- 249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 16:09:47.53 ID:RFncWGIAO
-
( <●><●>)「ドクオ君、ちょっと待って下さい」
HRが終わった後、俺がいつもの様にブーンやツンと一緒に帰ろうとしていると、担任のワカッテマス先生に呼び止められた。
('A`)「何ですか?」
大体、何を話したいのかは分かるが……。
( <●><●>)「修学旅行の件ですが……ちょっと職員室に来て貰えますか?」
('A`)「はい」
(;^ω^)「おっ…ドクオ呼び出しかお」
('A`)「わりぃな、ちょっと行ってくるわ」
ξ゚听)ξ「あんたは とことん人を待たせるのね」
('A`)「文句あんなら、先に行ってろよ」
ξ゚听)ξ「ふんっ」
……まぁ律義なこいつらは、きっと待っててくれるんだろうけど。
そんな事を考えながら、俺はワカッテマス先生の後に付いて職員室に向かった。
- 250 :すみません、なんかずっと尻臭いが……:2008/12/30(火) 16:32:20.76 ID:RFncWGIAO
- ( <●><●>)「ドクオ君、修学旅行には行けそうにありませんか?」
職員室のワッカッテマス先生の席につくやいなや、先生は短刀直入にそう言ってきた。
('A`)「…すみません」
( <●><●>)「謝る必要なんてありません。ドクオ君の家が、あまり裕福で無い事はワカッテイマス」
そう、物事をハッキリと言うワカッテイマス先生が回りくどくも『裕福でない』なんて曖昧な表情を使ってしまうくらい、家は目に見えて貧乏である。
トーチャンは物心付いた頃には死んでいて、特に学や資格を持っているわけでもないカーチャンがたった一人で俺を育てている訳だから、当然と言えば当然だ。
( <●><●>)「でも、高校での修学旅行は、ドクオ君にとってかけがえのない経験になる事も、先生はワッカッテマス」
('A`)「……」
( <●><●>)「無理は承知です。やはり、なんともなりませんか?」
('A`)「……すみません」
- 252 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 16:41:38.63 ID:RFncWGIAO
- 無理を言えば、無茶をすれば、行けるのかもしれない。
例えば、カーチャンに給料を前借りして貰うとか。
それが無理でも、弟者さんに泣き付いて借して貰うとか。
でも、働きっぱなしのカーチャンにそんな無理は言いたくなかったし、弟者さんに借りるのも、何か違う気がしていた。
( <●><●>)「そうですか……わかりました」
ワカッテマス先生は、酷く寂しげな表情でそう言う。
どういう気持ちなのだろうか?俺は教師じゃないから、良く分からない。
( <●><●>)「無理を言ってすみませんでした。どうぞ、行って下さい」
('A`)「失礼しました」
返礼する様にそう言って、俺は職員室を後にする。
('A`)「……」
ふと、廊下の鏡で自分の顔を見てみる。
其処には、ワカッテマス先生と良く似た表情の俺が居た。
- 257 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 16:54:57.87 ID:RFncWGIAO
- ξ゚听)ξ「そんでさー、保体の臨時の内田がずーっと女子の尻ばっかり見つめてるんだって。ストレスで生理も遅れるっつーの」
(;^ω^)「おっおっおっ」
帰り道。
ツンが、男子に話すにはかなり際どい話題を提供している。
ξ゚听)ξ「ほんっと、あの視姦はレイプと大して変わんないわよ。見られてるだけで妊娠させられそー」
(;^ω^)「おー……」
こういう話題は、ブーンが大の苦手とする所だ。
本来なら、俺がテキトーに話題を変えてやる場面なんだろうけど。
('A`)「……」
今日は、そんな気にはなれなかった。
(;^ω^)「おっ、ド、ドクオどうしたお?なんか元気ないお」
耐えられなくなったのか、ブーンが無理矢理話題をこちらに振ってくる。
今はあまり会話したくないのだが、仕方がない。
('A`)「うん、ちょっとな」
(;^ω^)「お、やっぱり修学旅行の事かお?」
なるほど、ブーンも所詮ぼっちの端くれか。
この程度の空気じゃ読めないらしい。
- 258 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 17:03:30.03 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「まぁな」
ξ゚听)ξ「なぁに?まだ修学旅行の事でウダウダ言ってんの?行けないもんは仕方ないじゃい」
こいつは読む気もないな。
('A`)「うるせぇよ、別に行けない事でウダウダ言うつもりなんてねーよ」
ξ゚听)ξ「あらそう。まぁ、私は楽しんでくるけどね」
本来にムカつくなコイツ。
(#'A`)「……」
久しぶりに喧嘩でもしてやろうか、と思った矢先。
流石にこの空気は読めたのか、ブーンが唐突に大声を張り上げた。
(;^ω^)「だ、大丈夫だお!ど、ドクオにコミュニケーション能力鍛えて貰ったから!!ひ、一人でも大丈夫だお!!!」
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「……」
いや、ブーン……この場面で言う台詞じゃないよ。
- 259 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 17:12:13.94 ID:RFncWGIAO
-
ξ*゚听)ξ「ぷっ」
(*'A`)「はは」
ξ*゚听)ξ「「あははははははははははっ!」」('A`*)
(;^ω^)「おっ、おぉ……」
笑ってしまう。
俺もツンも、ブーンには笑ってしまう。
あぁやっぱりコイツは――
(*'A`)「お前、やっぱ一人は寂しかったのか?」
ξ*゚听)ξ「お子ちゃまねぇ!」
(*'A`)「いいか、ブーン。寂しくなったら、いつでも国際電話かけてこいよ」
ξ*゚听)ξ「電話のかけたかたは分かりまちゅか?」
( #^ω^)「な、なんなんだおドクオもツンも、ブーンは真剣に!」
――俺の親友だ。
- 262 :>>261 修正:2008/12/30(火) 17:28:22.54 ID:RFncWGIAO
- ('A`)「ただいまー」
J( 'ー`)し「おかえりドクオ」
('A`)「あ……カーチャン。今日は早いんだね」
いつもの様に自宅のオンボロアパートに帰ってくると、いつもと違ってカーチャンがいた。
普段は帰ってくるのは大分遅いのに、珍しい事である。
J( 'ー`)し「うん、今日は早くあがらして貰ってね」
('A`)「そうなんだ……」
カーチャンが頼んでまで早く仕事を切り上げるなんて、珍しい。
体調でも悪いのだろうか?
心配だ。
J( 'ー`)し「お腹空いたろう、すぐご飯にするよ。準備は出来てるよ」
('A`)「うん、お願い」
本当に準備は出来ていたらしく、夕飯はすぐにテーブルに並んだ。
- 266 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 17:37:27.01 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「……」モキュモキュ
J( 'ー`)し「美味しいかい、ドクオ?」
('A`)「うん、お腹も空いてたし、美味しいよ」
正直な所、いつもより大分早い夕飯にあまりお腹は空いてはいなかったが、美味しいのは本当だった。
なんだか、いつもより豪華な気もするし。
('A`)「ごちそうさま」
J( 'ー`)し「お粗末さまでした」
俺は出された夕飯を完食して、一息付く。
カーチャンは、そんな俺を黙ってニコニコと見つめてくる。
('A`)「?」
変だなぁ……いつもならすぐに食器の片付けに入るのに。
('A`)「カーチャンどうしたの?疲れた?片付け手伝おうか?」
J( 'ー`)し「ありがとねドクオ。でもね、その前に」
そう言って、カーチャンは茶色の封筒を取り出した。
- 268 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 17:48:41.90 ID:RFncWGIAO
- それを、黙って俺の前に差し出す。
(;'A`)「え……カーチャンこれ何?」
学校から買わされる教材費は、今期分はもう払ったはずた。
J( 'ー`)し「いいからいいから、開けてみな」
(;'A`)「……」
促されるままに、恐る恐るその茶色の封筒を開ける。
と、
( A )「っ!」
中からは、何枚も何枚も、諭吉が、諭吉が、諭吉が。
数えてみて確信する。
これは……。
J( 'ー`)し「……あんたの、修学旅行のお金だよ」
……あぁ、やっぱり。
( A )「カーチャン、俺、この金受け取れないよ」
J( 'ー`)し「ふふ」
カーチャンは、何もかもお見通しとでも言わんばかりに、笑った。
- 271 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 17:56:09.33 ID:RFncWGIAO
- J( 'ー`)し「それはね、あんたが高校に受かった時からずっと貯めてたお金なんだよ」
( A )「……」
J( 'ー`)し「あんたは優しい子だからね、断るのは分かってたよ。だから……今日なのさ」
今日?今日?今日?
今日って、今日って今日って……
あぁ、今日は――
J( 'ー`)し「ハッピーバースデー!ドクオ」
(;A;)「カ゛ーチ゛ャン」
――俺はその日、再確認した。
この人が、俺のカーチャンだって事を。
- 272 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 18:06:31.67 ID:RFncWGIAO
- ('A`)「……」ピシャッ
桶から杓で水を汲み、それをまく。
乾いていた墓石の表面が、少しだけ潤った。
('A`)「カーチャン…」
俺は、カーチャンの墓参りに来ている。
今日は命日だとか、お彼岸だとか、そういう日ではない。
だから、この打ち水という行為が、正しい作法なのかどうかも分からなかった。
('A`)「カーチャン……俺さぁ、どうなんだろうね」
本当に、俺はどうなんだろうか?
俺は何なのだろうか?
分からない。
何が分からないのかも分からない。
疑問から回答まで、全て分からない。
ただ、分からないという事実だけがあって。
苦しい。
だから、こうやってカーチャンに助けを求めに来たのかもしれない。
('A`)「……」
- 273 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 18:13:38.03 ID:RFncWGIAO
- そうやって、カーチャンの墓の前でぼんやりとしていると、足音が聞こえてきた。
誰か、来る。
('A`)「……」
その足音の主を確認せず、ただ通り過ぎているのを待っていたら。
その足音は、俺の真横で止まった。
川 ゚ -゚)「……もしかして、君はドクオ君かな?」
声のした方を見ると、其処には20代半ばぐらいの、美人と言っても差し支えない様な人が立っていた。
- 276 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 18:23:29.67 ID:RFncWGIAO
-
川 ゚ -゚)「……」
('A`)「……」
その人は、何も言わずに俺を見つめてくる。
その、大分気まずい。
(;'A`)「あの……失礼ですが、どちらさまでしょうか?」
川 ゚ -゚)「あぁ、すまない。私は素直クーという。君のお母さんの、同僚だった者だ」
そうなのか?でもこんな人、カーチャンの葬式では見なかった気がするけど。
川 ゚ -゚)「焼香を上げさせて貰っても、良いかな?」
(;'A`)「ど、どうぞ……」
俺はオズオズとその場を譲る。
川 - -)「……」
その人は黙って、持参したらしい線香に火を付けると、静かに手を合わせた。
('A`)「……」
川 - -)「……生前、随分お世話になったんだ」
手を合わせたまま、クーさんは静かに語り出した。
- 277 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 18:33:12.82 ID:RFncWGIAO
-
川 - -)「私は結構そそっかしい方でね。よくミスをしては、君のお母さんにかばってもらったんだ」
('A`)「……」
川 - -)「早くに両親を失っていた私にとって、それは本当に暖かくてね。私にとって、第二のお母さんみたいな人だった……本当の子供である君の前で言うのも気が引けるんだけどね」
('A`)「いえ……」
川 - -)「だから良く、体調悪い時なんかに仕事を変わって貰ったりなんかもしてたんだ」
段々と、クーさんの肩が震えてきているのが分かる。
川 - )「あの日も……そうだったんだ」
( A )「……」
肩だけでなく、クーさんの声も震えはじめた。
- 279 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 18:40:51.71 ID:RFncWGIAO
-
川 - )「あの日、私は朝から熱っぽくて」
( A )「……」
川 - )「それで、君のお母さんに……」
( A )「……」
川 - )「でも、私は本当は分かっていたんだ。君のお母さんが随分と無理している事を、前日だってフラフラしながら働いてたって事を。でも、私は自分に甘えて――」
( A )「……」
川 ; -;)「それで、そんな私のワガママで……だから怖くて、葬式にも行けなくて」
川 ; -;)「本当にすま――」
( A )「もういい」
川 ; -;)「え?」
( A )「そういうのはもういい。聞き飽きたし――」
――言い飽きた。
- 280 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 18:46:30.99 ID:RFncWGIAO
-
川 ; -;)「でも……」
( A )「やめましょう。意味が無いんですよ」
川 ; -;)「……」
( A )「そんな事言ったって、カーチャンは帰って来ないし――」
――ブーンだって。
クーさんが立てた線香が、音も立てずに折れていた。
- 281 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 18:53:29.32 ID:RFncWGIAO
-
産まれてはじめての空港だった。
産まれてはじめての飛行機だった。
( *^ω^)「おっおー!ニュージーランドだおー!!」
産まれてはじめての、海外だ!!
(*'A`)「うおっ、スゲーぞブーン!あの飛行機うちの学校の貸し切りらしいぞ!!」
( *^ω^)「テンション、上がりまくりんぐ!」
⊂二二二二( ^ω^)二二二二⊃「ブ――――――ン!!」
(*'A`)「おい、ちょっと待てよブーン!」
ξ#゚听)ξ「空港内を走るな!」
- 283 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 19:06:18.38 ID:RFncWGIAO
-
テンションは当然上がりまくりだ。
だって俺には何もかもが珍しい。
飛行機内に入ってからも、俺の興奮は収まる事を知らない。
(*'A`)「スゲーぜ、スゲー!席にTVついてんぜTV!!」
( *^ω^)「凄いお!映画も見放題でゲームも出来るお!!」
(*'A`)「おっしゃおっしゃ!とりあえず、囲碁やろうぜブーン!!」
( *^ω^)「おkwwww」
ξ゚听)ξ「あんた達、これから10時間以上拘束された上にニュージーランドなんていうクソ田舎に飛ばされるっていうのに元気ね」
( *^ω^)「関係ねーおwwww」
(*'A`)「羊さん楽しみですwwww」
ξ゚听)ξ「ハァ……馬鹿共の相手は疲れるわね」
そんな感じでテンションMAXの俺達を乗せて 、ツン曰くクソ田舎らしいニュージーランドに向けて飛行機は飛び立った。
- 284 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 19:24:16.73 ID:RFncWGIAO
-
――それから、約11時間後。
(ヽ'A`)「やっと着いた……」ヨロヨロ
(;^ω^)「ど、ドクオ……大丈夫かお?」
ξ゚听)ξ「臭いから近寄んないでよね」
飛行機の旅というのは、俺のテンションなんて簡単に打ち砕くほど過酷な物だった。
およそ二時間足らずで、俺は胃の中身を全てリバースしてしまっていたのである。
(;^ω^)「ドクオは乗り物に弱かったんだおね……」
(ヽ'A`)「トイレ……トイレ…」
ξ゚听)ξ「汚ねぇ」
前々から思っているのだが、コイツは本当に女なのか?
もっとこう、本能で優しく出来ないのか?
ξ゚听)ξ「これ以上一緒に居るとゲロ臭さがうつるから、私行くわ」
ツンは吐き捨てる様にそう言うと、さっさと自分のペアの元に行ってしまった。
- 285 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 19:38:24.55 ID:RFncWGIAO
- (;^ω^)「ドクオ大丈夫かお?」
(ヽ'A`)「ブーン、俺が死んだら、俺の骨はお前が日本に持ち帰って欲しい」
(;^ω^)「おっおっ」
そんなやり取りをしながら、ヨロヨロと集合場所である空港のロビーに向かう。
(;^ω^)「ほらドクオ頑張るお」
(ヽ'A`)「うぅ……」
( ´∀`)「HEY,boys!mona」
と、人の良さそうな顔をしたかっぷくの良い金髪のオッサンが声をかけてきた。
( ´∀`)「moma,monamonamonamona!(英語です)」
(ヽ'A`)「ブーン…少しくらい分かるか?」
(;^ω^)「まるで」
ξ゚听)ξ「あんたらホームステイ先の人みたいよ」
(ヽ'A`)「つ、ツン……」
いつの間にか、ツンが戻ってきていた。
( *^ω^)「ありがとうだお、ツン!」
ξ*゚听)ξ「き、気になったからだけなんだからね!」
- 286 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 19:41:47.44 ID:RFncWGIAO
-
( ^ω^)「よろしくお願いしますお!」
('A`)「お願いします」
( ´∀`)「monamona」
ξ;゚听)ξ「大丈夫なのかしらコイツら……」
そんな感じで、俺達のホームステイは始まった。
- 289 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 19:59:45.60 ID:RFncWGIAO
-
それからの時間は、とまどう事も沢山あったけど、基本的には楽しい事の連続だった。
―例えば、車の中で。
( ´∀`)「momamona〜、ok is okidoking mona〜」
(;'A`)「ブーン、何て言ってんだ」
( ^ω^)「okは、ニュージーランドではオーキードーキーっていうみたいだお、多分」
(;'A`)「へ、へぇ〜」
――例えば、牛舎の中で。
( *´∀`)「monamona,monamonamona」ニヤニヤ
(;^ω^)「何言ってるんだお、ニヤついてて気持ち悪いお」
('A`)「あー…多分、あの持ってるシュガースティックを突っ込んで雌牛を孕ませる的な事を…」
(;^ω^)「おー、ドクオ流石だお」
('A`)(何でエロイ事はすぐ分かるんだろう?)
-
- 290 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 20:16:08.08 ID:RFncWGIAO
-
――例えば食事中で。
( ´∀`)「mona!monamona!!」カパッカパカパッ
(;'A`)「ぐわ、またアイス追加された!」
( *^ω^)「ホーキーポーキーうめぇwwwwwwwwwww」
(;A;)「毎食、食後にアイスなんて食えるかよ!」
――例えば、牧草地で。
W,,゚Д゚W「ベェェェエwwwベェェェエwwwwゴロォwwwww」
(#'A`)「あの羊、なんか俺らの事馬鹿にしてるぞ!」
( #^ω^)「今日の晩飯にしてやるお!」
( ´∀`)「monamona」
英語は全然覚えなかったけれど、毎日が、何だか充実してた。
- 292 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 20:23:40.59 ID:RFncWGIAO
-
そんなある日、最終日の前日。
珍しく、モナーさんは俺達を何処にも連れて行かなかった。
自由行動、というヤツらしい。
特にやりたい事も無かった俺とブーンは、モナーさんの家の裏に広がる草原に向かう。
('A`)「……広いな」
( ^ω^)「……だお」
其処には、まるで絵に描いた様な『草原』が、本当に草原として広がっていた。
- 293 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 20:30:46.71 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「テレビじゃねんだよな……これ」
( ^ω^)「……」
青々とした、なんて表現は良く聞くが、本当にそんな感想を抱く景色を見たのははじめてである。
しかも、これは別に観光名所とか、保護されている景観じゃなくて、ここじゃぁ吐いて捨てる程ある価値なんてこれっぽっちもない景色なのだ。
……それに、これ自然破壊の後らしいし。
そんな事を思っていると、唐突にブーンが言った。
( *^ω^)「興奮してきたお」
('A`)「へ?」
- 296 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 20:40:43.60 ID:RFncWGIAO
-
⊂二二二二二( *^ω^)二二二二二⊃「ブ――――――――ン!」
そんな風に、両手を翼の様に広げて、ブーンは走り出す。
('A`)「……」
その様子は、純粋な様で。
何だかとても。
とても、とても、
とても心を打つ姿で。
⊂二二二二二( ^ω^)二二二二二⊃「――空も飛べるはず!」
――俺の一番の思い出は、ソレだった。
- 298 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 20:51:05.20 ID:RFncWGIAO
-
その瞬間なら分かった。
高校生活が、最高の時間だったって、そう言う大人の気持ちが良く分かった。
最高だった。
確かに最高だった。
全てが夢みたいだった。
でも大人はみんなこう教えてくれていた。
夢は覚めるもんだって。
知っていた。
知っていたけれど。
そんな常識は頭では分かっていたんだけれど。
誰だって知ってるよね?
夢から覚める時って唐突だって。
でもさぁ、本当に唐突になんだよ。
だって――
- 300 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 20:53:10.64 ID:RFncWGIAO
-
――帰ったら、カーチャンが死んでいた。
- 309 :>>300 ×帰ったから○帰ったら:2008/12/30(火) 21:14:49.07 ID:RFncWGIAO
-
( ФωФ)「過労です。また元々、呼吸器が弱かった様で、運ばれた時には既に呼吸停止、直後に心停止、その後に脳死を確認致しました」
( A )「……」
( ФωФ)「お悔やみ申し上げます」
医者の、淡々とした説明口調が逆にありがたかった。
J( - -)し「……」
( A )「……」
俺が空港に降りた頃に倒れ、俺が学校へ辿り着いた頃に死亡したらしい。
J( - -)し「……」
( A )「……カーチャン」
呼びかけてみても、当然カーチャンは返事を返してくれたりはしない。
- 310 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 21:17:48.71 ID:RFncWGIAO
-
無理をしていた。
無理をさせていた。
普通に働いたら暮らすのがギリギリなのだ。
きっと修学旅行の費用を貯めるのに、随分無理していたに決まっている。
いやいや普通に生活していくのだって、ただ飯を食うだけの俺のせいで随分きつかった筈。
あんな、勉強なんてろくろくやらない高校生活を送るくらいなら、さっさと働くべきだったのだ。
俺は、なんて――
(;A;)「カ゛ーチ゛ャン……」
J( - -)し
――なんて、馬鹿。
- 313 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 21:28:53.38 ID:RFncWGIAO
-
――そうして、俺は空っぽになる。
いや、残ったのもある。
カーチャンがやっぱり無理して残した生命保険、500万。
そんな物は、何にも無いも同然で。
――どちらにせよ、俺は空っぽになった。
- 315 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 21:46:48.08 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「……」モキュモキュ
飯を、食っていた。
何故か飯を食えていた。
学校の、屋上の、いつもの場所でいつもの面子で。
何故か、俺は飯を食えていた。
(;^ω^)「……」モキュモキュ
ξ;゚听)ξ「……」モキュモキュ
('A`)「……」モキュモキュ
いつもの様な、会話はない。
多分俺に気を使っているのだろう。
あのツンですら空気を読んでいる所が、やけに笑えた。
- 318 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 21:56:08.84 ID:RFncWGIAO
- (;^ω^)「あのぉ、ドクオ……なんというかそのぉ」
やはり沈黙に耐えられないのか、ブーンがそんな風に口を開く。
気付と、俺も口を開いていた。
('A`)「なぁブーン、ツン……」
(;^ω^)「おっ…?」
ξ;゚听)ξ「……」
('A`)「お前らさ、親に遊びに連れていったことはあるか?」
(;^ω^)「そりやぁ……」
ξ;゚听)ξ「……それなりには」
('A`)「……だよな」モキュモキュ
俺は言いながら、はじめて買った購買のパンを頬張る。
('A`)「俺には、殆どそういう記憶はねぇんだよ」
(;^ω^)「……」
('A`)「でも一度だけ、遊びに連れていって貰った事がある」
ξ;゚听)ξ「ど、何処よ?」
- 323 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 22:09:32.08 ID:RFncWGIAO
- ……何だかコイツら緊張してるな、仕方ない。
緊張をほぐしてやる為、俺はにんまりと笑ってやる。
('∀`)「VIPランドさ。ほら、あの昔っからボロっちぃ」
ξ;゚听)ξ「……」
('∀`)「あそこ俺の小学校の近くでさぁ、あのショボイVIPタワーとかいうやつが見えるんだって。俺あれのショボイ展望台の上にいっつも登りたくてさぁ……あ、展望台の中じゃないよ上よ上、屋根ね」
(;^ω^)「……」
……あれ?こいつらいつまでたっても緊張ほぐれねぇなぁ。
('∀`)「でな、俺カーチャンにいっつもその事を言ってたんだって。そしたらよ、なんと俺の誕生日の日によ!連れてってくれたんだよ!!VIPタワーの上、屋根の上によ!!!」
('∀`)「いや、うちのカーチャン随分無理言ったらしくてよ!でも一般立ち入り禁止の所に入れたんだぜ?スゲーだろ!?」
……よし、とっておきだ!
('∀`)「ま、お陰で他に乗り物とかは一切乗れなかったんだけどよ!アハハハハハッ!!」
ξ;゚听)ξ「……」
(;^ω^)「……」
あ?どうしたんだよお前ら、笑えよ。ここ笑う所だよ!!
- 324 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 22:16:11.05 ID:RFncWGIAO
-
('∀`)「アハ、アハハ」
(;∀`)「ハハハ……」
( A )「ハハ」
ξ;゚听)ξ「……」
(;^ω^)「……」
(;A;)「カーチャン……」
――その日、その瞬間に下した馬鹿げた決断を、俺は今でも後悔している。
- 329 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 22:34:04.70 ID:RFncWGIAO
-
その日、俺がもう慣れてしまった一人での帰り支度をしていると、校門前にツンが居た。
ξ*゚听)ξ(・∀・* )
男と二人で。
('A`)「……」
俺が何となく眺めていると、ツンはこちらに気が付いた様だった。
一緒に居た男に何やら言ってから、ツンはこちらへとやってくる。
ξ゚听)ξ「ドクオ……今帰り?」
('A`)「あぁ……良いのかよ?」
俺は目線だけで、複雑な顔で此方を眺めてくる男を示した。
ξ゚听)ξ「……大丈夫よ、嫉妬に狂って何かする程根性のある男じゃないから」
('A`)「……どこが大丈夫なんだよ」
俺がその男にどう思われ様がどうでもいいっていうのが、ツンらしい。
- 330 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 22:40:14.20 ID:RFncWGIAO
-
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「……」
俺は何も言わない。
ツンも何も言わない。
先に口を開いたのは、ツンだった。
ξ )ξ「何も、言わないのね」
('A`)「あぁ」
ξ )ξ「私、あそこにいるのと付き合う様にしたの」
('A`)「そっか…」
他人が聞けば、まるっきり別れ話。
確かに、別れを告げる話なのだが、コレはそんな良い物じゃぁない。
- 332 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 22:47:50.69 ID:RFncWGIAO
-
ξ )ξ「ブーンが―」
('A`)「ブーンが死んで、もうすぐ一年だよ」
俺は遮る様にそう言う。
どうせろくな事は聞けないだろうから。
ξ )ξ「あたし―」
('A`)「正しいよ。風化させるのが、ツンが正しい」
ξ )ξ「……」
('A`)「……」
ξ; )ξ「……」
一瞬だけ、ツンは涙を見せて。
ξ )ξ「――ごめんね」
――それが、ツンからの最初で最後の謝罪の言葉だった。
- 335 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 22:54:38.75 ID:RFncWGIAO
-
ツンが男と帰っていくのを認めてから。
俺は家に帰る。
('A`)「ただい……ん?」
家のカギは、開いていた。
(´<_` )「やぁ」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「お邪魔してるよ」
弟者さんと、母者さんがいた。
- 337 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 23:04:57.29 ID:RFncWGIAO
- ('A`)「……」
『またですか』という言葉が喉元まで来て、それを飲み込む。
今までとは違って、母者さんが居たからだ。
(´<_` )「ドクオ君、聞き飽きたとは思うんだけどさ―」
('A`)「すみませんが―」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「待ちな」
俺が弟者さんの話を遮る前に、その全てを母者さんが遮った。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ドクオ、今日は最後のつもりなんだよ」
('A`)「……」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「あたしは歯に衣着せる気はないし、あんたも着せなくていい」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「はっきり言うよ。こっちでの事全部捨てて、うちに来な。今のあんた一人で、まともに生きていけるとは思えない」
- 338 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 23:11:28.57 ID:RFncWGIAO
- ('A`)「……」
本当にスッキリとした物言いだった。
そう、母者さんってこんな人だったなぁ……。
(´<_` )「なぁドクオ君、母者もこう言ってるし―」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「アンタは黙ってな」
ピシャリと、有無を言わせぬ物言いで、母者さんはそう言う。
( A )「……」
これは、取り繕ってる場合じゃないんだな。
('A`)「はっきり言います、俺は行きません。何と言われたって行きません」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「何でだい?」
- 340 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 23:19:42.55 ID:RFncWGIAO
- ('A`)「今日、俺の友達が一人。俺がいる場合から完全に離れて行きました」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「……」
('A`)「そいつは、逃げませんでした。逃げずに過去を飲み込んで、そして去って行きました」
(´<_` )「……」
('A`)「俺も逃げたくありません。逃げて取り替えしのつかない事になったから、もう逃げたくないんです」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「例え、それに押し潰されてもかい?」
('A`)「えぇ、それが大事だから。逃げるって事は、失う事ですから」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「分かった」
- 342 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 23:27:55.44 ID:RFncWGIAO
-
(´<_`;)「は、母者!?」
母者さんが肯定した事に余程驚いたのか、弟者さんがすっとんきょうな声を上げる。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「帰るよ、ドクオは本物の馬鹿さ。もうドクオに流石家は必要ない」
(´<_`;)「な、何言ってんだよ母者!?ド、ドクオ君……母者が認めても僕は―」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「見苦しいよ弟者!」
(´<_`;)「っ!」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「もうこれ以上、あんた自身の慰めにドクオ君を使おうとするんじゃない」
( <_ )「……」
('A`)「……」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「長い事、弟者が邪魔したねドクオ」
- 346 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 23:39:52.55 ID:RFncWGIAO
- ( <_ )「……」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「弟者、あんたもそろそろ、逃げる以外で自分を慰める方々を見つけなくちゃね」
母者さんは、何処か満足気な顔をしてそう言う。
弟者さんはずっと顔を伏せていて、その表情を読む事は出来ない。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「ドクオ、こいつは餞別だよ」チャリ
そう言って母者さんが懐から取り出したのは、何処かの鍵。
@@@
@#_、_@
( ノ`)「逃げないのも良いさ、だけど本当に潰されたら馬鹿を通り越した間抜けさ」
('A`)「……」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「間抜けになりそうな時は、そいつを持って来るといい」
@@@
@#_、_@
( ノ`)「部屋を一つ……使える様にしておくからさ」
それは、言うまでもなく。
兄者さんの部屋の鍵だった。
- 354 :×煎餅○餞別 ハズカシイ:2008/12/30(火) 23:56:19.71 ID:RFncWGIAO
- ∬
――昼飯で号泣して以来、俺は学校に行かなくなっていた。
先生から電話は掛ってきたし、ブーンやツンに至っては何処で調べたのか家にまでやって来たが、俺はかたくなに居留守を使った。
もう、決めていたのだ。
ツンやブーン……いや、ブーンには合わないって。
俺は、行かなきゃならないから。
待たせてしまっているから。
……きっと、今も無理をし続けてると思うから。
- 355 : ◆O4oIDvTQAw :2008/12/31(水) 00:00:52.20 ID:MDhxBiL8O
-
――そして、その日はやって来た。
- 359 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 00:12:39.70 ID:MDhxBiL8O
-
('A`)「……ボロい」
記憶よりももっとオンボロになったVIPタワーを見上げて、俺は思わずそう漏らす。
全体的に錆びだらけで、懐中電灯で照らしてみると、幽霊タワーにしか見えなかった。
('A`)「うーん、まぁ 呪われても別にいいしな」
呪いが成呪するよりも、こっちの方が多分早いだろう。
('A`)「この階段、完全に錆びついてんな」
非常階段への扉を破壊し、そんな事を呟きながらタワー側面のそれを登っていく。
錆びついた階段は、一歩進むごとにキィキィと頼りない音を立てた。
- 361 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 00:22:38.38 ID:MDhxBiL8O
-
俺はVIPランドの定休日の深夜に、VIPランドに忍込んでいた。
ここはもう潰れる寸前で、定休日も週2日もある。
そんな所の防犯設備なんて、あって無いような物だ。
スパナ一本あれば良かった。
('A`)「まぁ……潰れる前で良かったかな」
そう呟きながら、懐中電灯で足下を照らしつつ非常階段を登っていく。
と、風がふいた。
('A`)「さみぃ……コート持ってくりゃ良かったか」
('A`)「……」
('A`)「いやアホだろ、俺」
自分に自分に突っ込みを入れるのと、VIPタワーの展望台の屋根に辿り着いたのは同時だった。
- 363 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 00:31:05.55 ID:MDhxBiL8O
-
('A`)「……」
端まで行って、そこから見える景色を眺めてみる。
('A`)「……チンケじゃね?」
それは本当にチンケな光景で、見えるとすれば寂れた商店街の中でチラホラと頑張っている店の、弱々しいホタルの様な光だけ。
100万$どころか、100円でもぼったくられてる様な気がする夜景だった。
('A`)「……」
それでも……
(;A`)「……」
それでも……
(;A;)「……」
……俺を号泣させるには、十分だったみたいだ。
- 364 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 00:39:54.60 ID:MDhxBiL8O
-
('A`)「さーって、行くか」
さらに端へと、足を進める。
('A`)「行くぞ逝くぞー」
ぶんぶんと、腕を振ってみる。
('A`)「逝っけー!」
ヘッドバンキングしてみる。
('A`)「イッちゃうよ?逝っちゃうよ!?」
平泳ぎの動作をしてみる。
('A`)「……」
しかし、足は一向に動かなかった。
- 366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 00:49:12.18 ID:MDhxBiL8O
-
('A`)「……カーチャン、待ってるのになぁ」
('A`)「やべぇよ、怖いわ」
今更になって、兄者さんの言葉が見に染みてくる。
兄者さんは、怖くてこれを出来なかったんだろう。
でも、俺と兄者さんは違う。
兄者さんはこの先に何も無かったけど、俺には……
('A`)「…カーチャン 」
……この先にあるから。
でも、それにしても怖い。
平常心で跳ぶなんて無理だ。
気を高ぶらせなければならない。
('A`)「……」
少し、考えて。
(*'A`)「……」
俺はそれを実行した。
- 370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 00:59:50.83 ID:MDhxBiL8O
-
⊂二二二(*'A`)二二二⊃「ぶ、ブ―――――ン!」
親友の、彼の名を叫ぶ。
彼よりも心なし小さめに。
彼よりも明らかに小さな翼を広げて。
⊂二二二('A`*)二二二⊃「ブ―――――ン!」
何にも無い筈の高校生活だった。
何にも無い筈の俺だった。
でも君が居たから、何かが出来たから。
だからごめんけど、最後まで君の力を借りて。
体が暖まってくる。
心が加速していく。
動かなかった足も、嘘みたいに動く。
だから、このまま――
⊂二二二(*'A`)二二二⊃「空も飛べる―」
- 371 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 01:04:20.08 ID:MDhxBiL8O
-
(;^ω^)「――空は飛べないお」
――その言葉で、俺が飛び立つ事は叶わないかった。
- 375 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 01:18:14.24 ID:MDhxBiL8O
-
(;'A`)「ぶ、ブーン!?お前いつから…」
( ^ω^)「おっおっ」
いつの間にか、ブーンが居た。
まるで当たり前の様に、俺の日常の様に、ブーンが其処に居た。
( ^ω^)「ドクオがブーンを始めた時には、居たお」
( A )「言うのが遅せぇよ」
何というタイミングで居やがるんだ。
いて欲しい時も、いて欲しくない時も、いつもブーンは居やがる。
空気をまるで読めていない。
だから……。
( A )「だからお前はぼっちなんだよ」
( ^ω^)「おっおっ、なら僕はぼっちでよかったお」
そう言って、ブーンはいつもの様に笑った。
- 378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 01:31:37.27 ID:MDhxBiL8O
-
( A )「どうして分かった?お前じゃぁ分かんねぇと思ったのによ」
( ^ω^)「分かったのは僕じゃないお、ツンだお」
( A )「なんで……?」
( ^ω^)「……もし自分がドクオにとってのカーチャンを失ったら、そうするって言ってたお」
( A )「あぁね」
それは多分、ブーンなんだろうな。
( A )「でも日にちと場所は?」
(;^ω^)「昼ご飯の時にあんだけ不自然な話されたら、流石に僕でも分かるお。今日来たのは、ツンが胸騒ぎがするって電話を寄越したからだお。ツンももうすぐ来るお」
( A )「そっか」
何なんだツンの奴、第六勘だなんて、妙な所で女らしさを発揮しやがって。
最後までムカつく女だ。
- 379 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 01:41:06.84 ID:MDhxBiL8O
-
( A )「やれやれだぜ」
(;^ω^)「ドクオが言うなお、僕が言いたいお。アホな事なやってないでさっさと帰るお」
そう言って、ブーンは俺に一歩近付く。
俺は一歩離れる。
(;^ω^)「おっ?」
( A )「近付くなよ。出来れば見なかった事にして帰ってくれ、ブーンに見られたくない」
(;^ω^)「何言ってるんだお。ブーンして気分さっぱりしたんじゃないのかお?」
( A )「あぁ、さっぱりしたよ」
('∀`)「色々とな」
(;^ω^)「っ!」
その俺の笑顔は、ブーンには何処か狂気じみて見えた様だった。
- 383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 01:50:32.07 ID:MDhxBiL8O
-
('∀`)「見られたくは無かったけど、でもありがとな。やっぱ最後にお前に会っときたかったからなぁ」
(;^ω^)「おっ……ま、待つおドクオ。そんな事したって、ドクオのカーチャン喜ばないお」
ありきたりだなぁ、ブーンは。
('∀`)「知ってるさぁ、俺がその位考えてないと思ったのかよブーン?母ちゃんとは、俺の人生のほぼ全てを過ごしてきたんだぜ?無理に手伝いに行ったって、カーチャンが喜ばないってのは知ってるよ」
(;^ω^)「な、なら……」
('∀`)「でも知ってっか?それってカーチャンの本心じゃないんだぜ?」
俺は得意気にそう言った。
満面の笑みで。
(;^ω^)「……」
どうしたブーン?笑顔に笑顔で返せよ基本だろ?
- 386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 02:07:08.31 ID:MDhxBiL8O
-
ガシャンと、VIPランドの何処からか金属音が響いてくる。
きっと、ツンが侵入してきたのだろう。
('∀`)「じゃぁな、ブーンと本気で語り合ったら終わるわけないし、ツンとはマジで会いたくねぇからこの辺で」
(;^ω^)「っ!」
びびっていた足が、嘘の様に軽い。
ブーンが居るか居ないかで、この変わりよう。
さっすがブーンだ!
('∀`)「きっと空も―」
両手を広げ、俺は加速する。
足が、空を踏み――。
( # ω )「おっおっ、おっおっおっおっおっおっおおっ――!」
⊂二二二二二( #゚ω゚)二二二二二⊃「ドクオォォオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」
- 388 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 02:14:02.40 ID:MDhxBiL8O
-
(;'A`)「っ!」
⊂二二二二二( #゚ω゚)ニニニニニ⊃「ブゥゥウウウウウウウウウンッ!!」
俺は、間違いなく飛んでいた。
少なくとも、両足は空を舞っていた。
でも、ブーンの翼に引き戻された。
そして――
- 391 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 02:19:03.13 ID:MDhxBiL8O
-
⊂ニニニニニ( #゚ω゚)ニニニニニ⊃「……」
⊂ニニニニニ(;^ω^)ニニニニニ⊃「おっ…!」
――ブーンが、空を舞っていた。
- 397 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 02:32:07.17 ID:MDhxBiL8O
-
(#'A`)「ぶ、ブーン!」
一体、どうやったかも覚えていない。
無我夢中だっとしか、言い様がない。
(;゚ω゚)「おー……」
ブーンが落ちてしまう前に、何とかブーンの足を掴めたのは、幸運以外の何物でもなかった。
(#'A`)「ば、バカ!何やってんだよブーン!!」
ブーンの足を掴む手が、ブルブルと震える。
肩が、ガクガクと上下する。
筋肉が、一瞬で悲鳴を上げていた。
( ^ω^)「……」
でも、ブーンはやけに冷静で。
( ^ω^)「どうだお、ドクオ?これがドクオのやろうとしていた事だお?」
(#'A`)「分かった!分かったよ!!」
筋肉が痙攣する。
ブーンの体重を支えられない。
- 402 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 02:46:30.28 ID:MDhxBiL8O
- ( ^ω^)「反省したかお?もうこんな事はしないかお?」
(# A )「反省した!反省したから!!もうしないから!!!」
どうして俺の筋肉は、こんなに貧弱なんだろう。
どうして、親友一人すら支え切れないのだろう。
俺の体が、沈んでいく。
ブーンを支え切れなくて、ブーンと一瞬に俺ごと沈んでいく。
( ^ω^)「おっおっ…このままだと、ドクオも落ちるおね」
(# A )「っ!」
ブーンが何をしたいのか、何を言いたいのか、あまりにも分かってしまって。
下では、ツンがこちらに駆けてきていて。
(#;A;)「やめろ!死ぬな、ブーン!!」
( ^ω^)「大丈夫、僕はしなないお……言ったお?」
- 403 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 02:47:35.33 ID:MDhxBiL8O
-
――空も飛べるはず
- 404 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 02:50:25.40 ID:MDhxBiL8O
-
ξ;;)ξ「いやぁあああああああああああああああああ!!」
――グシャリと、鈍い音が響いた。
- 406 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 03:04:38.36 ID:MDhxBiL8O
- ∬
卒業式が終わって、俺はまたいつもの様に、ショボンさんの家に居た。
(*´・ω・`)「よーし、ドクオ君!今日は卒業記念に焼酎を飲もうか!?」
(;'A`)「か、勘弁して下さいよ……」
ショボンさんの家に来る度に、俺は酒を飲まされる。
そのせいか、大分飲める様になってしまっていた。
(*´・ω・`)「大丈夫だよ、若いんだもの!」
(;'A`)「うへぇ…」
この人はいつもそれである。
逆らえる訳もないので、俺は大人しく焼酎を飲まさる事にした。
(;'A`)「なんだコレ、一口のんだだけで頭が痛い……」
(*´・ω・`)「ふふふ…」
俺のそんな様子に、ショボンさんは酷く嬉しそうだった。
- 414 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 03:15:41.45 ID:MDhxBiL8O
-
大分酔いも回って来た頃、ショボンさんは唐突に切り出した。
(*´・ω・`)「……ドクオ君も、もう卒業なんだね」
(*'A`)「……そうですね」
ショボンさんから注がれる焼酎を、チビチビと吐かない程度に飲みながら、俺は頷く。
(*´・ω・`)「……ここも、もう卒業なのかな?」
('A`)「それは……分かんないですよ」
ショボンさんがあまりに寂しそうな顔をするので、思わず曖昧に返事をしてしまったが、おそらくもう来る事は無いだろう。
(*´・ω・`)「一つ、聞いてもいいかい?」
(*'A`)「なんすか?」
(*´・ω・`)「ブーンとは、どうやって会ったんだい?」
('A`)「ブーンとは、屋上で……」
- 415 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 03:22:38.25 ID:MDhxBiL8O
-
そこまで呟いてから、俺は立ち上がった。
( A )「……」
(*´・ω・`)「ドクオ君?」
忘れていた。
完全に忘れてしまっていた。
ここは良い所だけれど、俺の高校生活は、この場所で終わっちゃぁいけない。
時計を確認する。
時刻はまだ夕方に差し掛かる前。
( A )「すみません。俺、行きます」
(;´・ω・`)「ちょ、ド、ドクオ君っ!?」
ショボンさんの制止を振りきって、俺は走り出した。
- 416 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 03:27:19.13 ID:MDhxBiL8O
-
学校に付くと、時刻は完全に夕方になっていた。
誰も居なくなった校舎の廊下を、慣れた様子で走っていく。
誰も居なくなった校舎の階段を、慣れた様子で登っていく。
――そうして、慣れた手付きで屋上への扉を開いた。
- 418 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 03:36:23.25 ID:MDhxBiL8O
-
誰も居ない筈の其処には――
ξ゚ー゚)ξ「遅いわよ、バーカ」
――ツンと――
『おっおっおっおっ』
('A`)「……」
夕日が眩しくて、何も見えない。
(;A`)
(;A;)
涙が溢れ出て、何も見えない。
――だけど、確かに其処には――
- 419 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/31(水) 03:40:41.69 ID:MDhxBiL8O
-
『――空も飛べるはず!』
( ^ω^)ブーンはお亡くなりになられたようです 完
- 427 : ◆O4oIDvTQAw :2008/12/31(水) 03:52:45.68 ID:MDhxBiL8O
-
支援してくれた方、保守してくれた方、本当にありがとうございました。
長い長い作者のオナヌーに付き合って頂いて、感謝のしようもございません。
正直に謝罪致します。
ブーンの死因は当初から全く考えておらず、そして全く思い付きませんでした。
本当にな――にも考ずに乗っ取りとか(しかもシリアスで)してしまうと、こんな事になってしまうんだなぁ……と。
本当にごめんなさいorz
しかしそれでも、もしちょっとでも楽しんで頂けたのならば、幸いです。
あと別に作者はライター志望ではございませんし、歩くとアルファは大好きです。
――では、皆様良い夢を。
-