- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 18:46:33.77 ID:OfZ/RkE00
-
それはとある王国の、とある王族の話
その国を治める王様には4人の子供がおりました。
一人目は、長女のスナオ・クール
川 ゚ -゚)
冷静沈着かつ理知的な彼女は、涼やかな声、そして女神のように美しい容姿も持ち合わせ、常に人々を虜とさせました。
二人目は、次女のツン・デレール
ξ゚听)ξ
双子の姉妹の姉である彼女は、勝気な瞳と人形のように顔立ちで、金糸のごとく髪を優雅に払い、常に人々を跪かせました。
三人目は、三女のデレ・デレール
ζ(゚ー゚*ζ
双子の姉妹の妹である彼女は、姉と似通った容姿ながらもまた違う魅力を持っており、その愛らしい表情で気が付けば常に人々を傅かせておりました。
そして、最後に末っ子の長男
( ><)
ビロード・ワカンナインデス
彼は3人の姉たちとは違い、平凡かつ普通の少年、容姿も並、頭脳も品格も上3人とは比べ物にならず
国民は誰もが彼のことを忘れておりました
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 18:49:11.52 ID:OfZ/RkE00
-
それもそのはず
この国の王位は、国民全員が上の娘三人の誰かが婿を取り、そして国を治めるものだと思っておりましたから
本来は長男が王位をつぐものですが、この国に限っては優秀な娘達の方が相応しかったのでしょう。
事実、3人の娘達にはモララー、ジョルジュ、ギコという婚約者がおりました
どの婚約者も有名な国の一人息子です
これは国民の誰もが納得し、早く結婚してより良い国を作って欲しいと願っておりました。
しかし、ある時予想外な出来事がおきます。
長女のクー王女が、なんと駆け落ちしてしまったのです。
川 ゚ -゚)「すまんな皆、私は愛に生きる」
('A`)「クー様……」
駆け落ちした相手は、下々の底辺にいるような男でしたが、王族にはない強さと優しさを持っておりました。
街の片隅でガラス細工を作っていたその男は、顔に似合わず美しいその細工で、クー王女の心を射止めたのでした。
そして、あっという間にクー様はその男と一緒に国から消えることに。
これには国民も大混乱。
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 18:51:00.83 ID:OfZ/RkE00
-
婚約者であるモララー王子も、失意と怒りに明け暮れているようでした。
特にモララー王子は、政略結婚だろうがなんだろうが、本気でクー様に惚れているようでしたので
怒りも一入。
(#・∀・)「許さないんだからな!」
慌てた国王と王妃は、すぐさま次女とその婿を王位に付かせ、モララー王子の国にお詫びをし、何とか丸く治めようとしました
何せ他国の有力者、怒らせてはいけないのです。
しかし、ここでまた一波乱。
なんと、次女のツン王女までもが他の男と駆け落ちしてしまったのです。
ξ;;)ξ「他の男となんて嫌、ブーンがいいの、ブーンだけが好きなの!」
( ^ω^)「逃げるお、ツンは僕が絶対守るから」
相手はツン様の幼き頃からの友人でした。
その柔和な顔つきは、知らず知らずのうちにツン様の心を占めていたようです。
彼はその大きな手で、細く白いツン様の手を握り、国民全員が止めるのをものともせず
2人で国を去りました。
もはや国は呆気にとられ、当然婚約者のジョルジュ王子も怒り狂いました。
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 18:52:28.78 ID:OfZ/RkE00
- 彼の場合、惚れてはいなくとも、プライドの高い男だったのでしょう。
_
(#゚∀゚)「貧乳でも我慢してやろうと思ったのによぉ!!」
もう一刻の猶予もありません。
国王と王妃は三女をギコ王子と結婚させ、国を広く繁栄させるしかないと思いました。
ちなみに、今度も駆け落ちされては叶わないと、デレ王女に意中の人はいないかと聞きましたが、その心配はないようでした。
ζ(゚ー゚*ζ「もう絶対ないから、ギコ王子様カッコよすぎ、デレ超リスペクト、パねぇ」
と仰るので、今度こそ国王と王妃は安心していたのです
そう、こちらの国にはなんの問題もなかったのですから、その判断は正しかったのかもしれません。
しかし、今回ばかりは相手国のギコ王子の方には問題があったようで……
ここでさらにまたまた大混乱。
今度は相手国のギコ王子が、待女と駆け落ちしてしまったというのです。
( ,,゚Д゚)「俺はしぃを生涯愛するって誓ったんだぞゴルァ!」
(*゚ー゚) 「ギコ王子……」
ζ(;皿;*ζ「マジねぇよお前ら!パねぇから!」
そうしてフラれたデレ王女は、失意のどん底に沈んでしまいました。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 18:54:35.96 ID:OfZ/RkE00
-
食事もとらず睡眠もとらず、王様と王妃の2人が何を言っても取り合おうとしません。
しかし、そんなデレ王女の心を開く青年が一人だけおりました。
(-_-)「デレ王女……デレ王女は誰よりも美しいです、きっとギコ王子は失明してたんですよ、元気出してください……」
デレ王女の食事係、城の召使であるヒッキーです。
俯き加減の多く、影の薄い青年でしたが、その声は酷く優しいものでした。
毎日毎日、そんなヒッキーの優しい言葉を受け、いつしかデレ王女はヒッキーにひかれていったのです。
ζ(゚ー゚*ζ「もういや! 私は自由に生きるのよ! 行くわよヒッキー!」
(*-_-)「え、あ、はい!」
2人の仲が急に近くなったことに、王様と王妃は慌てましたが、時すでに遅し
デレ王女のいた部屋は、ある日他の召使が除くともぬけの殻となっておりました。
『またやられた』
デレ王女はヒッキーと駆け落ちしてしまったのです。
ついにストレスで王様は倒れ王妃様も一気に老け込んでしまいました。
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 18:55:25.16 ID:OfZ/RkE00
-
ここは早く跡継ぎを決めなければ。
国民の誰もがそう思いました。
隣国も怒っているし、早くしなければ国は滅んでしまう。
そうして、最後に白羽の矢が立ったのが、末っ子長男のビロード王子でした。
ミ(><;)「え、僕!?」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 18:55:58.18 ID:OfZ/RkE00
-
( ><)ある王国のお話のようです
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 18:58:02.51 ID:OfZ/RkE00
-
そこは城の一室、誰も入ることが許されていない秘密の部屋。
少年はその部屋の机の上、青い顔うな垂れておりました。
(;><)「あぁ〜……もう本当ないんです……お姉ちゃん達勝手すぎるんです………」
涙交じりの声で呟くその少年こそが、この国の世継ぎ、ビロード王子です。
その言葉に、傍にいた少年が淡々と答えます。
( <●><●>)「仕方ありません、いなくなってしまったのですから」
彼の名はワカッテマス
王子付きの召使でした。
王子と年の頃は同じでしたが、その天才的な頭脳を抜擢され、異例の若さで王子付き兼教育係となったのですが
なんてことはありません。
2人はただの幼馴染でした。
(;><)「にしたって突然すぎます! 僕は王位なんて継ぐつもりはなかったし、お姉ちゃんたちの誰かが継ぐものだと思ってたんです!」
( <●><●>)「私もそう思ってはいましたが、クー様もツン様もデレ様も駆け落ちされてしまったんですから仕方ないでしょう。
残ったのは王子だけです」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:00:01.44 ID:OfZ/RkE00
-
(;><)「ワカッテマス…君、もうちょっと同情とかないんですか」
( <●><●>)「何を仰います、王子なんて国の誰もが憧れますよ?」
(;><)「世迷いごとを……僕のポジション狙ってか暗殺されかけるし、城に縛られるし
街に遊びにもいけないし、ぶっちゃけいいことナシなんです」
( ><)「それに」
( ><)「僕が国王になったところで、所詮お飾りの国王になることは目に見えているんですー…」
( <●><●>)「……………」
王子はまた机に突っ伏してしまわれました。
彼は自分の才能も、国を治める能力も、姉たちには遠く及ばないと自覚していたのでしょう。
それ故に、国民や両親のプレッシャーが重くのしかかります。
ワカッテマスはため息を一つつき、王子の肩を叩きました。
( <●><●>)「そんなに落ち込んでいると、幸せが逃げますよ」
( ><)「もうとっくに逃げました。僕も好きな子見つけて逃げてしまいたいんです」
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:03:01.86 ID:OfZ/RkE00
-
( <●><●>)「こんな軟禁状態では、出来ないとわかっているくせに」
ビロード王子の身柄は今、他の姉たちと同じく逃げ出されては敵わないと
この秘密の部屋に軟禁されているのです。
そして、理由はそれだけに留まりません。
( ><)「………」
( ><)「……僕までいなくなったら、お父さんもお母さんも困るんです」
ビロード王子は、心根の優しい少年でした。
( <●><●>)「そうですね、大丈夫ですよ王子、私が立派な国王にして見せます」
( ><)「ワカッテマス、君何か楽しみないんです?」
( <●><●>)「私は君がこの国を良くすることが何よりの楽しみですが」
( ><)「君は真面目な奴なんですー……」
( <●><●>)「ええ、まあ」
( ><)「僕はね、王位なんていらないから、旅人になって世界を見て回りたいんです」
( ><)「夢なんです」
( <●><●>)「……そうですね、君は子供の頃からそれが夢でした」
( ><)「そうなんですよ」
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:06:03.47 ID:OfZ/RkE00
-
( <●><●>)「…………」
ワカッテマスはそれ以上何も言いませんでした。
王子もそれ以上自身の夢を語ろうとはしません。
血縁に逃げられて王子しか残っていない以上、その夢が叶うことがないことを
2人は知っていたのですから。
この国には、彼が王位を継ぐ以外に未来が無いということを知っていたのですから。
( ><)「さて、今日のお勉強はなんですかー?」
( <●><●>)「近隣の国々についてのお勉強です。最近諸国の有力者の息子を次々にフッたせいで
うちの信用度ガタオチですからね。
しっかり勉強して、立派な国王になって、信用を取り戻してください」
(;><)「ウェ〜…把握なんです」
そうして、いつものように勉強を始めました。
王子は平凡で普通の人間でしたが、努力だけは人並み以上にする人間だったので
ワカッテマスも教えるのが楽しみでありました。
( <●><●>)「というわけでここが〜」
( ><)「ふんふん」
- 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:11:56.60 ID:OfZ/RkE00
-
*
そんな日が数日続いたある日のことです。
召使であるワカッテマスが大量の写真を持って、その部屋に現れました。
その量たるやまるでトンガリコーンの増量版。
机の上に置くとそれだけで溢れてしまいそうでした。
□
□□
□□□□
□□□□□□
(∩<●><●>)∩「王子、勉強は進んでますか?」
( ><)「もっと他のAAなかったんですか」
( <●><●>)「地の文でフォロー入れたから大丈夫です」
フォローになってねぇよ……という顔をビロード王子は露にしましたが、それに突っかかるほど
ワカッテマスも粘着質な男ではありません
彼は写真を取り上げて早々に話を進めます。
( <●><●>)「王子ぃ、この娘の中で誰が好みです」
にやりと不気味に笑って、その写真をビロード王子に突きつけました。
写真の中に映っているのはどれも可愛らしい、年頃の女性ばかりです。
- 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:17:47.27 ID:OfZ/RkE00
-
(*><)「え、うわ、一体どうしたってんですかこれ!」
( <●><●>)「王子の花嫁候補です」
( ><)「花嫁ですか………なるほど納得」
(;><)「ってえぇ!?」
今までビロード王子は、軟禁状態にありました。
いえ、それは今も変わっていません、彼は万一誰かと駆け落ちしないよう、誰にも会わず、話さず
この小さな部屋でただ王になるための勉強と仕草を強要されているのです。
無論、異性との接触などもってのほかでした。
( ><)「正直このままでは僕はホモになってしまうかと思いました」
( <●><●>)「そしたら国もいろんな意味でおしまいですね」
王様と王妃もそう思ったのでしょう。
彼だって年頃の男です、このまま何か間違いが起こったら、今度こそこの国はおしまい
今は俗に言うリーチ状態なのです。
( <●><●>)「どの娘も、有力諸国とまではいかないまでも、きちんとした家柄のお嬢さんですよ」
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:26:39.53 ID:OfZ/RkE00
-
その言葉どおり写真の中に映っている女性は皆美しく、煌びやかな衣装を身に纏っていました。
一見してそれが平民ではなく、貴族の出だとわかるようで、ビロード王子は若干戸惑っています。
それも当然のことでしょう、彼は今までここに軟禁されたまま、最近では女性とろくに
話しもしていないのですから。
ビロード王子は机いっぱいに広げられた写真を一枚一枚手に取り
まるで熟した桃のように頬を染めながら写真を見つめていました。
( <●><●>)「3日後に公式なパーティがありますので、それまでにお気に入りの女性をピックアップして置いてください」
(;><)「み、三日!?早いですよ!」
( <●><●>)「写真を渡すの忘れてたので」
(;><)「ワザとか!ワザとだろ!」
ツンと顔を背ける幼馴染に、ビロード王子は怒鳴りましたが、幼馴染である彼はそのまま部屋を出て行ってしまいました。
残されたのは大量の写真と、三日後に控えているというパーティへのプレッシャーのみです。
( ><)「ええ……出て行きやがったんですあの男……もっとこう相談的なものは……?」
教育係なんてのは名目で、ただの友人である彼にその言葉が届くことはありませんでした。
多分。
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:35:40.48 ID:OfZ/RkE00
-
そしてそれからの3日間は、怒涛のような日々が続きました。
まず、時期国王としての振る舞いをスパルタで叩き込まれ、
ダンス、作法、女性を誘うときのルールなども叩き込まれました。
同い年とは思えないその知識量と行動に、ビロード王子はクタクタです。
若いとは言っても、体力が無限にあるわけではありませんし、ましてや彼は
上の姉三人に劣る平凡体質。
連日連夜に及ぶそのスパルタ教育に、ビロード王子は机の上でグッタリとしていました。
( ><)「僕はこのまま死んでしまうかもしれません……」
( <●><●>)「それが弱音だということはわかってます」
( ><)「わかるように言ってんですよコノヤロー」
顔を上げないまま、目だけでワカッテマスをじろりと睨むその姿は、大分参っているようでした。
どうやらしごきすぎたようです。
( <●><●>)「まぁそう言わないで下さい。私とて王子が憎くてやっているわけではないんですから」
( ><)「これで憎くてやられてたら僕はもう自殺したいですよ」
( <●><●>)「不吉なことを言うのはやめてください」
王子の横頬をひっぱりながら無表情でワカッテマスは告げます。
彼の夢は、王子がこの国を繁栄させることなのですから、王子が死んではその夢もあったもんでは
ありません。
- 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:40:27.77 ID:OfZ/RkE00
-
( <●><●>)「それで? お気に入りの女性は見つかりましたか?」
未だ机の上に寝ている王子の首根っこを掴んで引っ張りあげると、ワカッテマスは問いかけました。
机の上には何枚かの写真が並んでおります。
( <●><●>)「ほほう、これが王子の選んだ女性たちですか」
(*><)「いやん恥ずかしいんです」
( <●><●>)「邪魔です、どいてください」
写真を隠そうとする王子を押しのけると、そこには12人の女性の写真がありました。
どの娘も美しく、若さに溢れています。
ワカッテマスはその写真を並べると、王子に問いかけます。
( <●><●>)「ちなみに、どの娘がお気に入りなんですか?」
(*><)「え?いや、恥ずかしいんですうふふ」
( <●><●>)「さっさと言ってください」
すると王子はもじもじしながら、一枚の写真を指差しました。
その写真に写っていたのは
>>39でした - 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:42:23.27 ID:KmWtoe6m0
- 从'ー'从
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:43:23.03 ID:aFOoYNpBO
- 从'ー'从
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:43:53.30 ID:JOOb2X7w0
- 从'ー'从
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:50:46.09 ID:OfZ/RkE00
-
(*><)「こ、この娘……ですっ」
【从'ー'从】
王子が指差した先にいたのは亜麻色の髪をした可愛らしい少女でした
彼の姉たちに勝るとも劣らないその美貌の少女は、写真の中でにっこりと微笑んでいます。
その姿を見て、ワカッテマスは目を細めました。
( <=><=>)「なるほど、ワタナベ一族の姫君をお選びですか」
(;><)「いやそんなことよりも今は君の表情に驚きが隠せないんです!」
( <=><=>)「彼女の一族は非常に知略に長けておりましてね、ビロード王子にしては良い女性を選んだのかもしれません」
(;><)(あれ目どうなってんの……?)
クワッ
( <●><●>)「王子」
(;><)「は、はい!?」
( <●><●>)「ここは王子の力をしっかりと見せ付けて、きちんとエスコートしてくださいね」
その言葉に、ビロード王子は動揺しました。
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 19:56:44.28 ID:OfZ/RkE00
-
(;><)「エ、エ、エ、エスコート!?」
なにせ、彼には女性をエスコートしたことなどないのですから。
いくらマニュアルで叩き込まれたとしても、長い間女性と喋ったことのない彼には
到底無理な話です。
ビロード王子はガタガタと震え、ワカッテマスに掴みかかりました。
(;><)「無理! 超無理! 確実に無理なんです!」
( <●><●>)「我侭を言わないで下さい。何のための勉強ですか」
(;><)「そんなこと言われても無理なもんは無理なんです!」
( <●><●>)「これも勉強ですよ」
(((;><)))「いやいやいや! 無理ですって!現実と妄想は違うんです!」
物凄い勢いで首を横に振る王子に、ワカッテマスはため息をつきました。
どうしてここまでヘタレなのだろう、と。そんなことは勿論言いませんが。
(;><)「それに、花嫁候補者が有力者じゃなくても、他国の権力者は来ているかも
しれないんでしょう!?
そんな場でミスしたら僕………僕……」
( <●><●>)「王子、ちょっと落ち着いて」
- 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 20:04:07.20 ID:OfZ/RkE00
-
((( ;;)))「うわぁああああああん!!」
しかし彼はワカッテマスの言葉に耳を傾けようとはしません。
ビロード王子は大そう努力家な人間でしたが、その努力が実を結ぶとは限らない見本のような人間でした。
その姿に困り果てたワカッテマスは、ある提案をビロード王子に打ち明けます。
( <●><●>)「それでは、王子。こういうのはどうでしょう………?」
パン、パン、と街中から祭りの合図のような音が響きます。
その日は国民全員を挙げて世継ぎの花嫁探し、盛り上がらないわけがありません。
パーティの日が訪れると、会場には華やかな女性達が会場を彩りました。
ざわめく女性達の中に現れたのは、勿論、正装に身を包んだこの国の王子です。
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 20:04:43.86 ID:OfZ/RkE00
-
( <●><●>)「どうも皆様、初めまして。 私がこの国の跡継ぎ、ビロード・ワカンナインデスです」
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 20:13:43.80 ID:OfZ/RkE00
-
その姿に、パーティ会場にいた女性達はざわめきました。
「あら……末っ子は平凡って聞いてたけど……割と素敵じゃない」「そう?私はもっと違うの想像してた」
「ちょっとギョロ目で気味が悪いです」「えぇ〜、私は好みよォ」「玉の輿!玉の輿!」
「ふぇえ〜、あれがビロード王子〜?」「絶対選ばれるぞぉぉおおお!」
反応は様々でしたが、誰もが皆彼をビロード王子と認識したようでした。
それもそのはず、ビロード王子は他の三人の姉に比べて陰が薄く、国民の記憶には残っていなかったのです。
おまけに最近では、召使のワカッテマス以外との接触を禁じられているので、ますます彼の姿は
国民の間で薄れていました。
それ故に、王子と同い年で、王子としての身のこなしをする彼を、国民はビロード王子だと
確信したのです。
彡 ><)(ワカッテマス……)
( <●><●>)「未だ不束な身でありますが、国を繁栄させるため全力を尽くしたいと思います
どうぞよろしく」
ぺこりと一礼する彼を、ビロード王子は召使に変装して見ておりました。
ワカッテマスの作戦はこうです。
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 20:18:31.03 ID:OfZ/RkE00
- 〜〜〜〜〜〜〜〜
( <●><●>)「わかりました、では私が王子の代わりにそのパーティに出席いたしましょう」
( ;;)「うわあああああああああ……あ?」
( ><)「え?」
突然のその妙案に、王子は首を傾げました。
( <●><●>)「そうして、王子の選んだ女性が、本当にこの国の王妃に相応しいか、
王子と生涯付き添ってくれるかどうか、お調べします」
(;><)「いや、ちょっと待ってください。それだと君がワタナベ姫とくっつくことに」
最もな意見をビロード王子が言いますが、それを遮るようにしてワカッテマスが発言します。
( <●><●>)「王子」
(;><)「は、はい!?」
( <●><●>)「わかっているとは思いますが、王子はこの国の最後の跡継ぎなのです。
何かあったら大変なことくらいわかるでしょう」
( ><)「え、は、はい……」
( <●><●>)「皆も、それくらいわかっているはずです」
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 20:26:17.29 ID:OfZ/RkE00
-
( ><)「そうかな……」
( <●><●>)「ええ、だから、私が影武者として出席するのです。万が一、会場に王子を狙うものがいたらどうします?
のほほんとしてる王子なら確実に殺されますが、私なら避ける手立ても作れます」
( ><)「何気に失礼ですね」
( <●><●>)「王子を心配してのことですよ。王と王妃には私からお話いたします。王子はただ
色々と見学して学び、見極めてくださればいいのです」
その言葉に、それでもビロード王子は首を傾げます。
( ><)「で、でもワカッテマス、それが原因でワタナベ姫に振られたら元も子も……」
騙されて気分の良い女性はいません。バレた途端何もかもぶち壊しになったらと思うと…
ビロード王子は恐る恐る言いましたが、ワカッテマスはそれにツンと顔を背け、言います。
( <●><●>)「そんなことに怒るようでは、一刻の王妃として勤まりません。
王子が認めても、王子の教育係の私が認めませんよ」
(;><)「……そ、そうですか………」
そういわれてしまうと、もはや王子にも何も言えませんでした。
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 20:37:12.84 ID:OfZ/RkE00
- 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そんな理由で、ワカッテマスは今ビロード王子に変わり、王子に成りすまして
会場の中心にいます。
そこには様々な人たちが王子とのかかわりを求めてやってくるのです。
表向きは花嫁探しですが、それ以外にも王子とかかわりを持とうとする輩はおおいのでした。
それは他国の権力者であったり、自分の娘を押す貴族だったり、王子に恨みを持つ者だったり。
/ ,' 3「君がこの国の次の世継ぎか、期待しとるよ」
( <●><●>)「ありがとうございます」
ミセ*゚ー゚)リ「あ、あの、ビロード王子、私ミセリと申します、よろしくお願いします」
( <●><●>)「ああ、美しい方ですね、よろしくお願いします」
(゚、゚トソン「ああ、王子、わ、私も!」
从 ゚∀从「あたしも!」
@@@
@#_、_@
( ノ`) 「あたしも!」
彡⌒ミ
(;´_ゝ`)「!?」
権力を得ようとする者はいっせいに王子の元に集まります。
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 20:45:22.95 ID:OfZ/RkE00
-
( <●><●>)「ええ、ありがとうございます皆様、どうぞ今日は最後までパーティをお楽しみください」
しかしワカッテマスはそれらを軽くかわし、その場から去ってしまいました。
後ろにいた者たちは不服そうな子をあげましたが、それに構ってもいられません。
ワカッテマスには別の目的があるのですから。
从'ー'从「ごきげんよう、ビロード王子〜」
目線の先に立っていたのは、写真に写っていた姫、ワタナベ姫でした。
赤を基調としてフリルドレスを身に纏い、毒々しいほどのその美しさに、一瞬ワカッテマスは目を奪われました。
ワタナベ姫はスカートの裾をちょいと持ち上げ、恭しくおじきします。
从'ー'从「わたくし、ワタナベと申します〜。本日はお招き頂きありがとうございます〜」
( <●><●>)「イエ、美しい方をお呼びするのは当然のことですので……」
从'ー'从「うふふ〜お上手ですね〜」
カラカラと、鈴の音のように笑う彼女は、とても愛らしい姿をしておりました。
ビロード王子もそれを影から眺めておりました。
彡*><)(可愛い……)
- 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 21:27:10.08 ID:OfZ/RkE00
-
ワカッテマスはワタナベ姫に近付くと、手をとり微笑みました。
ワタナベ姫もその笑みに返すようににっこりと微笑みます。
( <●><●>)「よろしければ、私と一曲踊っていただけませんか?」
从'ー'从「よろこんで」
それから、ワカッテマスとワタナベは手を取り合って回りはじめます。
それは周りが見惚れてしまうような、美しい踊りでした。
夢のように幻想的で、誰がこの少年を平凡などと言い出したのか、不思議に思えてくるようでした。
会場に来ていた者たちは皆その踊りに目を奪われ、ビロード王子もそれをただ羨ましそうに見ています。
彡 ><)(うまいんです……流石はワカッテマスなんです……)
彡 ><)(それに比べて僕はなんですか……怖いからって友達に全て押し付けて……)
从'ー'从「王子はとても踊りが上手ですね〜リードがうまいですよぉ」
( <●><●>)「いいえ、貴女も相当お上手ですよ」
从'ー'从「うふふふ〜」
彡 ><)「……………」
- 102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 21:31:50.34 ID:OfZ/RkE00
-
彡 ><)(前からわかっていたんです……僕よりもワカッテマスの方が王子に相応しいって)
彡 ><)(ワカッテマスのほうが、良い国を作れるって……)
( ><)ノ彡 ポイッ
二人の楽しそうな姿を見て、ビロード王子は静かにその場を去りました。
( <●><●>)(? 王子がいない…?)
ワカッテマスがそれに気が付いたのは、ワタナベ姫と一曲踊り終わった後のことでした。
この人ごみの中でも、きちんとどこにいるか見分けられるように彼の頭に黄色の羽が
ついた帽子を被せておいたというのに
今辺りを見回すとどこにもその姿がありませんでした。
ワカッテマスは、焦りました。
从'ー'从「どうしたんですかぁ〜?」
(;<●><●>)「あ、いえ……」
- 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 21:39:31.03 ID:OfZ/RkE00
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从'ー'从「王子?」
( <●><●>)「………ちょっと失礼」
そう言って、ワカッテマスも会場から姿を消しました。
王と王妃が何か言いたげでしたが、彼らも自分の本当の息子がその場にいないことに気が付いたのでしょう。
すぐに近くにいた従者に何か言いつけているのを、視界の端で捕らえました。
( <●><●>)(どこにいったんですか……)
城内を駆け回って、ワカッテマスはビロード王子を探しましたが、彼の姿は何処にも有りません。
まさか外に出たのでは、と思いましたが、窓の向こうに彼の頭を見つけたとき
それは杞憂だと知りました。
(;<●><●>)「王子」
( ><)「あ、ワカッテマス」
(*‘ω‘ *) 「にゃーぽっぽ」
見つけたとき、彼は腕に一匹の子猫を抱いていました。
その子猫の小さな体は、鳥にでも襲われたのか、ところどころ毛が抜けてボロボロになっています。
( <●><●>)「何をしているのですか」
- 111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 21:43:28.90 ID:OfZ/RkE00
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( ><)「猫が怪我していたので手当てしてあげようかと思って」
(*‘ω‘ *) 「んにゃ」
( <●><●>)「そういうことを言ってるんじゃありません。王子はどうも私の言ってることが理解できないようですね」
イラついたように、ワカッテマスはビロード王子に近付きました。
しかし、それと同時にビロード王子もワカッテマスから離れます。
二人の距離がちぢまることはなく、ワカッテマスのイラつきはさらに増えました。
( <●><●>)「なぜ逃げるんですか」
( ><)「わかんないんですか」
( <●><●>)「はい」
( ><)「僕はねワカッテマス、君に王位を譲ろうと思ってるんです」
- 115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 21:48:22.69 ID:OfZ/RkE00
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その言葉に、ワカッテマスは怒りを露に、一気にビロード王子へと掴みかかりました。
普段無表情な彼にしては珍しく、額に青筋を立てて怒っていました。
(#<●><●>)「バカなことを言わないで下さい!私はそんなものいりません」
(;><)「いや、そんなものって君……」
(#<●><●>)「私の望みは王…ビロード、君にこの国を繁栄させて欲しい、それだけですよ」
その言葉に、ビロードはどこか困ったような、笑みをワカッテマスに向けました。
胸の中で、子猫も困ったように鳴きます。
( ><)「……僕より君の方がうまくやれますよ?」
( <●><●>)「そんなことはわかってます」
(*‘ω‘ *) 「ングルニャーぽっぽ?」
( ><)「相変わらずの自信家なんです」
- 119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 21:56:32.63 ID:OfZ/RkE00
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( <●><●>)「……会場に戻りましょう、こんな案を考えた私がおかしかったのかもしれません」
ワカッテマスはきていた正装のバッチをとると、それをビロードに手渡しました。
そのバッチには王家の紋章が刻まれています。
しかしビロードはそれを受け取ろうとはしませんでした。
( ><)「いりません」
( <●><●>)「ビロード!」
( ><)「ワカッテマス、僕、前にも話したことあるんですけど、王様になんてなりたくないんですよ」
( <●><●>)「…………」
( ><)「お姉ちゃん達の気持ち、本当は僕にもわかるんです。
何か好きなことをして生きたいって気持ちが、僕にもわかる」
( <●><●>)「ビロード、しかし君がいなくなったらこの国は」
( ><)「ワカッテマスなら、きっと大丈夫ですよ」
- 122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:01:18.39 ID:OfZ/RkE00
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その言葉に、ワカッテマスは何も答えませんでした。
ワカッテマスは知っていたのです、彼は昔から一度決めるとやたら頑固な性格をしているということに。
きっと、ビロードはもう王子になるつもりはないのでしょう。
( ><)「疲れたんです。暗殺されそうになったり、勉強は楽しかったけど
僕は本で学ぶより実際に見て知りたい。
だから」
(*‘ω‘ *) 「んにゃ?」
(;<●><●>)「ビロッ……!」
( ><)「ばいばい、なんです」
ワカッテマスが止めようとした手は虚しく空を切り、ビロードの体は傾き、窓から落ちた。
- 125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:04:59.24 ID:OfZ/RkE00
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(;<●><●>)「ビロォオオドーーー!」
暗闇の中に、ワカッテマスの声だけが木霊したが、ビロードの声が返ってくることはなかった。
急いでワカッテマスは警備の者を呼び………
「何を書いてるの?」
そこで、私は筆を止めた。
首にしなやかな女の腕が巻きついてきたので、私はその腕を払いのけた。
- 126 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:10:24.26 ID:OfZ/RkE00
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( <●><●>)「…あまりなれなれしく触らないで下さい」
从'ー'从「ふええ〜酷いよぉ〜 ビロードお・う」
ふふっと、可愛らしく笑う女は、今の私の妃である。
会った頃よりさらに美しさを身に着けた彼女は"ビロード王"である私の、つまりこの国の王妃だ。
( <●><●>)「貴方が真実を知りたいというから、こうして書いているんでしょうに」
从'ー'从「こんな風に、小説風にしてくれるだなんて優しい夫を持って幸せ〜〜」
( <●><●>)「まだ完成していません、さっさとこの部屋から出て行ってください」
そういって私は彼女をこの部屋から追い出そうとした。
数年前、彼とよく勉強するのに使っていたこの秘密の部屋から。
しかしそれを彼女は良しとしなかった。
从'ー'从「いやぁ」
( <●><●>)「は?」
从'ー'从「だって〜それ、なんか全然正しくないでしょぉ?」
にっこりと、あの頃と変わらない笑顔のまま、王妃であるワタナベは私に迫ってくる。
豊満な胸を私の背に押し付けるようにして、甘い吐息を耳元に吹きかけた。
- 130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:15:40.71 ID:OfZ/RkE00
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( <●><●>)「……………」
从'ー'从「ねぇ、王様、私知ってるの〜、あの時実は追いかけてたから、ぜぇんぶ見てたんだあ」
ちゅ、と音を立てるようにして、彼女は私の耳に吸い付いてきた。
私は何も答えず、ただ黙々と筆を動かしている。
その動きを止めるように、彼女が手を伸ばしてきた。
从'ー'从「ねぇ、本当はさ、王様が突き落としたんでしょう?」
私は何も答えない。
从'ー'从「知ってるのんだぁ〜〜、私、こう見えてもビロード王子のこと色々調べてたから
最初からわかってたの〜」
( <●><●>)「………そうですか」
从'ー'从「優柔不断なあの王子様が、自分で飛び降りるわけ無いモンね」
笑ったその顔にはどこか毒がちりばめられている。
- 138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:29:38.62 ID:OfZ/RkE00
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ベルトの辺りで手が止まりカチャカチャと軽い金属音と共に外される。
細く長い手が下着の中へと入り込む。
从'ー'从「ねぇ、王さまぁ? 本当のビロード王子は、一体何処にいったのかな?
サービスするから教えてよ〜」
( <●><●>)「私は娼婦を妻に娶った覚えはありませんが」
从'ー'从「妻としてのサービスじゃない〜」
後ろから覗き込むようにして、ワタナベは私に口付けてくる。
その唇は甘い色香を纏っていて、私の頭をくらりとさせた。
( <●><●>)「……彼は死にました」
从'ー'从「へぇ?」
( <●><●>)「この部屋の窓から落ちて、死にました」
从'ー'从「遺体は見つからなかったのにぃ?」
クスクスとあざけ笑うかのような声が耳に付く。
ああ、不快だ。私には今彼が王様になりたくなかった理由がわかる。
いや、もっと前からわかっていたのだ。
- 142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:37:34.59 ID:OfZ/RkE00
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ワタナベの手が、私の性器に触れかかったところで、強引にその手を引き抜いた。
耳元からは大きく舌打ちが響いた。
( <●><●>)「離してください。まだ業務があります。それに、仮に彼が生きていたとしても」
从'ー'从「ん〜?」
( <●><●>)「とっくに旅に出ているでしょう、彼の夢だったんですから」
その言葉に、ワタナベはにこりと笑った。
相変わらず、美しく、毒のある笑みだ。
彼女は机と椅子の間に入り込み、膝の上に座った。
私と正面に向かい合う形になる。
( <●><●>)「……まだ何か?」
从'ー'从「……このあいだねぇ、新しく召使が入ったの。年は王様と同じくらいかなぁ」
( <●><●>)「…………」
その言葉に、私は自分がひそかに動揺したのがわかる。
从'ー'从「足を引きずっててね、昔の後遺症らしいんだけど……まあそれはいいの。
問題は
にゃーぽっぽって鳴く、猫を連れてるの、その子」
- 148 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:46:09.01 ID:OfZ/RkE00
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ガタンッ!
从;'ー'从「きゃっ」
私は勢い良く立ち上がった
ワタナベが尻から落ち、恨みがましい目でこっちを睨んできたが、そんなこと知ったことではない。
すぐさま部屋から出ようと思ったのに、足をつかまれ無様にもすっころんだ。
从'ー'从「どこ行くの〜?」
( <●><●>)「離しなさい」
从'ー'从「いや〜、えへへ、話は最後まで聞いてよ、旦那様?」
( <●><●>)「お断りします」
从'ー'从「これでも?」
そういってニヤリと笑い、ワタナベが私の喉に小さなナイフを突きつけた。
小さくても、それを真横に引けば喉を引き裂くくらいの威力はあるだろう。
内心舌打ちをしたい気持ちで、私は彼女を見下ろした。
从'ー'从「なぁんにも言わないの?」
( <●><●>)「…………」
- 151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:49:44.51 ID:OfZ/RkE00
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从'ー'从「つまんないなぁ、せっかく王様の断末魔の悲鳴が聞けると思ったのに」
( <●><●>)「……後悔しますよ」
从'ー'从「王様があぁ? うふふ、私はただモララー国の王子に頼まれただけだもん
これが終われば愛しのモララー王子と結婚できるのよ? しないしない〜」
欠伸でもしそうな表情で彼女は私をねめつけた。
その表情はどこか夢見る少女のようであり、陰惨な殺人者のようでもあった
が、油断しすぎている。
だから気づけなかったんだろう。
・・・・・・・・・・・
彼女の後ろにいる存在に
( <●><●>)「……このまま何もなければよいと思ってたのに、残念です」
从'ー'从「は?いきなり何……」
がっ
- 159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 22:56:40.53 ID:OfZ/RkE00
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「うぐっ!!」
醜く、くぐもった悲鳴を一声上げて、ワタナベは倒れた。
頭から赤黒い血を流した女に私はもう興味はなく、彼女の後ろに立っている彼に微笑を投げかけた。
( <●><●>)「……――お疲れ様です、ビロード」
( 。><)「ワカッテマスくん……僕……僕……」
涙を浮かべる彼の足元には、一匹の猫。
その猫ももう子猫ではなく、立派な成猫として、足元にマーキングするように頭をこすりつけていた。
(*‘ω‘ *) 「んにゃーぽっぽ!」
( ><)「僕……は……」
( <●><●>)「悲しむ必要なんてありませんよ、これは全部、最初から決めていたことでしょう」
にっこりと微笑みかけて、頭をなでながら彼を優しく諭すが、それでも感触が忘れられないのか
彼は震える手で自身を抱きしめていた。
- 165 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 23:04:47.75 ID:OfZ/RkE00
-
( 。><)「僕……人を………」
( <●><●>)「悲しいのはわかってます、でも、これもより良い国づくりのためですよ」
微笑んで、下にいる猫を抱き上げた。
ビロード以外にはなつかない猫は私に爪を立ててきたが、逃げ出そうとはしなかった。
本能的に自分より強い者だとわかっているからかもしれない。
( <●><●>)「私には、ビロードに良い国を作ってもらいたいんです。昔から言っていたでしょう」
( ><)「はい……」
そう、私たちは幼馴染
昔から自らの夢を語り合っていた。
ビロードは旅人に、そして私は………。
ビロードの夢は、本の少しの間だけど確かに叶ったはず
だから次は私の番だ。
猫を床に下ろして、再び彼に微笑みかける。
ビロードはもう何も言わなかった。
- 170 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 23:10:55.69 ID:OfZ/RkE00
-
( <●><●>)「私は君の影武者でいいんです。 あの時から、君の影武者になって生きると決めました。
だから君は私の傍で、邪魔者を排除して国を動かしてください」
( <●><●>)「そうして、もっともっと、この国を繁栄させていきましょう?」
手を伸ばすと、ビロードは泣きそうな声ではいと答えた。
私はその答えに満足すると、警備の者を大声で呼ぶ。
( <●><●>)「おおいい!!誰か! 誰か来てくれ!!」
呼ぶとすぐに他の召使や、警備の者が走ってきた。
「どうされましたか!」
( <●><●>)「妻が、妻が殺されているんだ」
「えぇ!?」「一体どうして!?」
( <●><●>)「わからん、すぐに犯人を探し出せ!」
- 172 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 23:16:52.29 ID:OfZ/RkE00
-
「は!」
「ちなみに、ビロード王!その隣の使用人は…?」
その問いに私は笑って肩に手を乗せた。
( <●><●>)「ああ、彼はこの部屋に食事を運んでくれる予定だったんだ。私と一緒に部屋に入ったんだが。
妻を失ったショックで倒れそうなところを支えてくれたんだよ、なぁ?」
( ><)「え、あ……はい」
その言葉に、警備は不審そうな顔をしたが、"国王"である私に逆らうはずも無い。
私が犯人を捜すように命令すると、すぐに走っていってしまった。
(*‘ω‘ *) 「んにゃぁー」
残されたのは、私と、ビロードと、猫だけだ。
( ><)「どうして犯人を捜させるんですか…?」
( <●><●>)「あの女はモララー国に頼まれたといってましたからね。罪を暴けば
隣国は消え、この国はさらに強大になるでしょう?」
そういうと、ビロードは悲しそうな顔をしたが、私がそれに答えることはなかった。
- 173 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/15(木) 23:18:34.20 ID:OfZ/RkE00
-
*
やがて、その国は世界で最も大きな国となった。
しかし、その国の裏側は誰も知らない。
知るはずも無い。
それはとある王国のお話。
二人の王と、一匹の猫だけが真実を知っている。
とある、王国のお話。
終わり