第25章
31 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:20:52.16 ID:kY/LN5pb0
从 ゚∀从 「よっしゃ、オッケー」


高岡(No15)は住宅地の軒先で見つけた原付のエンジンをふかし、呟いた。
先ほどの放送で、A-1は午後10時に禁止エリアになることを知った。
それまでに、そこに設置してあるというボートを確保しなければならない。


从 ゚∀从 「……貞子、ヒート、ジョルジュ、中嶋、斉藤」


しかし禁止エリアの情報よりも、高岡を揺り動かすものがあった。
貞子をはじめとする、クラスメート5人の死である。


从 ゚∀从 「……とっとと、止めてやらなきゃな」


殺した人間に対する憎悪は、もちろんある。
しかし高岡は担任であった鴨志田に誓った。このゲームを止めてみせると。
そのためには復讐など、している場合ではない。


从 ゚∀从 「……」

32 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:23:26.20 ID:kY/LN5pb0
高岡は原付にまたがる。
ヘルメットは見当たらなかった。気にするほどでもない。
時間はまだ午後6時を少し過ぎたほど。午後10時には十分間に合う。しかし。


从 ゚∀从 「はやく、止めねーと、な」


そう言って右手のアクセルを力いっぱい回す。
原付はそれに答えるように力いっぱい走り出した。
35 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:26:06.31 ID:kY/LN5pb0
从 ゚∀从 「誰にも会いたくないよ……? 出てくんなよ……?」


アクセルは全開で回している。
しかし原付のパワーではそんなに速度は出ない。メーターは55km/hを指していた。


从#゚∀从 「……くそっ、うるせーっつの」


さらに悪いことに、エンジン音は高岡の予想よりもうるさかった。
なるべくエンジン音を出さないような車種を選んだつもりだったのだが。
マフラーに改造が施されているらしく、やたらとうるさい。暴走族のようだ。


从 ゚∀从 (こんなんじゃ、見つかっちまう……)


原付は住宅地を抜け、森林に入ろうとしている。
いくら悪路に強い車種であるカブを選んだところで、森林で出せるスピードはたかが知れている。
メーターが指すスピードは30km/hまで落ちてしまった。
そこまでスピードが落ちてなおも、騒音は出続ける。

36 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:28:39.14 ID:kY/LN5pb0
从 ゚∀从 「……」


森林に入って1kmほど走っただろうか、そろそろA-1も近づいた頃だろう。
湖が見えれば、あとはもう少しだ。待ってろよ、鴨志田――
そう決意をさらに固めた、その時。


从;゚∀从 「おわっ!!」


パン、パンと乾いた音が2発響いた。
それに伴って自分の近くにある木が中心から爆ぜた。
――銃撃。高岡の脳裏をそんな言葉が駆け巡る。


从#゚∀从 「くそったれ!!」


半分ぐらいに絞っていたアクセルを全開にする。
木々や雑草が生い茂っているここで全開に開けるのはためらわれるが、仕方ない。
このままではどうせ銃撃されて死ぬ。乗り捨ててやり過ごすのも手だが、それでは余計な時間を食ってしまう。
高岡はなるべく早くボートにたどり着きたかった。
38 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:31:13.33 ID:kY/LN5pb0
从#゚∀从 「……」


狙いを絞られないよう、蛇行運転を繰り返す。
あちらは十中八九徒歩だ。乗り物はない。それならば、少し離すだけで振り切れる。
その考えは当たっていたようで、最初はとめどなく襲ってきていた弾も、時間が経つにつれてなくなってきた。


从#゚∀从 「振り切ったか。……はぁ」


やはり、いるのだ。
クラスメイトをその手に掛けようと、牙をむく者が。
正直、半信半疑だった。しかし、わかった。このゲームを早くとめないといけないと言うことに。
42 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:33:48.74 ID:kY/LN5pb0
<ヽ`∀´>ノ


おっす、アニョハセヨ!
3−1随一のイケメン、ニダーだニダ。

小日本(シャウリーペン。日本及び日本人の蔑称)と共に修学旅行というものに参加してやったのに。
なんだか変なおっさんが出てきて変なゲームの説明をされて、変な島にほっぽり出されたニダ。
でも、ニダはこんな時でも清潔にすることを忘れないんだニダ。


<ヽ`∀´> 「ふんふーん。テーハミング〜」


わたくし、ニダーは只今入浴中でありますニダ。
入浴と言っても、風呂ではありませんニダ。
ウリが入っているのは湖! ここの湖は我が祖国のように綺麗で、飲用水にもなりそうニダ。


<ヽ`∀´> 「青春はぁ……青いレモンの香りぃ……」


思わず、鼻歌も飛び出すニダ。
オモニにはニダーの歌声は素晴らしいと褒められたこともあるニダ。
そう言う訳で、さっぱりしたので湖から出ようとしたその時。
なにかエンジン音がしてきたんだニダ。

43 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:36:51.56 ID:kY/LN5pb0
<ヽ`∀´> 「是什麼? (なんだ?)」


そう思って湖から出て音の原因を確認しようとしたニダ。
すると、音の原因は思ったより近くにあったニダ。


从;゚∀从 「わああああああああ!! そこの人、どいて――!!」

<ヽ;`∀´> 「アイゴー!!」


いきなり飛び出してきた原付に轢かれそうになったニダ。
しかしウリは小日本の攻撃には屈しないニダ。
素早い身のこなしで見事湖の中に逃げ込むことに成功したニダ。


<#ヽ`∀´> 「ファッビョーン!! 謝罪と賠償を請求するニダ――!!」

从;゚∀从 「ごめーん!! 俺、急いでるから――!!」


そう言って原付に乗った人間――あれは、高岡?――はそそくさと行ってしまったニダ。
奇襲に失敗したと見るや否や逃げ出す日本。まさしく世界の構図ニダ。

このゲームに参加する小日本どもにウリが負けるはずないニダ。
高岡。今度会ったら、ぶちのめすニダ。……今度、会ったら。
45 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:39:37.63 ID:kY/LN5pb0
从;゚∀从 「やばかった……轢きかけちゃったよ」


さっきのは危なかった。まさか、あんな所に人がいるとは。
ゲームを止めるために走っていたのにそれで轢いてしまっては話にならない。
まあ、当たらなかったみたいだから良かったけど……


从 ゚∀从 「っと、そろそろだな」


20分ほど原付を走らせただろうか、やっとA-1の端の端にたどり着いた。
なんだか銃撃されたり、轢きかけたりなかなか濃い20分であったような気がする。
2度と味わいたくはないが。


从 ゚∀从 「えーっと、ここらへんか?」


教頭からのメッセージには簡単な地図も入っていた。
それによるとどうもここらへんらしいのだが。
ボートらしきものは見当たらない。――まさか、騙された?
疑念がポツリと一粒、胸の内に湧く。それをあえて無視して、高岡はボートを探す。

46 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:42:11.71 ID:kY/LN5pb0
从#゚∀从 「……」


それから10分ほど探しただろうか、ボートは一向に見つからない。
やはり騙されたのだ。1粒だった疑念は徐々に高岡の心の大部分を占めることになった。


从 ゚∀从 「……あれ」


なにか、音が聞こえる。
いや、ただの波の音なのだがなにか反響して聞こえているような気がする。
その辺の草をかき分けてみると、洞窟があった。
ゆるやかな下り坂になっている。洞窟の終着点は残念ながら見えない。


从 ゚∀从 「……ここか?」


高岡は最後の望みをかけ、その洞窟に入る。
そして、その望みは叶えられることとなる。


从;゚∀从 「……あった」


ボートはすぐに見つかった。2人ぐらいが定員の小さなゴムボートだ。エンジンは付いているが。
それはまるでそこにあるのが当然と言う風に浮かんでいた。
あまりに簡単に見つかったので逆に訝しがってしまったぐらいだ。
49 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:45:16.18 ID:kY/LN5pb0
从 ゚∀从 「……」


エンジンのイグニッションに支給されたマスターキーを差し込む。
キーは何の抵抗も無くスムーズに入り、エンジンを活性化させる。
動かし方はエンジンに張り付けられた紙に書いてあった。
それに従うだけで簡単に運転することができそうだ。


从 ゚∀从 「……」


先ほどから口を動かすことはしない。動いているのはただ手のみだ。
もう無駄な言葉はいらない。決めたから。必ず、このゲームを止めると。
クラスメートを、救うと。


从 ゚∀从 「……」


不遜かもしれない。自分が、人を救うなどとおこがましいかも知れない。
でも、高岡はこんな極限状況の中、未だかつてない充実感を持っていた。
自分が、誰かに必要とされていること。
それは、不良少女として冷遇されてきた高岡にとって今まで得難いものだった。


从 ゚∀从 「準備、オッケーイ」
56 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:48:23.48 ID:kY/LN5pb0
そう言ってエンジンを作動させる。
ブルン、と一拍置いたあと勢いよく動作を始める。
それは高岡の心拍にも似たようなものがあるかもしれない。
そうして、ボートは勢いよく海面を滑り出した。


从 ゚ー从 「……やって、やるさ」


ボートはぐんぐん速度を上げていく。波しぶきが顔にかかる。しかしそれを拭くことはしない。
ふと、後ろを振り返る。やってきた殺人の島はもう、少し小さくなっていた。
改めて外から見ると、本当に小さい。自分たちはこんなちっぽけな所に詰められて殺し合いを強要されているのだ。
バカらしくなってくる。しかしあそこでは殺し合いは決して馬鹿らしいことではない。


从 ゚∀从 「……」


海上は、当然ながら、暗い。
ボートに積まれてあった懐中電灯を取り出す。
照らしてみる。当然だが、目指すべき陸地は見えない。


从 ゚∀从 「それでも」


それでも。自分は海の上を滑り続ける。
わかるとか、わからないじゃない。やらなきゃ、いけないんだ。
そういった高岡の想いを乗せて、ボートは勢いよく陸地を目指す。
その先に待つのは、天使か、それとも――

57 :第25章 「高岡のゲーム脱出大作戦2〜Driver's High〜」:2009/02/14(土) 21:50:54.64 ID:kY/LN5pb0
同日 同時刻 某テレビ局 第3スタジオ


( ・−・ ) 「……というわけで、政府の経済非常事態宣言により、景気は悪化の一途を辿っています。

       今月の完全失業率は7.8%を記録。この数値は過去最悪です。

       この状況をどうみますか、経済評論家の白髭さん」

( ´W`) 「そうですねー。今は中小企業を中心に苦しい状況ですからねー。

     荒巻総理の手腕に期待したいところですねー」

( ・−・ ) 「そうですか。ありがとうございました。では、次はお天気のコーナーです。気象予報士の、高崎さーん」


<(' _'<人ノ 「はーい、明日のお天気のポイントは、ずばり傘は必須!

       忘れないようにしましょう! さて、天気図です。

       御覧の通り、太平洋上に強い低気圧が居座っています。明日はこの影響で海は大荒れ。

       釣りなど、海のレジャーに行かれる方は高波や時化にご注意ください。

       では、全国のお天気です……」


【No15 高岡 武器:マスターキー 現在位置:海上】
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