三話
- 2 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 21:51:48.14 ID:LS5t6nFyO
- 代理thx!
二話分のあらすじ
間違えて殺されたブーンは渡辺とともに、本来殺されるはずだった西川を狙う。
学校内で西川を見つけ魂を回収しようとするが、渡辺のドジっぷりがついに本領を発揮しはじめた……
三話「完全抹殺七つ兵器とドジっ子」
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 21:53:30.39 ID:LS5t6nFyO
- ドジな死神のせいで一度は西川を見失いはしたが、校舎の構造を熟知しているブーンは一人先回りすることに成功した。
( ^ω^)「おっおっ、逃がしはしないお。貴方は私のもの、だお」
階段を駆け下りてきた西川が、ブーンの姿を見つけて慌てて踵を返す。
ところが、回れ右をしたその先に単独で追っていた渡辺が現れて西川は戸惑った。
逃れようのない挟み撃ちの状況を演出した策士ブーンは、戦国武将さながらに命令を下した。
( ^ω^)「首級を挙げるお、渡辺さん!
褒美は大根の葉っぱだお!」
从'ー'从「どうせなら実のほうをください!冗談はともかく任せてください、です!」
力強く返事した渡辺だったが――返事をした直後に、なぜかキョロキョロしだした。
( ^ω^)「どうした!葉っぱが不満で渋って報酬を吊り上げようとしているなら、仕方ない、大奮発してガンプラのビームをあげるお!特別だぞ☆
だから逃げられないうちに、目に余る惨劇を繰り広げるお!」
焦りの滲んだ声に、キョロキョロするのを止めた渡辺が泣きそうな声で訴えてきた。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 21:55:19.78 ID:LS5t6nFyO
- 从;'ー'从「あれれー?死神のカマがないよー?」
その手には、ずっと握られていた大ガマが、確かになかった。
そういえば……と思い出せば、ブーンに向けて放り投げた後、壁に刺さった大ガマを回収もせずに西川を追っていた。
( ^ω^)「今日もよく晴れてるおー。
こんな日には屋上で昼寝でもしたいもんだお。何もかも忘れて屋上に行くお」
現実逃避し始めたブーンの横を、すり抜けるようにして西川は駆け抜けていった。
こほん、とブーンは咳払いを一つした。
( ^ω^)「さて、面倒なことに霊が見えちゃう相手が抹殺対象という新事実がこの度発覚したお。
こうなると、こっそり忍び寄って本人も気付かぬうちに肉体と魂の繋ぎ目を断つという、見えないからこそ可能な最も成功しやすい手法を封じられたことになるお。
如何にすればこの強敵を葬れるか……。
この策を練るためにこうして対策本部を設置したわけで、死神界の権威、文仰大学教授、渡辺先生にお越しいただいたお。
先生、いかがですかお?」
从*'ー'从「三文芝居をする必要も無く、聞かれれば答えますよー。
んーとですね、天界には死神が見えちゃう人間さんに対する対策として、魂の回収に役立つ道具が支給されていますから心配ご無用です!
その名も完全抹殺七つ兵器です!」
- 5 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 21:57:28.88 ID:LS5t6nFyO
- ( ^ω^)「……ずいぶん物々しいネーミングだお。
魂の回収が目的なのに、完全抹殺してどうすんだお」
そんな突っ込みを渡辺は聞いてなかった。
从'ー'从「えーとえーと、死神の大ガマと死者の書でまずは二つですよね?」
( ^ω^)「あれが兵器だったとは知らなかったお」
从'ー'从「兵器なんです!それでですね、三つ目はこれです!」
じゃじゃーん!とばかりにエプロンドレスのポケットから取り出したのは絆創膏にしか見えない代物だった。
( ^ω^)「どっからどう見ても絆創膏だお。
それをどうするんだお?完全抹殺兵器の真価を見せてみろお!」
物々しい名前がつくからには、ちょっとした切り傷や掠り傷に貼る以外の用途があるのだろう。
と、期待している目の前で、死神少女は階段落ちで擦りむいたらしい膝に完全抹殺七つ兵器の一つをぺたりと貼った。
从*'ー'从「これでよしっ、です」
(;^ω^)「………」
突っ込むべきかどうかを迷いに迷って、黙っていては埒が明かないと判断してブーンは突っ込んだ。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 21:58:51.79 ID:LS5t6nFyO
- (;^ω^)「……あの、渡辺さん?ブーンには怪我の応急手当てをしたようにしか見えないんだお」
从*'ー'从「はい!傷口が化膿しないように、です!」
( ^ω^)「ははっ、こやつめ」
从*'ー'从「四つ目はこれです!」
( ^ω^)「………」
ばばん、と効果音が付きそうな勢いで出されたそれに、ブーンは沈黙を投げ掛けた。
【ねこの十二星座占い】というタイトルが付いた、その本に。
( ^ω^)「猫のイラストがとっても可愛い十二星座占いの本ですかお。
これまたしょぼそうな兵器が出てきたお。
完全抹殺七つ兵器というからには、ただ単に持ってきたというのはありえない話だとブーンは思ってますお、渡辺さん」
それ以上、ブーンに語るべきことはなかった。無言の沈黙で圧力を掛ける。
開いた本に視線を落として目を反らした渡辺は、そこに書いてある一文を読み上げた。
从;'ー'从「……んとんと、今日のしし座の運勢は、エキセントリックな出来事がたくさん起こるでしょう。
ラッキーカラーはピンク。注意深く行動するが吉、だそうです!」 - 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:01:08.89 ID:LS5t6nFyO
- ( ^ω^)「ほぅ。全くもって興味深い占い結果だったお。んで、だから?」
ブーンは冷めた眼差しを送った。
从*'ー'从「………えへっ」
( ^ω^)「………」
从;'ー'从「五つ目は、これです!
でもこのままじゃ使えないのでちょっと待っててください」
取り出したるは、一見してバナナのような物。
( ^ω^)「渡辺さんのことだから、それがバナナ以下の物でもないんだお。
うん。てか、普通に食べ始めんなお」
おもむろに皮を剥き出した死神少女はこれです、嬉しそうな表情でバナナを口に持っていった。
( ^ω^)「まさかとは思うけど、おやつの時間です!とか言うのかお?」
从*'ー'从「違いまふよー。ブーンしゃんもひゃべまふかー?」
( ^ω^)「いらねーお。んで、大体察しは付くけど、実を食べ終えたバナナの皮は何に使うんだお?」
ブーンが聞くと、しっかり咀嚼して飲み込んでから、渡辺は一言、
从*'ー'从「わな」
(;^ω^)「却下」
自分自身それを踏んで滑って転んだせいで死んだブーンは、全力で却下した。 - 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:05:00.94 ID:LS5t6nFyO
- (;^ω^)「確かに兵器だお、それは……」
从'ー'从「むぅ……せっかく真面目に用意した、『わな』だったのにー」
( ^ω^)「過去を振り返るなお。なくした物は取り返せないんだお。
忘れたい過去はすくさま削除すべし。次来いお!」
口を尖らした渡辺は、何を思ったのか眼鏡をすちゃり、と外してエプロンドレスのポケットにしまった。
幼い顔立ちが顕になる。
从'ー'从「六つ目はこれです!」
代わりに取り出したのは、眼鏡に鼻と髭がくっ付いた代物。
パーティ用の小道具であることは一目瞭然だった。
ブーンには、それが何の為の物なのか、すぐに想像がついた。
从*'ー'从「へんそ――」
(;^ω^)「却下」
説明しようとした少女の言葉をぶった切って、ブーンは迅速に却下した。
( ^ω^)「変装なら変装で、もっと目立たない物を選べお」 - 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:06:42.68 ID:LS5t6nFyO
- 从'ー'从「七つ目はこれです!」
そう言って渡辺が取り出したのは、狩猟用の虎挟みだった。
ジグザグの鋭い歯が二つあり、歯と歯の間の金具に体重が掛かると歯が閉じ、ちょっとやそっとじゃ外れない仕組みになっている。
从'ー'从「えとえと、これは魂捕獲用の虎挟みです。
普通の人にはもちろん見えなくて、これに引っ掛かると魂が拘束されて、その場から動けなくなります」
( ^ω^)「……七つ目にしてようやくマトモなのが出てきたお。
使い方は十分に分かったけど、それをどこに仕掛ける気だお?」
从'ー'从「ここです!」
ブーンの言葉に答え、渡辺は無造作に階段手前の曲がり角――正確に言えば、廊下の内側になる隅に仕掛けた。
从'ー'从「西川さんを追い掛けて上手いこと階段を下りて来させて、この廊下に進ませます。
急ぐ西川さんは虎挟みの存在に気付かず、曲がった途端に引っ掛かるはずです!」
渡辺にしては、考えてある作戦だった。
自信満々に説明するのも頷ける。 - 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:09:47.89 ID:LS5t6nFyO
- 从'ー'从「さっそく、ここに追い詰めましょう、ブーンさん!」
(;^ω^)「おっおっ!って、馬鹿っ!」
張り切って、渡辺が一歩目を踏み出したのは、まさに仕掛けたばかりの虎挟みの上。
自分でそれを仕掛けておいて、仕掛けたことを完全に忘れていた。
慌てたブーンは、ドジな死神少女を突き飛ばして、自らの足を虎の歯に食わせた。
( ^ω^)「うん、物凄く痛いお。
どれくらい痛いかっていうと、エルベーターに乗り込もうとしたらドアが閉まって挟まれた時の五倍は痛いです」
普段よりも冷静にそう言い、涙も見せまいと強く唇を噛み締めてブーンは激痛に耐えた。
( ^ω^)「だって男の子だもん」
その冗談を言ったのが限界だった。
喉の奥からこぼれそうな声にならぬ声を、意味を持つ言葉に変えて訴えた。
(;^ω^)「頼むから、早く外してくれお、渡辺さん」
从;'ー'从「あわわのわ、は、はい!」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:12:49.22 ID:LS5t6nFyO
- ( <●>ω<●>)「………」
何も言わず、ブーンはジト目で睨んだ。
从;'ー'从「ふぇぇー、だから、ごめんなさいです」
( <●>ω<●>)「………」
さらに黙して語らず。ただじーーーっと冷たくも粘っこい視線を投げ続けた。
从;'ー'从「あの、えーと、その……最後の一つ、八つ目はこれ――」
( <●>ω<●>)「七っ兵器と言ったのは分かってます」
言い終わる前にぼそりと一言。
ポケットに差し入れた渡辺の手がぴたりと止まる。
从;'ー'从「うぅ……こ、これは、切り札的な、そ、そう!
ひ、秘密兵器です!これを使えば、確実に敵を捕らえることが出来るっていう、秘密兵器!」
( ^ω^)「ほぅ。それは期待できそうだお。
だが、つまりは最初からそれを出せば、こんな馬鹿なやり取りをする必要もなく、ブーンが虎挟みに引っ掛かって痛い思いをすることもなかったわけだお」
从;'ー'从「そ、それもそうですけど……。
でもでも、秘密兵器ですから最後まで秘密なんです!」
追い詰められた渡辺はこれ、強引にもそう言い切った。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:14:29.69 ID:LS5t6nFyO
- ( ^ω^)「――んで、八つ目の秘密兵器はどんなんだお?」
从'ー'从「んーと、これです!」
言及の手が引っ込んだと見て、あからさまにほっとした様子を見せた渡辺は、今度こそ、とポケットから何かを取り出す。
スプレー缶サイズの円筒状の物体X。
( ^ω^)「おっおっ、なんだお?」
从*'ー'从「閃光爆音手榴弾、ですっ!」
( ^ω^)「……お?聞き間違いかお?聞き間違いだといいお
手榴弾なんて、そんな物騒な、おっおっwwwww」
从'ー'从「聞き間違ってないです!手榴弾ですよー!
光と音で敵の動きを止める殺傷能力のない兵器ですから、安全です!」
渡辺は安全宣言を出した。
( ^ω^)「あー、うん。確かに、秘密にしていた兵器、秘密兵器だお。
まさか言葉通りとは思わなかったお」
从'ー'从「あっ、来ました!」
渡辺のことばにブーンが振り返ってみると、廊下の角を曲がって現れた西川が、階段で話をしていた二人を驚いた顔で見ていた。
( ^ω^)「いつの間に先回りを!?って顔だけど、ずっとここにいただお」
ブーンが説明してあげた。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 22:16:43.50 ID:LS5t6nFyO
- 从*'ー'从「えいっ!」
って、声が聞こえたのはその時だ。
コロコロと転がる、ピンの引き抜かれた物体X、改め、閃光爆音手榴弾。
( ^ω^)「え、ちょ、まっ、もうやだ」
耳を塞ぐ暇どころか、目を閉じる余裕もなかった。
それどころか、何の掛け声もなく耳と目を潰す兵器を使う、この信じられない光景にブーンは目を見開いて凝視していた。
その直後、
(;^ω^)「――――っ!!」
鋭い閃光が目を焼き、激しい爆音が鼓膜を揺さぶった。
(; ω )「めめめ、目がぁぁぁーーーっっ!!
みみみ、耳がぁぁぁーーーっっ!!!」
目の奥に走る激痛と転がる、耳から離れない甲高い音。
しばらく地面をのたうち回ってブーンは耐えた。
涙が溢れ落ちる目を閉じていても、白一色に染まる視覚は確実に機能しないとして、聴覚は辛うじてだが復活しつつあった。
キィーーーッン、という音に混じって聞こえる、西川の悲鳴と――
从;ー从「め、目が痛いですっ!み、耳も痛いですっ!!」
(; ω )「使った本人も食らってどうすんだお!?」
ブーンは全身全霊をかけて突っ込んだ。