- 1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 15:39:11.89 ID:6elXCe8E0
- FIN
- 8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 17:38:04.01 ID:zVgFOpVBO
- それは、一言で言えば現実じゃなかった。
いや、確かに現実であったのだけれど、まるで現実と呼べる代物じゃぁ無かった。
リアリティーって奴が、何処までも欠如していた。
('A`)「……」
ξ;;)ξ「ブーン……ブーン!」
(´・ω・`)「……」
( ゚∀゚)(何?ブーン、ツンと付き合ってたの?)ヒソヒソ
( ^Д^)(マジかよムカつくわ、マジ殺してぇ……ってもう死んでっかwプギャーwwwww!)ヒソ
――少なくとも、俺にとっては。
-
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 17:50:38.55 ID:zVgFOpVBO
-
( -ω-)
('A`)「ブーン…」
友人代表として、俺にも焼香をする機会が貰えた。
( -ω-)
その安らかと表現される顔を見ても、俺はそれを現実だと認識する事が出来ない。
死者装束を着たその姿を見たくらいで、ブーンが……ともだちが、死んだなんて理解出来る訳がなかった。
今でもこれは悪い夢で、明日になれば、夢が覚めれば、きっと彼が笑ってる。
そんな俺のリアルが、当然の様に待ってると思えた。
――それとも、それこそが夢だったのだろうか?
- 13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:07:43.35 ID:zVgFOpVBO
-
( ゚∀゚)(げっ、ドクオが友人代表かよ)ヒソ
( ^Д^)(ないわーwwwアイツが代表とかないわーwwww)ヒソヒソ
( -ω-)
('A`)「……」
(’e’;)「あの…気持ちはお察し致しますが……」
いつまでも眠るブーンの前に立ち尽くす俺に、次の人が暗に急げと急かしてくる。
――俺はそれには答えず、ただこんもりと置かれた香を鷲掴みにして。
- 14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:11:37.68 ID:zVgFOpVBO
-
( ^Д^)(だってさーwwブーンが死んだのってアイツが――)
――黙れよ!
その日、俺は親友の葬式だというのに。
最後まで参加する事は叶わなかった。
- 15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:13:57.34 ID:zVgFOpVBO
-
( ^ω^)ブーンはお亡くなりになられたようです
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:29:55.27 ID:zVgFOpVBO
-
高校時代って、一体どういう物だっただろうか?
こういう質問をすると、大抵の大人は
『最高だった』
『俺の青春』
『あの頃に戻りたい』
などと、テンプレートな回答を返してくる。
その確率は、俺の知ってる狭い範囲の中ではほぼ100%だ。
失敗している人から成功している人まで、殆ど例外なく高校生活を肯定している。
つまり、大人であれば、誰もが高校生活は一番輝く時だったと思っているのだ。
しかし、俺の知ってる狭い範囲でさえ、成人していて高校生活を肯定しない例外はいる。
- 22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:38:34.41 ID:zVgFOpVBO
-
ここまで聞いて、『成人した人?あれ?お前今100%って言わなかったか?』って思う人もいるだろう。
俺は嘘は付かない。
勿論100%だ。
ただし、大人に限るというだけの話だ。
大人の定義ってなんだろうか?
成人したから大人なんだろうか?
違う。
成人したから大人なんじゃない。
社会人と呼べる様になったから、社会を回す一人に成れたから。
大人なのだ。
そう、大人に成れなかった人だっているさ。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 18:51:43.78 ID:zVgFOpVBO
-
( ´_ゝ`)「高校時代?あぁ……あれは最悪だったな」
雑誌や空のペットボトル、お菓子の袋カスで埋まった部屋の片隅で、パソコンのキーを叩きながら従兄弟の兄者さんはそう言った。
( ´_ゝ`)バリボリ
ゴキブリが走り抜けるその横で、兄者さんはポテチを咀嚼する。
( ´_ゝ`)「夢一杯、希望一杯なんてのは大人の大嘘さ。所詮学校なんて、簡易な社会縮図に過ぎない」
そう言って、兄貴さんは見ているサイトのリンクをクリックしていく。
( ´_ゝ`)「俺や弟者みたいな、弱い奴は弾かれる……おk、ブラクラゲット」
そう囁く様に呟いて、兄者さんはPCの電源を切った。
- 25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:00:54.76 ID:zVgFOpVBO
-
('A`)「で、でも……弟者さんは必要だったって、今振り返れば最高だったって…」
( ´_ゝ`)「……」
兄者さんはその横顔を一瞬複雑に歪めたが、一度だけこちらを向いて、悲しそうに答えた。
( ´_ゝ`)「……あいつは、大人だから」
蚊の泣くような声でそう呟き、兄者さんはこちらへ背を向けて、再びPCの電源を入れる。
それから俺が何を言っても、兄者さんが再びこちらに振り返る事は無かった。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:11:17.05 ID:zVgFOpVBO
-
――それは、まだまだ夢と希望に溢れてた、厨房だった頃の話。
高校への期待が、夢が大き過ぎて、兄者さんは変な人だなぁというぐらいにしか思えなかった頃の話。
屋上に向かう階段を登りながら、俺は思い出したように、
いや、実際思い出して、呟く。
('A`)「今なら、兄者さんの気持ちも分かるよ。先に知らせておいてくれて、ありがとうございました」
そんな去年の兄者さんの葬式でも言った言葉を、何故か再び繰り返す。
兄者さんの死因は、不摂生による心筋梗塞だった。
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:21:22.48 ID:zVgFOpVBO
-
――キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。
屋上への扉に辿り着いたとき、授業開始のベルが鳴った。
本来焦るべきそれに、俺はホッとする。
元々サボるつもりで、ココに来ている。
これで、何かの気まぐれで誰かが来る事もない。
('A`)「ふぅ……」
溜め込んだ息を吐き出しながら、俺は扉の前に座り込む。
- 31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:36:39.68 ID:zVgFOpVBO
-
('A`)「今日は700番台からだっけ」
呟いて、俺は扉に付けられている鍵をいじり始めた。
この学校の屋上は全国の例に漏れず、解放されていない。
危ないから、自殺者を防ぐ為だとかなんとか色々言っているが、学校側が面倒事を防ぐ為って事で間違いないだろう。
別にそれはどうでもいい、こうやって時間を潰せるんだから。
('A`)「753…754…755…」
俺は一個づつ、ゆっくりと番号を確かめていく。
ココに使われている鍵は三桁のダイヤル式で、一つ一つ確かめればいつかは必ず開くという物だった。
('A`)(でも変なんだよなぁ…)
そう、俺は毎日こうやって番号を確かめているが、全ての番号を試してみても開かないのである。
壊れてるのか?とも思ったが、何処かミスして確かめていないのでは?という希望を捨てきれず、昼食の後はもう2週間近くこうやって番号回す毎日だ。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:47:07.85 ID:zVgFOpVBO
-
('A`)「851…852…853…」
別にこの先に何がある訳でもないのに、と思う。
開いたって、其処には閑散として、手入れもされずボロボロの床が広がっているだけだろう。
景色だって、三階の窓から見る景色とそんなに変わるとは思えない。
('A`)「873…874…875…」
そんな事は分かっているのに、俺は何かに取り付かれた様にダイヤルを回す。
('A`)「903…904…905…」
あぁ分かってる。
きっと、俺は諦められないのだ。
何かがあって欲しいのだ。
兄者さんの言った事が分かるなんて良いながら、それが事実だと実感しながら、まだ希望を捨てられないのだ。
夢も、希望も、何も無かったこの高校に、本当は何かがあって欲しいのだ。
('A`)「953…954…955」
だから、俺はダイヤルを回す。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 19:57:18.32 ID:zVgFOpVBO
-
回して、回して――
('A`)「996…997…998…」
( A )「…999」
カチリと、ダイヤルが動いた音がしただけで、
当然の様に、
鍵は開かなかった。
- 38 名前:ゴメン、これでも全力なんだ:2008/12/28(日) 20:05:55.22 ID:zVgFOpVBO
-
('∀`)「は、はは…」
('A`)「…やっぱ、な」
泣きたい様でいて、涙すら出て来なかった。
当たり前だ。
分かっていた事だ。
コレで五週目だ。
もう、ミスがあったかもしれないなんて言い訳は通じない。
そう、ここは開かないんだ。
例え何かあっても、いや全くなんにもなくたって俺には、
('A`)「無理なのか」
無理なのだ。
確認する事だって、出来やしないのだ。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:11:09.23 ID:zVgFOpVBO
-
昔の偉い人は言った。
『例え実を結ばなかったって、やれるだけの事をやり切った時は気持ちが良いもんだ』
('A`)「嘘つけ」
やれるだけの事をやり切った時、訪れたのは気持ち良さなんかじゃなく。
('A`)「……ウツダシノウ」
どうしようもない位の、虚しさだけだった。
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:22:56.51 ID:zVgFOpVBO
-
('A`)「あ゛ぁー」
無性に、吸った事もないタバコという奴が吸いたくなってきた。
いや、多分ムセるけどさ。
('A`)「6限目なんだっけ…」
無理矢理に脳みそを現実に引き戻しながら、ダイヤルを元にもどしていく。
ここの鍵はデフォルトは000になっている。
面倒だが、一応元に戻しておかないと用務員に怪しまれるかもしれない。
('A`)「うそ、本当は休み時間までの時間潰し」
誰に言い訳しているのだろう?
この高校に来て随分と孤独になった為か、独り言が増えた。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:30:03.92 ID:zVgFOpVBO
-
('A`)「……できた」
でも、000なんて単純な数字、出来るのはあっという間でさ。
('A`)「……どーしよ」
時計を確認すると、授業終了までまだ15分以上あった。
('A`)「……」カチャカチャ
試しに000引っ張ってみるが、やはり鍵は開かないし。
('A`)「保険室……いや、便所かな」
そう呟いて、勢いよく立ち上がり――
――勢いよく転んだ。
- 44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:39:51.23 ID:zVgFOpVBO
-
悲鳴など上げる暇もなく、俺は階段を転がった。
(メ'A`)「いつつ……」
漫画とかで良くある様な、激しい痛みとか激しい音とかは何にもなくて、
バチンという何かが千切れる音以外には、ただ鈍い痛みと、鈍い衝撃に頭がクラクラする。
(メ'A`)「ん……バチン?」
見下ろすと、千切れたベルトと千切れたダイヤルキーが足下に転がっていた。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:47:22.05 ID:zVgFOpVBO
-
(メ'A`)「……」
見上げれば、屋上への鍵が開いていた。
いや、取れていた。
(メ'A`)「……古かったんだな」
ヨロヨロと立ち上がり、階段を登る。
ベルトは壊れたが、鍵は開いた。
いや、壊れた。
運が良かったのか、悪かったのか、バレたら大変だろうけど。
('A`)「とにかく」
俺は屋上への扉を開けた。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 20:53:31.28 ID:zVgFOpVBO
-
開いたって、其処には閑散として、手入れもされずボロボロの床が広がっているだけだろう。
景色だって、三階の窓から見る景色とそんなに変わるとは思えない。
そんな事は分かっていた。
そんなに事は分かっていたけど……。
(;A`)「あまりにそのまんまだと……」
扉を開いたその景色に、俺は泣いた。
(;A;)「う……あぁ…」
そんなくだらない事で、俺は泣く。
- 52 名前:一応勘違いされない様に言っとくと、乗っ取りです。:2008/12/28(日) 21:09:09.81 ID:zVgFOpVBO
-
分かっていた。
何もないなんて、分かっていた。
高校に入学して今までて、そんな事は嫌という程分かっていたじゃないか。
兄者さんが言った事が、少なくとも俺にとっては紛れもない事実なんだって、分かっていたじゃないか。
(;A;)「あぁ…」
そうさ、俺は夢見てた。
世間一般で言われてる高校のイメージに踊らされて、夢一杯希望一杯に浸ってた。
(;A;)「な、なんで…」
中学でいじめられてた俺は、高校に夢見てた。
高校に行けば友達も出来て彼女も出来て、個性をいかして楽しくやれるって本気で信じてた。
(;A;)「俺は…」
だから、勉強したさ。
無い頭を限界まで酷使して、生活態度も完璧にして、一生懸命頑張った。
なるべく不良の居ない高校に、なるべくいじめがない高校に、なるべく人に認められる高校に。
努力は報われるって本気で信じて、俺は努力したさ。
- 55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 21:19:46.58 ID:zVgFOpVBO
-
(;A;)「でも、でもぉ……」
そりぁさ、高校には浮かったさ。
俺には分不相応な、県立トップの公立高校。
でもさ、俺は受かるのが目的じゃないんだよ。
受かった先で得られると思って、必死で壁を乗り越えただけなんだよ。
でも、受かった先にはなんにもないなんて……
虐めは無くなったよ?でもさ、変わりに人とのまともな接触すら無くなるなんて……
こんなので――
(;A;)「なんて詐欺だ…」
――報われる訳ないじゃないか。
- 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 21:26:33.44 ID:zVgFOpVBO
-
ボロボロの屋上で、
ボロボロの床の上で、
ボロボロの柵の前で、
ボロボロの扉を背に、
――ボロボロな俺は、ボロボロと泣いていた。
- 57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 21:35:53.56 ID:zVgFOpVBO
-
俺の頭に、兄者さんの言葉が蘇ってくる。
( ´_ゝ`)「なぁドクオ、世間ではよく自殺する奴は臆病者とかいうけど。俺はそうは思わない」
('A`)「何でですか?」
( ´_ゝ`)「だって死ぬんだぜ?怖いべ?結果は違うけど、仲間を助ける為に死ぬ奴とやってる事同じだろ?」
(;'A`)「はぁ…」
( ´_ゝ`)「俺には真似出来ねぇなぁ……」
('A`)「まるで出来ればやりたいみたいな事言いますね」
( ´_ゝ`)「当たり前じゃん」
(;'A`)「……」
俺は、死ぬ位の勇気はあるんだろうか?
- 58 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 21:44:29.75 ID:zVgFOpVBO
-
俺は試しに、ボロボロの柵を掴んでみる。
('A`)「……」ガシャ
以外と頑丈だ。
柵は2m以上は上の所で急角度でそり返っており、俺の様なモヤシがあれを超えるのは難しい。
('A`)「となると」
俺は後ろを振り返る。
あるのは、屋上に付きだした小屋の様な建築物。
その後ろに柵はない。
ドアの取っ手を使えば、登れそうだった。
- 60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 21:51:11.72 ID:zVgFOpVBO
-
('A`)「よっ…」
意外や意外、それなりに高さがあった屋根の上に、一息で登れた。
('A`)「……」
其処に広がっていたのは、夕焼け。
仄かな赤みのさした空。
ちょっと、登っただけなのに。
ちょっと向きを変えただけなのに。
ここまで違う、空――
('A`)「――あぁ、これなら」
俺は、不思議な程なんの躊躇いもなく、その一歩を踏み出した。
- 64 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 21:59:09.53 ID:zVgFOpVBO
-
そうして、待っていたのは――
( ゚ω゚)「ふぐりっ!?」
――醜いうめき声だった。
- 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 22:07:52.00 ID:zVgFOpVBO
-
( ゚ω゚)「痛てぇ、痛てぇぉおおおお!僕のふぐりがぁああああああ!!」ゴロゴロゴロッ
('A`)「……」
( ゚ω゚)「ひ、人が気持ち良く寝てる所に。な、なんなんだお君は!?」
('A`)「……」
( ゚ω゚)「ちょ、謝るとかないのか――」
(;A`)「……」
(;^ω^)「おっ……おぉ」
何にも無いと思ってた。
何にも無い高校時代だった。
何にも無い高校だった。
何にも無い屋上のはずだった。
だけど――
- 69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 22:10:31.95 ID:zVgFOpVBO
-
――そこに、ブーンがいたんだ。
- 79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 22:26:45.44 ID:zVgFOpVBO
-
(´・ω・`)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
('A`)「……」
(´・ω・`)「……」
(;'A`)「……」
長い、沈黙が続いていた。
葬儀での事を謝ろうと尋ね、上げて貰ったまでは良かったのだが、話を切り出す事が出来なかった。
そもそも俺はコミュニケーション能力が完全に不足しているので、幾ら多少は親しい間柄にあったショボンさんでも、こんな時に何と言えば良いのかまるで分からない。
かと言って、これは俺から切り出さねば仕方がない話なのだ。
だから無理にでも言葉を捻り出そうとすると、自然と――
(;'A`)「申し訳……ありませんでした」
――こんな、チンケな言葉しか出て来ない。
- 88 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 22:36:39.16 ID:zVgFOpVBO
-
(´・ω・`)「申し訳ありませんでした……か」
そう言って、ショボンさんはタバコを吹かす。
(;'A`)「……」
その表情は至って無表情で、俺の言葉が一体ショボンさんにどんな影響を与えているのか、まるで分からない。
それだけに、恐ろしかった。
(´・ω・`)「……」
(;'A`)「……」
(´・ω・`)「……」
(;'A`)「……」
(´・ω・`)「……それだけ?」
(;'A`)「!!?」
- 89 名前:>>84 俺か?:2008/12/28(日) 22:47:09.71 ID:zVgFOpVBO
-
(;'A`)「ごめんなさい、ごめんなさい!ごめんなさい!!」
俺は座っていたイスから崩れる様に降り、頭を床に擦り付ける様にしてショボンさんに土下座した。
馬鹿な事を言った。
あんな事をして一言で終わりだなんて、俺は何て恥じ知らずなんだと自分を呪う。
(;A;)「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい!!」
泣きながら、許しを乞う。
俺がやった事は、世間一般的に見れば最低の行為である。
でも、でもこの人だけには分かって欲しかった。
- 91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 22:54:07.52 ID:zVgFOpVBO
-
(;A;)「……」
土下座し続けて暫くたったが、ショボンさをからの反応はない。
恐る恐る顔を上げてみと――
(´・ω・`)「ごめんなさい……だな」
――何処か、満足気なショボンさんがいた。
- 94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 23:05:03.60 ID:zVgFOpVBO
-
(;A`)「え……」
(´・ω・`)「ドクオ君、僕はね……取り繕った言葉なんかで、謝って欲しくないんだよ」
俺の顔に浮かんだ疑問に答える様に、ショボンさんは続ける。
(´・ω・`)「ハッキリ言うよ。君が口にする『申し訳ありませんでした』なんて……僕にとって、尻を拭く紙よりも価値なんてないんだよ」
('A`)「……」
(´・ω・`)「だって……意味はともかくさ、そんな言葉君が本当に思っている言葉じゃないだろ」
('A`)「ショボンさん…」
(´・ω・`)「それよりも、君が泣きながら言う『ごめんなさい』の方が、ずっと良いさ」
いつの間にか、ショボンさんはタバコを吸うのをやめていた。
- 100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 23:17:50.76 ID:zVgFOpVBO
-
(´・ω・`)「そういや何も出していなかったな、いや悪いね。ちょっと待ってて」
そう言うが早いか、ショボンさんは立ち上がり台所の方へ向かう。
(;'A`)「ぁ…お気遣いなくぅ…」
なんていう、俺の蚊の泣く様な制止は届くはずもなく。
ショボンさんは台所に消えていった。
('A`)「……」
手持ち無沙汰になった俺は、通されたリビングを眺める。
其処には、ブラウンカンの古めのTV。
そして、あの日ブーンと一緒に遊んだゲームが、まるであの日のままであるかの様に、そのまま散らばっていた。
('A`)「ブーン、お前連ジやたらと強かったよなぁ……。なんでいっつも、ニュータイプランクSなんだよ…」
『それはブーンがニュータイプだからだお!ブ――――ンッ!!』
そうやってはしゃぎ回るブーンの声は、今では何処からも聞こえて来ない。
- 104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/28(日) 23:33:23.61 ID:zVgFOpVBO
-
(´・ω・`)「いやぁ、お待たせお待たせ。ハイ」
('A`)「あ、ども…」
(;'A`)「!?」
ショボンさんから渡されたそれは、良く冷えた缶ビールだった。
- 110 名前:日を跨ぎそうなんで一応酉を ◆O4oIDvTQAw :2008/12/28(日) 23:43:30.19 ID:zVgFOpVBO
-
(´・ω・`)「ん?どしたの?よく冷えてるよ」
(;'A`)「ショボンさん…俺未成年」
(´・ω・`)「ブーンの友達なんだから当たり前でしょ、おじさんボケてないよ」
(;'A`)「いや、だから酒は……」
そこまで言った所で、ショボンさんは俺に渡した缶ビールのフタを無理矢理開け、俺にズズイと差し出した。
(´・ω・`)「やぁ、ブーンの家にようこそ!この缶ビールはサービスだから、まずは文句を垂れずに飲み干して欲しい。うん、強制なんだスマナイ。でも学校にはチクらないって約束するよ」
( A )「……」
あぁ、ショボンさんって卑怯な奴なんだな。
そんな、俺の、俺の本当の日常と降り混ぜて、缶ビールなんかて非日常を差し出すなんてさ。
ずるいよ。
( A )「頂きます」
(´・ω・`)「うん、冷えてるうちに一気に飲み干すといいよ」
俺は、ショボンさんの言葉のままに、それを飲み干した。
- 146 名前: ◆O4oIDvTQAw :2008/12/29(月) 00:02:40.97 ID:RA1qa+J1O
-
酒は、正直堪える。
俺は遺伝的に酒には強くない。
でも、ショボンさんに飲めと言われたら飲むしかない。
トイレとリビングを往復しながらも、ショボンさんに付き合う。
2・3時間もすると、ショボンさんはすっかり出来上がっていた。
(*´・ω・`)「うぉい、酒が足りん!酒持って来いよ!!」
(;'A`)「ショボンさん……まだ開けてないのが、目の前に一杯ありますよ」
(*´・ω・`)「……そんな事は分かってる!」
そう言って、ショボンさんは何本目になるか分からない缶ビールを開けた。
- 186 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 00:17:39.25 ID:RA1qa+J1O
-
(*´・ω・`)「ドクオお前さ……本気で悪いと思ってるか?」
酒がかなり入ったのか、ショボンさんがそんな事を言い出した。
(;'A`)「…わ、悪いと思ってます」
(*´・ω・`)「違うだろ、ごめんなさいだろ?」
(;'A`)「ご…ごめんなさい」
(*´・ω・`)「クックック……」
ショボンさんは、どうも相当悪酔いする人みたいだ。
なんか、目が据わっている。
(*´・ω・`)「ドクオよぉ……」
(;'A`)「ハイ……」
ショボンさんはもう一本、缶ビールをあおった。
- 256 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 00:38:14.37 ID:RA1qa+J1O
-
(*´・ω・`)「僕も一応大人の端くれだから、我慢しておこうかとも思ったけどよぉ……」
(;'A`)「は、はぁ……」
ヤベェ、嫌な予感と一緒に、胃からもなんか逆流してくる。
ショボンさんは、そんな俺の様子にはまるで構わずに続ける。
(*´・ω・`)「わざわざ謝りに来たって事は、こういう事も覚悟してきたんだよね」
('A`)「え?」
――数秒後、俺はブーン家のリビングに転がっていた。
- 338 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 00:57:18.03 ID:RA1qa+J1O
-
(メ'A`)「……」
リビングに転がったまま、ショボンさんを見上げる。
(´・ω・`)「ぶち殺すぞ」
その顔には、酔いなど少しも見られなかった。
(´・ω・`)「君の気持ちが分からないでもないさ、僕もあいつらは後でぶち殺してやろうかと思ってはいたさ」
(´・ω・`)「でもね、アレはブーンの式だったんだよ。一生で、最後の……葬式だったんだ」
ショボンさんは至って真顔だが、その肩は小刻みに震える。
それはきっと、酔いでの震えなんかじゃない。
(´・ω・`)「君のやった事はルール違反さ。大人のする事じゃない、結局君はブーンに焼香すらあげなかった」
(´ ω `)「ブーンはさ……」
- 387 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 01:12:15.86 ID:RA1qa+J1O
-
(´;ω;`)「君の親友だったんだろう!?どうして、大人しくしていられなかった!!」
(メ'A`)「……」
(´;ω;`)「そりゃいいさ、君はいいさ。あの馬鹿共にめにものくれてやって、君はスッキリしただろうさ!でもね、ブーンの葬式は台無しだよ!!親友だったのに!!!」
ショボンはそこまで一息に言うと、一拍置いて。
(´ ω `)「ブーンにとっても……親友だったのに」
そうポツリと、囁く様に呟いた。
- 440 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 01:27:32.18 ID:RA1qa+J1O
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(´ ω `)「そんなんじゃさぁ……君がさ、親友の君がさ、そんな子供のまんまじゃさぁ」
(´;ω;`)「ブーンは、ブーンは――!!」
幸か不幸か。
いや、幸運だった。
(;'A`)「うっ――」
ショボンさんが決定的な事を言ってしまう前に――
(;'A`;)「――オエエエエエエエエッ」ビシャビシャビシャ
――俺は、盛大にゲロをリビングにぶちまけていた。
- 507 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 01:51:54.75 ID:RA1qa+J1O
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――それから30分後。
(´・ω・`)「……」フキフキ
ショボンさんは俺を介抱する傍らで、俺が撒き散らしたゲロの処理をしていた。
(;'A`)「……すみません」
(´・ω・`)「良いよ、ぶっちゃけ僕が殴ったから吐いたんだろうから」
そう言うショボンさんの顔には、先程の激昂の様子はみじんも感じられない、爽やか笑顔だった。
いや、この人の事だ。
顔に出してないだけかもしれない。
(;'A`)「……すみません」
(´・ω・`)「だから良いって」
( A )「……ソレダケジャナクテ」
(´・ω・`)「ん?」
ショボンさんには、絶対に聞こえない位の声で。
( A )「……ブーンヲコロシテゴメンナサイ」
懺悔する様に、俺はその言葉を漏した。
- 534 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 02:02:08.30 ID:RA1qa+J1O
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(´・ω・`)「なに?」
(;'A`)「いや、なんでもないです」
フラフラと、俺は立ち上がる。
よたつく足下が、まるで老人の様だ。
(;'A`)「これ以上居ても迷惑かけるだけなんで、俺、帰ります」
(´・ω・`)「大丈夫かい?送って行こうか?」
(;'A`)「いえ、大丈夫ですから」
自分の体の事を考えると、正直その申し出は有り難い。
だけど、今はとにかくショボンさんから離れた方が良いと思った。
(;'A`)「大丈夫、本当に大丈夫ですから」
そう言って、フラフラと玄関へと向かう。
心配だったのか、ショボンさんも玄関まで付いてきた。
- 552 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 02:13:51.26 ID:RA1qa+J1O
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(´・ω・`)「ドクオ君……」
第二派の吐き気を抑えながら、靴紐を結んでいると、背中越しにショボンさんが声を掛けてきた。
(´・ω・`)「今日僕は……君に大人だのルール違反だの云々言っといて、僕自信もルール違反を犯したよ」
('A`)「……」
(´ ω `)「すまない」
俺は背中にいるショボンさんの表情を知る事は出来なかったが、きっとコレが、『すまない』が。
ショボンさんの思っている言葉なんだろう。
- 573 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 02:24:19.35 ID:RA1qa+J1O
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俺はそれに対して。
('A`)「……おじゃましました」
気の効いた答えなんて、返す事は出来なくて。
(´ ω `)「ドクオ君」
('A`)「……」
(´ ω `)「君にはまた是非、家に来て欲しい。でも――」
(´;ω;`)「しばらくは、来ないでくれ」
背中にショボンの嗚咽を感じながら、俺はそれに何の言葉も返す事は出来ず。
――そのまま、ブーンの家を後にした。
- 587 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/12/29(月) 02:33:20.14 ID:RA1qa+J1O
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ブーン宅を出てしばらくして、俺は夜空に満月が出ている事に気が付いた。
('A`)「……」
夜空が、明るい。
満月の光が、周りの闇さえ明るくしているのか。
('A`)「……ブーン」
まるで、アイツみたいだな。
『おっおっおっ』
そんな風に語りかけてくる満月の下、俺は――
(;'A`;)「――オエエエエエエエエッ」ビシャビシャビシャ
――またしても、ゲロを吐いていた。
- 690 名前: ◆O4oIDvTQAw :2008/12/29(月) 03:10:25.36 ID:RA1qa+J1O
- スマン、ここまで付き合ってくれた人達、本当にありがとう。
落ちてたら新スレ立てます。
お休みなさい。