四話
20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:23:18.57 ID:LS5t6nFyO
四話「死者の書と聖者の書」

( ^ω^)「決めた、ブーンは決めたお。
もう確固たる決断で話、考え直せって勅命が下っても聞き入れないし、デモ行進とか始まっちゃっても無視して断行しちゃうお」

西川を追って走りながら、ブーンは呟いた。

( ^ω^)「渡辺さんに任せておくからいつまで経っても成功しないんだお。
突っ込みどころ満載で飽きないけど」

ようやくそう悟ったようだった。

( ^ω^)「渡辺さんはブーンの補佐に回るお。できれば右回りで。
ブーンに作戦があるお」

从'ー'从「ほんとですかー?」

( ^ω^)「おっおっ、ブーンに任せるお。すぐに西川を捕まえてやるお。
拷問の果てに虜にして、神と崇めるまで心酔させてやるお!」

ブーンは自信満々に言い切った。
22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:25:51.73 ID:LS5t6nFyO
本格的に身の危険を感じたのか、西川は狭い学校から広い外に逃げ出していた。

( ^ω^)「いいかお?まずはこのまま奴を追い掛けて、住宅地に追い込むお」

作戦の一端を、走る片手間に渡辺に説明し始めた。

( ^ω^)「その為に、ブーンがこのまま付かず離れずの距離を保って追うから、渡辺さんは先回りして、分かれ道の度に住宅地に逃げ込むように誘導してくれお。作戦はそれからだお」

从*'ー'从「分っかりましたー!」

住宅地に追い込む途中で、渡辺といったん合流して作戦を伝えていた。
すぐに渡辺と分かれ、今はまたブーンが一人で西川を追っている。

さすがにサッカー部のエースだけはあって、これだけ走ってもスピードが落ちる気配を見せなかった。
殺されるわけにもいかないから必死なのだろう。

公民館の横を突っ走り、児童公園を突っ切って行くと、道の左右に住宅だけが建ち並んでいる一本道に出た。
そこには、反れる脇道も滅多になかった。

走りながらようやく脇道を一つ見つけたブーンは、その脇道に密かに罠を仕掛けた。

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:28:13.83 ID:LS5t6nFyO
( ^ω^)「おっおっwwwこれで奴も年貢の納め時だお!ぐぇっふぇっへっひぇwwwwww」

気味の悪い笑い声を発してから、すぐにまた西川の追跡を再開した。

しばらく進むと分かれ、前方に十字路が見えてきた。
逃げる人間の心理としては、追っ手から少しでも姿を隠そうとするものだ。
西川もそれは同様らしく、スピードを落とさずに十字路を右に曲がろうとした。

だが、そうはいかなかった。

从*'ー'从「えへ、ここは通さないよ」

曲がる直前になって、渡辺が突然現れて道をふさいだ。
さすがに死神のカマを手にする渡辺に恐怖を覚えたのだろう。
血相を変えて、西川は来た道を引き返してきた。

ブーンを見て一瞬だけ躊躇する素振りを見せたが、別に死神の象徴たる大ガマを持っていないわけだから何も出来ないと踏んだのだろう。
止まるどころかスピードを上げて、ブーンの横をすり抜けるように西川は駆け抜けた。

生きている人間には触れることが出来ないブーンは、そのまま見過ごした。
したことはただ一つ。すれ違いざまにある物を投げただけだ。

コロコロと西川の行く手に転がる、閃光爆音手榴弾(使用済み)
それを見て一瞬、あからさまにギョッとした。
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:30:35.13 ID:LS5t6nFyO
もう二度と爆発することもないのだが、あんな酷い目に合わせた物体が目の前に転がってきたら、ついつい反応してしまうのが人間として当然だった。

慌てた西川は転がる閃光爆音手榴弾の手前に、細い脇道を見つけた。
人二人分程度の幅の抜け道。

一瞬足を止めかけた西川だったが、これ幸いと、再加速してその抜け道に足を踏み入れた。
そこにブーンの仕掛けた罠があるとも知らずに――。

(ニ;^ω^)シ「うわっ!!」

西川が消えた小道から、叫び声が高らかにあげる。

( ^ω^)「どうやら罠に引っ掛かったようだおwwww哀れwwwww」

笑いながらブーンは小道を覗きこんだ。
するとそこには、転がるバナナの皮と、転んだ拍子に後頭部を強打して気絶したらしい西川の姿があった。

( ^ω^)「おっおっ、これでバナナの皮を踏んで転んで死んだのはブーンだけじゃなくなったお!
バナナの皮の殺傷能力を実証して見せたお!
恐るべし、バナナの皮!
侮るなかれ、バナナの皮の摩擦係数!」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:33:25.69 ID:LS5t6nFyO
从*'ー'从「わぁー、上手くいったみたいですね!」

屈辱を晴らして悦に浸るブーンの背後から、駆けつけた渡辺の声が聞こえた。

( ^ω^)「どんなもんだお!
ブーンってば、やるときはやる子だって昔から言われて育ったんだお!」

从*'ー'从「尊敬です!惚れちゃうかもしれません!」

( ^ω^)「おっおっwwwwおっきしたwwwwブーンに惚れると低温火傷するぜwwwww舐めろwwwwwww」

从'ー'从「低温ですか!」

( ^ω^)「うむ。じわりじわりと肌を焼かれて、知らぬ間に火傷してるんだお。
火傷したことに気付かないから、皮膚だだけじゃなく肉まで火傷しちゃうんだお。
治りが遅いんだお!」

从'ー'从「痛いです!ブーンさんに惚れるのやめます!」

( ^ω^)「……それは思わぬ誤算だお。(しゃぶれ、の方が良かったかお……)
今度から、ブーンに惚れると擦過傷負うぜ、にしようかお。
摩擦の如く、触れ合うたびにハートが熱く燃えるお!みたいな」

从*'ー'从「基本的にどうでもいいです!」
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:35:56.58 ID:LS5t6nFyO
( ^ω^)「冷たいお、結構。低温を通り越して零下突破だお。
まぁいいお。サクっと魂刈ってしまえお。今が収穫時だお!」

从*'ー'从「はいっ!えいっ!」

偉そうに命令するブーンに従って、渡辺は西川に向けて死神のカマを振り下ろした。

( ^ω^)「やれやれだお。これでようやく生き返れるお。
残念ながら界王拳は会得出来なかったけど、バナナの皮という新兵器を引っさげて死の商人として大成し、世界を混沌に陥れることは出来そうだお。
死神の仕事を増やしてしまうかもしれないけど、その辺は仕事を手伝ったよしみで快く対処してくれたまえ、だお!」

そんな言葉を渡辺はこれっぽっちも聞いてなかった。

从;'ー'从「ああぁぁぁーーー!」

( ^ω^)「ただいまの音量測定記録、一0二デジベルだお!
てか、その叫び声は嫌な予感しかしねーお」

ブーンが死神少女を見ると【死者の書】とやらを開いて見るところだった。

涙目の渡辺の顔が、ぎぎぎ、っと擬音が付きそうなほどゆっくり、ブーンに向けられる。
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:38:18.29 ID:LS5t6nFyO
从;'ー'从「ふぇぇー……間違えちゃいました……」

( ^ω^)「……んなことないお?そいつは間違いなく、西川で合ってるお」

ふるふると首を振る渡辺。
それから死神少女は【死者の書】を掲げて見せた。

从;'ー'从「これ、【死者の書】じゃありませんでした……。
【聖者の書】っていう、人間界をより良い環境に導く貢献者となる資質を備えた、護らなくてはならない対象をリストアップしたものでした……」

(;^ω^)「………お?」

ブーンの思考は完全にフリーズした。

从;'ー'从「……西川さん、本当は絶対に殺してはいけない方だったんです……ふぇぇー……。
私、三回大きな失敗しちゃいましたー……」

ブーンを殺したのが一回目。
続いて、見知らぬ人を殺しかねて二回目。

三回大きな失敗をしたら死神を首になる渡辺の三回目の失敗は、まだ死なないことになっているだけの、ただの人間を殺したなんて甘っちょろいもんではなく、死んではならないことになっている、人類にとって大事な人間を殺してしまうとんでもない大失敗だった。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:40:46.61 ID:LS5t6nFyO
【死者の書】と【聖者の書】を取り違えたことから始まる、根本的にして致命的なミス。

最初から失敗が仕組まれているようなものだった。

(;^ω^)「誰だお、渡辺さんみたいなドジっ子を死神として採用したのは!
死神にドジっ子属性なんていらんお!」

天まで届けとばかりに、ブーンは力いっぱい叫んだ。

从;'ー'从「あぅ……どうしようどうしよう………」

全ての諸悪の根元たる死神少女は捨てられた子犬の目をしながら、上目使いでブーンを見やった。
後処理をブーンに押し付けようてしているのだろう。
しかも、それを意識してないから、尚更性質が悪い。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:45:39.25 ID:LS5t6nFyO
(;^ω^)「これ以上、ブーンにどうしろっていうんだお……」

さすがのブーンも冗談の一つも出ないほど疲れていた。
どう後処理をすればいいのやら、まったく分からない状況だ。

分かることといえば……しばらく生き返るのはお預けになりそうだということ、ただそれだけだった。

(;^ω^)「ツンが恋しいお……」

ブーンは素直に泣き言を漏らした。

四話終わり
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