第33章
- 56 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 21:49:10.76 ID:kdIqD3Ym0
- (゚、゚トソン 「……」
伊藤と出会ってからどれほど経っただろうか。
相変わらず会話は続かないし、何も起きない。
やはり実はこれはドッキリなんじゃないだろうかという思考もあったりする。
それがどんなに儚い願いであるかはよく分かっているが。
('、`*川 「なーんにもないね」
(゚、゚トソン 「それが一番いいと思うよ」
そんなたわいもない会話はもうすぐ終わりを告げることとなる。
あまりの変哲のなさに2人はつい油断していた。
この煌々とともった電灯は、血に飢えた獣を呼び寄せる。 - 59 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 21:51:49.13 ID:kdIqD3Ym0
- ( ^Д^) 「……見ろよ、狐」
爪'ー`) 「……?」
宝と狐村は合流してからしばらくは獲物を探していた。
しかし大した成果を上げられず、というかまったく誰にも会うことがなく夜を迎えてしまった。
そんな中で宝・狐村ともにフラストレーションが溜まっていたところで宝が久々に言葉を口にした。
( ^Д^) 「電気がついてやがる。馬鹿だな」
爪'ー`) 「……!」
狐村の口角がわずかに上がる。
まさか、こんなミスをしている人間がいるとは。
街灯もほとんどなく、真っ暗なこの地域では煌々とともった電気は明らかに異質の存在だった。
- 62 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 21:54:04.16 ID:kdIqD3Ym0
- (゚、゚トソン 「……」
('、`*川 「……」
テレビは電波を受信せず、ただ砂嵐だけを映していた。
ラジオも同様だ。何も受信しない。それゆえ、会話はない。
何か妨害電波でも発信されているのだろうか。
もし携帯を持っていたとしても機能しなかったかもしれない。
('、`*川 「ねえ」
間を待たせようと都村に話しかけようとしたその時。
バチン、という音とともに部屋の電気が落ちた。
「え、なに? なに?」
慌てた様子の都村の声が聞こえる。
人のあわてた様子を見ると(暗くて実際には見えないが)自分は落ち着くと言うのは本当らしい。 - 64 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 21:56:35.98 ID:kdIqD3Ym0
- 「大丈夫だよ。きっとブレーカーか何かが落ちたんだって」
「そ、そう? どうする、ブレーカー探す?」
「うーん……もういいでしょ、すぐに目も慣れるって」
「……うん、そだね」
むしろ電気がついていた時は話が続かなかったのでこのブレーカー落ちは都合のよいものに思えた。
座っていたソファにさらに深く座って一息つく。
そして次に聞こえてきた言葉は。
「目が慣れるのと、死ぬのと。どっちが速いと思う?」
自分の声でも、都村の声でもない、男の声だった。 - 66 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 22:00:07.87 ID:kdIqD3Ym0
- 時は伊藤たちの部屋の電気が落ちる少し前にさかのぼる。
( ^Д^) 「……中にいるのは伊藤と都村。男子はいねえ。一気に行くぞ」
爪'ー`) 「ああ。……どうする、素直に突入するか」
( ^Д^) 「んー……あ、あれ。あれ壊せば電気消えるんじゃないか」
爪'ー`) 「あれって……ああ」
宝が指さしたのは家の外壁についている電気メーターだった。
あれを壊せば電気は消えるのだろうか。わからない。というか電気を消す意味も無いような気がするのだが。
( ^Д^) 「……」
爪'ー`) 「……」
( ^Д^) 「……何してんだよ。撃てよ」 - 68 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 22:03:54.79 ID:kdIqD3Ym0
- 爪'ー`) 「えっ? あっ、ああ」
その右手に持ってる銃で自分で撃てばいいのに……
そんな思いはもちろん口に出さず、自分の銃で電気メーターを撃ちぬく。
メーターはショートしたらしく、火花が思い切りよく散った。そのおかげか何か、家の電気は綺麗に落ちた。
( ^Д^) 「よっしゃ、行くぞ」
爪'ー`) 「おう」
その言葉を皮切りに宝は玄関へ走っていった。
狐村はそれに続く。人を殺す、という禁忌をこれから犯すのだと思うと不思議に足が震えた。
頭の芯から足の先まで自慰をした時のような快感が駆け抜ける。
爪'ー`) 「これは癖になるかもな……」
そう呟いた声は宝にも届くことなく霧散した。
宝が玄関のドアを開ける。右手に握った銃を握りしめる。
まるで自分の腕ではないように汗ばんでいた。 - 71 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 22:08:00.23 ID:kdIqD3Ym0
- 「え? 誰? 誰?」
都村の声が聞こえる。慌てている様子だ。
人のあわてた様子を見ると自分は落ち着くと言うのはやはり嘘らしい。
心臓が口から出てきそうだ。足が震える。まともに立っていられない。
今の今まで意識していなかった『死』が眼前に迫っている。
「い、伊藤ちゃん!? 伊藤ちゃん!?」
都村の必死の声が聞こえる。
どうすればいいのだろうか。先ほどの声からして侵入者はもう自分たちの命を狙っている。
電気を落とされた部屋は当然ながら、暗い。自分の腕すら見えない状況だ。
('、`*川 (……逃げる)
頭に浮かんだのはその選択肢だった。
しかも都村と2人で逃げるのではない。自分1人で逃げるのだ。
卑怯とは思わない。都村なんかと心中するつもりなんてあるわけがない。 - 73 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 22:12:17.39 ID:kdIqD3Ym0
- 「伊藤ちゃ……あっ!!」
('、`*川 「!」
都村の悲痛な叫び声が聞こえる。
ドン、という音が響く。恐らく床に叩きつけられたに違いない。
こんなことをしてはいられない。一刻も早く……
「まあまあ。ゆっくりしていけよ」
('、`;川 「っ……」
自分の周りの温度が下がったような気がした。
いつの間にか後ろに回り込まれていたのか。
羽交い絞めにされた。 - 75 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 22:14:44.89 ID:kdIqD3Ym0
- ( 、 *川 「 」
もう駄目だ。役立たずの都村は床に抑えつけられている。
自分は羽交い絞めにされている。
ということは少なくとも2人以上はいるということだ。
もう、逃げられない。
「……さて」
( 、 *川 「……」
「俺としてはな。ここで2人ともぶっ殺しちまってもいいわけよ」
( 、 *川 「……」
先ほどから頭に固いものが押し付けられている。
それが何かは考えたくもなかった。
いま、自分の生殺与奪権はこの見知らぬ2人組の手にあるのだ。
「でもな、それは面白くないわけよ。主に俺が」
声は都村の方向から聞こえる。
これは、この声は、聞いたことがある。
クラスで一番厄介な男。普段でも目を合わせるだけで厄介なことになる男。 - 77 名前:第33章 「off」:2009/07/08(水) 22:17:03.69 ID:kdIqD3Ym0
- ( 、 *川 「……た、から?」
( ^Д^) 「せーかい。よくわかったな」
足元がストン、と落ちたような気がした。
よりにもよってこの男だ。もはや自分の運のなさに辟易する。
( ^Д^) 「で、話を戻すと」
( 、 *川 「……」
どうせロクでもないことに決まっている。
どうせ死ぬなら噛みついて死んでやろうか……
そう思っていた時、宝の口から言葉が放たれた。
( ^Д^) 「お前らのどっちか1人、助けてやるよ」
一瞬、何を言っているのかわからなかった。
この家は、今はただ都村のうめき声が響くだけだった。
【No1 伊藤 武器:ヌンチャク 現在位置:G-4】
【No3 狐村 武器:ワルサーPPK(小型拳銃) 現在位置:G-4】
【No16 宝 武器:??? 現在位置:G-4】
【No19 都村 武器:フライパン 現在位置:G-4】