第一話
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:00:18.03 ID:C1BdcEuy0



――第一話


( ´ω`)「はぁ・・」

今日もまた憂鬱な一日が始まる、そう思うとブーンの口からは自然とため息が漏れた。

かび臭く、小さな店内には店主のブーン以外の人影は見えない、
古びた木のカウンターからブーンが見渡す風景もまた同じ
かび臭いからくり時計や値打ちもわからない骨董品ばかりだ。

( ´ω`)「親の仕事なんか継ぐんじゃなかったお・・」

相次いで死別した両親の仕事を継ぐ、それぐらいしか高卒ニートがこの不況の世で働く術はなかった。
だが、いざ継いで見たらこれだ。
ブーンの仕事と言えば、かび臭いからくり時計を拭き、
商品なのか粗大ゴミなのかすらわからない骨董品の埃を取る。
そして誰も来ない店のカウンターでため息を吐くぐらいなものだ。

2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:01:41.49 ID:C1BdcEuy0
高校を卒業して1年。
ほんの数ヶ月前まで過ごしたニートとしての気楽な毎日を思い返し、
ブーンはまた大きくため息を吐いた。

( ^ω^)「いっそここの骨董品全部ヤフオクに出した方が賢いんじゃ・・」
ギシギシと軋む古びたカウンターに頬杖を付いたまま、
ブーンは何気なく手元に置いたからくり時計を眺める。

( ^ω^)「これだって売れば数万円するかもしれないお、それならここで埃を被らすよりもいっそ・・・」
手っ取り早く売ってしまおう。
そしてこのかび臭い店も売り飛ばし、後はフリーターとして自由気ままに暮らそう。
そうブーンは考え始めた。


カチッカチッと店内の古びた木製の大時計が寂れた音を響かせる。
それから少しして、その大時計からボーンボーンと定時を知らせる音がかび臭い店内に響き渡った。


3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:02:54.69 ID:C1BdcEuy0
( ^ω^)「12時かお・・」

数十もの時計がきっちりと12時を指し示す。
見慣れた光景とは言え少々不気味だ。

( ^ω^)「腹、減ってねーお・・」

食欲が湧かないのはいつもの事だ。
それもそのはず、ブーンは朝から晩までカウンターから殆ど動かないのだからだ。

(;^ω^)「こんな生活続けてたら、絶対体に悪いお・・」

自分の腹に付いた脂肪を摘まみながらもぼーっと過ごす。
ここ数ヶ月の変わらない毎日だ。



――だが、そんな代わり映えもしない毎日の終わりは、突然訪れた。
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:05:25.40 ID:C1BdcEuy0
カランカラン・・

ξ゚听)ξ「・・」

(;^ω^)(ん・・お客さんかお?)

(*^ω^)(正直、タイプの女性だお)
数日振りの来客だ。
来客は厚手のコートを羽織った若く綺麗な女性、
恐らくは自分と同じくらいな歳だろう、店の奥のカウンター越しにブーンはそう思いながら女性を眺めた。
その女性はというと、無言で店内を見渡している。まるで、何かお目当ての品があるように。

(;^ω^)(・・?)

その来客には奇妙な点が数箇所あった。
まず彼女のコートは所々に傷や汚れがある、しかし浮浪者という訳では無さそうだ。
また、彼女の右腕には応急処置とも思える布が巻かれている、
恐らく血だろう、微かにだが彼女の右腕の布からは赤い染みが、白い布に染み込んでいる。

そしてもう一点。それは彼女が左手に持つとても大きく、とても頑丈そうなスーツケースだ。
かなり大きい。それこそ、折りたためば人がすっぽり入ってしまいそうな程だ。


7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:08:33.42 ID:C1BdcEuy0
( ^ω^)「・・いらっしゃいませですお」

ξ゚听)ξ「・・」


(;^ω^)(・・・強盗?)

自分でも突拍子も無い発想だと思う。
何故強盗がわざわざこんな、かび臭いだけの寂れた骨董屋に来る?
いいや、来るはずがないだろう。常識的に考えて。

ξ゚听)ξ「ねえ」

(;^ω^)「は、はいですお・・」

ξ゚听)ξ「ここに”人形”はあるかしら?」

(;^ω^)「・・”人形”、ですかお?」

ξ゚听)ξ「ええ」
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:12:26.05 ID:C1BdcEuy0
( ^ω^)「それならそこにありますお」

奇妙な客だ。
そう思いながらもブーンが店内の一角を指差す。
そこには西洋人形や日本人形などが数十個ほど並べられている。

これらはブーンの父親の趣味で集めた品だ。
日本国内はもとより海外からも父親がわざわざ直接買い付けに行った、
今は亡き父の自慢のコレクションだ。

ブーンは気味悪がっているが。


ξ゚听)ξ「違うわ、もっと大きな人形よ」

( ^ω^)「・・当店の人形はこれだけですお」

ξ゚听)ξ「そんなはずないわ、絶対にあるはずよ」

( ^ω^)「・・いや、そう言われましても無い物は無いですお」
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:15:19.71 ID:C1BdcEuy0
ξ゚听)ξ「・・この店に倉庫はある?」

( ^ω^)「あ、それなら一階の奥の方にありますお」

ξ゚听)ξ「悪いけど上がらせてもらうわ」


(;^ω^)「え・・ちょ・・」

ブーンが店の奥。倉庫のある場所を指で示した途端、
女性はカウンターの横を通り抜け、土足のまま倉庫まで歩き始めた。

( ^ω^)「あの・・お客さん?」

ブーンが呼び止めても聞かず、そのまま室内に女性は入って行った。


( ^ω^)「倉庫には鍵がかかってますお」

実は、ブーンもあの倉庫の中に入ったことは無い。
両親が死別した後、ブーンは倉庫の整理をしようとした時があった。
しかし、倉庫は頑丈な南京錠で密封されており、しかもその鍵の所在はブーンにもわからず
仕方がなく、いままで放置していたのだ。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:18:22.01 ID:C1BdcEuy0
父は倉庫について何も教えてくれなかった。
だが、ブーンは別段興味を持たなかった。
たとえ倉庫が開いたとしても、
大方気味の悪い人形やカビだらけの骨董品ばかりだろうと思ってるからだ。



ブーンが女性を追いかけようとカウンターから立ち上がった瞬間。
突然、倉庫の方角から凄まじい爆発音が店を揺らした。

(;゚ω゚)「え・・うわぁ!?」

ブーンは思わず両耳を塞ぎ、その場に伏せた。


――爆発? 何故?

(;^ω^)「・・お客さん!」

ブーンは慌てて店の奥に走り出した。

15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:20:29.67 ID:C1BdcEuy0
少し走ると奥には人影が見えた。

ただしその人影は、先ほどみた女性のものではなかった。


( ^Д^)「ん・・? なんだお前?」

(;^ω^)「・・え?」

倉庫の方角には女性は見えない。

だがそこはまるで戦争があったかのように、
爆発の痕が外にまでぽっかりと開いている。
つまり、倉庫は吹き飛んでしまったのだ、瓦礫の山と引き換えに。

ブーンが周囲を見渡しても女性はどこにもいない。
その代わりにいたのは若い男だった。

――いや、正確には男一人だけではない。
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:22:12.42 ID:C1BdcEuy0
>>14
ご名答です。


男の十指にはそれぞれ銀色の指輪が嵌められている。
そしてその指輪からはピアノ線のような細い糸が伸び、
その先、糸の先には 
人ほどの大きさの巨大で不気味な”人形”が立っている。


(;^ω^)「お前こそ・・誰だお?」

ブーンが人形に視線を送る。
その”人形”がただの人形ではないのは明らかだ。

まるでピエロのような奇妙で不気味な風貌、
その両手の平には穴が開いており、
その両手でカラフルなボールをお手玉のようにしている。
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:25:16.74 ID:C1BdcEuy0
(;^ω^)「・・お前が、倉庫を吹き飛ばしたのかお?」

ブーンが男に問い掛ける。
男は20代だろう、チャラチャラした服装のチャラチャラした男。
男はニヤニヤと薄気味悪い笑顔を浮かべながらブーンの問い掛けに口を開いた。


( ^Д^)「そうさ、このプギャー様がぶち壊したんだよ、この『テオゴーチェ』でな、
このぼろっちい家の倉庫を、あの女と一緒にな」

(;^ω^)「・・彼女はどこだお!」

( ^Д^)「さあな、まあいいじゃねえか。すぐにお前も、同じ運命を辿るんだからさ」

21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:26:55.89 ID:C1BdcEuy0
プギャーと名乗った男はそう言うやいなや、指を複雑に動かし始めた。
その動きに合わせるように、人形の歯車が噛み合う音がブーンの耳にも届く。

そして、ピエロのような巨大な人形『テオゴーチェ』が手の平に持つボールの一つを、
ブーンに向けて放った。

(;^ω^)「うわぁあ!!?」

とっさにブーンが身を屈める、ボールはそのすれすれ上を通り、
カウンターの方へと飛んでいった。

そして、先ほどの倉庫と同じような轟音と共に
いままでブーンの両親死ぬまでずっと切り盛りしていた骨董店が、
ブーンの思い出の詰まった骨董店が、爆風と共に吹き飛んだ。

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:28:22.68 ID:C1BdcEuy0
(;^ω^)「あ・・あ・・」


( ^Д^)「ちっ、運のいい奴だな」

プギャーと言った男は笑っている。
笑いながらブーンを殺そうとしたのだ。

あの、凶悪な人形を使って。



――まともじゃない。
いままで平々凡々に生きてきたブーンは産まれて初めて、死の恐怖に怯えた。

( ^Д^)「動かない方がいいぜ。どうせ死ぬなら、楽に死なせてやるよ。
オレって優しいだろ?」

ヘラヘラとした笑い声が爆音の余韻の残る骨董店に響く。
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:32:45.42 ID:C1BdcEuy0
(;^ω^)「な・・なんで・・こ、こんな事をするんだお!?」

足がガタガタと震える。
必死に搾り出した声も恐怖に震えているようだ。


( ^Д^)「まあわかりやすく言ったら、お前がここにいるから、だな。それだけだよ」

(;^ω^)「な・・?」

( ^Д^)「だいじょーぶだいじょーぶ、痛いのは一瞬だけだから」

(;^ω^)「や・・やめるお・・」

( ^Д^)「恨むんならツンを恨むんだな、あばよ」


プギャーが再び『テオゴーチェ』を繰る。
指の複雑な動きに合わせて、歯車がキリキリと回る音が部屋に響く。
顔色一つ変えずに、まるで遊ぶかのような笑顔で、
とても愉快そうに笑いながらプギャーはボールを放つ。

25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:35:32.68 ID:C1BdcEuy0
(;^ω^)「うわああああぁぁぁあああ!」

今度は1個だけではない。
色とりどりのカラフルなボールが4個
その全てが正確に、ブーンの体目掛けて飛来する。


ブーンが死を覚悟した瞬間。
瓦礫の山と化した倉庫の残骸の中から、
何かが凄まじい速度でブーンの前に立ちはだかった。
そして、ブーンの目の前で、4個のボールは大爆発した。
目の前の何かを巻き込んで。


(;^ω^)「え・・・・?」

生きてる。
ブーンの足元には木や歯車の残骸が散らばっている、だが自分は生きている。
今足元にある残骸が、ブーンの命を救ってくれたのだ。
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:37:03.46 ID:C1BdcEuy0
(;^Д^)「・・てめぇ、生きてたのかよ!」

プギャーが瓦礫の山を振り向く。
その視線の先に彼女はいた。


ξ#゚听)ξ 「ええ・・お蔭様で、少し気絶してたけどね」

(;^ω^)「・・あ・」

先ほどの女性だ。
瓦礫の中に埋めれていたせいで体中に擦り傷があるものの、
命には別状無さそうだ。

彼女が店内で持っていたスーツケースは開かれており、
その中身はからっぽだ。

しかし彼女の十指にはプギャーと同じく銀色の指輪が嵌められている事。
そしてその指輪から伸びる糸が自分の足元で途切れている事からも、
彼女がブーンを助けてくれたのは明白だ。

彼女の人形を犠牲にして。


29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:40:05.64 ID:C1BdcEuy0
(;^ω^)「君はいったい・・」
ξ#゚听)ξ「あんたはさっさと逃げて! それとも死にたいの?」

ブーンの問い掛けを遮り、女性がブーンを怒鳴りつけた。

(;^ω^)「は、はいですお!」

状況が飲み込めないが、恐らく彼女は自分を殺さないだろう。
そう思ったブーンは爆発の痕が生々しく残る店頭の方へと逃げようとする。

しかし、それは叶わなかった



( ^Д^)「誰が逃がすかよ」
(;゚ω゚)「ぐあぁ!」

『テオゴーチェ』にばかり気を付けていたブーンは
プギャー自身が自分に近付くにのに気付くのが遅れてしまった。
そして接近したプギャーの強烈な中段蹴りがブーンの脇腹に直撃する。

運動不足のブーンの腹に鈍い痛みが走る。
ブーンはその場にうずくまるように倒れ、気絶した。

ξ;゚听)ξ(弱っ・・)
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:42:20.33 ID:C1BdcEuy0
( ^Д^)「さてと・・こいつは後で始末するとして、
次はお前の番だな、ツンちゃんよ」

ξ゚听)ξ「あんたが私に勝てると思ってんの? 
『テオゴーチェ』がなきゃ何も出来ないくせに」

( ^Д^)「自分の懸糸傀儡をあんな奴の為に犠牲にしたくせに何言ってんだ?
お前なんか懸糸傀儡がなきゃただの女なんだよ。
少し人形繰りが上手かったからって調子に乗んなよ」

ξ゚听)ξ「あら? 人形繰りが”会社”で一番下手なあんたがよく言うわね」

( ^Д^)「そうだな。
で、その下手な俺に、今から何の抵抗も出来ずに殺される気持ちはどうだ?」

ξ゚听)ξ「人形を人殺しの道具に使うしか能が無いあんた、に私が負ける訳ないわよ」

( ^Д^)「へー、懸糸傀儡も無しにどうやって戦うんだよ、
この裏切り者が」

33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:44:26.61 ID:C1BdcEuy0
プギャーが『テオゴーチェ』の手の平から無数のボールを繰り出し、
それを器用にジャグリングさせる。

傍から見たら愉快なピエロがジャグリングをしているようにしか見えないだろう、
しかし、そのボールは強力な爆弾であり、
ピエロを模した人形は、殺人の道具である。


ξ゚听)ξ「私は会社が嫌で抜けたのよ、自分の意思でね。
プギャー、あんたはその人形と同じよ。」


( ^Д^)「・・あ?」

ξ゚听)ξ「あんたは会社に操られているだけの滑稽な道化よ、
自分じゃ何も考えることの出来ない哀れなピエロ、それがあなたよ」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:46:30.10 ID:C1BdcEuy0
(#^Д^)「てめぇ・・言うに事欠いて訳のわかんねぇ事ほざいてんじゃねえよ」

ξ゚听)ξ「私はもう人形じゃないわ。
だからあなたには負けない」

(#^Д^)「うるせぇ! 殺れ、テオゴーチェ!」

テオゴーチェが両手に持つ全てのボールがツンに向けて一斉に放たれる。


ξ゚听)ξ「・・そうでしょう、『あるるかん』!」

プギャーの指が動くその瞬間、
ツンが自分の背後に隠していた古めかしい木のケースを開く。

そして開いたケースの中にある十個の指輪をすばやく嵌め、
眼前にクロスさせるように手を動かし、
そして指を凄まじい速さで指を手繰る。

木のケースの中から出てきた人形、ツンがあるるかんと呼んだ人形もまた、
テオゴーチェのようにピエロのような外観をしていた。

黒衣を纏い、頭に白い羽がついているそれはツンの前に立つやいなや、
ツンの指の動きに合わせるかの如く素早い動きで
テオゴーチェの放った無数のボールを爆発させることなく見事に掴み取った。
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:48:10.81 ID:C1BdcEuy0
(;^Д^)「それは・・」

あるるかんを見た途端、プギャーがたじろいだ。

ξ゚听)ξ「ええ、あんたん所のクソ社長を倒す為にはこれが必要だったの、
この店に流れてるって事は会社の資料でわかったからね、
ほんとはあんたが来る前に回収しときたかったのよ」


ツンが指を手繰り、あるるかんと共にプギャーに一歩一歩近付く。
それに合わせるかのように、プギャーは一歩一歩ツンから遠ざかる。

(;^Д^)「くそっ・・」

テオゴーチェのボールがああも容易く受け止められた、
つまり、いまのプギャーには打つ手が無くなったと言うことだ。

39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:50:34.36 ID:C1BdcEuy0
(;^Д^)(くそっ、こうなりゃ・・)

ξ゚听)ξ「動くな! 
今すぐ指輪を外して出て行ったら命だけは助けてあげるわ
ただし少しでも怪しい動きをしたら・・わかってるわよね?」


(;^Д^)「・・・わかったわかった、降参しますよ」

プギャーが指輪を地面に落とす、
それに合わせてテオゴーチェは力が抜けたように地面に倒れこんだ。


ξ゚听)ξ「そのまま会社に帰ってあのクソ社長に報告しなさい。
あんたの首を、私が狙ってるってね」

(;^Д^)(クソ女が・・いまにみてろよ・・)


プギャーが後ろを振り返り、店の玄関から外へと進みだそうとする。
ちょうどその時――。

41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:52:50.06 ID:C1BdcEuy0
(;うω`)「いたたたた・・
なにが起きたんだお・・?」

ちょうど、プギャーの足元に倒れこんで気絶していたブーンが目を覚ました。


(;^ω^)「あれ・・? あんたは確か・・」

まだ意識が朦朧としているブーンは近くにいたプギャーを見上げた。
その時である。

( ^Д^)「おっと、動くな」
(;^ω^)「ほえ?」

ξ;゚听)ξ「しまっ・・!」


ツンがあるるかんを動かすよりも早く、
プギャーがポケットに入れていたバタフライナイフを取り出し、
それをブーンの首筋に当てた。
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:55:03.56 ID:C1BdcEuy0
ξ;゚听)ξ(最悪・・)

(;^ω^)「え?え? 何だお? な、ナイフ!?」

( ^Д^)「うるせえ、お前は黙ってろ」

(;^ω^)「は、はいですお」

プギャーは静かに、しかしドスの効いた声でブーンを黙らせた。


( ^Д^)「さあてツンちゃんよぉ、どうする? 人質に構わず俺を殺すか?」

ξ;゚听)ξ「・・放しなさいよ、こいつは関係ないじゃない」

( ^Д^)「関係大有りじゃん、こいつは懸糸傀儡を見た、つまり社秘を見たんだ、
だから消す。何か問題あんのか?」


ブーンの頭はいまだに混乱している。
何故? 何? 疑問は尽きない、まるで奇妙な夢を見ているようだ。

(;^ω^)(懸糸傀儡・・? あのでかい人形の事かお?)
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:57:01.24 ID:C1BdcEuy0
( ^Д^)「くくく・・、さあて、まずはあるるかんをこっちに寄越してもらおうか。
変な真似したら、無害の関係ない一般人の首から綺麗な噴水が飛び出すぜ」


ξ゚听)ξ(・・)

ツンが黙ってあるるかんの指輪を外し、
それをプギャーの足元に向けて投げ飛ばす。

金属が地面にぶつかる音が静かな部屋に響き渡った。

( ^Д^)「くく、まさか俺があのあるるかんを操れるとはな。
ありがとよ、ツン」

右手のナイフをブーンの首元に当てたまま、
プギャーが左手であるるかんの指輪を拾おうと身を屈める。

その一瞬をツンは見逃さなかった。
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 17:59:50.56 ID:C1BdcEuy0
ξ#゚听)ξ「ついでにこれも返すわ!」

ツンが、近くに立つあるるかんの手に抱えているテオゴーチェのボールの内一つを右手で掴み、
それをプギャーとブーンの真上の天井目掛けて放り投げた。


(;^Д^)「なっ!?」

(;^ω^)「ちょ・・おま!」


ツンの投げたボールは見事天井に命中、そして炸裂した。

ξ#゚听)ξ「あんたらみたいな外道にあるるかんを繰る権利はないわ!」

ツンはそう怒鳴りながら二人を下敷きに崩壊した天井の瓦礫に駆ける。




(;^ω^)「いたたたた・・、なんで今日はこんな目にばっかり遭うんだお・・」

瓦礫の下敷きになったブーンが周囲を見渡す、
その時、ブーンは手元に金属がぶつかる感覚がした。



(;^ω^)「あ、これは・・」
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:02:16.98 ID:C1BdcEuy0
ξ;゚听)ξ(おかしい・・、なんであるるかんの指輪がないの?)

瓦礫はツンの予想以上に積もってしまった。
恐らく、この建物が老朽化しているせいだろう。

うずたかく積もった木材を次々と取り除き、あるるかんの指輪を探す。


――その時、ツンは焦りのあまり自分の背後に忍び寄る気配に気が付かなかった。

(#^Д^)(殺してやるよ・・)

粉塵に紛れてツンの背後に忍び寄ったプギャーがナイフを無防備なツンの背中目掛けて振り上げる。


(#^Д^)(死ね)

空を切る音と共に、ナイフがツンの背中に突き刺さる、その直前。




(;^Д゚)「ぐぁ!!!??」

ξ;゚听)ξ「!?」

突然、プギャーがツン背後から吹き飛ばされた。
プギャーは壁にまで吹き飛ばされ、壁にひびが入る程の衝撃で激突し、
力尽きるようにナイフを地面に落とした。
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:05:36.44 ID:C1BdcEuy0
(; Д)「あ・・が・・」
そのまま壁にもたれこむようにして、プギャーは気絶した。


ξ;゚听)ξ「なんで・・あるるかんが・・?」

プギャーを吹き飛ばした物、それはあるるかんだ。

あるるかんはその胴体に歯車にがむき出しとなり、
そこから上半身が高速回転し、
それにぶつかったプギャーを壁まで吹き飛ばしたのだ。


ξ;゚听)ξ(・・『コラン』)

コランはあるるかんの技の一つだ。
胴体部から歯車など出して上体部分を高速で旋回させ、相手を破壊する。
ただ、それを発動する方法はツンも知らない。
ツンは資料の中であるるかんの技を知っているだけだ。


55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:08:14.90 ID:C1BdcEuy0
ξ;゚听)ξ(一体誰が・・?)

あるるかんの体から伸びる糸は依然瓦礫の中にある。

ツンがあるるかんを操った人間を探そうとした丁度その時、
瓦礫の中から一人の人間が這い出てきた。


(;^ω^)「あいたたた・・ 酷い目に遭ったお」

ツンは瓦礫から這い出てきたブーンの指、
そこに銀色光る十個の指輪を見た途端、驚きの声を上げた。


ξ;゚听)ξ「あ、あんたが!?」

(;^ω^)「・・・ほえ?」



ξ;゚听)ξ「なんであんたがあるるかんを繰れたのよ!?」

56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:10:23.74 ID:C1BdcEuy0
(;^ω^)「あるるかん・・?」

ξ;゚听)ξ「この人形のことよ! まさかあんた人形操ったことあるの?」

(;^ω^)「・・? 知らないお、こんな人形初めて見たお」

ξ;゚听)ξ「じゃあなんで指輪付けてるのよ?」

(;^ω^)「綺麗な指輪だなー、って思って・・
その後はあまり覚えてないお」


ξ;゚听)ξ(おかしい・・、なんでなにも知らない人間が人形を操れるの?)

(;^ω^)「あ、ところで・・、僕の店は・・」

ξ゚听)ξ(彼の父親があるるかんを倉庫に隠していた)

(;^ω^)「いや、倉庫はともかく店が・・ボロボロに・・」

ξ゚听)ξ(そして息子の彼があるるかんを操れた・・。何か、あるわね)
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:12:17.16 ID:C1BdcEuy0
(;^ω^)「とにかく警察に・・」
ξ゚听)ξ「待って」

(;^ω^)「へ?」

ξ゚听)ξ「警察は呼ばない方がいいわよ。
会社に嗅ぎ付けられたらマズイわ」

(;^ω^)「会社・・? どういう会社だお?」

ξ゚听)ξ「いずれ教えるわ。それよりあなた名前は?」

(;^ω^)「・・・ブーンだお」

ξ゚听)ξ「そう、私はツン、これから少しの間この家に住ましてもらうわよ。よろしくね」


( ^ω^)「ああこちらこそよろしく・・」


(;゚ω゚)「・・・って、ええええええええええええええ!? 
なんでそうなるお!?」

ξ゚听)ξ「あんたを守るためよ」

(;^ω^)「はい?」

59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:14:16.76 ID:C1BdcEuy0
ξ゚听)ξ「プギャー・・ああ、あそこで寝てるバカのことよ、
あいつは私が昔いた会社の社員の一人なの、
きっとあいつはこの店を襲撃する前に、事前に会社に連絡したはずよ」

(;^ω^)「つまり・・あいつみたいな連中がここにわらわら襲って来るってことかお?」

ξ゚听)ξ「あら、察しがいいわね。
だから不本意だけど私があんたを守ってあげるってことよ」


(;^ω^)「・・これどっきりカメラかお? カメラどこだお?」

ξ゚听)ξ「そんな訳ないわよ。これ見ても信じられない?」

ツンがあるるかんの指輪をブーンから奪い取り、あるるかんを複雑に動かす。
それはまるで人間のように器用に動き、その動きにブーンは釘付けになった。
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:16:44.69 ID:C1BdcEuy0
(;^ω^)「これは・・ロボットかお?」

ξ゚听)ξ「近いけど違うわ。
これは懸糸傀儡、簡単に言ったらあやつり人形ね」

( ^ω^)「こんな凄いの見たことも聞いたことも無いお」

ξ゚听)ξ「私も詳しくは知らないけど、中世の錬金術師が作ったのが起源らしいわ。
それが今になって再び使われるようになったの、”会社”の力でね」


( ^ω^)「さっきも言ってたけど、会社ってなんだお?」

ξ゚听)ξ「簡単に言ったら、
懸糸傀儡を使って殺人や破壊工作をするような屑の集まりよ
私はそんな会社が嫌になって抜け出したのよ。
プギャーは抜けた私を追ってきたの、
懸糸傀儡の秘密が漏れたら色々と不都合があるからね」

(;^ω^)「はあ・・」
66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:19:21.27 ID:C1BdcEuy0
ξ゚听)ξ「プギャーの奴は撒いたつもりだったんだけど、しつこく付いてきたみたいね。
それであいつは、外から倉庫を爆破したのよ、私ごとね」


(;^ω^)「その・・あるるかん?はなんで僕の家にあったんだお?」

ξ゚听)ξ「さあ? あなたのお父さんがヨーロッパであるるかんを買い付けたことは会社の資料にあったけど
それより詳しいことは私も知らないわ」

(;^ω^)(なんで父さんはこんな物を・・?)


ξ゚听)ξ「まあ私が会社を潰すまでの間よ。それと、あなたにも少し手伝ってもらうわよ」

(;^ω^)「丁重にお断りしますお」

ξ゚听)ξ「よろしくね、ブーン君」

(;^ω^)「人の話聞いてNEEEEEEEE!!!」





――こうして、僕の不思議な毎日は突然始まった。



( ^ω^)と不思議なからくり奇譚のようです つづく
68 ::2009/01/28(水) 18:20:56.09 ID:C1BdcEuy0
短くて申し訳ありません
これが初めてのブーン系ですので色々と見苦しかったかと思います。

元ネタは先ほど言われたようにからくりサーカスです。
81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:34:44.44 ID:0UaMSXXnO
続きいつ?
83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:37:56.80 ID:C1BdcEuy0
>>81
出来るだけ早くに投下したいですが生憎遅筆なもんで…
はっきりとは言えませんが次週の土日を目処に書いています。

84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:38:34.02 ID:bqyWyuW6O
ナルミはでてくるの?

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/28(水) 18:42:04.16 ID:C1BdcEuy0
>>84
いずれ出すつもりです。



出来るだけオリジナルの展開で進めようと思っていますので、
すいませんが原作好きなみなさまはその点ご承知ください
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