第8章
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 20:34:17.56 ID:2R0QGmtg0
第8章 「虎の威を借る狐」
爪;'ー`) 「……」


狐村(No3)は震えていた。
狐村はこのゲームに乗るつもりで西ゲートから出発した。
武器は拳銃だった。ワルサーPPK。ルパンなんかが持っているアレだ。
制服にあっさり隠れるほど小さい銃は地元で入っていた暴走族でも大きな者の陰に隠れていた自分にもあっていると思っていた。


爪;'ー`) (どうして……俺は撃てなかった……?

       このゲームを知ったとき決意したじゃないか。

       このゲームに勝って人の陰に隠れる人生を終わらせようって)


先ほど狐村は茂等(No30)を追跡していた。
細身の茂等のことだ、きっと自分には勝てない。
それにこちらには銃がある。相手が何を持っていようと関係ない。
後ろから不意打ちしてしまえば終わりだ。
狐村はそう考えていた。しかし。
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 20:38:09.00 ID:2R0QGmtg0
(   )

爪'ー`) (へへ……そうそう。こっち振り向くなよ……すぐ終わらせてやっから)


狐村は完全にこちらに背を向けている。
弾が入っていることも確認した。あとは引き金を引くだけで終わりだ。


爪'ー`) (よし……)


狐村の指が引き金にかかる。
その時。


( ・∀・) 「誰かは知らないが」

爪;'ー`) 「!」

( ・∀・) 「……殺すぞ」


その言葉を言う茂等の顔は平然としていた。
しかしいつもの茂等とは何かが違った。
目が異様にぎらつき、五感が最高まで研ぎ澄まされていたようにも感じる。
その明らかに異様な茂等を見て、狐村は尻尾を巻いて逃走してしまったのだった。


10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 20:41:42.43 ID:2R0QGmtg0
爪;'ー`) (ちくしょう……なんで俺は逃げちまったんだ。

       あいつの武器がなんなのか確認してから逃げてもよかったじゃないか)


茂等はあくまでも自分に脅しの言葉をかけただけに過ぎない。
茂等が本当に殺す気だったのかも、武器は本当に殺傷力のあるものだったかを確認しなかった自分を恥じていた。


爪'ー`) (ふん、まあいい。茂等……今度会ったら必ず殺す。

      それよりも……そろそろ仲間を見つけないと夜が来る)


本部を出た時には自分の頭上高くに上がっていた陽もそろそろ影を長く作る角度まで下がっていた。
時計がないのでよくわからないが、今は午後3時ぐらいだろうか。
陽が沈んだら、夜が来る。夜が来たら眠らなくてはならない。
眠らなければ疲れが出て、ゲームに支障をきたす。
かといって無防備に1人で眠ればたちまちゲームの餌食だ。


爪'ー`) (だれか交替で見張りをしてくれる奴を仲間にしないと……ん……? !!)


何の考えもなしに歩いていた狐村の前に1人の男が立っていた。
先ほどの茂等といっしょだ。目が異様にぎらつくその男。
クラスで最も危険な男。
12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 20:45:13.93 ID:2R0QGmtg0
爪;'ー`) 「た……から……?」

( ^Д^) 「おう、狐か」


宝(No16)は学校で挨拶するように自分に話しかける。
とりあえず今ここでどうにかするなんてことはなさそうだ。


爪;'ー`) 「あ、ああ……お前は、」

( ^Д^) 「俺はこのゲームに参加するぞ。お前はどうだ?」

爪;'ー`) 「……」


狐村と宝は一緒に地元の暴走族に入っている。
チーム内でも一目置かれる宝と、そのひっつきむしの狐村。
その2人の関係を狐にかけて『虎の威を借る狐』なんて呼ばれているのは狐村も知っていた。
実際そうだし、実際それが自分の生き方だと思っていた。
しかしそれに自身の不甲斐なさを感じていたのも事実だ。
だからこのゲームに乗った。自身を変革するために。


13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 20:48:42.24 ID:2R0QGmtg0
( ^Д^) 「どうなんだ」

爪'ー`) 「ああ……乗っている。武器も、この通りだ」


そう言って自分の武器であるワルサーPPKを見せる。
宝はそれには大した反応もせずに話を続ける。


( ^Д^) 「よっしゃ、じゃあ組もうぜ」

爪;'ー`) 「!?」


驚いた。自分から提案しようと思っていたことを言われてしまった。
大方宝のことだ、自分のことなどコマのようにしか感じていないのだろう。
それならそれでいい。自分は宝を利用する、宝は自分を利用する。
この殺し合いの場ではそれで十分だ。


爪'ー`) 「ああ……組もうか」


たしか十二支の話にずる賢いネズミの話があった。
牛にゴール寸前まで運んでもらって最後の最後にネズミが1番をかっさらう。
自分もそれになろう。もう狐なんて呼ばせない。自分はネズミになるのだ。
最後に、すべてをかっさらう。

【No3 狐村  武器:ワルサーPPK(小型拳銃) 現在位置:C-3】
【No16 宝  武器:??? 現在位置:C-3】
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