第二話
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:00:57.58 ID:DulEj+kI0
〜前回までのあらすじ〜



( ^ω^)「おっすオラブーン、高卒ニートの素敵なナイスガイさ」

( ^ω^)「体脂肪率? おっとそいつは言えねぇな」

( ^ω^)「まあそれはさておき、
僕の両親は売れない骨董屋を経営していたお」

( ^ω^)「まあ正直骨董とか全然興味ないですけど。
今時売れねーよ、あんなガラクタ」

( ^ω^)「だがある日、高校卒業してからと言うものろくに働かずに親のスネかじって
楽しいニート生活を満喫していた僕にもピンチが訪れたお」

( ^ω^)「両親が相次いでお亡くなりになられましたお。なんてこったい」

( ^ω^)「そんな訳で僕は仕方なく両親の跡をついで骨董屋をやっていましたお」

( ^ω^)「ところがそんなgdgdな毎日はある日突然終わりを告げましたお」


2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:02:10.06 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「ξ゚听)ξツンって言う謎の女が僕の店にやってきて、
しかもそのツンを追ってきた( ^Д^)プギャーって奴と、
アシモもびっくりのでっかいからくり人形で戦い始めましたお」

( ^ω^)「プギャーの人形、爆弾野朗テオゴーチェによりツンはピンチに陥りましたお
しかし! そんな時に颯爽と現れた正義のヒーローブーン様は、
何故か僕の店の開かずの倉庫に隠されていた人形、
あるるかんを華麗に操りツンのピンチを救いましたお」

ξ゚听)ξ「…なんかあんたの都合よく脚色されてない?」

( ^ω^)「あーあー、聞こえないー♪」


( ^ω^)「僕の大活躍により戦いは終わりましたお、
しかし激しい戦闘のおかげでボロボロになった僕のお店は当分休業になりましたお。
まあぶっちゃけ客なんかほとんど来ないから問題ないんですけど HAHAHA!!」


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:03:23.12 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「しかもツンは僕の店に押しかけてきて、奇妙な共同生活が始まりましたお」

( ^ω^)「それなんてエロゲ?」


( ^ω^)「そんな僕の格好いいからくりヒーロー活劇、第二話の始まり始まり。ですお」



――第二話


4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:04:47.57 ID:DulEj+kI0


車の通りもすっかり減った夜の道路を一台のトラックが走る。
車内には一組の男女。
ほとんど会話をする事もなく、ただ黙々と男がトラックを運転している。

女は暇を持て余していたのだろう、
不機嫌さを露骨に出したまま、倒したシートに横になっている。

不意に、ハンドルを握る男が沈黙を破った。


('A`)「…ねぇハインさん…起きてますか?」

そう言ったのは、さして特徴もない、いかにも暗そうな痩せた男だ。


从 ゚∀从「寝てる」

ハイン、と呼ばれた金髪の女は明らかに矛盾した返事をした。
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:06:15.90 ID:DulEj+kI0
('A`)「あの…明日の昼には例の家に着きますよ…」

从 ゚∀从「で?」

('A`)「…懸糸傀儡の準備しておいてくださいよ、
いつ戦闘になるかわかったもんじゃないですからね。
回収ついでに裏切り者の始末もして来いって社長に言われたじゃないですか」


从 ゚∀从「めんどくさい」

('A`)「いや…めんどくさいじゃなくて…」


从 ゚∀从「お前一人で行ってこいよ。オレは遠くで見てっからさ」

('A`)「…無茶言わないでくださいよ」

从 ゚∀从「大丈夫やれば出来るやれば出来る、気持ちの問題だよ」

('A`)「…棒読みで言われても説得力ありませんよ…」


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:07:40.78 ID:DulEj+kI0
从 ゚∀从「もっと熱くなれよ!」

('A`)(…もうやだ、他の人と組みたい)

从 ゚∀从「んだよノリわりーなお前」

('A`)「…とにかく頼みますよ。
僕は基本援護専門なんで、
ハインさんがいないとどうしようもないんですから」


从 ゚∀从「っせーな、そもそもなんでオレがプギャーの尻拭いしなきゃなんねーんだよ。
こんなめんどい仕事、ショボンにでもやらせりゃいいじゃねーかよ」

('A`)「ショボンさんは社長と一緒に別の懸糸傀儡の回収に行きましたよ」

从 ゚∀从「へー」


('A`)「だからこっちもさっさと仕事終わらせましょうよ」

从 ゚∀从「めんどくさい」


('A`)「…」
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:08:56.30 ID:DulEj+kI0
从 ゚∀从「あ! 良い事考えた、こうしようぜ。
お前がツンを引き付けて、その間にオレがトラックで店に突っ込んで例の懸糸傀儡…なんつったっけ?」

('A`)「…あるるかんですよ」

从 ゚∀从「そうそれそれ! あるるかん回収して俺だけ会社に帰る大作戦」

('A`)「僕は置き去りですか…そもそもツンがあるるかんを操ってたらどうするんですか」

从 ゚∀从「お前ごとトラックでデストロイ!」

('A`)「…殺す気ですか?」


从 ゚∀从「おいおい、会社の為の尊い犠牲になれるんだ、ありがたく思え」

('A`)「…作戦は僕が考えますよ」



从 ゚∀从「あ! じゃあお前をトラックの前に張り付けてそのまま突撃作戦ってのはどうよ?」

('A`)「…殺す気満々ですね、しかも意味不明ですし」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:10:25.02 ID:DulEj+kI0
――骨董屋



部屋の大時計が夜の十一時を知らせる音が部屋に鳴り響く。
外はすっかり暗くなり、ブーンの店兼住宅の周りは静まり返っている。
しかしブーンの家からは時折、キリキリとからくり仕掛けの歯車が噛み合う音が漏れていた。


ξ゚听)ξ「じゃあ今教えた通りにやってみて」

(;^ω^)「こ…こうかお?」

ブーンの十指にはそれぞれ一個ずつ、計十個の銀色の輪が嵌められている。
その銀の指輪からはピアノ線のように細い糸が伸び、
その糸の先は店を襲撃した男、プギャーが操っていた懸糸傀儡”テオゴーチェ”に繋がっている。


ブーンはぎこちない指の動きで必死にテオゴーチェを操ろうとしている、
しかしブーンの意思とは裏腹に、テオゴーチェは見当違いな動作を繰り返すだけだ。



12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:11:41.89 ID:DulEj+kI0
ξ;゚听)ξ「全然違うわよ」

(;^ω^)「そ、そんなこと言われても無理なものは無理だお」


ξ゚听)ξ「…あんた運動音痴?」

( ^ω^)「自慢じゃないけど体育の成績は常に1か2だったお
しかも高校卒業してから今までろくに走った記憶がないお」

ξ#゚听)ξ「偉そうに言うな!」


ξ;゚听)ξ(予想以上に使えなさそうね…。 
もしテオゴーチェを操れるなら少し手伝ってもらおうかと思ったけど… 
これじゃあ足手まといもいいところだわ)

ξ゚听)ξ(…なんでこんな奴が操作の複雑なあるるかんの、
しかも発動する方法がわからないコランを発動出来たの? 
偶然? いや…、偶然で人形繰りが出来る訳ないわ)

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:13:11.06 ID:DulEj+kI0
ξ゚听)ξ「ねえ」

( ^ω^)「はい」

ξ゚听)ξ「コランやってみて」


( ^ω^)「え、コナン…?」

ξ゚听)ξ「あんたが昼間やったあれよ、
もう一回やって見せてくれないかしら」

( ^ω^)「ああ、あの黒い人形の必殺技みたいなやつかお?」

ξ゚听)ξ「そうそれよ、なんだ覚えてるじゃない」


( ^ω^)「あれならできるお」

ξ゚听)ξ「…操作わかるの?」

( ^ω^)「任せるお!」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:14:29.69 ID:DulEj+kI0
ξ゚听)ξ「じゃあやってみせて。はいこれ、あるるかんの指輪」

そう言うと、ツンが床に置かれている大きなスーツケースから十個の指輪を取り出した。

( ^ω^)「ところでそのスーツケースは確か…」


ξ゚听)ξ「あら気付いた? 
昼に壊れた私の懸糸傀儡を入れてたスーツケースよ。
今はあるるかんが入ってるわ。
それまで倉庫にあった木の箱じゃあるるかんを持ち運びできないしね」

そう言いながらツンはあるるかんの指輪をブーンに渡した。


16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:15:54.59 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)(うん…?)

その時ブーンは、テオゴーチェの指輪よりもあるるかんの指輪のが、
わずかにだが分厚いことに気が付いた。


( ^ω^)「まあいいかお。
じゃあやって見せるお、さっそく指に嵌めて…」

右手の親指から順に、慣れない手つきで指輪を嵌める。
ブーンはこの指輪が、さっきまで嵌めていたテオゴーチェの指輪よりも微かにだが重いと感じた。


( ^ω^)「こうカッコよくポーズを決めて」

そう言うとブーンは両手を交差させて構える。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:17:25.59 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「それから…」

( ^ω^)「……」


ξ゚听)ξ「どうしたの?」

(;^ω^)(…あれ?)

ξ゚听)ξ「遠慮しなくていいわよ、やってみせて」

(;^ω^)「……えーっと…その…」


(;^ω^)(あれ? なんで動かないんだお?)

ξ゚听)ξ「…?」


18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:19:07.54 ID:DulEj+kI0
ξ゚听)ξ「遠慮しなくていいわよ、やってみせて」

(;^ω^)「……えーっと…その…」

(;^ω^)(あれ? なんで動かないんだお?)


ξ゚听)ξ「…?」

(;^ω^)(昨日どうやったのか自分でもよく覚えてなかったお…。
あの時はなんだか手が勝手に動いたような…
もしかしてほんとに偶然だったのかお…?)


ξ゚听)ξ「どうしたのよ? あるるかんが変な動作するだけじゃない」

(;^ω^)(こ、このままでは恥ずかしいお…!)


19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:20:27.93 ID:DulEj+kI0
(;^ω^)(こ、こうなったら…誤魔化すしかないお!)


(;^ω^)「ど、どうやら今日は調子が悪いみたいだお!」

ξ;゚听)ξ「…? 調子とかあるの?」

(;^ω^)「そ、そうだお! だからまた今度やってみせるお」



(;^ω^)(お、大見得切ったからにはコ…コナン思い出さないと恥ずかしいお…)

ξ゚听)ξ「そ…そう、じゃあまた今度頼むわよ」


20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:22:08.81 ID:DulEj+kI0
(;^ω^)「ま、任せるお! そ、それと今日はもう遅いから僕は寝るお!」

ブーンが時計に目をやる。
もうすぐ夜の十二時に差し掛かるような時刻だった。


ξ゚听)ξ「まあそれもそうね。じゃあ私は少し用事があるから先に寝てて」

( ^ω^)「用事?」

ブーンがあるるかんの指輪を外しながら、ツンに問い掛ける。


ξ゚听)ξ「あるるかんの整備よ」

そう言ってツンはスーツケースの中からドライバーやニッパー、
その他ブーンにはよくわからない工具を取り出した。

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:23:41.12 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「あ、そう言えばプギャーあの後どうしたんだお?」

ふとブーンは昼間倉庫に風穴を開けた男、プギャーのことを思い出した。


ξ゚听)ξ「ああ、あいつなら縛り上げてトイレに放置したわ」

( ^ω^)「それだけで大丈夫なのかお? 
あいつは殺し屋みたいな会社の社員なんじゃないのかお」

ξ゚听)ξ「そうよ、けど問題ないわ、あいつ懸糸傀儡がなきゃ何も出来ないもの」


22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:25:00.11 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「そうなのかお?」

ξ゚听)ξ「ええ、あいつはテオゴーチェに頼りっきりで本人は弱いわよ。
しかも懸糸傀儡さえあれば人殺しなんて簡単だからって、ろくに訓練も積んでなかったわ」

( ^ω^)「確かに、生身で懸糸傀儡と戦っても勝てる気が全くしないお」


ξ゚听)ξ「あいつが幹部になれたのが奇跡みたいなもんよ。
私だって昼は不意を突かれたけど、正面から戦ったらあんな奴に負けないわ」

( ^ω^)「幹部…?」

ξ゚听)ξ「会社じゃ立場が上の連中ほど高性能な懸糸傀儡を与えられるのよ。
それで社長の次が幹部。何人いるかは私も知らないけどね」


23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:26:24.86 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「ツンも幹部だったのかお?」

ξ゚听)ξ「違うわ」


( ^ω^)「プギャーより人形繰りが上手なのにかお?」

ξ゚听)ξ「基本的に、昇格の基準は会社に対する忠誠心よ。
だからプギャーみたいな単純で使いやすい奴ほど高性能な懸糸傀儡をもらえるって寸法よ」

( ^ω^)「とんでもない会社だお」


24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:28:25.56 ID:DulEj+kI0
ξ゚听)ξ「そうよ。だから私は会社に嫌気がさして、
会社を抜けるついでに、あるるかんの所在を調べた資料を盗んでここに来たってわけよ」


( ^ω^)「…よく考えたら、資料にあったってことはつまり、
ここの住所は会社にバレバレだってことかお?」

ξ゚听)ξ「まあそうなるわね」

(;^ω^)「それって凄まじくマズいんじゃ…」

ξ゚听)ξ「もし来たら私が返り討ちにするから大丈夫よ」


(;^ω^)(……なんでこんな目に…
つか住所がバレるとか…気味が悪いお)



25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:30:07.24 ID:DulEj+kI0
ξ゚听)ξ「じゃあお休みなさい、明日から不便かけるけど私が会社潰すまでの辛抱だから我慢してね」

( ^ω^)「…あぁ、お休みだお」

そう言うとブーンは二階の自分の部屋に上って行った。
その後ろ姿は、今日一日の出来事だけで
一生分の疲れが溜まってしまったかのようにさえ見える程に疲れて見えた。



ξ゚听)ξ(ごめんなさい…、あなた自身は関係ないのに巻き込んでしまって)

ξ゚听)ξ(とにかく… 一日でも早く、会社を潰さないと!)






26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:31:46.10 ID:DulEj+kI0
――翌日 


ブーンの骨董店から程近い商店街の一角。
そこには一匹のカラフルなクマが歩いていた。

右手にはこれまたカラフルな風船をたくさん持ち、左手には大きな紙袋。
その紙袋の中にはぎっしりとチラシが詰まっているのが見える。


( ・(エ)・)「…」

当然、本物のクマではない、ただの着ぐるみだ。
道を行く子どもたちに風船を配り、紙袋の中のチラシを配っている。
そのチラシには『ストローサーカス coming soon』と書かれ、
華麗に空中ブランコをこなす男女やライオンを火の輪にくぐらせる猛獣使いの絵が華々しく踊っている。

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:33:14.69 ID:DulEj+kI0
ふと、クマの傍にいた小さな女の子が、咳のような音が聞こえるのに気が付いた。
そして、その音が自分の傍に立っているクマから発せられている事にも気が付いた。

( ・(エ)・)「……ゼヒ…ゼヒ… ゲホッ…」

「クマさんなんだか苦しそうだよー 大丈夫?」

クマが心配になった少女がクマに声をかける。


( ・(エ)・)「だ… 大丈夫だよお嬢ちゃん…」

クマが少女にしか聞こえないように
周りに聞こえない小さな声で少女の問いに答えた。
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:35:30.97 ID:DulEj+kI0
「ほんとに大丈夫ー? 苦しかったらお医者さん呼んでくるよー」

( ・(エ)・)「大丈夫だよ、クマさんはお嬢ちゃんが笑っているほうが嬉しいんだ」


「ほんとー?」

( ・(エ)・)「ああ、だから笑って、そうすればクマさんも苦しくなくなるよ」


「あはは クマさん変なの〜」

そう言うと、少女が笑いながらクマから去っていった。



( ・(エ)・)(少しはましになった…かな…)

少女が笑った途端。クマの咳はピタリと止まっていた。
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:36:58.52 ID:DulEj+kI0
――「”ゾナハ病”ですね」

「ゾナハ病…?」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:38:24.19 ID:DulEj+kI0
「はい、あなたはゾナハ病を罹患しています」 


「先生…なんですかそれ…?」

「正式名称は”他者の副交感神経系優位状態認識における生理機能影響症”。
最近になって突然発生した原因不明の奇病です。
記録によるとかつて中世ヨーロッパで一度だけ流行した事があり、
そしてそれが何故か、最近になって日本で流行し始めたのです」


「…ゼヒ それは…治るんですか…?」

「残念ながら…現在のところ、有効な治療法は発見されておりません。
なぜ発作が起きるのか、それすら未だ解明されていません」

「そう…ですか…」

34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:39:59.77 ID:DulEj+kI0
「ですが、症状を一時的に和らげることは可能です」

「ゲホッ… どうすれば…いいんですか…?」



「…それは”笑わせる”事です」


「笑わ…せる?」

「ええ。他者の副交感神経系優位状態…つまり他人が笑っている時に限り、
発作を抑えることが出来ます」

「…わかりました …ゼヒ…」




「とにかく笑わせることです。辛いですががんばって下さい、ギコさん」


(,;゚Д゚) 「はい…」


35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:41:32.77 ID:DulEj+kI0
――商店街


商店街の歩道を男女が歩いている。
それ自体はとても風景と溶け込んでいる、どこも違和感はないだろう。

しかし普通の歩行者とは違う点が一点だけあった。
それは、二人とも大きなスーツケースを持っている事だ。
男の方は特に辛そうで、まだ寒い時期だというのに額にはべっとりと汗が滲んでいる。
 
(;^ω^)「はあはあ…」


ξ゚听)ξ 「遅いわね、なんでこれくらい持てないのよ?」

(;^ω^)「そんなこと言われても… これ重すぎだお」

ξ゚听)ξ 「運動不足よ、あんたが持ってるあるるかんの方が軽いじゃない」


36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:43:29.08 ID:DulEj+kI0
ツンはそう言いながら自分の持つ、
ブーンの持つスーツケースより一回りも大きいスーツケースをブーンに見せ付けた。
中にはプギャーが使っていた懸糸傀儡、テオゴーチェが入っている。


(;^ω^)「そもそもなんで買い物にまで人形を持っていかなきゃいけないんだお」

ξ゚听)ξ「バカね、会社の連中がいつ襲ってくるともわからないじゃない。
あんた素手で懸糸傀儡に勝てるの?」

( ^ω^)「余裕で無理ですお」

ξ゚听)ξ「でしょ、じゃあさっさと買い物済ませて帰るわよ。」


(;^ω^)「つまり帰りは更に荷物が増えるのかお…」


――この時。
怪しい男がブーンたちを背後から尾行しているいることに、二人とも気付かなかった。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:45:46.81 ID:DulEj+kI0
('A`)「…」


('A`)(…ツンの奴が持ってるスーツケースの中身はプギャーのテオゴーチェだろうな…
…ツンの隣にいるデブは誰だ…? …骨董屋の人間か 
確かブーンつったけな、あいつツンの奴に協力してんのかよ)


ブーンたちの後方、人ごみに紛れてその男は歩いていた。

いかにも不審者と言った格好をした厚手のコートで口元まで隠しているその男は
まるで舐めるように前方を歩いている男女を尾行している。


ふと、男のポケットからブブブブとバイブレーションが鳴った。
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:47:46.33 ID:DulEj+kI0
ピッ
('A`)「…はい、もしもし」

男がブーンたちにバレないよう小声で応対する。
電話の向こうからはハインの声。


从 ゚∀从 『よおドクオ、ツンの奴は見つかったか?』

('A`)「…ええ 商店街を二人で歩いてますよ」

从 ゚∀从 『二人? ツンともう一人は誰だ?』


('A`)「…恐らくブーンって奴ですよ。あるるかんの隠されてた骨董屋の店主です」


42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:49:21.60 ID:DulEj+kI0
从 ゚∀从 『ふーん あ、道理で店に誰もいねーのか』

店に誰も居ない。
つまりツンの隣を歩いている男がブーンなのをドクオは確信した。


('A`)「…店にあるるかんはありましたか?」

从 ゚∀从『どこにもねーよ かわりにアホが縛られてたのは見つけた』

('A`)「…アホ? ああ、プギャーのことですか」



45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:50:35.00 ID:DulEj+kI0
――骨董屋


从 ゚∀从 「ピンポーン! 今さ、面白いからプギャーの奴亀甲縛りにしてみたんだけど見るか?」

(;^Д^)「ちょ、ハインさん痛いッス痛いッス マジ勘弁してくださいよ」


从#゚∀从 「うっせえ! 口答えするともっと過激に縛んぞ!」

(;^Д^)「アッー!」



('A`)『…』



('A`)「…いりませんよ。
それよりも用が済んだらさっさとこっちに来てくださいよ」

从 ゚∀从『わーったわーった。つーかツンがあるるかん持ってんのか?』


46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:52:06.40 ID:DulEj+kI0
('A`)「…いえ、隣の男が持ってますよ。ツンが持ってるのは恐らくテオゴーチェですね」

从 ゚∀从『ふーん、まあ同じようなもんだな』

('A`)「…とにかくプギャーを連れてこっちに来てください」


从 ゚∀从『なんならお前一人でやってもいいぞ』

('A`)「…懸糸傀儡はそっちのトラックの中に積んでますから無理ですよ」

从 ゚∀从『男なら拳一つで行って来い!』

('A`)「…電話切りますよ」

从 ゚∀从『わかったわかった。じゃあとりあえず今からそっちいくぜ』

('A`)「出来るだけ早く頼みますよ。…それじゃあまた後で合流しましょう」

从 ゚∀从『おう』

ドクオは気だるそうに電源を切り、それをポケットにしまった。
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:53:22.20 ID:DulEj+kI0
( ・(エ)・)「…」


( ^ω^)「あ、クマの着ぐるみだお!」

ふと、ブーンが歩道の先で風船を配るクマを見つけた。

ξ゚听)ξ「そう言えばもうすぐこの街でサーカスやるらしいわね。
まったく、世間は平和なものねぇ」

( ^ω^)「サーカスは大好きだお。子どもの頃、何度もお父さんに連れて行ってもらったお」


ξ゚听)ξ「へぇ奇遇ね、私も好きよ。けど私は大道芸のが好きかな」

( ^ω^)「大道芸って道端や公園でやってるようなやつかお」

ξ゚听)ξ「ええ、子どもの頃は大道芸人に憧れたものよ」

50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:54:40.14 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「可愛い夢じゃないかお」

ξ゚ー゚)ξ「…ありがとう。けど所詮は子どもの夢よ。
昔の私が今の私を見たらなんて言うかしらね」

( ^ω^)「あるるかんで大道芸をしたらいいじゃないかお。
こんな大きなからくり人形、誰も見たことないお。
きっと、ツンは大人気の大道芸人になれるお」

ξ゚ー゚)ξ「ふふ、それも面白そうね。…けど無理よ」


( ^ω^)「どうしてだお?」

ξ゚ー゚)ξ「所詮、懸糸傀儡は人殺しの道具よ。それに、私の手は綺麗な手じゃないもの」

( ^ω^)「…どういう意味だお?」


ξ゚ー゚)ξ「私は人殺しってことよ、人殺しのクラウンなんて誰も笑ってくれないわよ」

ブーンの問い掛けに、ツンはあっさりとそう答えた。

52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:56:25.52 ID:DulEj+kI0
(;^ω^)「お…」

ξ゚听)ξ「ごめんなさい、変な話になっちゃたわね。
さあ早く買い物を済ませて帰るわよ」

(;^ω^)「わかったお…」

(;^ω^)(…ツン、一瞬だけ、もの凄い暗い顔をしたお)



それからブーンたちは食料品と、ツンが工具の類を買い揃え、
時計の針が三時に差し掛かる頃、帰路についた。

( ^ω^)「工具は人形の整備に使うのかお?」

ξ゚听)ξ「そうよ。あるるかんはずっと倉庫に眠ってたから所々傷んでたわ、
ちゃんと整備しないといざって時に動かなくなっちゃうわよ」

( ^ω^)「なるほどだお」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:57:39.94 ID:DulEj+kI0
ξ゚听)ξ「さあ早く帰るわよ。
家に置いてきたプギャーのことも気になるし」

( ^ω^)「そういえば、あいつこの後どうするんだお?」

ξ゚听)ξ「う〜ん… ずっと置いてても邪魔だし、
縛ったまま警察署の前に置いておこうかしら」


ξ゚听)ξ「まあなんにせよ、帰ってから決めましょう。
これからの事もしっかり考えておきたいし」

( ^ω^)「わかった…お?」

ふと、ブーンの足が止まった。
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 22:59:38.14 ID:DulEj+kI0
ξ゚听)ξ「どうしたの?」

( ^ω^)「あそこのトラック… なんか様子がおかしいお」

ブーンがそう言い、自分の正面に停車しているトラックを指差す。
そのトラックは運転席をこちらに向ける形で停まっていた。
曇りガラスなのだろう、運転席の様子はこちらからは全く見えない。


ξ゚听)ξ「…ブーン」

( ^ω^)「…なんだお?」


ξ;゚听)ξ「逃げて!」

(;^ω^)「え…!?」



ツンがそう言った直後、トラックは突然エンジンをかけ、動き出した。
トラックは強引に歩道に乗り上げ、まっすぐと、ブーンたちを狙って走ってくる。
そして


――ドン。


嫌な音が、まだ距離があるブーンたちにも聞こえた。
59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:00:50.71 ID:DulEj+kI0
轢いた。

トラックが、ブーンたちの先を歩いていた通行人を。
まるで障害物のように、なんの躊躇いもなく。

血が、臓物が歩道に撒き散る。
その傍にある街路樹までもが、赤と黒のデコレーションで彩られた。


(;゚ω゚)「う、うわああああぁぁぁぁああああああああああ!!!???」

ξ;゚听)ξ「ブーン! 早くあるるかんを渡して!」

ツンがブーンにそう言った。
しかし、ブーンは恐怖のあまりそのまま一人、トラックの反対方向に全速力で逃げ出してしまった。

62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:02:18.58 ID:DulEj+kI0
ξ;゚听)ξ「逃げる前にあるるかんを置いていきなさいよ! ああもう!」


ドン。

また、ツンの耳に嫌な音が届く。
何度も、何度も、何度も。
そしてその音が鳴る度に、通行人が一人、また一人とトラックに轢かれる。


ξ#゚听)ξ「あんな奴にあるるかん持たせたのが失敗だったわ。
 もういい! 行け、テオゴーチェ!」

ツンが自身の持つスーツケースを開く。
そして素早く十指に指輪を嵌め、グンと糸を引き上げた。
その動きに合わせるように、バンっ!と跳ねるようにスーツケースが開き、
中から爆弾ボールを駆使するピエロのような懸糸傀儡、テオゴーチェが姿を現した。
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:03:32.75 ID:DulEj+kI0
从 ゚∀从「お、あいつがテオゴーチェってことはブーンって奴があるるかん持ってんのか、
こりゃ面白そうだな。なあプギャー」

ハンドルを握るハインが楽しそうに語りかける。


(;^Д^) 「ちょ… 関係ない人間こんなに殺していいんスか?」

从 ゚∀从「まあ”細かい”ことは気にすんなよ」

(;^Д^) 「は、はぁ…」


从 ゚∀从「おいプギャー」

(;^Д^) 「はい…?」

从 ゚∀从「運転代われ」

(;^Д^)「…へ?」


ハインはそう言うやいなや、パッとハンドルから手を離し、
そのままトラックの後ろの方へと行ってしまった。
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:05:20.46 ID:DulEj+kI0
(;^Д^) 「ちょ… ハインさーん!」

助手席に座るプギャー慌ててハンドルを掴む。
ちょうどその時である。


(;^Д^) 「…あれ?」

前を向いたプギャーの目にカラフルな物体が大量に飛び込んできた。

( ^Д^) 「あ、これって俺のテオゴーチェのボールじゃ…」


(;^Д^)「って…うわあああああああああああああああああああああああああああああああ」

プギャーが逃げる暇などなく、
テオゴーチェの放ったボールがトラックの運転席に直撃した。
その凄まじい爆発によりトラックは進行方向をずらし、
激しい衝突音と共に歩道の脇の街路樹に激突した。


67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:06:52.62 ID:DulEj+kI0
ξ゚听)ξ「…やったかしら?」


ツンが黒煙を上げるトラックに近付こうとしたその時。
突然、トラックの後部にある荷台が跳ね飛んだ。
そしてなにか巨大な影が道路に飛び出し、ツンの前に立ちはだかった。


ξ;゚听)ξ「っ… あんたは…」


从#゚∀从「なかなか派手にやってくれたじゃんツンちゃん。
ハインちゃん少し驚いちゃったよ」

ハインが懸糸傀儡の体に乗りながらツンを睨み付ける。


ハインの乗る懸糸傀儡はかなりの大型だった。
ピエロのようなカラフルな服、二股に分かれた大きな帽子の先にはそれぞれ小さめの斧が付けられている。
そして派手で不気味なマスクをしたその懸糸傀儡の両足は巨大な木製の車輪になっており、
今もガリガリと地面を削るように回転している。
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:08:16.31 ID:DulEj+kI0
ξ;゚听)ξ「ハイン、それに”グリモルディ”まで…」


从#゚∀从「そういやツンちゃん、会社じゃ私に一回も勝ったことなかったわよねぇ」

ハインが愉快なことを思い出したように笑いだす。
しかし目は笑っていない、そしてその笑い声にははっきりと怒りが混じっていた。


从 ゚∀从「しかも虎の子のあるるかんは間抜けなデブが持って行っちゃたし、
あんたもとことんついてないわねぇ」

ξ;゚听)ξ(くっ…)
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:09:51.01 ID:DulEj+kI0
从 ゚∀从「覚悟した方がいいよ。
私キレると手加減できないからさぁ、
あんたの体中斬りつけてからゆっくりと時間かけて、
動けなくなったあんたの全身を万遍なく轢いてやる予定なんだよね」

ハインの口がニヤぁと吊りあがった。


ξ;゚听)ξ(かなりマズいわね…。 
グリモルディは会社の懸糸傀儡の中でも最速クラス、
しかもあるるかんはいま手元に無いし…)

ツンの頬を汗が流れ、地面に滴り落ちた。
テオゴーチェを繰る十の指輪も微かに汗ばんできたのが、自分でもわかる。


76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:11:07.82 ID:DulEj+kI0
(;^ω^)「あああああああ… ど、どうすればいいんだお…」

ブーンはひたすら駆けた。

目の前で人が轢き殺されるのを見て、人が死ぬ瞬間を初めて見てしまった恐怖に刈られて。
ツンを一人置いて、あまつさえもあるるかんを持ったまま走って逃げてしまった。
もうツンの姿は見えない所まで来た。


まるで肺に水が入ってしまったのかと思うほど息苦しい。
心臓が自分の耳に届くほどに激しく鼓動している。
そして、取り返しの付かない事をしてしまった自責の念が心に重く圧し掛かる。

(;^ω^)「ととと、とにかく早くツンにあるるかんを渡さないと…」
78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:12:44.72 ID:DulEj+kI0
今は後悔すべき時ではない。
一刻も早く、ツンにあるるかんを届けなければいけない。
そう思い、いま走った道を戻ろうとしたその時。


( ・(エ)・) 「おい!」

(;゚ω゚)「うわあああぁぁぁぁああ!!!?? ままま、また人形かお!!!????」

後ろから声を掛けられ、振り向いたそこに居たのは、先ほどブーンが見かけたクマの着ぐるみであった。
しかしブーンは不意を突かれたあまり、一瞬錯乱してしまった。


( ・(エ)・) 「うわぁ!? なんだよビックリしたじゃねーか!」

(;゚ω゚)「ビ、ビックリしたのはこっちだお!!う、後ろにクマがいたら誰でも驚くお!!!」
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:14:08.92 ID:DulEj+kI0
( ・(エ)・)「そうか… そりゃすまんな」


(;^ω^)「そ、それよりなんの用だお!? いま僕は急いであっち行かなきゃ行けないんだお!」

( ・(エ)・)「あっちはあぶねーぞ。
なんでもトラックが歩道に乗り上げて人が轢き殺されたらしいぜ、テロリストとかかもしんねーぞ」

(;^ω^)「知り合いが向こうにいるんだお、だから僕は早く行かなきゃならないんだお!」

( ・(エ)・)「もしかしてそっちに悪い奴もいるのか?」

(;^ω^)「そうだお! だからあんたも早く逃げたほうがいいお!」


( ・(エ)・)「…そいつらが轢いたのか?」
82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:16:22.09 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「そうだお」

( ・(エ)・)「じゃあなおさら放っとけねぇな オレも行くぜ」

(;^ω^)「…なんでそうなるんだお?」



( ・(エ)・)「子どもが泣てた。おかあさんが轢かれたって、一人で泣いてた」

( ^ω^)「……」

( ・(エ)・)「理由はそれだけだ、さあ案内してくれ」


( ^ω^)「…向こうは危ないお」

( ・(エ)・)「大丈夫だ、オレこう見えても拳法やってたんだぜ」

( ^ω^)「その外見で言われても…」

( ・(エ)・)「とにかくよろしく頼むぜ!」
84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:17:58.87 ID:DulEj+kI0
( ^ω^)「…本気かお? 死ぬかも知れないんだお」

( ・(エ)・)「オレはいつだって本気さ、さあ案内してくれ」


( ^ω^)「……わかったお、けど危ないから気をつけてくれお」

( ・(エ)・)「おう!」

( ^ω^)「ところであんたの名前は?」


( ・(エ)・)「オレの名前はギコだ、さあ行くぜ!」

( ^ω^)「僕の名前はブーンだお、…奇妙な縁だけどよろしく頼むお」


85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:19:16.19 ID:DulEj+kI0
ブーンとギコが先ほどブーンが走ってきた方へ向け駆け出す。
まさにその時。


――パン

乾いた銃声がどこからともなく響き、二人の前の地面が弾けた。

(;^ω^)「っ!?」

( ・(エ)・)「銃声!? どっからだ!?」

ギコが慌てて構える。
なるほど確かに本格的な拳法の構えだ。
クマの着ぐるみが拳法の構えをするその姿は不気味そのものだが。


( ・(エ)・)「…ってめぇか!」

ギコが歩道の先に向けて怒鳴りつけた。
そこにはコートを羽織った男が一人、こちらを向いて立っている。


('A`)「……」
89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:20:37.10 ID:DulEj+kI0
( ・(エ)・)「お前がやったのか!?」

更にギコが怒鳴りつける。
しかし男は上の空といった様子で、ぼーっとこちらを眺めている。

( ・(エ)・)「お前が… 子どもを泣かしたのか!!」


('A`)「…」

( ・(エ)・)「なんとか言えゴルァ!!!」

(;^ω^)「ちょっ… 不用意に近付いたら危ないお!」

ギコはブーンの制止も聞かずに、何も答えない男に向けて駆け出した。
かなり速い、着ぐるみを着ているとは思えないほどの速さだ。

しかし、ちょうどブーンと男との半分ぐらいまで走った頃だろう、
ピタリとギコの動きは止まった。
91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:22:45.68 ID:DulEj+kI0
(;^ω^)「? …どうしたんだお!?」

ブーンが様子のおかしいギコに近付こうとした時。
ギコが大声を上げた。

( ・(エ)・)「来るな!!!」

(;^ω^)「え!?」


( ・(エ)・)「っ…なんだよ…それ」

ギコが驚いた理由。
それは男の後ろに立っている物のせいだ。


('A`)「……」


キリキリキリキリ。

歯車が噛み合う音が不気味に鳴りあう。
それがキリキリとからくり仕掛けの音を上げる。

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:25:27.99 ID:DulEj+kI0
( ・(エ)・)「っ…んだよそれ! 中に人間でも入ってんのか!?」

('A`)「……」

ギコの問い掛けに男は答えない。
その代わりとでも言うつもりなのだろうか。
男はぶらんと垂らした自分の両腕をまっすぐ水平に、ギコに向けて伸ばす。


(;^ω^)(あいつも人形使いかお!? …だとしたら最悪だお!)

(;^ω^)「ギコ! 早く逃げるお!」

( ・(エ)・)「ゴルァ…」


ギコに向けて走り出したため、ブーンにも男の後ろにある何かが見え始めた。

(;^ω^)(なんだお…あれも人形なのかお…!?)

96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:28:02.03 ID:DulEj+kI0
男の後ろにあるそれ。
それはあるるかんやテオゴーチェよりも更に奇妙な風貌をしていた。
インカ風のとでも言うのだろうか、奇妙な仮面から手足が生えたような姿をしている。
その腰には巨大なホルスター、そしてその両手には巨大な拳銃。
拳銃はこちらを向けて構えられている。

('A`)「……死ねよ。」

男がギコに向けた指の形を変え始める。
指を”ピストル”の形にしたのだ。
指に嵌められた指輪が後ろの懸糸傀儡に繋がっている。

( ・(エ)・)「っ…!?」


男が”ピストル”の形をした両手をギコに向け、標準を合わせる。
そしてそれに連動するように、男の懸糸傀儡の拳銃の標準もギコに合わせ向けられた。

男の指には銀色の指輪。
間違いない、男は人形使いだ。
98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:29:57.20 ID:DulEj+kI0
(;^ω^)(…くっ こうなったら…
昨日は全然使いこなせなかったけど… やるしかないお!)

ブーンがそれまでずっと重い思いをして運んできたスーツケースを地面に寝かせる。
そして真鍮製の留め具を外し、中に見える十個の指輪を一斉に嵌めた。


( ^ω^)(僕にだって… やればきっと出来るお!)

練習の時ツンがやって見せたように、思いっきり、ぐんと指輪を引く。
十個の銀色の指輪が日光に反射し、美しく光り輝いた。

バンとスーツケースを跳ね上げ、キリキリと音を出しながら。
漆黒を纏ったからくり仕掛けの道化師が飛びあがった。

( ^ω^)「行くお…!! あるるかん!!!」






( ^ω^)と不思議なからくり奇譚のようです つづく
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/30(金) 23:31:09.69 ID:DulEj+kI0
これで第二話は終了です。
暖かい支援、ありがとうございました。
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