プロローグ
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:03:28.33 ID:1UcDR2DE0
「もう聞こえてはいないと思うお。でも、これだけは言おうと思って……」


白い天井、白い壁。白いシーツに白いカーテン。何から何まで白に調えられたその部屋には、僕と彼女しかいなかった。


「お別れの挨拶を、しようと……思って」


窓から差し込む光どころか、彼女の顔も真っ白。唯一色を持つのは……僕以外で、だが……彼女の金髪だけだろうか。ほんの少しだけ触れた彼女の指はやはり白くて、思いのほか冷たくて、かなしくて、さびしかった。


「……きみがいなくても、ちゃんとやっていくお。たぶん…きっと…恐らく、うん」


彼女は瞼を伏せたままだ。眠っている。深い、深い眠りだ。
僕はもう、二度とその瞳を見る事は出来ない。


「い、色々と不安はあるお……でも、デレだけは、ちゃんと育てるお。約束するお。……せめてあの子だけでも、守り抜くお」









「きみを守ってあげられなかったお。本当にごめんお……ツン」

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:05:43.11 ID:1UcDR2DE0
プロローグ




フライパンを火に掛け、油を少したらす。
程よく熱されたところで、左手で卵を割り、片手でフライパンへ流し入れる。案の定油がはね、手の甲に少しとんだ。少し熱い。
じゅうう……と、熱いテフロンの上で白身が音をたてる。
まあ、いわゆる目玉焼きを作っているわけなんだ。
今はそれなりに上達したとは思うが、料理をはじめたばかりの頃はひどいものだった。


ζ(う−`*ζ「……おとーさん、おはよー……」

( ^ω^)「おはよーさんだお、デレ。早く顔を洗ってくるお」

ζ(う−`*ζ「んー」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:07:16.10 ID:1UcDR2DE0
眠たそうな声の主に一度振り向き、声を掛ける。やはり眠たそうな声が返ってきた。娘がキッチンから姿を消した(恐らく洗面所に向かったのだろう)のを見送ってから、フライパンに向き直る。
うん、なかなか良い焼き加減だ。
火を止め、目玉焼きをフライ返しで皿に取り分ける。
既に用意しておいたサラダやスープとともにテーブルに運び、準備完了。ちょうど、トースターでパンが焼けたタイミングだ。


ζ(゚ー゚*ζ「おとーさん、かおあらったー」

( ^ω^)「目は覚めたかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん!」

( ^ω^)「じゃ、朝ご飯を食べるおー」

ζ(^ー^*ζ「はーい! いただきまーす!」


まだパジャマ姿だが、どうやらちゃんと覚醒したらしい娘……デレは、喜び勇んで席によじ登った。


( ^ω^)「今日はおばーちゃんちに寄らなくてもいいお。おとーさんは、今日は早くお仕事が終わるから」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんと!? じゃあ、よるはごほんよんでくれる?」

( ^ω^)「もちろんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「ぜったいぜったい、やくそくだよ?」

( *^ω^)「おっお、絶対絶対、約束だお」

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:09:27.67 ID:1UcDR2DE0

デレはいい子だ。仕事のためになかなか一緒にいてやれない父親を、こんなにも慕ってくれる。
フォークを置いて、読んでほしい絵本を指折りリストアップするデレに食事を促しながら、思わず、笑みがこぼれた。
彼女の無邪気な笑顔が、ふと、最愛の女性のそれと重なった。





 * * *





ξ ゚听)ξ「ほら、遅刻するよ! さっさと出ろうすのろ!」

( うω-)「んおー……くっそねみぃおー……」

ξ ゚听)ξ「そんなあんたよりもずっと早起きなわたしはなんなの、馬鹿たれ」

(;^ω^)「ネ申だお……ほんと、よく出来た妻だお……ふぁああ」

ξ ゚听)ξ「当たり前でしょ! わたしがしっかりしなきゃ、あんた、遅刻魔でクビになるじゃん。路頭に迷いたくはないからね」


こうして僕がだらだらとパジャマを脱ぎ、スーツに着替えている間に、彼女はてきぱきと僕の出掛ける仕度をしてくれる。
僕が自分でやると大抵忘れてしまうティッシュ、ハンカチはもちろん、美味しい美味しいお弁当も鞄に詰め込んでくれていた。


8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:12:14.31 ID:1UcDR2DE0
( ^ω^)「いつも助かるお。デレの世話も任せっぱなしで、なんだか申し訳ないお……」

ξ ゚ー゚)ξ「はん、今さら何言ってんの? いつものことじゃない。あんたはあんたの事だけ考えてりゃいいの。下手に手出しされたら邪魔なだけだわ」


家事も育児もしっかりこなして、僕のフォローまでしてくれる。ほんとにすげー妻だ。
僕がそう言っても、彼女は僕を軽く罵倒して流してしまう。そこに確かな愛情があることを、僕は知っている。とても嬉しかった。


ξ ゚听)ξ「今日はお義母さんが夕飯を御馳走して下さるんだから、早く帰ってきなさいよ」

( *^ω^)「お! カーチャンが来るのかお。絶対、絶対早く帰るお!」

ξ#゚听)ξ「……わたしのより期待されてるのが腹立つー。気持ちはわかるけどさあ」


今日は我が家に僕の両親が来る予定だったが、まさか食事まで作ってくれるとは。
(もちろん妻の料理も大好きだよ?)
デレの面倒を見てもらう間に、久々に美容院に行くといい、妻は笑顔を見せていた。
喜ぶ妻を見られるのなら、僕はもっとうれしい。
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:15:15.12 ID:1UcDR2DE0
ようやく身支度を終えた僕が玄関に向かうと、彼女は娘を抱いて見送ってくれた。


( *^ω^)「おー。よく寝てるお。お見送りの時くらいは起きててほしいもんだお」


娘はまだ、僕らのもとに生まれて来てくれてから半年ほどしか経っていない。離乳食を平らげたばかりなのに、いや、だからと言うべきか、母の腕の中で気持ちよさそうに寝息をたてている。


ξ*゚ー゚)ξ「しょうがないよ、父親似だし」


そう言って僕と娘を交互に見やった彼女は、優しい笑顔を浮かべていた。


( *^ω^)「お! 遅刻するお。いってきまーすお」

ξ*゚ー゚)ξ「きちんと仕事してきなさいよ、給料泥棒。……いってらっしゃい」


11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:17:21.19 ID:1UcDR2DE0
 




ほんとうに、優しい笑顔だった。


それが僕が見た、彼女の最期の笑顔だった。


このひとときが、彼女との最期の会話だった。






 
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:19:28.51 ID:1UcDR2DE0
( ^ω^)「デレ、お弁当は持ったかお?」

ζ(゚ー゚*ζ「うん! てぃっしゅとはんかちもちゃんともったよ!」

( *^ω^)「お、デレはえらいおね」


母親がいない分、父は親としてちゃんと子どもの面倒を見ないといけない。その立場が、僕をある程度しっかりさせてくれた。
外では社会人として、家では父として常に忙しく過ごすこと。それが、当時、妻を失ったばかりの僕にとって、哀しみを忘れるために必要だったのかもしれないが。
でも、今は違う。


ζ(゚△゚*ζ「おとーさん、きょうはごみのひだよー」

( ^ω^)「おっ、忘れるとこだったお。デレはおかーさんににてしっかりさんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「えへへ」


六歳になったばかりの娘は、下手をすれば僕よりしっかりしている。性格は母親似なんだろう。
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:21:35.76 ID:1UcDR2DE0
ζ(^ー^*ζ「それじゃあおかーさん! いってきます!」


写真にむかって元気よく挨拶をするデレに、ついつい笑顔になってしまう。妻なら「あんた、いつもニヤケ顔だから気づかなかったわ」と言われるくらいの微笑。
そう、今だって頻繁に彼女のことを思い出す。けれど、決して寂しくはない。妻を失ったこの世界は、ただ不幸しかない訳ではない。


( ^ω^)「いってきますお、ツン」


僕にはこの子が、ツンとの子が──デレが、いるのだから。









( ^ω^)父親のようですお


17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:23:32.82 ID:1UcDR2DE0
〜出勤&登園中〜

てくてく
  とことこ


ζ(゚ー゚*ζ「おとーさん、きょうのばんごはんはなーに?」

( ^ω^)「おっお、朝なのにもう夕飯の心配かお? デレは食いしんぼさんだおね」

ζ(゚ー゚;ζ「うー……おとーさんのほうがくいしんぼーだよー」

( ^ω^)「それもそうだおw そうだおね……今日はオムライスにするお」

ζ(^ー^*ζ「わーい!」

18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:25:14.43 ID:1UcDR2DE0
てくてく
  とことこ

('A`)「よう、お二人さん……」

( ^ω^)「お、どっくんおはy」

(*'∀`)ハアハア「デレたん今日も可愛いねえ! 保育所の帰りにうちに寄ってかないかい?」

ζ(゚△゚*ζ「だーめなのっ。きょうはおとーさんがはやくかえってくるんだもんっ」

(#゚A゚)「チッ。おいブーンてめえ今日残業しろ、いいな」

(#^ω^)「てめえはさっさと仕事みつけろお、こんなところで待ち伏せしてないで」

('A`)「俺、保育士とかの免許とろうかな」

( ^ω^)「下心みえみえだお、30歳無職童貞」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:28:09.92 ID:1UcDR2DE0
ζ(゚ー゚*ζ「? おとーさん、なんたらどーてーってなあに?」

('∀`)「デレたん、それは魔法使いのことだよ。はっは!」

ζ(゚ー゚*ζ「すごーい、どくにぃはまほうつかいさんなんだ!」

(*'∀`)「そうだぞー。よし、今度お兄ちゃんが魔法を見せてあげちゃうぞ☆」

(#^ω^)「デレが勘違いするからマジやめてくれお。通報するお」

(#゚A゚)「人の恋路を邪魔するのか、てめえはよ。この恩知らずが」

(#^ω^)「人の道を外れたクリーチャーに恋の路もクソもねえお」

ζ(゚ー゚*ζσ「おとーさん、あのおはなきれいだよー」

ミ( ^ω^)クルッ「あれは梅だおね。デレの好きな梅ジュースの元になるんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「あ、あそこにもうめがあるよ!」

( ^ω^)「あの花は桃だお。デレの大好きな桃がとれるんだお」

ζ(゚ー゚*ζ「ほんと? まんまるでぴんくのももができるの?」

( *^ω^)「お!」

22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:30:09.92 ID:1UcDR2DE0
てくてく
  とことこ
オトーサン、アレハ?
  アレモウメダオー



( A )「……」

( A )「ハロワ逝くか……」

( A )「あ、でもその前に抜くか……」

(*'A`)「デレたんとちゅっちゅしたいよぉ」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/09(月) 21:32:09.80 ID:1UcDR2DE0
('A`)「……ふう」


ブーンとデレの親子、あいつらは本当に仲が良い。見ていて和む。
は? 幼女? おまえ馬鹿だろ、子ども相手に何欲情してんだ
とにかくだ、そんな二人の日常とかを覗いてみたいと思わないか? 思うよな。
そうだな、たとえばデレたんの入浴シーンとかトイレとかおねしょとか
だがブーンは、いくら父親だからって俺とデレたんの仲にすぐに首をつっこみやがる。御陰で俺たちは健やかに愛を育めないんだ。
てな訳でVIPPERのヌクモリティーでなんとか俺とデレたんの仲を取り持ってほしい。
頼む。

つまりはお題寄越せってことだ



※遅筆でいらつくと思いますが、合間合間に過去やキーとなる話を挟むので気長にお待ちください
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