( ФωФ)楽しんだもの勝ちなようです
99 : ◆9d9cVF02x2 :2009/05/10(日) 01:48:07.90 ID:7ZYDRMEPO
なんという深夜…投下するなら今のうち。 
前の人乙です、15レス分投下させて貰いますね。
101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 01:49:23.98 ID:7ZYDRMEPO

吾輩は猫である。名前はまだない。
という始まり方を見せる大層有名な文学作品があるそうだが、それとこれとは何の関係もないのを許して欲しい。

僕はロマネスク。勝手気ままに生きる野良猫。
どれくらい勝手気ままかと言えば、先の件を踏まえれば推測出来るだろう。


( ФωФ)「そう、僕は自由を愛する野良猫なのだ」


まだぎこちない二足歩行で町を行きながら、僕は言った。
言語機能については何の問題もないようだ。

さて、ここまでで大きな矛盾があるのに気付いてもらえただろうか。
それはもちろん、僕が自身を野良猫だと語っておきながら、外見は人間そのものであるということだ。
これについては弁明しなければならない。
今朝方の出来事を、かいつまんで説明するとしよう。
105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 01:50:37.06 ID:7ZYDRMEPO

( ・∀・)「やぁ、僕は神様、君はとても良い子だね」

( ФωФ)「にゃあ(それはどうも、ありがとうございます)」

( ・∀・)「そんな君にプレゼントだ。えいっ」

( ФωФ)「にゃにゃー!(ぬわーっ!)」

という訳で、僕は人間にされてしまった。

これには、二丁目の眠れる鬼と噂される僕も、驚きのあまり口をあんぐりさせた。
何しろ、水溜りを覗くと、見覚えのない10歳くらいの少年が覗き返してきたのだ。
それが自分だと気付くのに大分遅れるほど、動揺してしまっていた。


( ФωФ)「とはいえ、だ」

こんな姿に変えられてしまったのも何かの縁だろう。
いつまでもこのままという気はしなかったので、せめて人間を満喫しようと思った訳で。

しかし、それも朝に始まり、正午を迎える今この時には、終わりを迎えてしまっていた。

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 01:52:25.65 ID:7ZYDRMEPO

( ФωФ)「人間の姿だと、通れない道が多くて迷子になりそうなんだよね」

例えば、田中さん家の塀の穴だったり、公民館の横の細道だったり。
そういったいつも使っているルートが使えないとなっては、行ける場所も限られてしまう。
だから、僕は行く当てもなく、ぶらぶらと町を彷徨っていた。

( ФωФ)「……おおっ?」

そこで目に飛び込んできたのは、居心地のよさそうな公園。
豊富な遊具に、茂る緑、最近では珍しくゴミのない空間がここを訪れる人のマナーの良さを語っている。


( ФωФ)「残された時間は、ここで暇潰しするかぁ」

実を言うと、人間の子供が公園の遊具で遊ぶ姿には憧れがあった。
ブランコや滑り台、ジャングルジム等が放つ誘惑は、猫世界でも中々にして有名なのだ。

さぁ早速とブランコに手を掛けてみた所、思わぬ問題が起きてしまった。
木の陰から、こちらをじっと眺める姿を発見してしまったのだ。


109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 01:53:47.61 ID:7ZYDRMEPO

( ФωФ)「……僕に何か用?」


(;*゚ー゚) 「あうっ!」


話しかけると、その子は『ああ見つかった、しまったぁ!』と言わんばかりのリアクションを見せた。
それから、おずおずといった表情を浮かべて、こちらに近付いてくる。

見覚えがあるその顔は、田中さん家の娘。
確か、名前はしぃと言っただろうか。



―――( ФωФ)楽しんだもの勝ちなようです

112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 01:55:34.15 ID:7ZYDRMEPO

(*゚ー゚) 「…………」

( ФωФ)「何さ、黙ってちゃ分からないじゃないか」

(*゚ー゚) 「見覚えない、誰?」

初対面の人に言う言葉では無いなぁと思いつつ、
まだ小学校にも入りたてくらいに見える子に大人のマナーを期待するのも馬鹿らしい。

( ФωФ)「僕はロマネスク、君はしぃちゃんだっけ?」

(*゚ー゚) 「何で知ってるの? 危ない人?」

( ФωФ)「どう考えても僕は怪しくないじゃない、で、しぃちゃんだよね?」

(*゚ー゚) 「お母さんが、危ない人とは話しちゃいけないって言ってた」

とはいえ、いきなり不審者扱いされるのもたまったもんじゃない。
むっとした僕は、少々突き放した風に、

( ФωФ)「……じゃあ、良いよ、僕は一人で遊んでいるからあっちに行ってな」

と言うと、
114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 01:57:03.93 ID:7ZYDRMEPO

(*゚ー゚) 「嘘、ロマネスクは悪い人じゃない、と思う」

と、服の袖を掴まれながら上目遣いで言われてしまった。
僕はその時初めて、人間が小動物を愛でる理由を知ったんだと思う。


( ФωФ)「……で、僕に何か用なの?」

(*゚ー゚) 「遊ぼうとしてたから、私も遊ぼうと思って」

( ФωФ)「一緒に?」

(*゚ー゚) 「駄目?」

( ФωФ)「いや、駄目とは言わないけどさぁ」

(*゚ー゚) 「やった、ブランコで靴飛ばししよう」

しぃは、僕が反応を見せる隙も与えず、ブランコに腰掛けた。
どうやら、この子は僕以上に自由人であるらしい。
116 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 01:58:52.22 ID:7ZYDRMEPO

( ФωФ)「まぁいいか」

僕だって、人生(もしくは猫生)初めてのブランコには興味津津だ。
しぃが使っている方ではないブランコに腰掛け、思いきって地を蹴ってみる。

ふわりと宙に浮き、全身で風を切る感覚は、病みつきになりそうな程だった。
そのまま体重移動を使い、振り子の原理で勢いを増していく。
体感でいうと九十度近い振り子になっていた僕は、ここぞというタイミングで履いていた靴を飛ばす。
見事な放射線を描いて、遠くの地面に落ちた。


ふふん、どうだと僕がしぃを見てみた所。

(*゚ー゚) 「…………」

( ФωФ)「あっれぇ」

しぃは無表情でブランコに座ったままだった。
ぴくりとも動かない。眠っているのかとすら思える。

不思議に思った僕はブランコを降り、しぃに尋ねてみた。


117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:00:20.87 ID:7ZYDRMEPO

( ФωФ)「なんで、靴飛ばしやらないのさ」

(*゚ー゚) 「自分じゃブランコ出来ないんだもん、ロマネスク、背中押して」

( ФωФ)「…………」

色々言いたいこともあったが、とりあえず、その命令に従った。


( ФωФ)「そーれ!」

(*゚ー゚) 「わぁ」

(*゚ー゚) 「そーれ!」

(*゚ー゚) 「わぁ」

しぃの乗ったブランコは、どんどんと勢いを増していく。
この調子なら、靴飛ばしも良い結果が出るなと期待していたのだが、

(*゚ー゚) 「止めて!」

( ФωФ)「えっ?」

(*゚ー゚) 「早く止めて!!」
122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:02:45.65 ID:7ZYDRMEPO

と、急にしぃが叫び始めたので、僕は慌ててブランコを制止させた。
そしてブランコから降りたしぃは、こう言った。

(*゚ー゚) 「思ったより怖かったから、ブランコは止めよう、危ないよ。
     あっちのジャングルジムで遊ぼうよ」

( ФωФ)「……え?」

(*゚ー゚) 「私、先に行ってるね」

( ФωФ)「あっ、ちょっ」


しぃは、ぱたぱたと小さい体を懸命に動かして走っていった。
あまり距離がある訳でもないのだが、確実に小さくなっていく背中を眺めながら僕は思った。

あれは自由人ではなく、女王様、もしくは暴君の類であると。


( ФωФ)「いやはや、将来が末恐ろしい」

こんな独り言を呟いてしまうのも仕方ないくらいに。
124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:04:24.10 ID:7ZYDRMEPO

それから数時間、僕たちはずっと遊び呆けていた。
というより、僕が一方的に弄ばれていたのだが、プライドの都合で記憶を改竄しておく。

( ФωФ)「もう、夕方だねぇ」

(*゚ー゚) 「…………」

( ФωФ)「そろそろ家に帰った方がいいんじゃないかな?」

(*゚ー゚) 「……お終いなの?」

その時見せた顔は、今にも泣きそうなくらい沈みきっていて、声のトーンも低かった。
ああまずいなぁと思った僕は、とにもかくにも一度、話を変えてみる。


( ФωФ)「そういえば、しぃちゃんはどうして一人で遊んでたの?」

(*゚ー゚) 「……探してたの」

( ФωФ)「何を?」

(*゚ー゚) 「猫」



125 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:06:59.81 ID:7ZYDRMEPO

( ФωФ)「猫?」

猫と言われれば、現在進行形で猫やってる僕の出番だろう。
そう思い、意気揚々とどんな猫だい、と尋ねてみると。

(*゚ー゚) 「白い猫で、茶色の丸が一杯ついてるの。
     耳が片っぽいっつも折れてて、家の庭によく来るの」

( ФωФ)「……あ、そうなの」

その答えには、非常に返答し辛かった。
何故かって、その特徴に当てはまる猫は、どう考えても僕に他ならなかったからだ。


(*゚ー゚) 「お母さんがね、やっと飼っていいって言ってくれてね。
     でも今日の朝は来てくれなかったから、探しに来たの」

( ФωФ)「そっか……じゃあ、その子が見つかったら凄く嬉しい?」

(*゚ー゚) 「うん、でも今はロマネスクと遊んでる方が楽しい」

どちらも同じロマネスクだよとは、言えたものではない。
僕は言葉に詰まってしまい、照れくさくなって頭をぽりぽりと掻くばかりだった。
127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:08:44.70 ID:7ZYDRMEPO

その時、五時のチャイムが鳴り響き、同時に大きな声が届いてきた。

『しぃー、もう帰るよー!』

(*゚ー゚) 「ママ!」

しぃは、母の元へと駆け寄り、そのまま飛びつくように抱きつく。
良い家族なんだなぁと、関係もない僕まで微笑ましくなる。


一方の僕はというと、草むらに隠れてしまっていた。
不思議とそうしなければならない気がした。 理由はすぐに分かった。

体が縮んでいくかと思うと、体毛が全身を覆い、尻尾が生えてきた。

どうやら、猫の姿に戻ってしまったみたいだ。

草むらの向こうでは、しぃが遊び相手であった『少年ロマネスク』を母に紹介しようと探していた。
もちろん、僕がこのまま姿を現せるはずもない。
とんだシンデレラだなと、僕は一人、苦笑した。
130 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:10:56.68 ID:7ZYDRMEPO

吾輩は猫である。名前はまだない。
こんな素敵な始まりを迎えてみたいなと、いつも僕は考えている。
しかし生憎、僕には名前もあるし、得意気に語れる話を持ち合わせている訳でもないのだ。

勝手気ままに生きる僕は、今日も日向ぼっこをしながら欠伸を嗜む。
春の日差しはたまらない。ニコチン中毒ならぬ、日光中毒というやつだ。


( ФωФ)「そう、僕は自由そのものなのだ」


ちなみにこの言葉、実際は『にゃあにゃあ』としか発音されていない。
人間でいられたのは、やはり、あの日あの時だけだった。

だから、今は慣れ親しんだ猫の体で生を楽しんでいる。
僕の名前はロマネスク。それは今も昔も変わらない。

唯一つ昔と違っていることと言えば、真っ赤な首輪を身に付けていること。
132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:12:38.52 ID:7ZYDRMEPO

(*゚ー゚) 「ロマネスク、御飯だよ」

( ФωФ)「にゃにゃあ」

田中さん家のペットになってから、早数ヶ月。
この生活も中々にして悪くはない、むしろ心地良い。
しぃの笑顔を間近で眺めていられるのも、有り難いことだった。

ちなみに、ロマネスクという名前は、改めてしぃが付けた。
何でも、『一日限りの友人から借りた名前』だそうだ。
真相を知っている僕は、素知らぬ振りをして、名付けられた時喜びの反応を見せておいた。


そうそう、飼い猫になったのなら、自由ではないと言われたことがある。
だが、僕は思うのだ。
何のしがらみもなく、勝手気ままに楽しんで生きれたなら、野良でなくても自由はあるのだと。

要は、楽しんだもの勝ちっていう話。



133 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:14:14.48 ID:7ZYDRMEPO

(*゚ー゚) 「美味しい?ロマネスク?」

しぃは、僕の頭を撫でながら問いかけてくる。

今はまだ『少年ロマネスク』に勝てていないのかもしれないが、
いつかはこの子を、僕なしでは生きていけないくらいに魅了するのを目的にしている。

とまぁ、そんな事とは関係なく、撫でられるのは気持ちいい。



僕は、幸せを噛みしめるように、


( ФωФ)「にゃあ」


一声、鳴いた。



―――( ФωФ)楽しんだもの勝ちなようです おしまい


137 : ◆9d9cVF02x2 :2009/05/10(日) 02:15:15.23 ID:7ZYDRMEPO

どうしても、楽しんだもの勝ちって言葉を使いたかったっていうね

実は明日だと思ってたからこのスレが立つまで何も書いてなかった。
慌てて書いたから、ミスとかあったらごめん。

一番最初に投下したかったんだよママン。
こんな夜中に支援、ありがとうございました!
139 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:16:26.45 ID:7ZYDRMEPO
後、ほのぼの祭の大成功を願ってます!
それではー
ひぐらしさん
ありがとうございました
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