続き
- 7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 17:10:50.24 ID:RA1qa+J1O
-
('A`)「うーっす」
( ^ω^)「おいすー!」
あの日、屋上でブーンのぶぐりを踏み潰した日から、俺達は頻繁に屋上で会う様になっていた。
いや、きっとつるんでいる。
いわゆる、いきなり泣き出した事によるブーンからの同情だったのかもしれない。
でも、俺はブーンと仲良くなれたんだと、そう思うから。
('A`)「いいなぁーあの鍵、前のみたいに錆びてて開かねぇなんて事にならねぇ」
(;^ω^)「おっおっ、前のだってコツを掴めば簡単に開いたんだお。同じ番号で開く鍵を見つけるの、苦労したんだお……」
('A`)「ご苦労さん」
( ^ω^)「金を払えと言ってるんだお」
そんな風なやり取りで、俺達は笑い合う。
3日前の憂鬱が、嘘の様な屋上だった。
- 11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 17:23:27.96 ID:RA1qa+J1O
-
('A`)「でもよぉ、お前大丈夫なの?」
( ^ω^)「何がだお?というか、ブーンと読んで欲しいお、ドクオ」
(;'A`)「…あ、スマン」
心の中では、もう完全にブーンと呼び捨てである。
だが小学校以来、いじめっ子といじめられっ子の虚偽の友達以外は出来た事が無かったので、口で呼び捨てにするのはかなり躊躇われた。
('A`)「だからさ、お前いつも五限目ここに居るじゃん。大丈夫なのか?」
(;^ω^)「それはドクオが言えた義理じゃないと思うお」
('A`)「いや、俺は……さ、聞いたってまるで分からねぇし」
('A`)「……ぼっちだし」
懺悔する様に、そう言った。
- 12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 17:29:58.16 ID:RA1qa+J1O
-
( ^ω^)「……」
それに対して、ブーンは何も言わない。
ただ、じっと俺の顔を見つめてくるだけだ。
('A`)「……」
一瞬、嫌われちまったかな、と思った。
結構こういう事は良くある。
仲良くなったかなぁって頃に、ぼっちだったり虐められてるってバレて、疎遠になるって事。
でも、それは杞憂だった。
( ^ω^)「……そっか、ドクオもかお」
('A`)「え?」
( ^ω^)「僕も、似たようなもんだお」
- 16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 17:44:42.57 ID:RA1qa+J1O
-
(;'A`)「ぁ……ぇえ?」
それは、随分と意外な話だった。
この3日話していただけで、ブーンは随分と社交的だなぁと俺は感じていたのである。
そんなブーンが、俺と似たようなもの?
('∀`)「はは……まさか」
( ^ω^)「本当だお」
俺の軽口をたしなめるかの様に、ブーンはピシャリとそう言った。
( ^ω^)「僕はこんな喋り方だお、この学校の生徒は外れた事を嫌うから、自然とみんな僕とは話さない様にするお」
( ^ω^)「それに頭も悪いお……初日の授業から、もう何を言ってるのか分からんかったお」
そう呟いて、ブーンは屋上から唯一見える校舎の一画をぼんやりと見つめる。
('A`)「……」
ブーンの考えてる事は、何となく分かる。
せめて勉強さえ出来れば……と思っているのだろう。
この学校は、進学校だ。
多少性格や容姿に難があっても、成績が良ければ割と扱いが良くなるのだ。
まぁ別に、悪くたって何かされる訳では無いのだけれど。
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 17:53:25.03 ID:RA1qa+J1O
-
( ^ω^)「というか、そうじゃなきゃ授業中にこんな所におらんおww」
( ^ω^)「おっおっおっwwww」
ブーンは心底可笑しいという顔で笑う。
超絶空気読めない俺でも、ここはとりあえず乗っておく。
('∀`)「だよなだよなww俺なんかはこのブサイク面のせいでこんなんだよwwww」
( ^ω^)「……」
('∀`)「……」
……あれれぇ?
- 19 名前:>>17 ゴメン、多分ない:2008/12/29(月) 17:58:56.82 ID:RA1qa+J1O
-
( ^ω^)9m「プギャーwwwwwwwwwwwwwwww」
――人を殴ったのは、はじめての事だった。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 18:20:43.78 ID:RA1qa+J1O
-
そんな風な、だいぶ現実からは逃げているけれど、
青春……と呼んでも良さそうな時間を、俺は屋上で過ごす事を許された。
( ^ω^)「おっおっ、石橋の物理まったく分からんお。というか、日本語かどうかも怪しいお」
('A`)「あ゛ー分かる分かる。あいつこの間うなりの実験しようとして音叉持ってきたんだけど、片方が錆び過ぎてて全くうなりが起こらねぇんだよ。あれマジでウケたわ」
( *^ω^)「おっおっおっおっおっwwwwwwww」
そんな毎日に、学校に何かがある毎日に慣れて来た頃。
いつもの様に屋上でブーンと馬鹿話に花を咲かせていると、唐突にブーンが言った。
( ^ω^)「ドクオ、いつも昼休みが終わって屋上に来るけど、昼飯はどうしてるんだお?」
(;'A`)「あ゛ー…」
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 18:29:03.61 ID:RA1qa+J1O
-
随分と答え辛い質問だったが、ブーンに隠してみたって仕方がない事だ。
俺は正直に答える。
('A`)「……便所飯だな」
( *^ω^)「おっおっおっwwww」
(#'A`)「テメェ、笑うなよ!」
( ^ω^)「すまんこすまんこwあんまり予想通りだったからww」
(#'A`)「けっ…」
するとブーンは、『なら丁度良いお』と言って笑う。
( ^ω^)「ドクオも屋上で一緒に食べないかお?」
( ^ω^)「僕はいつも屋上で食ってるんだお」
('A`)「……」
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 18:39:46.35 ID:RA1qa+J1O
-
思わず、言葉を失ってしまった。
だってそうだ、中学からの便所飯。
友達と一緒に昼飯を食べるなんて、俺にはあまりにも現実離れしていた。
('A`)「……いいのか?」
( ^ω^)「おっおっ、当然だお!ブーンとドクオは友達だお!!」
('A`)「……」
('A`)「友達…」
友達。
その言葉で思い出すのは、『俺達友達だよな』と言って慣れ慣れしく肩に腕を回してくるいじめっ子達。
その言葉は、俺にとっては唾棄すべき単語。
だけれど――
('∀`)「あ、ぁあ!友達だよな!!」
( *^ω^)「おっおっおっ」
――そんな事は、もうどうでもよくなっていた。 - 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 19:58:30.56 ID:RA1qa+J1O
-
――翌日。
('A`)「うーっす」
手慣れた手付きで、いつもの様にいつもとは違う時間に屋上への扉を開くと。
ξ゚听)ξ「……」
いつもとは違う人が居た。
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「……」
('A`)「……失礼しました」パタンッ
とりあえず、自然な流れで扉を閉めておいた。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 20:10:17.95 ID:RA1qa+J1O
-
(;'A`)「なんだよ、先客かよ……参ったなぁ」
ブーンの口ぶりから、屋上に来るのはブーンと俺だけだと思っていたが、どうやら違うらしい。
いくら真面目一辺倒のこの学校でも、鍵の番号を1〜999まで確かめる粋狂な奴は他にも居た様だった。
(;'A`)「やべぇな、ブーンは五組だったか?クラス前で人を呼ぶなんて高難易度の技、俺には出来ねぇぞ」
ブーンに報告する為、ブーンの教室に向かおとする。
と、
ξ゚听)ξ「待ちなさいよ」ガシッ
(゚A゚)「グェァ…!」
後ろから襟首を掴まれた。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 20:18:43.72 ID:RA1qa+J1O
-
(;'A`)「な、な、……な!」
ξ゚听)ξ「なんなのよアンタ、人の顔見るなり出ていって。どういうつもりなのよ?」
(;'A`)「は……ハヒッ!」
俺は酷く混乱する。
そりゃぁそうだ、こっちは同性のクラスメイトに話しかけるのでさえ躊躇してしまう様なぼっち野郎なのだ。
初対面の女子と会話するなんて、不可能というより想定外である。
俺はそんな風に、コミュニケーション溢れてる生活を送れる様には出来ていない。
ξ゚听)ξ「ハヒじゃぁ分からないわよ」
(;'A`)「ご、ごめんなさい、ごめんなさい。許して」
ξ#゚听)ξ「だからそうじゃなくて!」
- 45 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 20:30:42.55 ID:RA1qa+J1O
-
(;^ω^)「ツ、ツン落ち着くお!そ、そいつがドクオだお!!」
女子が今にも怒鳴り始めようか、という時になってやっと止めの言葉が入った。
……というかブーン、居たんだ。
ξ゚听)ξ「え……コイツがドクオ?」
ブーンにツンと呼ばれたその気の強そうな女子は、ブーンからそう聞くと品定する様に俺をジロジロと無遠慮に眺めてくる。
その顔は、何か般若みたいだ。
ξ#゚听)ξ「……」
(;'A`)「……」
スッゲェ、怖い。
- 51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 20:44:20.47 ID:RA1qa+J1O
-
ξ゚听)ξ「ふーん、確かにあんたが言った通り、冴えない面してるわね。ブサイクだし」
(;A;)「……」
……チ、チクショウ!だから女は嫌いなんだ!!しってるから、知ってるから、ブ、ブサイクだなんて一々口に出すんじゃねぇよ!!!
(;A;)「ぶ、ぶぅう゛う゛ん……?」
(;^ω^)「おっ、おぉ……幼馴染みの、ツンだお。ちょ、ちょっと口は悪いけど、良い子なんだお?」
ξ゚听)ξ「それにしても、これは想像を遥かに超えるダメダメさね。もやしだし、頭も悪いらしいし……ブサイクだし」
(;A;)「ま、またブサイクって……嘘つき!ブーンの嘘つき!!」
(;^ω^)「おっおっ…」
ブーンは、誤魔化す様に笑っている。
本当になんなんだよこの女は、大体お前ぼっちなんじゃなかったのかよ?
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 21:00:05.33 ID:RA1qa+J1O
-
ξ゚听)ξ「まぁブーンの友達らしいから、仲良くしてあげる」
ξ゚听)ξ「津出ツンよ。ツンでいいわ、よろしく」
ツンと名乗ったその女子は、自信満々と言った風にそう言って、その見るからに無い胸をはっている。
ツインテールのその髪が、風になびく。
(;'A`)(……本当になんなんだコイツ)
ξ#゚听)ξ「返事は?」
(;'A`)「よ、よろしくお願いします」
ξ゚听)ξ「よろしい」
そう言って、ツンはいつの間にか屋上に敷かれていたシートの上に座った。
ξ゚听)ξ「まったくドクオが遅いせいで、昼休みの時間無くなったじゃないの。さっさと食べるわよ」モキュモキュ
言いながらも、ツンはさっさと自分の分の弁当を食べ始めた。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 21:13:47.02 ID:RA1qa+J1O
-
('A`)「……」
(;^ω^)「おっおー……ドクオ、僕達も食べるお」
('A`)「待てやこら」ガシッ
いそいそとツンが座っているシートの元へ向かおうとしたブーンの首を掴む。
聞きたい事が唸るほどあった。
(;^ω^)「な、なんだおドクオ…」
('A`)「まずあの女はなんなんだ?幼馴染みってなんなんだ?彼女か?付き合ってんのか?お前ぼっちじゃなかったのか?リア充なのか?なぁ?なぁ?なぁ?なぁ?なぁ?」
(;^ω^)「ど、ドクオ……まずは落ち着くお」
(;A;#)「落ち着いてるよぉ!なんなんだ?お前アレなのか!?お前、同情のあまり俺に嘘付いたんか!!!?なぁ!?なぁ!?なぁ!?なぁ!?」
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 21:33:59.49 ID:RA1qa+J1O
- (;^ω^)「ち、違うお。ブーンがクラスで孤立してるのは確かだお」
(#'A`)「じゃぁアレはなんなんだよ!」
ξ゚听)ξ「……」モキュモキュ
(;^ω^)「幼馴染みのツンだお。違うクラスだけど、高校は一緒になったおー」
('A`)「リア充は氏ね!」
俺は一声そう叫ぶと、屋上を後にしようとする。
(;^ω^)「おっ!?ドクオ何処行くんだお?」
(#'A`)「便所だ!!」
(;^ω^)「おっ、ちょっと待つお。便所飯は臭いお」
(#'A`)「うるせぇ!俺には臭い飯がお似合いだ!!」
ξ゚听)ξ「ちょっとあんた達、さっきから何してんのよ。さっさとこっち来なさいよ」
(;^ω^)「ほら、ツンもあぁ言ってるお」
(゚A゚)「うるせー!!」
結局、抵抗虚しく、俺はブーン達と一緒に食べる事になった。
でも正直、その日の飯は格別だった。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 21:48:11.61 ID:RA1qa+J1O
-
昼休み。
気が付くと、俺は通い慣れた屋上の扉の前まで来ていた。
('A`)「……何やってるんだ、俺は」
ブーンの葬式があってから、ここへは一度も来てはいない。
いや、来るつもりも無かった。
でも体に染み付いた習慣ってのは恐ろしく物で、ボーッとしていたらボーッとするままにここに来てしまっていたのである。
('A`)「……便所行くか」
そう呟いて、引き返そうとする。
と、
('A`)「!!?」
扉に、鍵が付いていない事に気が付いた。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 21:53:46.11 ID:RA1qa+J1O
-
('A`)「ブーンッッ!!」
いるはずの無い名を叫んだ。
叶うるはずの無いない願いだった。
そんな事は百も分かっていた。
だけれども、叫ばずには、願わずには、いられなかった。
そして、願った先には、
('A`)「……」
やっぱり君はいなくて。
ξ゚听)ξ「……遅いわよ」
かわりに、ツンが居た。
- 74 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 22:14:25.18 ID:RA1qa+J1O
-
ξ゚听)ξ「……遅刻よ。何日単位のね」
そう言って、いつもの様にツンはシート座っていた。
でも、今日はいつもと違って一人。
('A`)「ツンお前……ここ、毎日来てたのか?」
ξ゚听)ξ「まぁ……ね」
そう呟いて、ツンは持っていた弁当の包みを開く。
('A`)(食べずに、待ってたのか……)
そうなのだ。
ツンは口も悪いし性格も悪いが、妙に律義な所があって、ブーンと一緒に待っていた時も俺が来るまで決して弁当を開こうとはしなかったらしい。
ξ゚听)ξ「まったく……あんたがとんでもない遅刻かますから、ここ10日ずっと昼ご飯抜きだったんだからね」
ツンはそう言うと、取り出した弁当を食べ始めた。
ξ゚听)ξ「……たく、久しぶりだからやたらと美味しいじゃないの」
そう言うツンの箸は、全然進んではいない。
心なしか、やつれている様な気もした。
- 76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 22:22:01.24 ID:RA1qa+J1O
-
あまり食えないだろうな、と思った。
俺も同じだからだ。
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「……ドクオも座って食べたら?」
('A`)「……あぁ」
促されるままに座って、俺も購買で買ったパンを食べ始める。
購買としては鉄板の、カレーパンとチーズハムサンドだ。
('A`)「……」モキュモキュ
ξ゚听)ξ「……弁当じゃなくなってからいっつもそれだけど、それ美味しいの?」
('A`)「……美味いよ」
味なんて、分かる訳がなかった。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 22:30:38.37 ID:RA1qa+J1O
-
それから暫くは、俺達は黙り込み。
ツンは黙々と弁当を、俺はパンを咀嚼し続けた。
会話なんて、一つもない。
学校の寂れた屋上で、
同じシートの上で、
何の会話もなく、
二人の男女が、
ただただ飯を食べ続ける。
人から見たら、いや本人達にとっても、かなり異常な光景だ。
('A`)(何やってるんだろう……)
それが、正直な感想だった。
- 85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 22:45:44.32 ID:RA1qa+J1O
-
無い食欲でパンを頬張りながら、俺はツンの事を考える。
('A`)(……そうだよな、良く考えりゃコイツも)
ツンと出会ってから大分後で知ったのだが、ツンもクラスで孤立していたらしい。
成績はそう悪くはなかったらしいのだけれど、
('A`)(……この性格じゃぁなぁ)
仕方がないのだろう。
そもそも、ブーンによると昔から孤立するタイプだったらしい。
ツンの口の悪さは真性だ。
これだけ口が悪いと、頭も良くてよっぽど美人でもない限りは……
ξ゚听)ξ「……」モキュモキュ
……ツンは、可愛い方には入るだろうが、それほど美人という訳では無かった。
- 90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 22:52:11.70 ID:RA1qa+J1O
-
ξ )ξ「……」カチャ
まだ半分近く弁当は残っていたが、唐突にツンは箸を置いた。
おそらく、それ以上
は食べられないのだろう。
ξ )ξ「あんたさ……何であんな事したの?」
そう言う声は、震えている。
('A`)「……葬式での事?それとも…」
ξ )ξ「葬式」
遮る様に、いや多分遮って、ツンはそう言った。
('A`)「……ごめん」
ξ )ξ「また?」
ツンの震えが、より酷くなる。
ξ )ξ「またごめん?……ごめん、ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめん」
ξ#゚听)ξ「ごめんばっかり!」
震えは、怒りに変わっていた。
- 95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 23:04:56.72 ID:RA1qa+J1O
-
ξ#゚听)ξ「あたしは、あんたから何回ごめんって聞けば良いのよ?」
('A`)「……」
ξ#゚听)ξ「ドクオ!あんたは最初っからそうだったわ、ごめんごめんごめんごめんごめんごめんごめんっ!!えぇ!?何回聞けばいいのよ?この期に及んでもまだごめんなの!!?」
('A`)「……」
ξ#゚听)ξ「言えば良いのよ!正直に理由を言えば良いのよ!!頭に血が登ったって、あの馬鹿共にムカついたって、血が登り過ぎてブーンの葬式だってすっかり忘れちゃったって、そう言えばいいのよ!!ごめん、って謝るのはそっからでしょ!!?ねぇ!!!?」
('A`)「……」
ξ#゚听)ξ「ねぇドクオ!?」
('A`)「……ごめん」
ξ )ξ「っ!」
――気が付くと、ツンの残った弁当を頭から被っていた。
- 98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 23:17:32.33 ID:RA1qa+J1O
-
ξ )ξ「……」
( A )「……」
何も言えない。
何も出来ない。
ツンに何か言う事も、ツンの弁当をどかす事も、なんにも出来ない。
頭から、ポロリと、ブーンが好きだったタコのウィンナーが溢れ落ちた。
ξ )ξ「……それ、洗って返してね」
( A )「え゛?」
ξ )ξ「弁当よ」
それだけ言うと、ツンはさっさと屋上から出ていく。
後に残されたのは、頭に弁当を被ったシュールな男。
――五限目を告げるチャイムの音だけが、嫌にハッキリと耳に届いていた。
- 101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 23:37:09.13 ID:RA1qa+J1O
-
――ブーンやツンとの屋上高校生活を、俺は最高に楽しんでいた。
やっている事は高校生としては最低、授業放棄かつ不法侵入という現実逃避も甚だしい楽しみ方だったが、楽しいんだから仕方がない。
('A`)「誰に迷惑かけてないしな」
( ^ω^)「おっ、何がだおドクオ?」
('A`)「なんでもねぇよ」
ξ゚听)ξ「なんでもないんなら、一々口に出すんじゃないわよ」
('A`)「ごめん」
ξ#゚听)ξ「ごめんは禁止って言ったでしょ!」
(;^ω^)「まぁまぁツン。ドクオの口癖なんだから、許してあげて欲しいお」
ξ*゚听)ξ「ブ、ブーンがそう言うなら仕方ないわね」
('A`)「イチャつくんじゃねぇよ、リア充共。氏ね」
ξ゚听)ξ「あんた、月の無い晩には背後に気を付けなさいよ」
('A`)「はいはい、ごめんごめん」
ξ#゚听)ξ「だからごめんは禁止って!」
(;^ω^)「おっおっおっ」
こんな、夢みたいな日々なんだから。
そうして、俺達は進級した。幸運ってのは続くもんらしい。
俺達は、クラスメイトになっていた。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 23:55:15.65 ID:RA1qa+J1O
-
ξ゚听)ξ「ねぇねぇ、さっきの数学の授業に突然出てきたΣって記号、何?何かの暗号?」
('A`)「あ゛ー、こりゃぁツンも見事にお馬鹿一直線だな」
( *^ω^)「おっおっおっ、ツンも僕らと一緒だお」
ξ#゚听)ξ「ふざないで!あんたらみたいな馬鹿と一緒にしないでよ!良いから答えなさいよ!!」
('A`)「いや、まず俺らに聞いてくるって段階で……なぁブーン?」
( ^ω^)「分かるわけないお」
ξ#゚听)ξ「この馬鹿共は!!」
俺達は、クラスではいわゆる『お馬鹿三人組』と呼ばれていた。
ツンは当初はそれなりの成績を保っていたが、俺やブーンとつるんで一緒に五限目をサボりだす様になってからは面白い程成績が落ちていった。
五限目は毎日色んな教科が入れ替わりで入るから、まぁ当然といえば当然である。
- 107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 00:11:37.16 ID:RFncWGIAO
-
ξ;゚听)ξ「あぁーもうどうすりゃいいのよ!」
ξ;--)ξ「……ブツブツ」
ツンはそのくせ毛をより皺くちゃにしながら、何やら唸っている。
ツンは無駄にプライドが高いから、自分の成績の悪さが許せないだ。
快楽に負けて五限目に出ない段階で、成績なんて諦めるべきなのに。
( ^ω^)「おっおっ、ドクオの今日の弁当どんなんだお?僕はタコさんウィンナーが沢山入ってるお!」
('A`)「それが家のカーチャン今日は機嫌が良かったらしくてさ、俺の大好きなベーコン巻をこれでもかって…」
ξ#゚听)ξ「ちょっとあんたら黙ってなさいよ!」
質問したり、黙れと言ったり、鬱陶しい奴だな。
('A`)「もう成績なんて諦めちまえよツン、何の為に成績じゃぁ留年しない高校に入ったんだよ」
( ^ω^)「おっ、そうだお。ドクオの言う通りだおツン。馬鹿は楽しいお」
ξ#゚听)ξ「あんたらに聞いたあたしが馬鹿だったわ!」
楽しくて、楽しくて、だから始めて知った事もある。
楽しい時が流れるのは、物凄く速いって事だ。
- 113 名前:付け損ねた ◆O4oIDvTQAw :2008/12/30(火) 00:35:08.42 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「……寝てたのか」
随分と酷い頭痛で、俺は目を覚ました。
時計を確認すると、時刻はPM6:00。
ツンに頭から弁当をくらわされてからすぐに早退したから、4時間近く寝ていたらしい。
(;'A`)「っ…!」
体を起こそうとすると、首筋から激痛が走った。
どうも、寝違えからくる頭痛らしい。
(;'A`)「バファリン……は俺には効かないからな、ロキソニンだな」
呟きながら、戸棚を探すと、医者から貰った通常は市販されていない頭痛薬を取り出す。
幼い頃から偏頭痛持ちでアスピリン系の薬に頼りまくっていた俺は、今ではバファリンよりちょっと強いらしいロキソニンじゃないと頭痛を治められなくなっていた。
いや、バファリンより強いというよりも、体質に合っているから良く効くだけだと弟者さんが言っていた様な……。
――ピンポーン。
(;'A`)「え゛?」
痛む頭で其処まで思考した所で、俺を呼ぶチャイムが間抜けな音をたてた。
- 117 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 00:49:01.79 ID:RFncWGIAO
-
とりあえず、痛む頭をおさえながら薬よりもそちらを優先する。
('A`)「はいはい」ガチャ
(´<_` )「やぁ」
(;'A`)「お……弟者さん」
それは、色んな事を俺に伝えて心筋梗塞で亡くなった兄者さんの双子の弟。
弟者さんだった。
(´<_` )「突然ごめんね。今日は早く上がらせて貰えたから……中、良いかな?」
(;'A`)「ど、どうぞ……」
俺は弟者さんを狭いリビングへと案内する。
正直、そろそろまた来るんじゃないかとは思っていたのだ。
- 125 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 01:06:45.29 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「……どうぞ」
痛んだままの頭で、とりあえずお茶を出した。
麦茶だけど。
(´<_` )「ありがとう。いや本当に悪いね、あんまり時間取れなくてさ」
('A`)「お仕事、大変そうですからね」
(´<_` )「まぁね」
弟者さんは嫌味なくそう言うと、仕事場からそのまま着て来たであろう白衣を揺らした。
弟者さんは、雇われの歯科医なのである。
('A`)「今は歯科医、大変みたいですからね」
(´<_` )「うん、色々と医師会の不正とかのせいで、保険で落とせる点数がグダグタになったからね。今、俺も朝から晩まで休日も働かされっぱなしだけど、時給に換算してみたら500円もなかったよ」
(;'A`)「は、はは…」
(´<_` )「いや、本当に笑えないよ」
ため息を付く様にそう言って、弟者さんは麦茶をすすった。
- 130 名前:ゴメン、急いでるんだけど、なかなかorz:2008/12/30(火) 01:19:21.52 ID:RFncWGIAO
-
(;'A`)「で……」
俺は弟者さんに先を促す。
頭が、痛む。
(´<_` )「うん……」
だが、弟者さんは一向に先を話さない。
('A`)「なんですか?」
(´<_` )「分かってるとは思うけど……ドクオ君、そろそろ家に来ないか?流石家に」
あぁ…やっぱりその話か。
('A`)「……」
(´<_` )「ドクオ君が、お母さんと過ごしたこの家を離れたくないのは分かるよ。でも、高校生の一人暮らしっていうのは……」
('A`)「……」
(´<_` )「俺は忙しいから殆ど帰ってこれないとは思うけど、母者はいつでも家にいるし、それに……」
( A )「……」
(´<_` )「部屋も一つ……開いてるし」
それは、兄者さんの部屋だ。
- 136 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 01:30:07.96 ID:RFncWGIAO
-
( A )「それ、兄者さんの部屋ですよね…」
(´<_` )「……うん、そうだね」
( A )「俺、兄者さんの替わりにはなれませんよ」
(´<_` )「当たり前さ」
弟者さんは、ハッキリとそう言う。
(´<_` )「……少し、エグい話をしようかな」
( A )「……」
(´<_` )「君が兄者の替わりには勿論なれないけれど、兄者の痕跡を、その残ってしまった悲しみを、流してしまう事は出来る」
( A )「……」
(´<_` )「確かに、ドクオ君を呼ぶのにそういう打算があるのは認めるよ」
( A )「すみません、お断りしま――」
(´<_` )「友達が、死んだそうだね」
本当に、エグい話をする。
- 139 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 01:41:02.83 ID:RFncWGIAO
-
( A )「……どうして?」
(´<_` )「担ぎ込まれたの、うちの病院だからね」
あぁそういや、弟者さんが雇われている病院は総合病院だったな。
( A )「だから、何だっていうんですか」
(´<_` )「流石家に来るなら、当然学校も変わる事になるよね。県外だし」
だから、何だって言うんだよ!
(´<_` )「ドクオ君……きみも、流してしまいたいんじゃないのかい?」
あぁ、頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!!!
(´<_` )「ドクオ君…」
( A )「……痛い」
(´<_` )「え?」
( A )「頭が痛い」
(´<_`;)「だ、大丈夫かい?」
- 150 名前:>>139 ×外科 ○総合病院:2008/12/30(火) 01:55:12.75 ID:RFncWGIAO
-
(#;A;)「頭が痛いって言ってるだろう!!」
気付けば、俺は自分の分の麦茶の入ったコップを弟者さんに投げつけていた。
(´<_`;)「うわっ…!」
まだ少しも飲んでいない麦茶が、弟者さんの白衣に派手に飛び散る。
あぁ、割れる!頭が割れる!!
(;A;)「帰ってくれよ!頭が痛いんだ!!」
(´<_`;)「ちょ、ドクオ君……」
(;A;)「良いから、俺が変な事言ってるのは良く分かってるから!でも痛いんだ!!帰ってくれ!!!」
(´<_` )「……」
そこまで叫ぶと、兄者さんは何も言わずに立ち去った。
去り際に見せた表情が、何処か悲しげで……。
あぁそんな事はどうでも良い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛い!頭が痛いッッ!!!!
- 157 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 02:07:05.75 ID:RFncWGIAO
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痛いイタイ痛いイタイ痛いイタイ痛いイタイ痛いイタイ痛いイタイ痛いイタイ痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイ!!
(#;A;)「薬!頭痛薬!!」
俺はひっぺがす様にして、薬棚を棚から引っ張り出す。
あった!あった!
床に、俺御用達の薬が散らばる。
散乱した薬は、ロキソニン。
(# A )「っ!」
駄目だ!駄目だ駄目だ駄目だ!!
ロキソニン、俺の愛用のロキソニン、内科よりも歯科の方でよく使われるロキソニン、弟者が勧めたロキソニンッッ!!
(# A )「クソがっ!」
俺は包装に包まれたロキソニンを鷲掴みにすると、残らずゴミ箱に捨てた。
- 167 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 02:18:02.41 ID:RFncWGIAO
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痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイッッ!!
俺の体質に全く合っていないのか、バファリンをいくら飲んでみても、胃がムカムカするばかりで少しも痛みがひきはしなかった。
――その日、俺は一晩中割れる様な頭痛に悩まされ続けた。
- 173 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 02:31:30.58 ID:RFncWGIAO
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( ^ω^)「ドクオ!こっちだおー!!」
('A`)「お、おう!」
俺はその日、いつにもなく舞い上がっていた。
だって、
( ^ω^)「ドクオ!今日、僕の家に遊びに来るお!!」
(;'A`)「えぇ!?」
友達家に遊びに行くなんて、小二の時以来なんだから。
( ^ω^)「着いたお!ここだお!!」
- 176 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 02:45:13.25 ID:RFncWGIAO
-
(;'A`)「……い、一軒家だ」
ブーンの家は、一言で言えば一軒家だった。
二階立て、木造で、そこそこの歴史を感じさせられ、其処だけ近代的な門扉がちょっと浮いている。
いや、でもそんな事はどうでもいい。
一軒家なのである。
夢のマイホームなのである。
家族だけの城なのである。
(;'A`)「ぶ、ブーン。お前……金持ちだったんだな」
(;^ω^)「お……こ、こんな古ぼけた家みて何言ってるお?」
('A`)「いや、ごめん……ちょっと取り乱した」
俺は、一度深呼吸した。
そうだ、よくよく考えれば物心付いた時からカーチャンと二人でオンボロアパートに住んで居たためか、金持ちの感覚が大分リーズナブル(貧乏人にとって)になっている。
イカンイカン。
- 180 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 03:00:45.63 ID:RFncWGIAO
-
( ^ω^)「ただいまだおー!友達連れてきたおー!!」
俺がそんな風に意識を入れ替えている事など全く気にも止めず、ブーンは俺を引っ張ってズカズカと家の中に入っていく。
(;'A`)「お、おいちょっと待って…」
(´・ω・`)「やぁ、いらっしゃい」ガチャリ
(;'A`)「あ゛…」
俺が玄関に引っ張り込まれる前に、ショボンとした眉毛をした壮年の男性が俺を出迎えた。
( ^ω^)「トーチャン、ドクオだお」
ブーンが、俺をその男性に紹介する。
ブーンの父親みたいだ。
(´・ω・`)「君がドクオ君か、ブーンから色々と話は聞いているよ。まぁ入って入って」
あまりにフレンドリーな対応に、俺は正直気が抜ける。
('A`)「はぁ…こんにちは、ドクオです」
(´・ω・`)「おっとこれは失礼、僕はショボン。ブーンの父親をやっているよ」
変わった人なんだな、という事だけは良く分かった。
- 182 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 03:18:12.42 ID:RFncWGIAO
-
家の中は、改装でもしたのか殆どがフローリングで、板張りや畳の部屋などは無かった。
その中の、俺の家より随分と広いリビング通される。
TVがあってゲームがあって、いわゆる団欒の場所らしかった。
(´・ω・`)「やぁ、ブーンの家にようこそ!この麦茶はサービスだから、遠慮せずに飲んで欲しい。うん、麦茶なんだ、スマナイ。ジュースとかそういう物は、うちには無いんだよ。でも、替わりにおかわりは自由だから安心して欲しい」
通されるやいなや、ショボンさんが氷の入った麦茶を付きだしてそう言った。
グラスの中で、氷がカラカラと揺れている。
(;'A`)「……」
(´・ω・`)「……」
(;'A`)「……」
(;^ω^)「ごめん、ドクオ。何か反応してあげて欲しいお」
(;'A`)「あ、ありがとうございます!」
どうも、決め台詞か何かだったらしい。
- 186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 03:29:21.09 ID:RFncWGIAO
- (;^ω^)「と、とりあえず何かするお!」
止まった空気を戻す為か、ブーンが妙に明るい声でそう言う。
(´・ω・`)「そうだね。まぁ三人だけど、麻雀とか良いんじゃないかな?」
(;'A`)(参加するつもりなんだ……)
やっぱり、変な人だ。
(´・ω・`)「ドクオ君、麻雀は分かるかい?」
('A`)「いえまったく」
(´・ω・`)「じゃぁ……ドンジャラは?」
('A`)「ドンジャラって何ですか?」
(´・ω・`)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「僕の出番は無いようだ」
(;'A`)(早い!)
(;^ω^)「ど、ドクオ…とりあえず連ジでもやるお」
(;'A`)「お、おぅ…」
何度でも言おう、ショボンさんは変な人だ。
- 188 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 03:41:37.54 ID:RFncWGIAO
-
それからは、ブーンとひたすら連ジやっていた。
(;'A`)「つ、強ぇ……こっちはマシンガンだっていうのに、弾が一発も当たらねぇ」
( ゚ω゚)「見える……僕には見えるお、そこっぉ!」
(#'A`)「あぁ……また落とされた!」
( ゚ω゚)「これが、ガンダムの性能だお」
(#'A`)「ザクおなめんなよザクお!コスト低いから幾らでも出せるぞ!!」
( ゚ω゚)「クックック、当たらなければどうという事はない!」
(#'A`)「ムキー!」
前にも言ったが、楽しい時間は分単位でも進むのが速い。
気付くと、そろそろ帰らなければいけない時刻になっていた。
- 197 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 03:56:16.16 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「……」
チラチラと、時計とTV画面を見比べる。
('A`)(カーチャンが心配する。帰らのば……だがしかし)
つまり、帰りたくないのだ。
( ^ω^)「……ドクオ、もう修学旅行だおね」
機体選択画面でハンデとしてボール(通称動く棺桶)を選択しながら、ブーンが言う。
うちの学校は進学高なので、修学旅行は二年生の時に行われる。
しかも、『今後の国際社会に活かせるを作る』とかなんたらの理由で、ニュージーランドに二人一組でホームステイさせられるのだ。
その為、結構な費用がかかる。
('A`)「でもあれ、かなり金掛かるからなぁ……うち貧乏だし、行けないかもわからんね」
( ^ω^)「そっか……残念だお」
('A`)「……」
俺が行けた場合、ブーンとペアを組む事になっていた。
- 198 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 04:07:51.83 ID:RFncWGIAO
-
('∀`)「大丈夫だってぇ!ブーンはコミュニケーション能力高そうだから、英語分かんなくても一人でも多分大丈夫だよ!!」
( ^ω^)「おっおっ、コミュニケーション能力高かったらぼっちになったりはしないお」
('∀`)「……」
('A`)「……そうだな」
ブーンにしては珍しく、空気の読めていない発言だった。
何の流れかは分からないが、流れが止まった様な気がする。
多分、今日はもう潮時なのだろう。
( ^ω^)「……ドクオ、ごめんだお」
('A`)「いや、悪いのは俺だから……今日は楽しかったよ」
そう謝るように言って、立ち上げると、
(´・ω・`)「ブーン!ドクオ君!!」
俺以上に空気の読めないらしい、ショボンさんが乱入してきた。
- 201 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 04:20:06.66 ID:RFncWGIAO
-
(*´・ω・`)「やっぱり我慢出来ないよ、麻雀をしよう!」
(;'A`)「は?」
(*´・ω・`)「大丈夫大丈夫、麻雀を知らなくても、ドンジャラさえ分からなくても、僕が手取り足取り教えるから!」
(;'A`)「いや、俺もう帰ろうかと……」
(;^ω^)「それに三人で麻雀はないお……」
(*´・ω・`)「関係ないさ、若いんだもの!ドクオ君は今日は泊まっていきなさい!!」
(;'A`)「いやそれは……」
(*´・ω・`)「徹夜で三人麻雀だッ!!」
結局、その日はショボンさんに押しきられる形で、ブーンの家に泊まる事になった。
麻雀も、徹夜も、友人宅に泊まるのも、はじめての事。
電話で報告したカーチャンの声が妙に嬉し気な……
……そんな一日だった。
- 203 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 04:39:47.16 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「よっ」
ξ゚听)ξ「…遅刻よ、相変わらずね」
ツンに頭から弁当をくらわされた後も、ツンは変わらず屋上で俺を待っていた。
いや、本当は俺を待ってる訳じゃぁないんだろう。
でも、俺がやってくるまで飯を食わない訳だから……俺を待ってるって表現しても、別に構わないだろう。
('A`)「よっと」
いつもの様に、二人でシートの上に座る。
そう、二人でが、いつもの事になってしまっていた。
ξ゚听)ξ「……」モキュモキュ
('A`)「……」モキュモキュ
相変わらず会話はなく、ツンと俺はひたすらに飯を食う。
それも、いつもの事だけれど、
('A`)「食欲、戻ってきたんだな」
そんないつもを、たまには崩してしまおうかと思った。
- 207 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 04:47:57.69 ID:RFncWGIAO
-
ξ゚听)ξ「そうね、戻ってきたわね……食欲」
ツンは、ちょっとハッとした様な表情をしていた。
まるで、今気が付いたみたいに。
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「あんたは、戻らないのね」
ポソリと、ツンはこちらを見ながらそう言う。
確かに、俺は未だに二つ買うパンの二つ目を口にするまえに、限界が来る状態だった。
ξ゚听)ξ「薄れていかないのね、あんたは」
何処か羨まし気に、ツンはそう言う。
('A`)「何が?」
ξ゚听)ξ「ブーンが」
ピシャリと、断定する様な物言いだった。
- 209 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 05:02:34.06 ID:RFncWGIAO
-
('A`)「……薄れてんのか?」
ξ゚听)ξ「……」
ξ )ξ「……薄れてんのよ」
何か、大罪を告白するかの様に、ツンはそう言う。
ξ )ξ「最近、時間がかかるのよ。アイツのあの馬鹿面を、いつだって目を閉じれば……閉じれなくたって浮かんきたあの馬鹿面が」
ξ )ξ「浮かんでこないのよ」
言いながらも、ツンは箸を止めない。
一定の間隔で、ツンの口に弁当の中身を運んでいく。
ξ )ξ「でも、辛いのに。辛いはずなのに。体調は良くなって一方で、心は軽くなっていく一方で」
ξ;;)ξ「食欲だって…」
遂に、ツンは嗚咽を漏らして泣き始めた。
それでもツンの持つ箸は、等間隔で口に食料を運び、口はそれを咀嚼する。
('A`)「……」
俺はそんなツンの様子を、乾いた感情で見つめていた。
- 210 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 05:12:19.33 ID:RFncWGIAO
-
ξ;;)ξ「楽しい瞬間があるのよ」
('A`)「……」
ξ;;)ξ「ブーンが居なくたって、ブーンを忘れてて……本当に楽しい瞬間があるのよ」
('A`)「……」
ξ;;)ξ「あたし…」
('A`)「ツン…」
ξ;;)ξ「え゛?」
('A`)「お前もうここに来んな」
俺は言った。
言ってしまう。
おこって欲しくない事をおこす言葉を、言ってしまっていた。
- 213 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/30(火) 05:24:39.91 ID:RFncWGIAO
- ξ )ξ「なん……で」
('A`)「分からん」
まるで分からないわけじゃない、でもこれは正直な気持ちだ。
大層な理由なんて、俺に吐ける訳がない。
('A`)「分からんが……ツンはもうこんな場合で、訳の分からん昼食を取るべきじゃない」
ξ )ξ「……」
('A`)「教室でも食堂でも……便所でも、何処でもいいさ」
('A`)「美味しく飯食えよ」
……便所飯は、臭いけどな。
ξ )ξ「……」
ツンは何も言わない。
何も言わずに立ち上がり。
ξ )ξ「……」
何も言わずに、去って行った。
――そうして、俺はまた一人になった。
- 217 名前: ◆O4oIDvTQAw :2008/12/30(火) 05:51:58.72 ID:RFncWGIAO
- ごめん、意識がトンでた。
あと一個エピソード挟んだら、終盤戦に入れるんだけど。
眠くて死ねる。
ここまで付き合ってくれてる人、本当にごめんなさい。
寝させて下さいorz
落ちたらまた立てます。
明日で、なんとか終わるはず。
-