帰還なされたようだな。
仕事の都合で大抵午前様なので、この時間の帰宅は珍しい。
その夜は久しぶりに、一家全員で食卓を囲むこととなった。
夜も更けた頃、自室のベッドに寝転がりながら今日一日を振り返る。
校門での出会い、5人でのたわいも無い話、バーボンハウスでの昼食。
そしてあの夕日の中で空を舞うブーン……
……改めて考え直すとかなりの非日常だったな。
まあ俺とブーンだけの秘密、なんだか青春チックじゃないか。
これからの高校生活、なかなか楽しいものになりそうだな。
【次回へ続く】
- 100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/03(月) 00:58:11.50 ID:DGFn03Qp0
- ('A`)「次回のお話は……」
ピンクの花といえば、何が思いつくだろうか?
人によって色々あるだろうが、この国に生まれた者ならやっぱり……
_
( ゚∀゚)「おっぱいだな!!」
('A`;)「ねーよ! ……ってかお前誰だよ!?」
次回:『桜色の季節』
君は生き延びることが出来るか!?
_ ∩
( ゚∀゚)彡「おっぱい! おっぱい!」
⊂彡
('A`#)「だからお前は何なんだよ!」 - 102 :以下、本編にかわりまして後書きをお送りします:2009/08/03(月) 01:02:33.83 ID:DGFn03Qp0
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◎ ◎ ◎
( A iil)「お、終わった……疲れた……なんで残り1レスで猿なんだよ…………」
( ^ω^)「おっおっ、次回の投下予定日はいつなんだお?」
( A ;)「今度かその次の週末……にはしようと思う…………
週末しかネット環境がないからな…………」
( ^ω^)「おっおっ、こんな夜遅くまで見てくれた人はありがとうだお! じゃあまただおー!」