二話
25 :二話「西川を探せ!」:2009/02/10(火) 23:38:19.46 ID:UWpRIr1qO
( ^ω^)「んで、死神の手伝いって何をすればいいんだお?
女性に幻想を抱きがちな青少年に真実の姿を教えて女性恐怖症にでもさせるかお?」

肝心な部分をブーンは聞いた。

从'ー'从「余計なことはしないでください。
私がドジしないように見張ってるだけでいいんですよ!」

( ^ω^)「むぅ、それだけでいいのかお。
自転車のサドルを盗むくらいならお茶の子さいさいだお」

从'ー'从「それが余計なんですよー。
ともかく、今回は西川って方の魂を回収するのが私の仕事なんです!」

( ^ω^)「西川、かお。まぁ、そいつに関しては知らない相手でもないし、手伝えることならありそうだお」

从'ー'从「え、知り合いなんですかー?」

可愛らしい仕草で小首を掲げて渡辺は聞いた。ブーンは堪えた。

( ^ω^)「ブーンの学校のサッカー部のエースにして生徒会長様、だお。
同じ学年ではあるから何度か会話したことがあるけど、所詮は顔見知り程度でほとんど面識はないお。
三年後くらいに同窓会やれば、お互いに名前が分からなくて、だけど聞けなくて、相手の名前も呼ばずに不自然な会話をしちゃう程度の距離感だお」

26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/10(火) 23:39:49.93 ID:UWpRIr1qO
从'ー'从「微妙な仲ですけど、それでも頼もしいです!
サドル盗むのにしか役に立たない人なんだと思ってましたけど、見直しました!」

( ^ω^)「……さらっと酷いこと言うお、渡辺さん。
膝を抱えて座りながら地面に『の』の字を書いていじけるお。
真っ暗な部屋の隅っこで体育座りして一夜を過ごしちゃうお」

从*'ー'从「冗談ですよー!頼もしい助っ人を得て、豪華客船にでも乗った気分です!」

( ^ω^)「氷山に気を付けるおっ!」

从*'ー'从「バナナの皮にも、です!」

ブーンは地面に『の』の字を書いていじけた。

从*'ー'从「どうかしましたかー?」

( ^ω^)「いいおいいお……。成人式でくしゃみして世間を騒がせてやるお……」

完全に拗ねたブーンを立ち直らせるには時間がかかりそうだった。

从'ー'从「西川さんの魂を取りに行く前に、簡単に死神の仕事について説明しますよ」

沈むブーンをなだめすかして元気を取り戻させるのに五分もの時を費やした。

27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/10(火) 23:43:08.73 ID:UWpRIr1qO
从'ー'从「人はやがて死ぬ生き物です。
死んでしまったら、魂は死神によって回収されて天界に返還されるのが決まりになっています。
そこで魂を浄化して、また新たな命に魂を吹き込むわけです」

( ^ω^)「リサイクルかお。地球に優しい感じがするお」

从'ー'从「天界には死ぬべき人間さんの個人情報と死期が記された『死者の書』というものがあります。
寿命切れだったり、病気や不幸な事故で死ぬべき定めの人達がその対象なんです」

( ^ω^)「お?じゃあ、西川は事故か何かで死ぬべき定めだから渡辺さんが来たのかお?」

从'ー'从「いえ、そうではないですよー。
例えば、将来、国家転覆を狙ったり戦争勃発を引き起こしかねない人間さんがそれです。
要するに、人間界に害しかない人達です」

ふむふむ、とブーンは聞く。

从'ー'从「私、いつもは寿命で死に掛かってる人や身動きの出来ない人間さんがリストアップされている『死者の書』を選んで仕事をこなしていたんです。
でも、今回に限っては今までの失敗で得た汚名を返上するために、身体の自由が利いて、なおかつ死ななきゃならないランクが高い人間さんがリストアップされてる『死者の書』を選んで持ってきました!」
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/10(火) 23:44:44.41 ID:UWpRIr1qO
ブーンは頭を抱えた。
この短時間で、ブーンは渡辺がどんな人間(?)であるか悟っている。
ドジっ子。
彼女を一言で言い表すなら、これ以上適した表現はない。
何かをしようと行動を起こせば、どこでどうすればそうなるのか原理不明な原因によって必ず失敗に終わる。
それが極めて致命的な場面でも躊躇なくドジを踏む。
それが渡辺という死神少女だろう。じゃなきゃ、死を司る死神ともあろうものが殺す人間を間違えるはずもない。
そんな死神がどんな、わざわざ難易度の高い仕事を選んだらどうなるのか、やる前から目に見えているようなものだった。

( ^ω^)「まぁいいお。ブーンが常に傍にいて目を光らせていればどうにかなるお……」

やる気満々な少女を説得するほうが骨が折れそうで、希望的観測にすがった。
気を取り直して、大きく頷いてからブーンは言った。
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/10(火) 23:46:51.11 ID:UWpRIr1qO
( ^ω^)「西川がそっち側の人間ってことは分からんでもないお。
あいつは優秀すぎるほど優秀だお。
頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗、人柄もいいから誰からも好かれる統率者向けだお。
そんな人間は、どっちの方向に転んでも人の上に立つお。
今はいい方向に向かってるみたいだけど、将来は方向転換でもして害を成す人間に成り下がるんだお!」

从'ー'从「そうです!だから今のうちに私が魂を回収しちゃいます!」

( ^ω^)「んで、具体的な手順はあるのかお?
コップにミルクを注いでからドリップコーヒーを注いだほうがミルクの味を損わずに済み、円やかな味わいになるとかって学術的証明がなされた感じの手順」

从ー从「死神は仕事するに当たって大ガマを支給されます。
これで肉体と魂の繋ぎ目を断ち切れば、人間さんは寿命が尽きたり持病を悪化させたりして死に至るわけです。
繋ぎ目を断ち切れなくても、大ガマで斬り付ければ致命的にならなくても重症か重傷を負いますから、あとはゆっくり虫けらの四肢をもいでいくようにゆーっくりと……。うふふ」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/10(火) 23:49:47.56 ID:UWpRIr1qO
( ^ω^)「……つまりブーンは、肉体と魂の繋ぎ目を断ち切られたから、こうして魂だけの存在になってるわけかお。
生き返るにはどうすればいいんだお?」

从'ー'从「肉体と魂の繋がりは強固で、一度断ち切ったとしても肉体と魂が接触すれば容易に復活しちゃいます。
ですから、生き返る際に自分の身体に重なるようにすれば生き返れますよー」

( ^ω^)「肉体と魂のキズナ(笑)
よし、分かったお!早速未来の大悪党の魂を刈りに行くお!
えいえいおー、改めおいおい、えー?」

从;'ー'从「気合いを入れるはずが不満げになってます!」

二人は意気揚々とは程遠い感じで旅立った。

西川の居場所なら、ブーンが知っていた。
ツンのセーラー服を着込んで校内をうろついていたところを制服の持ち主に見つかって学校を抜け出したが、時間帯的にはようやく放課後を迎える頃合いであり、優等生然とした生徒会長様がまだ学校にいるだろうことは疑いようがない。

36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/10(火) 23:51:52.05 ID:UWpRIr1qO
( ^ω^)「渡辺さんの会社では、メイド以外にコスサービスとかってしてないのかお?
ナースとかスク水とかwwwwwww」

学校に向かう道すがら、緊張感の欠片もなくブーンは話しかけた。

从ー从「甘い……甘過ぎますよ、ブーンさん。
そんなマニア向けな服装はもはや需要がないんです」

(  ω )「ほぅ……?そこまで言うならば聞かせてもらおうか、貴様の持論を」

从ー从「いいでしょう。いいですか?結論から言うなら、時代はメイド、です。
私の格好を見てください。……どうですか?萌えたでしょう。
ただ単純に萌えたでしょう。それなんです。王道こそ正義、なんです。
それを何ですか?やれナースやら、やれスク水などと……。駄目です。全く分かってないです。
アレでしょう?貴殿方はナース服やスク水となれば性的な目でまず見るでしょう?
いえ、見てるはずです。私には分かります。
汚らわしく、醜い目で見られる服の数々。
未熟で、低劣で、厚顔で、無知で、冒涜です!
メイドこそ正義なんです!」

37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/10(火) 23:54:46.53 ID:UWpRIr1qO
(  ω )「ふ……」

从ー从「っ!何が可笑しいんですか!」

(  ω )「いや、つい笑ってしまった。許せ。
まず、偏見と矛盾に溢れた熱弁をありがとう、と言うべきか。しかし……違うな、間違っているぞ、渡辺」

从ー从「………」

(  ω )「今の時代、需要に合わせて供給するだけでは商売は成り立たない。
想像もつかない供給によって消費者の新たな需要を開拓しなければならないのだ。……例えばっ!」

从ー从 ビクッ

( ゚ω゚)「吸血鬼コス……」

从;ー从「!!!!!!!!!いや、しかしそれはっ!」

( ゚ω゚)「では聞こう、渡辺!『萌え』とは何だ!?」

从;ー从「ハッ!……人々の主観によって無限に広がる無限の夢……」

( ゚ω゚)「そう!主観!百人いれば百通りの『萌え』がある!
それがここ『合衆国日本』!」

从ー从「『合衆国日本……』」

( ^ω^)「お?この公園、近道だから通るお」

从'ー'从「分かりましたー」
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/10(火) 23:57:25.76 ID:UWpRIr1qO
从*'ー'从「いたです、ブーンさん!」

公園を横切っていたその途中、死神少女はさんな声をあげた。
ん?とブーンが思った時には、すでに前方を歩く男性に向かって渡辺は走り出していた。
そもそも学校にいるはずの西川がここにいるはずもない。
何を根拠として西川と判断したのか分からないが、ドジな人間の思い込みの激しさはよく分かった。

(;^ω^)「いいスタートダッシュだと言いたいけど、それはフライングだお!」

出遅れたおかげで渡辺との距離が大分開いた。
間に合うかどうは微妙だったが、ブーンは全力で走って渡辺を追う。
公園の端、下り階段のある場所で追い付いた頃には、今しも渡辺は見知らぬ人影に死神の大ガマを振りかぶって切り掛かろうとしていることだった。

(;^ω^)「馬鹿、そいつは西川じゃないお!」

从*'ー'从「えーいっ!」

呼び止めた声は完璧に無視された。
振り下ろされた大ガマに切りつけられた途端、階段を下りようとしていたその人は、階段を下りようとしていたその人は、階段を見事に踏み外して真っ逆さまに転げ落ちた。

|  ^o^ | 「とっても いたい です」

(;^ω^)「うわ、前回転かお!痛!アクション俳優も顔負けだァーッ!」

从'ー'从「今の手応えは繋ぎ目を断ち切れていない手応え……」


41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:00:08.74 ID:LS5t6nFyO
いまだに人違いに気付いてない死神少女は躊躇なく階段を飛び降りた。

从'ー'从「とぅっ!」

(;^ω^)「ブーンも、とぅっ!だお」

走る勢いに任せてブーンも階段下に向けて大きくジャンプした。
七、八段程度の階段を一気に飛び越えすちゃっ、と見事な着地を決める。
死人だからこそできる荒業だった。
死人だからこそできる荒業だった。
そしてブーンの目の前には、倒れ込む人影と大ガマを大上段に振りかぶっている渡辺の後ろ姿。
人の苦労などまるで知らず、少女はどこか生き生きしていた。

从*ー从「止め」

|  ^o^ |「わたしを ころすと せかいが ほろびるぞ」

(;^ω^)「ストップ!てか、狂気じみた笑みを浮かべて止めとか言うなお!」

ブーンは渡辺のさらさらした髪を割りと強めに引っ張った。
後ろ髪を引かれ、渡辺は仰け反った。
一撃必殺。それだけで殺戮は回避できた。

从;'ー'从「な、何するんですか!せっかくもう少しで止めが刺せたのに!」

鞭打ち患者の如く首裏を手でさすりながら、渡辺は文句を口にした。

42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:02:19.34 ID:LS5t6nFyO
( ^ω^)「うむ。止めを刺すのはいつでも出来るお。
まずは深呼吸をしてこの抜けるような青空を仰ぎ見て気を落ち着かせるお」

そう言ってブーンは文句を渡辺の後ろ髪を引っ張って無理矢理空を見させた。
レイプしている感じで久しぶりに勃起した。
生憎と空は曇天ではあったが。

从;'ー'从「い、痛いですから髪の毛を引っ張るの止めてください!自分で空を見れます!」

( ^ω^)「よし、それならば思う存分、自分の意思で見るといいお」

拘束を解かれた渡辺は口の中で文句を言いながら、素直に深呼吸しながら空を眺めた。

( ^ω^)「気分は落ち着いたかお?ブーンはビンビンだおwwwwwww
なら、今度は足元に転がる人間をよーく見るといいお。
そこに厳然として存在する大いなる間違いに気付くはずだお」

从'ー'从「間違いですか?」

|  ^o^ |「すみずみまで みろよ」

小首を傾げながらも、渡辺は足元に視線を落とした。
倒れる男の人の顔を覗きこんだ途端、その動きがピタリと止まる。
一分ほど経った頃、ギギギと擬音が付きそうなゆっくりとした動作で、ドジっ子少女は顔をブーンに向けた。

从;'ー'从「ふぇぇー、間違えましたー……」

涙目が助けを求めていた。
うっ、という声が聞こえた気もした。

43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:04:36.58 ID:LS5t6nFyO
( ^ω^)「間違いは誰にでもあるお!
ブーンも深夜にやっている洋画をエロありと勘違いして、眠いのに最後まで見て、後悔したことがあるお」

从'ー'从「私は本を見て料理する時、塩とシソを入れ間違えたことがあります!
『しお』と『シソ』、似てるから読み間違えました!」

( ^ω^)「分量をどうしたか気になるお。シソ小さじ一杯って何だおwwwww
まぁいいお。幸いにも魂の繋ぎ目とやらを断つ前に止められたからよしとするお。
大怪我を負わせてしまって申し訳ないけど、この人間は放置プレイの方向でブーン達は学校に向かうお!」

从*'ー'从「次こそは間違えないよー!」

|  ^o^ |「おまえらが あくまか」

無残にも、見ず知らずの男は放置プレイに処された。

|  ^o^ |「なかなか きもちいい」


( ^ω^)「ふむ、どうやらいないようだお、サッカー部のエースストライカー様は。
選挙の投票にでも行ってるのかもしれないお。庶民の鏡だお!」

从'ー'从「未成年には選挙権がないですから明らかにそれは違うと思いますよー」

ようやく辿り着いた学校の校庭ではサッカー部が青春に汗を流していたが、部長として部を引っ張る西川の姿がなかった。
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:07:59.19 ID:LS5t6nFyO
( ^ω^)「渡辺さん、ブーンは生きてる人間に話し掛けることは出来ないのかお?
ナンパは出来ないけど覗きはし放題ってことかお?フヒ」

从'ー'从「んーと、ナンパは場合によっては出来ないこともありません。霊を見えちゃう方が世の中には存在します。
でもでも、覗きは出来てもしちゃ駄目なんだよー!」

( ^ω^)「フヒ、覗きはだめなのかお?
発射間際の電車に走って乗り込もうとしたのに、目の前でドアが閉まっちゃう瞬間の愚民の表情とか。
自分の眼鏡を探している人が『あれれー?私の眼鏡がないよー?』って言ってるんだけど、すでに眼鏡をかけていることに気付く瞬間とか覗き見したいお!」

从'ー'从「それは見てみたい気もしますが、世間で言う覗きとはちょっと違いますね!後者は私だ」

( ^ω^)「女にモテる西川の恥ずかしい瞬間を覗き見して、みんなに教えて幻滅させてやるお。
校内をぶらついてれば会えると思うお。
付いてくるお、渡辺さん」

勝手知ったる学び舎、堂々と校舎へ進入した。

46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:09:58.47 ID:LS5t6nFyO
( ^ω^)「部活に出ていないってことは、生徒会の仕事でもしてるか、校舎裏に呼び出されて告白でもされてるか、たまごっちを家に忘れたから面倒見るために帰ったか。
それとも、セーラー服がどうしても着たくて誰かのをこっそり拝借して試着しているかのどれかだお」

从'ー'从「選択肢ありすぎです!てか、最後はどう考えてもブーンさんです!」

セーラー服姿の変態を見て渡辺はそう言った。

( ^ω^)「一番ありそうなのが生徒会の仕事だから、とりあえず生徒会室に向かうお。
いなかったらカミソリ入れた封筒を送りつけてやるお!」

从'ー'从「まだ確認もしていないのに逆ギレ&逆恨みする気満々ですね!」

( ^ω^)「二枚のカミソリの間に十円玉を挟んでテープで止めておけば、怪我を負った時に傷の幅が狭くて再生しにくいから、いつまでも傷が残るお」

从'ー'从「どうでもいい豆知識、一応メモしておきます!」

本当にどうでもいい会話をしながら廊下を進み、階段を上がり、角を曲がって二人は三階の廊下に出た。

47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:12:03.07 ID:LS5t6nFyO
( ^ω^)「予想通り。いたお、西川が」

廊下の先、生徒会室のドアの前で、一年らしい女子生徒と話をしている西川の姿があった。
爽やかな笑顔全開で話し掛けられ、女子生徒は頬を赤く染めている。

( ^ω^)「ふむ。今の感情を東証株価指数(TOPIX)で表すと、十二・0三ポイント高の十五二九・六七ポイントで最高値を記録しているお」

从*'ー'从「感情をTOPIXであらわせるんですかー!?
今がどういう感情かは分からないですけど、尊敬です!」

( ^ω^)「ふっ、ブーンくらいの社会派ともなれば何でもTOPIXで表せるお。
ちなみに、本当にモテやがるなあいつ、って嫉妬の炎がメラメラと燃えている心境だお」

要するに、西川が女子生徒に惚れられているのが気に食わないらしい。

( ^ω^)「まぁいいお。あいあいつが西川だお、渡辺さん。
今すぐ匂いを覚えるお!」

从*'ー'从「弱酸性が強い匂いですねー」

( ^ω^)「分からんお。とにかく、慌てず慎重に行けお」

从*'ー'从「はい!」

見れば、西川と女子生徒の会話が終わったようで、女子生徒は生徒会室へ、西川は廊下の向こう側へと歩き始めていた。
元気よく返事した渡辺は、慎重にと言われたのをあっさり忘れて走り始めていた。
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:14:09.14 ID:LS5t6nFyO
(;^ω^)「馬鹿、慌てるなって言ったばっかりだお!」

ブーンの声は渡辺には届いていなかった。
代わりに「ん?(ロリの匂い……?)」と西川が振り返るのだからブーンは驚かずにはいられない。
死者の声に西川が反応するのはどう考えてもおかしい。

从;'ー'从「えー!?」

渡辺もその不自然さに気付いたようだった。
だからだろうか、何もないところで転ぶという技を標準装備している間抜けな死神少女は、自分の足に自分の足を引っ掛けるという超絶高等技術を披露して見せた。
見事なヘッドスライディングで廊下に身体を叩き付ける。

从;'ー'从「あだっ!」

その手からすっぽ抜けた大ガマが、実に都合良くブーン目掛けて飛んでいった。

(;^ω^)「マジかお!」

突っ込む暇はあっても、避ける暇はなかった。
思わず目を閉じたブーンの耳元で廊下に、すこっ、と小気味いい音がした。
痛みがどこにも襲ってきていないことを確認してから、ブーンは恐る恐る目を開ける。
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:17:15.89 ID:LS5t6nFyO
(;^ω^)「うむ、実に切れ味が良さそうな鎌ですお。
でも、お・ね・が・い。
そんな近くでまじまじとぎらつく刃の輝きを見せちゃらめぇ……」

顔を僅かに反れて壁に突き刺さった大ガマにブーンはお願いした。

从;'ー'从「あわわわのわ、だ、大丈夫ですか!?」

( ^ω^)「一つだけ聞きたいんだけど、一度死んで魂だけの存在となった状態で死神の大ガマに斬り付けれたらどうなるんだお?」

从ー从「聞きたいか」

(;^ω^)「え」

从ー从「聞きたいか」

(;^ω^)「……いや、うん。そうだお。うん、聞きたくないお。そうしよう。
家の真下の地面に不発弾が埋まってるとしても、知らなければ怖くないお。
手術成功率とか、出来れば表さないでくれていたほうが怖くないお」

そわな風にしてブーンは自分を納得させる。
そこへ、話しかけてくる人がいた。

53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:19:45.41 ID:LS5t6nFyO
(ニ^ω^)シ(←やっつけ)「あの、大丈夫?確か内藤君だよね?(メイドロリも可愛いけど、この男も可愛いなぁ)」

( ^ω^)「いえ、ブーンは名無しの家無き子だお。
同情するなら賃貨特件に際してつつがなく連帯保証人になれお。
続柄は携帯メモリ登録番号132で。
あ、ごめん、今見栄張ったお。
そんなにたくさい友達いないおwwwwwwwwww」

不意に声をかけられて、ブーンはとっさにそう答えた。
答えてから、相手が西川であるに気付く。

( ^ω^)「渡辺さん渡辺さん、ブーンらのチャームポイントである、生きてる人間には見えないって設定、この人無視してるお。
きっと裸の王様とか無視できない人だお」

从;'ー'从「えーとえーと、恐らくさっき話してた霊が見えちゃう人みたいですねー……。
どうぞ、ナンパしてください!」

( ^ω^)「おっおっ、そうかお?んじゃ、お言葉に甘えて口説き落としちゃうお、って男だお!」

予想外な展開に動揺しているのか、乗り突っ込みには切れが無かった。

54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:21:29.99 ID:LS5t6nFyO
(ニ;^ω^)シ「生きてる人間には見えないって……?
……死んでるってこと?(多少電波でも許容範囲です)」

( ^ω^)「おっ、こっちの話だから首も口も突っ込むなお、ヤリチンが。
大人なら、聞かないべきだって察して、腫れ物に触るような扱いでよろしくだお。
てか、ぶっちゃけ面倒だから、今がチャンスってことにして殺っちゃうお。行け、渡辺さん!」

从ー从「その一言を待っていたわ……」

物騒な言葉に反応したのは死神へと成り果てたW‐TANABEだけじゃなかった。

(ニ;^ω^)シ「殺っちゃえって、僕を!?(危険回避アビリティLv4!ここは退避すべき)」

大ガマを見てギョッとしながら裏返った声をあげた西川は、渡辺が立ったのを目にして、慌てて二、三歩離れ、勢いをつけて走り出した。

( ^ω^)「追うんだお、渡辺さん!そいつは学校の、いや、日本の、いやいや、世界中の敵だお!」

命令するまでもなかった。
逃げる西川を、渡辺はすぐさま追った。
それを見て、ブーンも二人の背中を目指して走り出す。
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:23:55.93 ID:LS5t6nFyO
( ^ω^)「こっちの姿が見えてるんじゃ、やりずらくてしょうがないお!
マジックミラーだと思ってチンコ出したら、ただのガラスで相手にもろ見られてた、みたいな感じだお!」

文句を口にしたところで姿が消えるわけでもない。
前方の二人が曲がり角を曲がって視界から消えた。

从;'ー'从「あだっ!」

(;^ω^)「転んだお!今、絶対転んだお!」

聞き覚えのある叫び声が姿の消えた曲がり角の先から聞こえ、ブーンは急いで廊下を駆け抜けた。

从;'ー'从「あぅー、階段を踏み外しちゃいましたー……」

廊下の角を曲がると、案の定、階段下で腰を擦りながらブーンを見上げる間抜けな死神の姿があった。

( ^ω^)「ふむ。階段を落ちた衝撃で眼鏡がしっかりずれてるところはドジっ子として評価してやるお」

責める言葉を口に出せず、ブーンはそうコメントした後に大きく溜め息を吐いた。

57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/11(水) 00:26:25.34 ID:LS5t6nFyO
二話終わりです
とりあえず投下終了です
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