第7章
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:11:50.78 ID:3BTGt0bz0
第7章 「愛の形」
(・∀ ・;) 「はぁ……はぁ……」


疲れた。
斉藤(No4)はゲートから出るやすぐに隠れ場所の多そうな森へと全力で駆けてきた。
その目論見は正解だったようで、すぐに人気のなさそうな洞窟に入ることができた。


(・∀ ・) 「ここならしばらく根城にできそうだな」


それにしても外は陽がてっぺん近くまで上がっているというのにこの洞窟の中は暗い。
陽の光を取り入れるという発想がなかったようで、出入口しか外へ通じるところがない。
これは自然にできた洞窟と言うよりは人が作った防空壕であるに違いない。
斉藤はそう考えた。


(・∀ ・) 「しっかし暗いなー。気が滅入りそうだ」


斉藤は自分を運の強い人間だと自負していた。
おみくじは大吉以外引いたことがないし、クジ引きも3等以上しか当てたことがない。
テニスの大会に出れば相手が軒並み体調不良に見舞われたし、入試は問題が白紙だったおかげでそこの部分が全て○になった。
自分の運があればこのゲームも乗り切れる……斉藤はそう考えていた。


(・∀ ・) 「まずは武器だ。大丈夫。きっと『自分以外の首輪が爆発するスイッチ』とか入ってる筈だ」
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:13:20.85 ID:3BTGt0bz0
おみくじやくじ引きを引く漢字――結果は分かっているが楽しみなあの感じ。
斉藤は自分のバッグに優良な武器が入っていると信じて疑っていなかった。
だからこそ。斉藤は自分の武器に唖然としたのだ。


(・∀ ・;) 「……パイ、ロン?」


バッグに入っていたのは陸上部がトラックのコーナーによく置く――コーンとも言われる――パイロンだった。
斉藤はしばらく自分の手元にある赤い三角形状の物体をみつめながらしばらく考えた。
これは、やはりドッキリなんじゃないか? どこかからカメラで見ているんじゃないのか?
全力で駆ける自分を見て、誰かわからないタレントが笑っているだけなんじゃないのか?


(・∀ ・) 「はは……そうだよそうだよ。こんなんドッキリだって」


そう言う自分の声は自分でも呆れるぐらい震えていた。
脳裏に鴨志田の死体が蘇る。自分もあんな風になるのか?
額に風穴空けられてそこからどす黒い血をダラダラ垂らして死ぬのか?


(・∀ ・) 「いやだ……」


71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:16:03.50 ID:3BTGt0bz0
もし自分が。生まれて初めて『ハズレ』を引いたなら。
何がおみくじだ。なにがくじ引きだ。
どんなに大吉を出そうが一等を出そうが自分が今まさに最悪のゲームに放り込まれているじゃないか。


(・∀ ・) 「いやだ……いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!
      いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!!!」


斉藤は自分でも知らず知らずのうちに大きな声を出してしまっていた。
一瞬の気の動転からの行動だったが、彼はここでも『ハズレ』を引いていた。
この声に反応したものがいたからである。
彼は防空壕の入口から覗く火炎放射機の口に気づくことはなかった。
気づいた時には紅蓮の炎が彼に向って迫っていた。
防空壕の構造上、逃げ場はない。


(・∀ ・) 「いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
      いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ
      いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ」


彼の炎の前に呟いた断末魔が、なんとも嫌な人肉を焦がす音に変わるのに大した時間はかからなかった。
そして、その音を防空壕の外から聞く人物がひとり。
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:16:57.76 ID:3BTGt0bz0
(*゚ー゚)

椎名(No8)だった。


(*゚ー゚) 「殺しちゃった……ふふっ。大丈夫。少なくともギコくんの声じゃなかった。

      どこかなあ……ギコくん」

(,,゚Д゚) 「しぃ……?」


草陰から出てきたのは今まさに椎名が口にした名前の持ち主。
擬古(No2)だった。彼もまた、自らの恋人である椎名を探していたのである。


(,,゚Д゚) 「……なんだこの臭い。肉が焼けてるにおい……?

     この洞窟の中から……しぃ、お前まさか」

(*゚ー゚) 「なにが、いけないの?」

(,,゚Д゚) 「!」

(*゚ー゚) 「ねえギコくん、考えても見てよ。これは、そういうゲームなんだよ」

(,,゚Д゚) 「ゲーム……」

(*゚ー゚) 「そう。ゲーム。これはゲームなの。だから、何をしても許されるのよ」
77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:18:59.29 ID:3BTGt0bz0
そう言いながら椎名は擬古に一歩づつ、一歩づつ近寄っていく。
擬古は動かない。彼の中の彼女は殺人者ではなく、あくまで恋人のままだから。


(*゚ー゚) 「ギコ君。ふたりで、生き残ろう?

     3人なんていらない。生き残るのは、あたしたちふたりだけ」

(,,゚Д゚) 「……」

(*゚ー゚) 「もう、ひとり殺しちゃったあたしだけど……

     一緒にいてくれるなら、抱きしめて?

     いつもみたいに、ぎゅって、して?」

(,,゚Д゚) 「……」
80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/17(土) 22:20:55.45 ID:3BTGt0bz0
擬古は椎名を抱きしめる。
椎名の体が、壊れそうになるほど、硬く、硬く。
椎名も擬古の体を抱きしめ返す。
擬古の体を、慈しむように、優しく、柔らかく。


(,,‐Д‐) 「……」

(*‐ー‐) 「……」


ふたりは、抱きしめ合う。
肉が焦げていくパチパチという音をBGMにしながら、いつまでも、いつまでも。

【No2 擬古  武器:??? 現在位置:A-3】
【No8 椎名  武器:火炎放射機 現在位置:A-3】
【No4 斉藤  × 残り34名】
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