- 68 :場繋ぎ2レス:2009/05/10(日) 00:56:13.65 ID:CsWDCkp10
- 川 ゚ -゚)「想いは正しく伝わらない。これは名言だな」
本を読んでいたクーが、突然訳の分からない事を口走る。
訳が分からないままに、僕はテレビゲームへと向けていた視線を、彼女の方へ向けた。
_
( ゚∀゚)「……なんだそりゃ」
川 ゚ -゚)「文字通りの意味だよ。つまり人間の気持ちとはとても複雑なものであり、
ゲームや漫画のように、以心伝心な関係と言うのは難しいものだ」
_
( ゚∀゚)「そりゃぁな。恋愛絡みの小説や映画ともなると、最早あいつらエスパーにしか見えないからな」
そうだなと、彼女が笑う。
川 ゚ -゚)「その為、人間が人間に気持ちを伝えるには、様々な触媒が必要だ。
言葉や文章、物品などの手段で示さなければ、気持ちは伝えられない」
_
( ゚∀゚)「なるほどねぇ……」
それはつまりどう言う事なのか、僕には分かっている。
彼女がこうも複雑に、回り道を経て言いたかった事と言うのは、つまる所。
_
( ゚∀゚)「……僕がゲームばかりしてて、寂しかったと」
川 ゚ー゚)「……そう言う事だな」
- 69 :場繋ぎ2レス:2009/05/10(日) 00:57:59.74 ID:CsWDCkp10
- 回りくどい言い回しを使ったにも関わらず、彼女は照れもせず、僕の言葉を肯定した。
そこが彼女の良い所でもあるんだけど、僕としては若干の拍子抜け感が否めない。
_
( ゚∀゚)「……ところで、さっきの話だけど」
川 ゚ -゚)「ん? なんだ?」
_
( ゚∀゚)「言葉や文章、物品もいいけど」
言いながら、僕は彼女に近づいていく。
僕らの距離は、あっと言う間に縮まっていき、
_
( ゚∀゚)「もっと分かりやすい手段があるじゃないか」
僕の視界には、クーしか映らないようになった。
恋は盲目だとか、そう言う話ではなく、距離的な話だ。
川 ゚ー゚)「……そうだな」
彼女は暫く黙り込んでいたが、やがて口を開くとたった一言、そう言った。
同時に、彼女の目がすっと閉ざされる。
釣られて、僕も目を閉じた。
どちらからともなく、僕らの唇が触れ合った。
おーしまい
- 70 :場繋ぎ2レス:2009/05/10(日) 01:03:40.78 ID:CsWDCkp10
- ξ゚听)ξ「……ねぇ、ブーン?」
異様な圧迫感に苛まされながら、私は口を開いた。
( ^ω^)「なんだお? ツン」
隣から、声が返ってくる。
私の気持ちなど、露ほども知らないであろう声だ。
( ^ω^)゚听)ξ「……流石に近いと思うのよ」
別に、こいつの隣にいる事自体は、やぶさかじゃない。
むしろ、嬉しいくらいだ。
しかし、いくらなんでもこれは近すぎるだろう。
肌が触れ合うだとか、そう言う次元を遥かに超越している。
( ^ω^)「えー、別にいいおー?」
まったく気にしていない口調で、ブーンは答えた。
ξ゚听)ξ「えー、流石に狭い……」
( ^ω^)「……ツンは、いやかお?」
私の声を遮って、ブーンが言った。
紡がれた声は、いつになく真剣で。
私は何も言えなくなってしまった。
( ^ω^)「僕は、ずっとこうしていたいお」
- 71 :場繋ぎ2レス:2009/05/10(日) 01:04:45.50 ID:CsWDCkp10
- 胸が締め付けられるような感覚に、襲われる。
言葉を発する所か、口を開く事も、呼吸をする事さえも出来ない。
吐息と共に、この幸せな窮屈さが、どこかへ逃げてしまう気がして。
ξ゚听)ξ「……ばーか」
やっと口が開けたかと思ったら、
そこから出てきた言葉は、照れ隠しの憎まれ口で。
ξ*゚听)ξ「……本当に仕方ないんだから。暫くこのままで良いわよ」
誤魔化すように、私はブーンの頬に唇を寄せた。
おーしまい - 157 :颯爽と場繋ぎ5レス:2009/05/10(日) 02:29:34.22 ID:CsWDCkp10
- 教室の喧騒が聞こえる。
次の授業のこと、放課後何をするか、昨日のテレビ番組。
どれもこれも、僕には関係の無いことだ。
机に突っ伏して、僕は狸寝入りを決め込んでいるのだから。
ノパ听)「おい、ドクオ」
不意に、声が聞こえた。
教室の様々な雑音にも負けない、綺麗に澄んだ声だ。
それが誰に宛てられたものかは分からなかったけど、
なんとなく僕は顔を上げた。
蛍光灯の光に目がくらんで、何度か目を瞬かせる。
('A`)「……どちら様で?」
ようやく明瞭化した視界には、一人の女の子が映っていた。
すらりと通った鼻に、星空を宿したように綺麗な瞳。
桜色の唇は小さく、絶妙な曲線によって描かれている。
そしてそれらの全てを引き立てる、肌の白さ。
肩の辺りまで伸びた髪は、窓から差し込む陽光を受けて、赤く輝いている。 - 161 :颯爽と場繋ぎ5レス:2009/05/10(日) 02:30:32.43 ID:CsWDCkp10
- ノパ听)「……覚えていないのか?」
彼女の言葉に、僕は目を細めてまじまじと眼前の顔を見た。
暫くは何も出てこなかったが、
('A`)「あ……もしかして、ヒー……」
ノハ#;;)「この……薄情者おおおおおおおおおおおお!」
僕の頭に、昔引っ越してしまった幼馴染の名前が浮かんだのと。
同じく僕の頭に、その幼馴染から、恐らくは全力であろう手刀がぶち込まれたのは。
まったく同時の事だった。
しかくして、一瞬の内に視界が黒く染まっていくのを最後に、僕の意識は完全に刈り取られたのだ。
('A`)「う……ん……」
目を覚ますと、清潔感のある白い天井が目に映った。
どうやらここは保健室で、僕はベッドに寝かされているらしい。 - 163 :颯爽と場繋ぎ5レス:2009/05/10(日) 02:31:30.85 ID:CsWDCkp10
- ひとまず起き上がろうとしたが、体を覆う布団に妙な重量感があって、それは叶わなかった。
ノパ听)「……あ、ドクオ! 目が覚めたんだな!」
布団に突っ伏していたらしい、ヒートが嬉しそうな声を上げた。
ノパ听)「すまんな! ちょっと寝ちゃったみたいだ!」
目をごしごしと擦りながら、ヒートは言った。
その目は、微かに赤く充血している。
布団に視線を落とすと、丁度彼女の突っ伏していた辺りが、
濡れたように変色していた。
ノパ听)「その……悪かったな。初対面なのに、いきなり叩いたりして」
初対面と言う言葉が、胸に引っかかった。
僕が寝ている間に、彼女は何を考えていたのだろう。
('A`)「ヒート?」
思わず、彼女の名前が口から零れる。
驚いたように、ヒートの体がびくりと震えた。 - 167 :颯爽と場繋ぎ5レス:2009/05/10(日) 02:32:11.24 ID:CsWDCkp10
- ノパ听)「……覚えていたのか?」
('A`)「……ごめん。でもすぐに思い出したんだ」
ヒートが俯く。
細い眉が顰められ、歯噛みしたようだった。
ノハ )「……っ」
無言のまま、ヒートが右腕を振り上げる。
思わず反射的に、身を縮こめた。
けれどもいつまで経っても、腕は降って来ない。
かわりに、小さくしゃくり上げる声が、聞こえた。
顔を上げる。
同時に、ヒートが僕の胸に顔をうずめ、しがみ付いてきた。
ノハ )「寂しかったんだぞ……! お前と一緒にいられなくなって」
('A`)「……ごめん」
何も言えず、僕はただ謝る事しか出来なかった。
ノハ )「悲しかったんだぞ……! 忘れられたと思って」
('A`)「……ごめん」
やっぱり何も言えなくて、僕はもう一度謝った。 - 169 :颯爽と場繋ぎ5レス:2009/05/10(日) 02:32:53.80 ID:CsWDCkp10
- ノハ )「……まぁ、私は優しいからな。許してあげない事もないさ」
でもと、ヒートは言葉を繋ぐ。
ノハ )「ひとつ、してもらいたい事があるんだ。
子供の頃、ドクオが恥ずかしがって、どうしてもしてくれなかった事」
僕が恥ずかしがって?
一体何だろうか。
僕は思索を巡らせて――それを妨げるように。
或いは、最初から僕の意識を逸らす事が目的だったかのように。
ヒートの唇が、僕の唇に触れた。
ノハ*゚听)「えへへっ、これで許してあげる!」
驚きのあまり言葉も出ない僕に向けて、彼女はとても嬉しそうにそう言った。
おーしまい - 180 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:42:09.00 ID:CsWDCkp10
- 朝の淡い陽光が差し込む部屋の中で、二人は寄り添っていた。
(*^ω^)「あったかいおねー」
お世辞にも広いとは言えない部屋で、二人は仲良く寄り添っていた。
ξ*゚听)ξ「あったかいわねー」
ツンは内藤の肩に頭を乗せ、ブーンはその上からツンの頭に頭を乗せて。
二人はとても穏やかな時間を過ごしていた。
ξ*゚听)ξ「ねーぇ、ブーン?」
( ^ω^)「何だお? ツン」
ツンの声に、ブーンは頭を上げる。
ξ*゚听)ξ「えいっ」
そうして彼女の目の前に現れたブーンの頬に、彼女は悪戯な口付けをした。
思いがけず、ブーンの頬がへにゃりと緩む。 - 184 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:43:16.25 ID:CsWDCkp10
- (*^ω^)「おっ、やったおねー。お返しだおー」
そう言ってすかさず、ブーンは目の前で自分を見つめるツンに、顔を近づける。
ツンが期待と胸の高鳴りに眼を瞑り、
同時にぐるるるーと、ブーンの腹が愉快な音を立てた。
ξ*゚听)ξ「……ぷっ」
図らずも、ツンが笑いを零す。
ブーンは、とても気まずそうな顔をしている。
ξ*゚听)ξ「もー! ブーンのばかー!」
(;^ω^)「ちがっ……悪いのはこの腹の虫だお!」
ツンが笑いながらブーンを軽く叩く。
慌てて、ブーンは弁解にもなっていない弁解をした。
ξ*゚听)ξ「んもぅ……ホラ、もう一回」
(*^ω^)「おっ……」 - 186 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:44:26.16 ID:CsWDCkp10
- 気を取り直して、ブーンが再びツンに近づき、
今度はツンのお腹がきゅるるるーと、可愛らしい音を立てた。
二人はぽかんとして、暫し無言になる。
(*^ω^)「……ぷっ」
今度はブーンが、小さく笑い声を漏らした。
同時に、わたわたとツンが慌て出す。
瞬く間に、彼女の顔が真っ赤に染まっていった。
ξ///)ξ「わ、笑うなバカ!」
恥ずかしさのあまり、ツンは手を振り上げた。
くすくす笑いと笑顔はそのままに、ブーンが身を縮込める。
数拍、沈黙が流れ、
ξ///)ξ「ご飯、作ろっか……」
照れ隠しのつもりか、ツンは小さな声で提案した。 - 190 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:46:16.76 ID:CsWDCkp10
- ξ゚听)ξ「何が食べたい?」
彼女はキッチンへと足を運び、普段はツインテールにしている髪の毛を後ろに纏め上げる。
( ^ω^)「お肉!」
間髪入れずに、ブーンが高らかと宣言した。
ξ;゚听)ξ「アンタ……そんなんだから太るのよ?」
後ろ手にエプロンの紐を結ぼうと四苦八苦しながら、ツンは呆れた表情を浮かべている。
もっとも、何だかんだで仕方ないわねと、
彼女は肉と言うだけの情報でどのような料理を作ろうか、苦悩して考える訳なのだが。
ξ*゚听)ξ「〜〜♪」
鼻歌交じりにツンが包丁を扱う。
ちなみにメニューは結局、冷蔵庫にあった肉を焼くだけと言うとてもお手軽なものになった。
決して、普通のメニューでは炭の塊になってしまうからだとか、そんな理由ではない筈だ。
- 191 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:48:29.03 ID:CsWDCkp10
- (*^ω^)「……」
彼女の後姿をにやけながら見つめていたブーンが、不意に立ち上がる。
そして抜き足差し足で彼女へと歩み寄り、
(*^ω^)「ツ〜ン」
ξ*゚听)ξ「ひゃっ!?」
不意を突いてツンのわき腹辺りに手を回し、ぎゅっと抱き付いた。
思わず、ツンが素っ頓狂な声を上げる。
ξ*゚听)ξ「ちょ、ばか! 包丁使ってるのに危ないでしょ!」
(*^ω^)「おっおー、ブーンは気が変わっちゃったんだおー。やっぱりツンが食べたくなったんだおー」
背中ごしにツンに頬ずりをしながら、ブーンは楽しげに言った。
ξ*゚听)ξ「あぅ……へ、変な事言ってんじゃないの! この馬鹿!」
余りに恥ずかしかったのか、ツンは包丁を手にしている事も忘れてわたわたと暴れ出す。
慌てて、内藤は彼女を制した。 - 194 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:50:36.34 ID:CsWDCkp10
- ξ*゚听)ξ「んもぅ……ごはん、食べてから、ね?」
ようやく落ち着いたツンが体はそのままに振り返り、肩越しにブーンにそう告げる。
(*^ω^)「お……?」
ツンの唇から紡ぎ出された言葉に、ブーンは一瞬呆然とした。
(*^ω^)「おっおっ! 分かったお! 大好きだおツン!」
だが言葉の意味を理解するや否や、大声で愛を叫びながら再びツンを抱き締めた。
ξ///)ξ「ばっ……ほら、早く離れる! ……楽しい事は早い方がいいでしょ?」
春の陽気が満ちる部屋の中、緩やかに二人の時間は流れていく。
- 198 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:52:06.53 ID:CsWDCkp10
-
('A`)「……」
川 ゚ -゚)「……」
一組の男女が、本を読んでいた。
部屋の四方には身の丈の何倍もある本棚が、びっしりと並べられている。
360度、部屋を見回せばどこを見ても、視界に本棚が映る程だ。
本が傷むのを避ける為カーテンは閉ざされており、部屋の中は仄かな薄明るさに保たれている。
双方口を開く事はなく、ただページを捲る音だけが時折聞える位だ。
('A`)「……退屈ではないですか?」
ふと、ドクオが本から目を離し、顔を上げる。
場を包んでいた静寂を破り、彼は口を開いた。
川 ゚ -゚)「そうでもないさ」
同じく本からドクオへと視線を戻し、クーは答えを返す。
- 199 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:53:51.55 ID:CsWDCkp10
- ('A`)「……さっきから、ページの捲る音が、止まってますが」
ドクオの指摘に、クーは思わず「うっ」とたじろいだ声を漏らした。
('A`)「……退屈でしたら、もっと別の所に……」
川 ゚ -゚)「ドクオ、私は確かに本を読んではいなかったが、決して退屈ではなかったぞ?」
言葉の途中、クーは毅然とした口調で、自らの声を割り込ませた。
突然の変調に、今度はドクオが本に戻しかけた視線を再び上げ、たじろぐ。
川 ゚ -゚)「私はな、ドクオ。ずっとお前を見ていたんだ」
だからと、彼女は言葉を繋ぐ。
口元に微かな、だがとても嬉しそうで、悪戯な笑みを浮かべながら。
川 ゚ー゚)「お前の目が、途中から字面を追わなくなったのも、ちゃんと見てる」
彼女の言葉にドクオの眉がほんの僅か、顰められた。
その様を見て、更にクーはくすりと笑う。
観念したと言わんばかりに本を閉じ、ドクオが口を開いた。 - 202 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:55:28.88 ID:CsWDCkp10
- ('A`)「……まぁ、柄にも無く不安でしてね」
川 ゚ -゚)「……? 何がだ?」
ぽつり呟いたドクオに、クーは尋ねる。
('A`)「初めて家に呼んでみたものの、部屋はこんなですし、何より喋るのも得意ではありませんから」
弱々しく、消え入るような声でドクオは続けた。
少しの間、沈黙が蘇る。
川 ゚ー゚)「ふっ」
耐え切れないと言った様子で、クーが小さく笑いを零した。
怪訝な表情で、ドクオが彼女を見る。
川 ゚ー゚)「そんなの関係ないさ」
('A`)「……関係ない?」
意味が分からず問い返すドクオに、クーは鈍いなあと苦笑いした。 - 204 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:56:53.91 ID:CsWDCkp10
- 川 ゚ー゚)「私はただ、ドクオと一緒にいたくて、ここにきたんだ」
('A`)「……へ?」
予想外の発言に、ドクオが呆けた表情を浮かべる。
川 ゚ー゚)「本しかない部屋で、無口な上に口を開いても口下手なドクオと一緒の時間を過ごしたくて、私はここに来たんだ」
('A`)「……物好きですね」
直球な感情表現に照れが生まれたのか、ドクオは開いてもいない本に視線を移した。
とは言え彼の行動は余りにも分かり易過ぎて、逆にクーは笑みをより色濃い物にする。
川 ゚ー゚)「その物好きを家に呼んでくれたのは誰だ?」
にやりと笑いながら、クーは逸らされた顔を覗き込んだ。
見る見る内に、ドクオの顔が耳まで赤くなる。
('A`)「……明日、暇ですか?」
川 ゚ -゚)「……ん? あ、あぁ、暇だが」
突然飛躍した話題に、クーは少なからず困惑を覚えた。 - 206 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:57:44.30 ID:CsWDCkp10
-
('A`)「……明日は、どこか外に行きましょう」
やはり目は本の表紙へと向けたまま、ドクオは小さくそう告げた。
クーは一瞬呆けた表情を浮かべるが、それはすぐさま嬉々とした表情に変化する。
川 ゚ー゚)「あぁ、楽しみにしてるよ。何なら弁当を作ってきてもいい」
心底嬉しそうに、クーは答える。
川 ゚ー゚)「桜もまだ綺麗だろう。何たって、春なんだからな」
- 207 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 02:59:39.73 ID:CsWDCkp10
-
从 ゚∀从「……なぁ」
_
( ゚∀゚)「んー?」
一人の男と一人の女が、背中合わせに座っていた。
男はテレビに向かい、ゲームのコントローラーを両手に握りながら。
女は適当に傍にあった雑誌を広げ、読んでいる。
从 ゚∀从「お前なんでさー、アタシん部屋に来たんだ?」
藪から棒に、ハインはぶっきらぼうな口調でそう聞いた。
_
( ゚∀゚)「そりゃ……お前に会いたくて来たに決まってんだろ」
从 ゚∀从「……んじゃ、何でお前ゲームやってんだよ」
ジョルジュはゲームを止め、コントローラーを床に置いた。
そして一層、背後のハインの体重をかけてもたれ掛かる。 - 210 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:01:17.01 ID:CsWDCkp10
- _
( ゚∀゚)「そりゃ、お前が喋らないからだ」
ハインもジョルジュに合わせたかのように、ぱたんと音を立てて雑誌を閉じた。
从 ゚∀从「奇遇だな。アタシが喋らないのも、お前が喋らないからなんだぜ? 知ってたか?」
一呼吸置いて、ハインは続ける。
从 ゚∀从「普通よ、こう言うのは男から喋り出すもんだろ?」
_
( ゚∀゚)「ところがどっこい、男は聞き手に回るのが吉って考えもあるんだな」
ジョルジュの返しに、ハインは微かに顔を顰めた。
从 ゚∀从「……オーケイオーケイ、言いたい事はよーく分かった。お前はそこでゲームをやってろ」
言いながら彼女はジョルジュから背を離し、立ち上がり、
近くにあったソファに落ちるようにして寝転がった。 - 212 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:03:17.56 ID:CsWDCkp10
- _
( ゚∀゚)「……あちゃー」
しくじったと言わんばかりに、ジョルジュは言葉を零しながら頭を左右に振る。
それから這ってゲームまで近寄り電源を落とすと、
立ち上がってハインの寝ているソファに歩み寄った。
_
( ゚∀゚)「ハーイーン、悪かったよ」
从 ∀从「うっせぇ、アタシは今から寝るんだから静かにしてくれ」
聞く耳持たないと言わんばかりに、ハインはジョルジュに背を向け、丸まってしまった。
_
( ゚∀゚)「おーい、ハインー」
一切反応を示さず、ハインは狸寝入りしている。
_
( ゚∀゚)「俺が悪かったってー」
从 ∀从「……」
_
( ゚∀゚)「寝顔にチューしちゃうぞー?」
从 ∀从「死ね変態」
_
( ゚∀゚)「おー、やっと反応があった」
顔は見せないまま、ハインは微かに表情を苦くして歯噛みした。
- 213 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:04:50.45 ID:CsWDCkp10
- _
( ゚∀゚)「なーハイン、悪かったってー」
从 ∀从「……アタシはもう寝てる」
_
( ゚∀゚)「嘘つけ起きてんじゃねぇか」
从 ∀从「いーや寝てるね」
寝ているの一点張りに、ジョルジュは眉根を寄せる。
_
( ゚∀゚)「なぁー、悪かったって。いい加減……」
从 ∀从「……お前も存外鈍い奴だな。いいか? アタシは寝てるんだぞ?」
_
( ゚∀゚)「……?」
从 ∀从「だからだな……その」
言いながら、ハインはもぞもぞと動き出す。
体の陰に隠れていた横顔が姿を現して、彼女の白く艶やかな頬がジョルジュの目に映った。 - 216 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:06:49.27 ID:CsWDCkp10
- 从 ∀从「ほら……これなら分かるだろ?」
彼女の行動に、ジョルジュは首を傾げる。
だがしかし、
_
( ゚∀゚)「……あ」
突然何かに気が付いたらしく、ジョルジュは右手を拳に、左手を掌に形取り、それらを軽く打ち合わせた。
_
( ゚∀゚)「お前……昨日徹夜であのゲームやってたとか、そんなだろ? だから不機嫌だったのか」
从 ∀从「……っ! このニブチンやろ……」
見当外れの事を喋り出すジョルジュに業を煮やしたのか、ハインは勢い良くソファから起き上がる。
そのままの勢いで彼女は振り返り――
――ふと、ハインの唇に柔らかい何かが触れた。
彼女の目の前には、ジョルジュがいる。
視線が纏絡する程に近くで、右手をハインの顎に添え。
彼はハインに、口付けしていた。 - 218 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:07:43.83 ID:CsWDCkp10
- _
( ゚∀゚)「はっはー、引っかかったなバカめ!」
完全に不意を突かれ、ハインは最早呆然とするしかなかった。
从;゚∀从「なっ……ちょ、おまっ」
_
( ゚∀゚)「嫌だったか?」
从;゚∀从「いや……じゃないけど」
もごもごと、ハインは口篭る。
思い直してみるととても恥ずかしい事をして、またされたせいか。
彼女の顔は瞬く間に紅潮し、俯いてしまった。
从//∀从「その……もう一回、ちゃんと、な?」
それでも勇気を振り絞るようにして。
ハインは小さいながらもジョルジュに聞えるような声を紡ぎ出す。 - 221 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:09:49.33 ID:CsWDCkp10
- _
( ゚∀゚)「……あのーハインさん?」
从//∀从「な、なんだよ……」
ジョルジュの声にも顔を上げる事無く、目を合わせる事が出来ずに俯いたまま彼女は応えた。
頭を一掻きして、ばつが悪そうにジョルジュは続ける。
_
( ゚∀゚)「……何かもう、こっちまで恥ずかしい」
从//∀从「う、うっせぇ! いいからその……するぞ」
ソファに座ったまま、ハインはジョルジュの衣服の袖を引っ張った。。
相変わらず彼女の顔は真っ赤で、思わずジョルジュまで一層照れ臭くなってしまう。
やれやれと苦笑いを浮かべ、視線を逸らしながらも、
彼はソファに膝を落とし、ハインと顔の高さを合わせる。
不器用な愛情を示すには、これ位が丁度いい。
そんな事を考えながら、二人は再び口付けを交わした。 - 224 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:10:51.41 ID:CsWDCkp10
-
ノパ听)「おーいモララー! 遅いぞ、早く早く!」
坂道を駆け上がりながら振り返り、ヒートは恋人の名前を呼んだ。
(;・∀・)「……僕が遅いんじゃなくて、君が早いんだと思うよ……?」
彼女の大分後方。
彼女に付き合わされて、走りでもしたのだろうか。
息も絶え絶えに言葉を返しながら、モララーは坂を上っていた。
ノパ听)「もー! 早く早く!」
仕方なく足を止めて、ヒートはモララーを急かす。
むくれた様子で、彼女は頬を膨らませた。
(;・∀・)「……別にさ、坂の頂上は逃げたりしないんだから。少し位ゆっくり歩こうよ」
ノパ听)「むぅー、仕方ないなぁ」
頬の溜めた空気を唇を窄めて吐き出して、ヒートは坂を駆け下りる。
瞬く間に、二人の距離は縮んでいき―― - 226 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:13:22.23 ID:CsWDCkp10
- ノハ;゚听)「わーっとっと」
そのまま、勢い余って彼女はモララーの横を通り過ぎた。
彼女が自分の横を通過していくのを、モララーは呆れた表情のまま首を動かし、目で追った。
溜息を吐いて視線を前へ戻し、モララーはヒートが自分に追いつくのを待たず歩き始める。
ノハ;゚听)「あ、ひっどいな! 待ってくれたっていいじゃないのさ!」
わたわたとブレーキを掛け、再び彼女は坂を駆け上がる。
数秒もしない内に、彼女はモララーの隣に追いついた。
ノパ听)「むぅ、少しくらいまってくれたっていいだろう?」
ぶらぶらと揺れるモララーの右腕に抱きついて、恨めしそうな半目でヒートは彼を見上げた。
( ・∀・)「そうは言っても、君だって僕を置いて突っ走ってたじゃないか」
ノハ;゚听)「うぐっ……。それはホラ、早くモララーに見せてあげたいからであって……」
モララーの言葉に思わず、ヒートは目線を右へ逸らす。
決まりの悪そうに、ヒートは口をもごつかせていた。 - 228 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:16:10.72 ID:CsWDCkp10
- ( ・∀・)「……それなんだけどさー。僕の記憶の限りじゃ、この坂の上って何も無かったような……」
ノパ听)「そんな事ないだろ? きっとモララーも気に入るとおもうぞ?」
ヒートの言葉に、モララーは僅かに首を傾げる。
坂の上。
一体何があっただろうか。
思索を巡らせてはみるが、どうにも思い浮かばない。
そこそこに大きな、石畳の広場、木製のベンチと柵。
他には、何も思い浮かばない。
ノパ听)「お、ほらモララー。頂上が見えたぞ! 急ぐぞ!」
頂上を指差して、ヒートはモララーの腕を引いて走り出す。
(;・∀・)「ちょ……待って。今走ったら俺死ぬって。割かしガチで死ぬって」
未だ心臓が早鐘のように高鳴っているモララーが、若干掠れた声を零す。
ノパ听)「大丈夫大丈夫! お前は死なないさ! 私が守るからな!」
(;・∀・)「何その少年誌的なノリ! て言うか僕の死因多分そう言うのじゃないから!
多分肺とかさ、心臓とかさ、脳とかさ、その辺が絡んでくるから!
ねぇ、聞いてる? ヤバイって、僕の心臓パンクするって」 - 231 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:17:58.97 ID:CsWDCkp10
- モララーが何やら必死に抗弁するが、ヒートは一切聞えていないようだった。
いや、実際耳に届いていないのだろう。
彼女がモララーの手を引いて、二人は一気に坂の頂上まで上り詰める。
ノパ听)「どうだモララー! 凄いだろう!」
上り切るや否や、ヒートはモララーを手放して、一歩前に躍り出た。
そして目の前に広がる光景を誇るように、強調するように、両腕を大きく左右に広げる。
満開の桜を湛える大樹と、視界を埋め尽くす程に舞い散る花弁。
激しい動悸も、痛みを訴える肺も、呼吸さえも忘れて、彼は眼前の光景に魅入っていた。
ノパ听)「ふふんっ、何も無いだなんて、よくも言えたものだな!」
したり顔で、ヒートは振り返る。
完全に見惚れていたモララーが、はっと我に返った。
( ・∀・)「あぁ……うん、すごいよ。多分もう二度と、忘れない」
ノパ听)「当たり前だろ! むしろ覚えてなかった事がおかしい位だ!」
( ・∀・)「……まぁ、それは仕方ないって事にしといてよ」
だってさと、繋ぎの言葉が発せられる。 - 233 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:20:18.64 ID:CsWDCkp10
- ( ・∀・)「一人で見る桜なんて、つまんないからね」
舞い散る桜に釣られ朧気に散っていたモララーの視線が、ヒートへ定まる。
( ・∀・)「そこにヒートがいるから、僕は忘れないでいられるんだ」
暫し、静寂。
二人の時間が止まり、桜の花弁だけが時間と重力に従い、上から下へと散っていく。
微かに、ヒートが笑みを浮かべた。
しかくして、彼女は口を開く。
ノパ听)「……違うな! 間違っているぞ!」
桜吹雪の中、彼女は大声を張り上げた。
(;・∀・)「え……えぇー。何、今僕精一杯いい事言ったと思ったんだけど。
何? 駄目だった? むしろ嫌だった?」
まさかの、思いも掛けないヒートの言葉に、モララーは半ば呆然としながら問い掛ける。
対してヒートはどこか意地悪く、にやりと唇の端を吊り上げた。
- 234 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:22:37.55 ID:CsWDCkp10
- ノパ听)「私がいるべきなのは、ここじゃない」
言いながら、彼女は大きく一歩、左斜め前に出る。
モララーの、右隣へ。
ノパ听)「ここが、私のいるべき場所だ! 違うか? モララー」
彼の右腕にぎゅっと抱き付き、二の腕に頭を委ねて、彼女は問う。
( ・∀・)「……あぁ、その通りだね」
敵わないなと苦笑いをして、モララーは空いた左手でヒートの頭を数回撫でた。 - 236 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:23:50.63 ID:CsWDCkp10
-
薄暗い部屋。
カーテンから零れ入る仄かな陽光だけが、最低限の明るさを施している。
その部屋の中に、水音が響く。
ぬめり付くように執拗な水音が、断続的に続く。
音源は、部屋の隅の小さなベッドからだった。
白いシーツに覆われたベッドに腰掛ける二つの影が絡み合う度に、
水音は粘っこく部屋に満たされていく。
ζ(゚ー゚*ζ「んっ……ちゅ……」
影の片割れは、女性だった。
名前はデレ。
微かに上気した薄桜色の肌に、僅かな明かりを受けて輝く金色の髪。
宵闇を宿したかのように黒く大きな瞳はとろんと惚けて、朧気に焦点を失っている。
(´・ω・`)「あぁ……可愛いよ、デレ……」
もう片方は、男性だった。
名前はショボン。
端整な顔つきに、優しげな表情。
全体的に線の細いこの男は、眼前の可憐な美少女と抱き合うに、相応しいだけの風姿を持っていた。 - 238 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:24:49.08 ID:CsWDCkp10
- 二人が絡み合う。
行為の正体は、幾度となく繰り返される口付けだった。
口付けは長く、お互いを貪るように続いた。
時たま、息を継ぐ為に二人は顔を離す。
ζ(゚ー゚*ζ「は……ぁ……」
デレの口から、甘く艶かしい吐息が零された。
息継ぎはほんの一瞬。
そして再び、甘美な接吻が始まる。
舌と舌が絡み付き、互いの粘液が行き来する。
二人の間に境界は無くなり、蕩け合う。
ζ( ー *ζ「はぁ……んっ……」
興奮の余りか、口付けの最中にも時折デレは熱い吐息を漏らした。
ほんの僅か取り入れた酸素を失い、尚も彼女はショボンから唇を離そうとはしない。
軽い酸欠から半ば酩酊にも似た状態に陥り、デレは一層執拗に、ショボンの唇に貪り付いた。
デレの視界がぼやけ、霞んでいく。
最早自分がベッドの上にいるだなんて事は忘れ、得体の知れない浮遊感が彼女を支配する。
- 239 :颯爽と投下:28:2009/05/10(日) 03:26:48.73 ID:CsWDCkp10
- 口付けは続き、デレの視界は段々と霞んでいく。
彼女の目は完全に焦点を失しており、彼女の視界には既にショボン以外は何も映ってはいなかった。
世界には自分とショボンだけ。
(;´・ω・`)「っ、ぷはっ……」
限界に達したショボンが、デレを引き剥がす。
彼女の甘美な幻想は、流れ込む酸素によって打ち砕かれた。
視界は再び鮮明に映るようになり、下半身にはベッドに腰掛けた感覚が帰ってくる。
にも関わらず、彼女は不満げな表情を隠そうとしない。
ζ(゚、゚*ζ「……だめだよぉ。もっと……ね?」
言葉と同時、デレはショボンに抱きつく。
突然の事に体を支えられなかった彼は、デレ諸共ベッドに倒れ込んだ。
すかさず、デレはショボンの腹辺りに馬乗りになる。
ζ(゚ー゚*ζ「ショボン君……大好きぃ……」
倒れたショボンの背に腕を回し、彼女は再び彼の唇を貪らんと体を倒す。 - 242 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:30:06.76 ID:BiylPSgA0
- 深く深くまで、舌が纏絡する。
粘着質な水音が、部屋に響く。
二人の顔が離れた。
粘ついた唾が二人の舌を未だ繋ぎ、微かに漏れ入る陽光を受けて妖しく光る。
ふとショボンはデレの向こう側に、壁に掛けられた時計を見た。
思えば朝起きてからずっとこうしている気がする。
ぼんやりと、彼はそんな事を考えた。
ζ(゚、゚*ζ「やぁ……だめぇ……」
ショボンの視線が逸れている事に気が付いたのだろう。
デレは再び、彼と口付けを迫った。
口内に侵入してくる舌に、ショボンは諦めたように自らの舌を絡めていった。 - 245 : ◆P7LJ8EbA6M :2009/05/10(日) 03:32:18.44 ID:Ytpigg860
- はい、これにて投下終了でございます。
こんな夜遅くまで支援やレスを下さりありがとうございました。
皆さんもほのぼのして下さったようで何よりです!
最後の最後に猿さんとかもうね、IDが違うのはその為でございます。 - 298 :保守文5レス:2009/05/10(日) 12:01:25.89 ID:05IhYxad0
- ( ・∀・)「好きな人? ……うーん、いないなぁ」
放課後、教室の隅から聞こえた何気ない雑談に、私の心は深く抉られました。
私が密かに、自分で言うのもなんだが、とにかく密かに心を寄せている男子。
その彼の口から、好きな人はいないだなんて宣告を受けたのですから。
ポジティブシンキングにいくならば、
まだ誰にでもチャンスがあるとも取れるでしょう。
けれども、それは私が人並み以上に可愛ければ、の話です。
女子の間では密かに人気のある彼、モララー君。
地味で何の取り得もない私では、到底見合わいません。
ζ(゚ー゚*ζ「あーあ」
小さくぼやいて、私は教室を後にしました。
部活に逃げた、と表現してもいいでしょう。
もっとも逃げた先でも、私は地味な存在でしかないのですが。
ふと油断したら、目の奥から熱いものが込み上げてきました。
けれどもそれを流してしまったら本当に負けな気がして、
私は蛍光灯が規則的に並ぶ天井を見上げながら部活へと向かったのです。
- 299 :保守文5レス:2009/05/10(日) 12:02:27.23 ID:05IhYxad0
- ζ(゚ー゚*ζ「おつかれさまでしたー」
そして、部活も終わりました。
先輩方に、普段よりも動きにキレがあると言われましたが、まったくうれしくありませんでした。
明日からはもう、彼の顔を密かに盗み見ても、
幸せな気持ちになる事は出来ないだろうと思うと、また目の奥が熱くなってしまいます。
ζ(゚ー゚*ζ「あ……」
思わず、声が漏れました。
校門の前に、丁度モララー君の姿を捉えたからです。
あと数秒もすれば、彼は私の視界から出て行くでしょう。
私はそれを待ってから、ゆっくりと帰ればよかったのです。
ζ(゚ー゚*ζ「……モララー君!」
なのに何故でしょう。
私は、彼を呼ばずにはいられませんでした。
( ・∀・)「ん? あぁ、デレさんじゃん。どうしたの?」
モララー君が足を止めて、私の方へ振り返りました。
- 300 :保守文5レス:2009/05/10(日) 12:03:29.58 ID:05IhYxad0
- ζ(゚ー゚*ζ「あ……」
勢いで呼び止めてしまったのです。
どうしたも何も、用事なんてあろう筈もありません。
言葉は出てないのに、口だけが何かを言おうと開いたり、
けれども臆病風に吹かれて閉じたりを繰り返しています。
モララー君が、疑問の表情を浮かべて首を傾げました。
ζ(゚ー゚*ζ「その……」
たった一言、何とか搾り出しました。
これで、もう後には退けない。
なんとなくそんな感じがしました。
もうどうにでもなれ、です。
どうせ諦めるなら、変な希望は残さない方が、私も幸せでしょう。
ζ(゚ー゚*ζ「ずっと……ずっと好きでした! 付き合って下さい!」
私の告白に、モララー君は驚いた様子でした。 - 302 :保守文5レス:2009/05/10(日) 12:06:16.74 ID:05IhYxad0
- 暫しの間、沈黙が続きます。
私の中では、とても大きな絶望と諦観が、
それなのにもしかしたらと言う馬鹿馬鹿しい希望が、ひしめき合っていました。
( ・∀・)「……」
ゆっくりと、モララー君の口が開かれます。
( ・∀・)「……ごめん」
紡ぎ出された言葉は、死刑の宣告でした。
少なくとも、私にとってはそれくらい重いものでした。
私は今、どんな表情をしているのでしょう。
多分、とても酷い表情をしているに違いありません。
夕闇が、私の顔を隠してくれるといいのですが。
またも言葉を追い抜いて、口だけが開きました。
「そっか、変な事言ってごめんね」
言うべき事は、もう頭の中に出来ています。
( ・∀・)「……だからさ、まずはお友達からとか、どう?」
自らの恋にとどめを刺そうとした、まさにその瞬間。
私は、彼が何と言ったのか、一瞬分かりませんでした。 - 304 :保守文5レス:2009/05/10(日) 12:07:23.93 ID:05IhYxad0
- けれどもそれを理解すると、胸の奥から一気に暖かいものが溢れるような、
そんな感覚が私を支配しました。
私は今、どんな表情をしているのでしょう。
多分、見られるのが恥ずかしいくらい、嬉しそうな表情をしているに違いありません。
お友達からと言われたばかりなのに。
嬉しさのあまり私は、彼に飛びついてしまいました。
おーしまい
- 395 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 19:41:25.49 ID:vIAi+XkO0
- とあるお屋敷の、広いお庭。
深い緑を湛える葉と、散りばめられた紅い花で織り成された垣根。
その中央に備えられたテーブルを、三人の少女が囲んでいた。
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ、おねーちゃん。こーちゃおいしいねー」
一番幼い少女は、名前をデレと言う。
太陽を閉じ込めたような金色の瞳に、小さな鼻、淡い桜色の曲線で描かれた唇。
微かに波打った金髪は陽光を受けて輝きを放っており、
そして幼子特有の白くも暖かな肌の色が、それらの全てを引き立てる。
川 ゚ー゚)「はは、デレが好きなのは紅茶じゃなくてお茶菓子の方じゃないのか?」
一番大人びた少女はデレの姉、名前はクー。
デレよりも大人びた、どこか冷たさを覚えさせる白肌に、整った顔立ちをしている。
さらりと流れる黒髪を微風に揺らして、彼女は微笑んだ。
ζ(゚、゚*ζ「むー、ちがうもん! こーちゃもおいしーもん!」
ξ゚ー゚)ξ「ほらほら落ち着いて。はい、クッキー」
微笑みながら、クーとデレの中間程の少女がデレを宥める。
彼女の名前はツン。
デレがあと数年成長すれば、彼女のようになるだろうか。
デレよりも長く、デレと同じように波打った金髪を煌かせて、
ツンは小動物に餌を与える風な要領でデレの口へクッキーを運ぶ。
- 396 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 19:42:10.54 ID:vIAi+XkO0
- ζ(゚ー゚*ζ「あ、あーん!」
ミルクやバターをふんだんに使った小金色のクッキーを齧り、
デレは心底幸せと言った表情を浮かべた。
ξ゚ー゚)ξ「ふふ、デレは本当に可愛いわね」
ツンが微笑みを浮かべながらデレの額を撫でる。
川 ゚ -゚)「……」
直後に、クーの持っていた湯気の立ち上るカップがさりげなくテーブルの下へ隠れた。
彼女は軽く手首を振るい――なみなみ満たされていた熱い紅茶が、彼女の足に直撃する。
ξ#゚−゚)ξ「――――――ッッ!!!」
ζ(゚、゚*ζ「あれ? ツンおねーちゃんどうしたの?」
川 ゚ー゚)「さぁ、どうしちゃったんだろうな? そんな事よりほら、もう一枚クッキーはどうだ?」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、わーい。たべるたべるー」 - 398 :3/16:2009/05/10(日) 19:43:08.17 ID:vIAi+XkO0
- クーの指に摘まれたクッキーに、デレは顔を近づける。
川 ゚ー゚)「おーっと、届かなかったな。ほら、もう一回」
彼女がクッキーを口にする直前に、クーはすっと手を引いた。
寸での所でお預けを食らって、デレはむくれた様子で頬を膨らませる。
ζ(゚、゚*ζ「むー、クッキー!」
川 ゚ー゚)「はは、ごめんごめん。ほーら」
クーの指が、クッキーがゆっくりと差し出される。
ξ#゚−゚)ξ「……」
だがそうはさせまじと、ツンは自らの髪飾り、
銀色の細長いそれを取り外し、クーの太股に突き立てた。
深くは刺さらなかったまでも、先端が皮膚と肉を穿ち、じわりと血が滲む。
川# - )「――――――っ!!」
ζ(゚、゚*ζ「クーおねーちゃん、クッキーちょうだいよー」
ξ゚ー゚)ξ「まぁまぁデレちゃん、おねえちゃんはちょっとだけ意地悪なのよ。
はい、クッキーなら私があげるから、ね?」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、やったー!」
- 399 :4/16:2009/05/10(日) 19:44:13.67 ID:vIAi+XkO0
- 川 ゚ー゚)「……まったく、ツンはいつも私の出番を取っていくな」
未だ太股から続く出血と鈍痛などおくびにも見せず、クーは微笑んだ。
ξ゚ー゚)ξ「ふふっ、油断してる姉さんが悪いのよ?」
血の付いた髪飾りを拭きもせずに戻し、ツンもまた笑顔を返す。
川 ゚ー゚)「はは、確かにな。……おっと、砂糖が空っぽだ」
微笑みはそのままに、クーはちらりとデレを見る。
川 ゚ー゚)「デレ、ちょっとお願い出来るかな?」
そう言って、彼女はこっそりテーブルの下に捨てて空になった砂糖入れを、デレに手渡した。
ζ(゚ー゚*ζ「うん、いってきます!」
元気一杯の返事と共に、デレは意気揚々と走り出す。
- 400 :5/16:2009/05/10(日) 19:45:45.95 ID:vIAi+XkO0
- 川 ゚ -゚)「……さて」
ξ゚听)ξ「……テーブルの下がお気に入りみたいね、いっそ自分もそこに這い蹲ればいいのに」
デレに向けていた時の面影すら感じさせない冷徹な目付きで、
テーブルに残った二人はお互いを睨みあった。
川 ゚ -゚)「まぁそう噛み付くな。私達は野蛮人じゃないんだからな」
ξ゚听)ξ「それもそうね。それじゃまずは、お互いの主張を確認しましょ?」
ツンが言い終えて、二人は全くの同時に口を開く。
ξ゚听)ξ「デレは私の物」(゚- ゚ 川
綺麗に、とても綺麗に二人の声は重なって。
同時に、クーは右手人差指と中指を立てて、
ツンは再び髪飾りを手に取って、互いの眼球へと突き出した。
双方の眼球に突き刺さらんとしていたそれらは、
両者の空いた左手によって、それぞれ阻止される。 - 402 :6/16:2009/05/10(日) 19:47:17.75 ID:vIAi+XkO0
- 川 ゚ -゚)「妹だからと言って容赦はせんぞ……」
突き出した右手と受け止めた左手を小刻みに震わせて、クーは歯を食いしばりながら言った。
ξ゚听)ξ「あら? さっきの宣誓で姉妹の縁など切れた物だと思ってたけど?」
同じく攻守の両手を痙攣させ、ツンは額に一筋冷や汗を垂らしながらも精一杯の皮肉を吐き掛ける。
力は、完全に拮抗していた。
互いが互いを睥睨したまま、二人は両腕に血管が浮き出るまでに力を振り絞る。
ほんの少しずつではあるが、両者共に右手が進み、左手が下がっていく。
そして、
ζ(゚ー゚*ζ「ただいまー! おさとーもってきたよー!」
川 ゚ー゚)「おぉ、おかえり」
ξ゚ー゚)ξ「ほらほら、そんなに急いだら転んで零しちゃうでしょ? ゆっくりでいいのよ?」
砂糖の容器を抱え、デレが満面の笑顔で帰ってきた。
それに気づくや否や、二人は即座に手を引き優しげな微笑みを浮かべる。
その様子は、どこからどう見ても仲の良い、微笑ましい姉妹のお茶会だった。
- 403 :7/16:2009/05/10(日) 19:48:54.30 ID:vIAi+XkO0
- ζ(゚ー゚*ζ「はい、おさとー」
少し背伸びをして、デレはテーブルの上に砂糖の容器を置く。
余りに可憐な動作に、二人の姉は同時に彼女の頭を撫でた。
ζ(゚ー゚*ζ「えへへ」
嬉しそうに、デレは笑顔を見せる。
まさか、自分の頭の後ろで二人が盛大に手を抓りあっているとは、
彼女は夢にも思わないだろう。
川 ゚ー゚)「ん? ……デレ、後ろを見てごらん?」
皮膚が捩れる程の抓り合いにも笑顔を崩す事は無く、クーは軽やかな口調で言った。
無論、デレが振り向くよりも早く、
相手の手を離し何事も無かったかのように装った上で。
ζ(゚ー゚*ζ「ふぇ? ……あ、ちょーちょさんだぁ!」
ぱっと顔を輝かせて、デレは走り出す。
その様子にクーはやれやれと言った調子の笑顔を浮かべた。
同時にツンの視線がほんの僅か、デレと蝶々の方に逸れた事は、見逃さぬまま。
- 404 :8/16:2009/05/10(日) 19:49:50.58 ID:vIAi+XkO0
- 川 ゚ー゚)「ほらほら、そんなに走ると危ないぞ」
優しく、どこかからかうような口調で言葉を紡ぎながら、クーの右手がツンの髪飾りへと走る。
意識がデレと蝶々に逸れていたツンは、その事に対応が出来なかった。
一秒の半分にも満たない時間で、髪飾りが抜き取られる。
そしてツンがようやくその事に気が付いた時には、
クーは既に彼女の視界から消失していた。
彼女の行き先は、テーブルの下。
完全に出し抜かれた事に狼狽するツンの足に、
クーは全身全霊を込めて髪飾りを突き刺した。
ξ# )ξ「――――――ッ!?」
声にならない悲鳴が上がる。
ツンの足を地面に磔り付けた事を確認して、クーは立ち上がった。
椅子から尻を離す事の出来ないツンを見下して、彼女は勝ち誇った笑みを零す。
川 ゚ー゚)「ふふっ……本当にデレは可愛いなぁ」
テーブルを離れて、クーはデレと戯れた。 - 406 :9/16:2009/05/10(日) 19:53:06.80 ID:EqoS3e380
- ζ(゚ー゚*ζ「あれ? ツンおねーちゃんはいっしょにあそばないの?」
不思議そうに、デレが尋ねる。
ξ゚ー゚)ξ「紅茶を新しく注いじゃってね。冷めちゃったら勿体無いから。ごめんね?」
苦悶の痛みと腸が煮えくり返りそうな怒りを笑顔の内に押さえ込んで、ツンはにこやかに返した。
ζ(゚、゚*ζ「むぅー、つまんなーい」
不機嫌そうに言って、デレは頬を膨らませる。
川 ゚ー゚)「ほらほら、あまり我侭を言うんじゃない。それより、私と遊ぼうじゃないか」
表面は姉を困らせる妹に対する苦笑いを、
内心ではツンを完全に出し抜いた事に対する歪な笑みを浮かべていた。
ξ゚ー゚)ξ「……あ、そうだわデレちゃん。キャンディがあるんだけど、欲しい?」
笑顔の仮面は完璧なままに、ツンは問い掛ける。
当然、デレは顔をぱぁっと明るくさせて大きく頷いた。 - 408 :10/16:2009/05/10(日) 19:53:53.12 ID:EqoS3e380
- ξ゚ー゚)ξ「じゃぁ、はい。ちゃんと受け取ってよ、クー姉さん」
椅子に腰掛けたまま、彼女はキャンディの包みを二つ、クーに投げ渡した。
黒い包みと、白い包みの二つを。
ξ゚ー゚)ξ「黒い方は、確か日本の飴だわ。白い方は……何だったかしら。
何か特別な成分が入っているとか……」
芝居がかった口調の後に、彼女は一旦言葉を切る。
そしてクーに向けて、口角を異様に吊り上げた歪な笑みを見せた。
ξ゚ー゚)ξ「そうそう、アクロメリン酸……だったかしら」
ツンの楽しげな声に、びくりとクーの体が硬直する。
飛来したキャンディを、彼女は取り落としてしまった。
アクロメリン酸。
量が少なければ死には至らないものの、長時間激痛が続く毒薬だ。
もっともデレのような幼児であれば、例え少量でも十分死に至る可能性はあるが。 - 410 :11/16:2009/05/10(日) 19:54:42.07 ID:EqoS3e380
- ζ(゚ー゚*ζ「わぁ、おいしそー」
デレが屈み込んで、キャンディへと手を伸ばす。
白い包みへと、段々と手が近づいていく。
驚愕と憤怒の入り混じった表情で、クーはツンを睨みつけた。
本当にデレが食べてしまったら、どうするつもりなのだと。
対してツンは、相変わらずの歪んだ笑顔を彼女に返す。
その笑顔には暗に、クーなら当然食べるだろう。食べなければ、デレが食べてしまうのだから。
そんな悪意が込められていた。
それが分かっているからこそ、クーは更に顔を顰める。
だが、迷っている時間はない。
川 ゚ー゚)「……悪いな、デレ。この白い方は、お姉ちゃんが食べたいんだ」
素早く屈み、デレの手を追い越して、クーは白いキャンディを拾い上げた。
- 413 :12/17:2009/05/10(日) 19:56:22.23 ID:EqoS3e380
- ζ(゚、゚*ζ「えー」
ξ゚ー゚)ξ「こらこらデレちゃん、クーお姉ちゃんを困らせないの。黒い方も美味しいわよ?」
ぶー垂れるデレを窘めるようにツンは言う。
同時に、クーに早く食べろと促すかの如く、邪悪な笑みを送った。
クーは顔を顰め、とは言え逆らう事など出来る訳もなく。
白いキャンディが、口に含まれた。
数秒遅れて、クーが激痛に身を捩る。
川 - )「――――ッ!?」
全身の内側に火を灯され、血肉も神経も焼き焦がされるような痛みが、彼女を襲った。
動悸と呼吸が乱れ、思わず膝を地面に突く。
立っていられない程の激痛だった。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ? おねーちゃん、どうしたのー?」
疑う事を知らない、無垢な瞳がクーに向けられる。 - 415 :13/17:2009/05/10(日) 19:58:26.92 ID:EqoS3e380
- 笑え、笑え、今すぐ微笑むんだ。
命令が、クーの頭の中で反響する。
川 ゚ー゚)「……い、いや何でもないよ。ただちょっと、疲れてしまったみたいだ」
ζ(゚ー゚*ζ「そっかー。大丈夫?」
川 ゚ー゚)「あぁ、大丈夫だとも。……おや? 蝶々がどこかへ行ってしまったぞ?
探して来たらどうだ? デレ」
目にも留まらぬ突きで蝶を捕らえ、握り潰した右手を背に隠し、クーは言った。
全てが見えていたツンが、余りの白々しさに鼻で笑う。
ζ(゚ー゚*ζ「あれ!? ホントだ。じゃぁちょっといってくるね!」
川 ゚ー゚)「あぁ、行ってらっしゃい」
緑と紅の垣根に消えていったデレを見送って、彼女は笑いながら手を振った。
そして――ツンは足に刺さっていた髪飾りを引き抜き立ち上がり、
クーは激痛を訴える体に鞭を打って拳を握り、体勢をすっと低くした。 - 417 :14/17:2009/05/10(日) 19:59:48.49 ID:EqoS3e380
- ξ゚ー゚)ξ「あらあらお姉さんったら、毎日紅茶とクッキーばかり食べてるからよ?」
川 ゚ー゚)「はは、そうかもな。仕方ない、ちょっと運動に付き合ってくれるか? ツン」
言うや否や、クーは地を踏み締め駆け出した。
一蹴りごとに加速して、ツンとの距離が縮まっていく。
迫り来るクーの顔面に、髪飾りが突き出された。
だが手首の辺りを腕で弾かれ、突きは大きく逸れて空を穿つ。
同時に、懐への踏み込みと共に放たれた肘鉄がツンの脇腹へと減り込んだ。
川 ゚ー゚)「なんだ、そう言うツンも運動不足じゃないか」
ξ゚ー゚)ξ「あらホント。ちょっと二人でお遊びでもしましょうか」
言葉だけは優雅に、仲睦まじく。
されど二人は憎悪の限りを込めて、手足を繰り出す。
ξ゚ー゚)ξ「そうね、思えばお姉様とこうして遊ぶのも久しぶりだわ」
眼球狙いの突きをフェイクに、ツンは渾身の力を込めて足を蹴り上げる。
突きを受けようと身構えたクーの股間に、彼女の爪先が突き刺さった。
子宮と恥骨におぞましいまでの衝撃が走り、彼女は口から粘っこい唾液を垂らし崩れ落ちる。
地に膝を突いたクーに追撃の裏拳が振るわれ、しかし彼女は更に深く身を後ろに倒す事で回避した。
そこから足を頭の方へ巻き上げ、手首を返し掌を地に付けて、それらの反動を利用して跳ね起きる。
全体重の乗せられた足がツンの腹部に減り込んで、彼女は体をくの字の折り曲げて宙に浮いた。
- 418 :15/17:2009/05/10(日) 20:01:05.88 ID:EqoS3e380
- 数秒を経て地に転がったツンが、胃液と唾液の混合物を撒き散らす。
一方でクーも、未だ全身を駆け巡る毒の激痛に、背を弓なりに反らせて身悶えした。
ξ;゚听)ξ「……っ、一つ……いいかしら?」
川;゚ -゚)「……な、なんだ?」
お互い指一本動かせない状態の中で二人は言葉を交わす。
ξ;゚听)ξ「このままじゃ埒が開かないから……もうデレに聞きましょう? 誰が好きなのかって」
川;゚ -゚)「そう……だな……」
ζ(゚ー゚*ζ「え? この家で一番好きな人?」
ξ゚听)ξ「えぇ、そうよ」
川 ゚ -゚)「名前が恥ずかしいなら、ヒントだけでもいいぞ?」
ζ(゚、゚*ζ「えー、いいけど……じゃぁ、はずかしいからおねーちゃんたちもいっしょにいお?」
- 419 :16/17:2009/05/10(日) 20:02:09.94 ID:EqoS3e380
- ξ゚听)ξ「……いいわよ」
川 ゚ -゚)「じゃぁせーので言うんだぞ? ……せーのっ」
ξ゚听)ξ「この家で一番年下の子!」(゚- ゚ 川
ζ(゚ー゚*ζ「この家で一番年上の人!」
ξ;゚听)ξ「……へ?」(゚- ゚;川
( ´∀`)「おーいお前達。お茶会もいいけど、そろそろ入ってきなさい」
ζ(゚ー゚*ζ「あ、はーい、おとうさん! いまいきまーす!」
- 420 :17/17:2009/05/10(日) 20:03:06.07 ID:EqoS3e380
- ξ゚听)ξ「……ねぇ、あのキャンディ。美味しかった?」
川;゚ -゚)「……いきなり何を?」
ξ゚ー゚)ξ「美味しかったら、今度はお父さんにもあげようかな……ってね?」
川 ゚ー゚)「……あぁ、なるほど。そう言うことなら、とてもおいしかったぞ?」
ξ゚ー゚)ξ「うふふふふ」
川 ゚ー゚)「ははははは」
おーしまい - 423 : ◆P7LJ8EbA6M :2009/05/10(日) 20:04:42.41 ID:EqoS3e380
- これにて投下終了です。
違うんだよ、表面ほのぼの中真っ黒なさ、たこ焼きみたいなのが書きたかったんだよ。
支援やレスありがとうございました。 -
万物さん
ありがとうございました
Backよりあとには被害者たちの声をまとめました
Back
- 183 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:42:54.99 ID:XcBrnVOl0
- 甘い、甘すぎるぞ!
支援 - 185 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:43:31.30 ID:uhNOjLqoO
- またニヤニヤさせてくれる作品が来たな支援
- 187 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:45:13.55 ID:58Uu9vwE0
- ほのぼのってか甘々じゃねえかあああ
ちくしょう支援 - 189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:45:58.82 ID:EZ7WacUx0
- ほのぼのできるかちくしょう・・・っ
悶絶私怨 - 195 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:51:42.68 ID:Jmw/vvViO
- 畜生ブーン死ねばいいのにwwwwww
悔しいのうwwww
- 196 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:52:00.22 ID:58Uu9vwE0
- おいwwww
これでほのぼのしろって言うのかwwww
でも支援 - 200 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:54:54.82 ID:Jmw/vvViO
- これがほのぼの……?
殺戮兵器の間違いだろう……
支援
- 201 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:55:17.61 ID:XcBrnVOl0
- HPが減っていく…
- 203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:56:20.84 ID:58Uu9vwE0
- インテリイケメンっぽいドクオが
無性にむかつくんだがwwww - 205 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 02:57:42.03 ID:uhNOjLqoO
- ウツダシノウ……
リア充は死ねばいいのに - 214 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:05:57.26 ID:Jmw/vvViO
- 甘いよ……甘すぎるよ……
- 217 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:07:20.34 ID:EZ7WacUx0
- ラブラブほのぼの祭とか聞いてねえぞ!
でもハインジョルジュがいいので支援 - 223 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:09:57.79 ID:uhNOjLqoO
- 取りあえず、ID:CsWDCkp10は俺達を悶え殺す大量殺人鬼だとよく分かった
いいぞもっとや……やってくださいお願いします - 225 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:12:31.94 ID:f852yLA7O
- 俺はもう駄目だ…ぐふぅ
- 227 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:15:40.41 ID:Jmw/vvViO
- 甘酸っぺぇ……
- 230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:16:19.37 ID:58Uu9vwE0
- ほのぼのラブラブ祭りだと…
聞いてないぞ!
支援 - 232 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:20:03.32 ID:f852yLA7O
- ぐふぅ
- 235 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:22:52.32 ID:58Uu9vwE0
- ID:CsWDCkp10…
何人の死傷者を出す気だ… - 237 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:24:27.52 ID:EZ7WacUx0
- うあああっ俺はもうだめだ・・・
ID:CsWDCkp10・・・おぼえてやがれ・・・ - 240 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:27:42.26 ID:Jmw/vvViO
- くそ……コイツ、皆殺しにするつもりかよ……
- 241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:29:56.48 ID:U3UuOzN3O
- ID:CsWDCkp10はほのぼのの意味を辞書で引くべき。そうすべき
- 243 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:31:07.82 ID:uhNOjLqoO
- グフゥ……
俺はもうダメだ……
- 244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:32:10.03 ID:f852yLA7O
- おのれぇCsWDCkp10めー
なぜ俺の弱点属性を的確に突いてげふぅ
- 246 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:33:41.02 ID:+QzKAZSJO
- 空気読めてるとでも思ってんのか
- 247 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:33:45.66 ID:Jmw/vvViO
- 貴様一体何人の命を奪ったと思ってる!
乙!
- 248 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:35:21.54 ID:f852yLA7O
- 俺の残機はもうないよ乙
- 249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:36:27.38 ID:RBX43RvpO
- 非常にささくれましたありがとうwww
新参か・・・
- 250 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:40:11.32 ID:58Uu9vwE0
- 覚えておくぞ…万物…
乙!
- 251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:42:27.89 ID:uhNOjLqoO
- 万物……貴様だったのか
合作だから来るとは思ったが、まさかこんなときに来るとはな……
想定外だったんだぜ
- 252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:43:33.42 ID:XcBrnVOl0
- くそ…もうだめだ…
乙
- 253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:48:15.57 ID:EZ7WacUx0
-
∩___∩ |
| ノ\ ヽ |
/ ●゛ ● | |
| ∪ ( _●_) ミ j
彡、 |∪| | J >>249
/ ∩ノ ⊃ ヽ
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
- 254 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 03:51:24.62 ID:qJaVow0XO
- ほのぼのじゃなくてただのエロゲじゃねーか
- 255 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 04:03:03.26 ID:PCNuLYJWO
- 乙!
破壊力やべぇ - 311 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 13:24:33.07 ID:LIwH2VEMO
- 恋愛要素のない日常ほのぼの祭じゃないのか
- 312 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/10(日) 13:26:58.50 ID:RBX43RvpO
- まぁそんな但し書きはないわけだがな・・・