第一話

 

3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:50:35.85 ID:b6pkZttQO
 
どんな力かわからないが神は一人の人間にひとつの力を授けたらしい。
気まぐれ――と言えば正しいのか、とある一人の人間に神と同等の価値のある力が備わったのだ。

――――全てを打ち砕く力?

――――全てを癒す力? 
――――全てをやり直す力?

――――全てを変える力?

全てを……

挙げればキリが無い。しかしながらに神の気まぐれはとてつもなく無邪気で、まるで子供のように無垢だった。


4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:51:05.99 ID:b6pkZttQO
 
授けられた力――能力。 
それは強大で、しかしとてつもなく不便な力だった。

授かってしまった少年は、今も何処かで気の抜けた声を出しているのだろう。
……その力は凡人以下でもあり、超人以上の力でもあるのに。
等の少年は、未だに気付いていないのだから。
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:52:58.00 ID:b6pkZttQO
 
(*゚ー゚)「貴方は本当に、凡人以下の屑ね」

('A`)「……は?」

突然の発言、しかもかなり痛い言葉を浴びせられた少年は目を大きく見開いた。

ここはとある学校の校長室。
学校――と言っても、机に縛られてただノートに記述する事はしない。



7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:54:11.16 ID:b6pkZttQO
 
むしろ職場とでも言えばいいのか。彼らはある建物の中で仕事をしながら学んでいく。
それは一言で言えば学校に近い。
しかしながらに、似て非なる物でもあった。

それはさておき、先ほどの少年。

「屑」

と言うあまりにも率直でストーレートな言葉に、すっかり固まってしまっていた。

少し躊躇うように口を開くと、すかさず目の前の女性がそれを阻止した。

(*゚―゚)「失望どころじゃ無い……呆れた。てわけで未来永劫さようなら」


8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:55:44.37 ID:b6pkZttQO
 
まだ若い女性の校長先生は、似合わぬ黒い笑いを浮かべていた。

いや、まてまて。

(;'A`)「未来永劫さようならって、生徒に言うセリフじゃ無いですよ! どう考えても、絶対完璧絶賛そうです!」

わけも分からない喋り方で少年は反抗した。

しかし状況が変わるわけも無い。目の前で冷ややかな視線を投げ掛けられ、彼――欝田独男は冷や汗をかいていた。


9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:57:22.41 ID:b6pkZttQO
 
(*゚ー゚)「貴方、そうは言うけど自覚はあるのじゃない? つか、あるわよね?」

ふふふ、と最後に付け足すように彼女は微笑んだ。それに伴いドクオは少したじろく。

――正にその通りだった。反論する理由も今の彼には残っていない。

しかし、しかしだ。

(;'A`)「いきなりそんな事言われても、超絶完璧困るだけです! なんですか、いきなり退学って!」


10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:58:35.35 ID:b6pkZttQO
 
話合いの元になった封筒を、間の机に叩きかえした。

大きく書かれた『退学』の文字。あまりに適当過ぎる、とドクオは封筒の中から紙を取り出した。

中には薄いわら半紙が一枚。少し黄ばんだような色が安物感を見た目だけで伝わせてくれる。

そして肝心の紙の中身だが……

(゚A゚)「残念でしたー退学ですハート……っていくらなんでも完全完璧適当過ぎます!」


11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 00:59:56.43 ID:b6pkZttQO
 
ドクオは小学生のように音読すると、目に涙まで浮かべ最後の反論をした。

彼の短い茶色の短髪が、怒りでさかだったようにも見える。
だが、目の前の女性は至って平然としていた。軽く化粧のされた、しかしながらに元のいい整った顔立ちで、少し尖った瞳がドクオを捉えた。

(*゚ー゚)「欝田独男。貴方の力は最低クラス――
よって我が校では貴方を排除する事に決定しました。
当校の会議で既に決定済みです。異論は?」

彼女の瞳は少しも笑わずに冷静でいた。
――それが事実である事をドクオは理解するほか無かった……

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:05:35.83 ID:b6pkZttQO
 
(;A;)「……って、この用紙は無視ですか!?笑って笑って完璧無視ですか!?」

彼の哀しい気の抜けた叫び声だけがこだまする。
目の前の校長先生は何故かうっすら微笑んでいた。

しかし目は笑っていない。
頬杖をつきながら、冷たい瞳だけがドクオに注がれている。 

(*^ー^)「ドクオくん? 貴方の力は何かしら?
貴方はその力で世の中の何に貢献したのかしら?」


14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:06:48.87 ID:b6pkZttQO
 
(;'A`)「……よ、予知能力です、よ。か、完璧な……」

汗が止まらない。吹き出してくる冷たくも、暖かくも無い汗。

嫌な空間に彼は立たされる感触を覚える。乾いた口は何も喋ろうとしない。

見かねてか、乾いたため息がとんできた。 

(*゚―゚)「予知能力は大切よ。……だけど分かるかしら?
こうなる事も予知出来ない予言者なんて、この世界には要らないの……分かるかしら?」


15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:09:38.90 ID:b6pkZttQO
 
(;'A`)「わ、分かんないです( ><)よ! 僕は確かに力は弱いけど、完全勝者、完璧野郎になってみせます!だから――」 
(*゚ー゚)「23%」

呟くように、彼女は言葉をはなつ。

(*゚ー゚)「なんの数字かわかる?」

ドクオは考えるように子首を捻る。

(;'A`)(――23%? 僕の予知能力の当たる確率とか……無い無い、さすがに完璧無いよね、あはは)

(*゚ー゚)「貴方の予知の当たる確率よ」


16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:11:13.59 ID:b6pkZttQO
 
見事なまでに的中。こんなくだらない事が当たっても、彼のなんのフォローにもならない。

しかし、ドクオは言う。

('∀`)「やった! 当たりましたよ!」

……それを無邪気と言うのか馬鹿と言うのかは個々の判断に任せよう。

当の本人は目を輝かせているばかりだった。

(* ー)「……」

暫くの長い長い沈黙。ドクオは何やら嬉しそうに笑っていたが、
目の前の校長先生……もとい、鬼の形相をした女性はため息をつき、ドクオを睨みつける。


17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:12:54.19 ID:b6pkZttQO
(#゚ー゚)「………ドクオくん? 貴方いい加減……本当の屑になりたいのかしら?」

彼女は言いながら、右手をゆっくりと開く。何故かドクオの方へと開いた手を見せながら、
彼女はにこりと微笑んでいた。その後ろには嫌な感じのオーラを漂わせている。
……いや、なんかヤバい。

ドクオは少しだけ顔をひきつらせる。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:14:32.92 ID:b6pkZttQO
 
(;'∀`)「こ、校長先生ぃ? 何か完璧絶対完全……怖いんですけど……」 

ドクオが掠れながらに言うと、彼女は静かに口を開く。

(#^ー^)「うふふ。さ、よ、う、な、ら」

言うないなや、彼女の開いた手に一瞬閃光が宿った。淡く、光輝く閃光。 
そして次の瞬間――

(゚A゚)「 ……ぐぎゃぁあああ!!」


20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:17:04.62 ID:b6pkZttQO
 
訳も分からずドクオは叫ぶ。叫んで叫んで……彼は遥か彼方へと飛ばされた。
彼方と言っても校長室の外だが、それでも結構な距離だ。
見事なぐらいに元々開いていたドアから彼は追い出された。
最後に校長室の外の壁に背中があたり、

(#A`)「ぐはぁ」

と彼が叫んだのが木霊する。はい、ご愁傷様です。 
ドクオを飛ばした当の本人は、いたって平然としていた。開いていた手をゆっくり下ろすと、それに伴いドクオが先ほど追い出されたドアがゆっくりと閉まっていく。
表面に張られていた紙が閉まるさいに揺れて、止まり、彼女の方へと向きなおした。

(*゚ー゚)「……任務完了っと」 

もうドクオには届いていないだろう。笑いながら吐かれた声は、密閉された部屋に微かに響いていた。
外で意識を失い、無造作に放られたドクオは可哀想にもほうっておかれていた。


21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:18:57.71 ID:b6pkZttQO
『ご苦労さま。真実の手――true・HANDさん』

何処からともなく聞こえて来た声に、彼女は微かに微笑む。何故か身だしなみを整え、少し固く目付きを変えた。

(*゚ー゚)「見てらしたのですね。わざわざ遠隔透視まで使って」

『彼は大切な能力の持ち主だからね。……君も随分丁寧に扱ってくれたみたいだし』

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:20:57.96 ID:b6pkZttQO
 
やや苦笑の混じった声が、何かに覆われるかのように頭の中で低く響いた。

彼女……true・HANDと呼ばれた校長先生は苦味を含めながら再度微笑む。 
(*゚ー゚)「かなり加減したんですからね。私が少し加減を間違えば、欝田独男は原型も分からずにぶっ飛んでいく所だったんですから」



24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:22:20.49 ID:b6pkZttQO
 
冗談なのか本気なのか分からない話だ。しかし彼女は至って平然と髪に手を通した。
柔らかい、短い髪の毛がするりと指の間を抜けていく。
軽く、遅かりながら苦笑のような声が聞こえてきた。

『まぁ、君もまた最高クラスの技術の持ち主だから。冗談が分かりにくいよ……まるで99みたいに』


25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:22:54.78 ID:b6pkZttQO
 
最後の99と言う言葉に彼女は反応する。だが、バレないように乾いた声で愛辻をうった。

(*゚ー゚)「はは……99と一緒にされるのは心外ですね。彼ほど私は、センスの無い冗談は言わないつもりです」

彼女はいい終えてから、ため息のように息を吐く。
少しばかり、彼女の頬は緩んでいるように見えた。


26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:24:26.94 ID:b6pkZttQO
 
(*゚ー゚)「――ですが良いのですか? いくら99が言ったからって……」

『心配は要らないさ。既にそうしなくてはいけない状況になっているからね』

――そう、これで全てが上手くいくのだから…… 
心の中で呟き、彼は微笑む。その表情には何故か恐怖すら感じてしまう。何か人間離れした温かみの無い冷ややかな笑み。 
しかしその表情は誰にも見えてはいない、いや実際誰も見たことがないのだ。

彼の本当の姿を…… 

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:27:30.35 ID:b6pkZttQO
 
(*゚―゚)「……あの低能がこの世界で生きていける可能性は……おそらく彼の予知能力以下な気がします」

苦笑を堪えながらも呟き、ほとんど聞こえはしなかった。
独り言にしては少し冷たい感じもしたが、彼女は言った後に一人で笑っている。端から見ればかなり変な人だ。

『心配しなくても……』 
どうやら聞こえていたらしい。

『彼は大丈夫。なんせたった一人の、神に愛された人間なんだから』

そのたった一人の神に愛された人間は、普通の人間には愛されなかったのか、廊下で放られていましたがね。
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:29:16.54 ID:b6pkZttQO
 
欝田独男はひたすらに歩いていた。
それ以外に表し方が無いほど、彼の足は前へと運ばれている。
何処に行くかは彼にも分からない。
ただ進む足。何度も言うが彼はひたすら歩いていた。

('A`)「なんで……なんでこうなるのか、全然全く完璧分からないよ!」

日本語を愛してこの上ない人が聞いたら、彼の頬は何回も往復ビンタを食らっていただろう。
何時も通りの、何やら分からない喋り方。彼はため息を付きながら街を歩く。


31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:30:36.23 ID:b6pkZttQO
 
――追い出された。訳も分からず放って置かれて、気付けば学校を飛び出していた。

前の学校の制服を見に纏い、しかし既にその制服は突き飛ばされたせいで汚れている。
それでも彼は着ていた。まだ戻れるのだと勝手に妄想しながら。
……叶わない事だとも知らずに。

(;'∀`)「とりあえずアレ、アレだ! 名誉完璧挽回、欝田独男の絶対汚名返上! うん、それしかない!」

一人で叫び、歩道から飛び出した所に居る事を認識していない。
とりあえず、彼の低能ぶりはよく分かった気がする。


32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:31:41.01 ID:b6pkZttQO
 
遥か彼方……ドクオの威勢の良い叫び声さえ聞こえない場所で、
一人の少女は走り続けていた。

足に感じるひどい疲労感。しかし彼女は諦めずに足を前へと進ませた。
後ろは振り向けられない。
彼女を追う者たちに見つかってしまう。

ならばどうするか?答えは決まっている。

ζ(゚ー゚;ζ(走るしか、無いですよね……)



33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/02(金) 01:33:26.31 ID:b6pkZttQO
 
苦しみ紛れに彼女は心の中で呟いた。
頭から被った薄汚れた布の中から覗く瞳は、何故か輝きを放っている。

そして彼女が抱えている 
「何か」

も、小さいながらに輝いていた。

ζ(゚ー゚*ζ「ごめんなさい救世主様……使っちゃいますね!」

その瞬間、何処かでドクオの叫び声が木霊したのを彼女は知らない。

彼女の背には白い――白い塊が付いていた。白い、濁りの無い純白の塊が……


第一話 力と少年と少女

終わり

35 名前: ◆Tb1rFHkIbA :2009/01/02(金) 01:41:00.68 ID:b6pkZttQO
ないようなので終わります

一応酉をつけておきます

支援ありがとうございました
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