第21章
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:14:15.75 ID:JsPkaiij0
- 第21章 「catch」
( ゚д゚ ) 「10億♪ 10億♪」
鼻歌を歌いながら歩いているのは出席番号28番・未奈。
彼は生き残るためとか、死にたくないと言う理由でこのゲームに乗ったわけではない。
( ゚д゚ ) (10億とか魅力的すぎだろ……jk)
自分は欲深い人間であると言うことは自覚していた。
そんな自分にとって人を殺すだけで10億と言うのはあまりに甘美な誘惑だった。
( ゚д゚ ) 「これの最初の犠牲になるのは誰かねえ……ククッ」
笑みを浮かべながら海岸線を歩く。
しかし自分以外の人間とは遭遇しない。
海岸線を歩いたのは間違いだったか。
そんなことを考えていると、海岸の端の灯台まで来てしまった。 - 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:17:27.86 ID:JsPkaiij0
- ( ゚д゚ ) 「あーあ、ハズレか……みんな街とか森に行っちまってるのかねえ」
そう呟き、獲物を探しに住宅地を虱潰しに行こうと思ったその矢先。
『ジェノサイド王手ェェェェェェェェ!!』
何者かの掛け声が飛んできた。
未奈はこの場にあまりに場違いな掛け声にしばし呆然とする。
( ゚д゚ ) 「……なんだ、今の……」
少なくとも、灯台下の小屋に誰かいて、将棋か何かをしているのは確からしい。
未奈はこれ幸いと、手に持った赤い手榴弾の感触を確かめながら歩を進めた。 - 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:20:31.92 ID:JsPkaiij0
- lw´‐ _‐ノv 「ふはは、王手だぞ、比嘉君」
(-_-) 「比木です」
それにしても……比木は素直にシューの将棋の上達ぶりに感心する。
小屋からたまたま将棋盤を見つけた時にはハナっから歩を斜めに進めてしまっていたシュー。
しかし比木が少し駒の動き方と戦略を教えると、たちまち比木を苦しめるほどの腕前になってしまった。
(-_-) (穴熊なんか教えてないし……もしかして、自分で考えて応用した?)
もしそうなら、この人はすごく頭がいいのかも知れない……
それが今の比木がシューに対して持っている印象だった。
lw´‐ _‐ノv 「ほらほらどうした比中君。投了するなら頭を地面にこすりつけて足をお舐め」
(-_-) 「比木です」
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:23:34.48 ID:JsPkaiij0
- 少し、ムカつくのは、置いておいて。
比木は盤上の駒に目をやる。
自分の王はいかにも裸の王様といった感じだ。
対してシューの王はいくつもの駒によって守られている。
将棋の素人が見ても勝敗は決しているとわかることだろう。
lw´‐ _‐ノv 「氷上君」
(-_-) 「比木です。今必死に考えてますから話しかけないでください」
lw´‐ _‐ノv 「将棋と言うのは、いいものだな」
(-_-) 「何がですか。えーっと、飛車があそこにいるから……」
lw´‐ _‐ノv 「殺さないから」
(-_-) 「?」
比木はいささかびっくりしていた。
まさかシューの口から『殺』なんて字が出てくるとは思わなかったのだ。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:26:37.05 ID:JsPkaiij0
- lw´‐ _‐ノv 「相手の兵士を追い詰めても、殺さない。
それどころか懐柔して、自らの味方にしてしまう。戦争なのに、誰も死なない。
私はそんなゲームが米とごはんですよと同じぐらい好きなのだよ」
(-_-) 「……そんなこと、考えたこともありませんでした」
戦争。今、自分たちが置かれている殺し合いという状況にも当てはまる言葉。
阿部たちはゲームなどと言っていたが、これは間違いなく戦争だ。
(-_-) 「できれば、僕もそんな風にありたいです」
これは本心だった。死にたくない。
これはいくら口が強がってても心が強く感じる感情だった。
でも、殺したくない。自分の目の前で人が死ぬなんて、そんな場面、見たくない。
それを気づかせてくれたシューには、感謝しなけれb
lw´‐ _‐ノv 「いや、私は嫌だな」
(;-_-) 「ええー!?」 ガビーン
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:29:44.69 ID:JsPkaiij0
- lw´‐ _‐ノv 「だってそうだろ、誰しも戦争なんてしたくないさ」
いや、そうだろうと信じたいけども。
そもそもこの話を持ち出したのはあなたでしょうに。
lw´‐ _‐ノv 「ところで次の君の手はなんだ。いい加減暇になってきた」
(-_-) 「あ、ああ。すいません。今考えますよ」
比木は再び盤上に目を向ける。
しかし比木は気づかなかった。窓の外から、自分たちを見る目があることに。 - 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:32:45.50 ID:JsPkaiij0
- ( ゚д゚ ) 「なんだぁ、ありゃ。比木と砂尾?
あいつら将棋なんかしちゃって……平和ボケしすぎだろjk……」
その光景は今まさに殺し合いの舞台に立っている未奈から見ると、あきらかに平和ボケしたものだった。
こんな場面で将棋を、ましてや大声を出すなどアホのすることだ。
しかし未奈は己の幸運に震えたった。
( ゚д゚ ) 「一気に2人も殺せるチャンスってことだろ……ケケッ」
未奈は説明書を読み、手榴弾の使い方を理解する。
そして、肩をぐるんぐるんと回し暖める。
( ゚д゚ ) 「さようなら……ククッ」
そしてピンを抜き――渾身の力をこめて小屋に投げ込んだ。
赤く塗られているその手榴弾はグングンと、軌道をぶらさずに小屋へと向かっていく。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:35:46.65 ID:JsPkaiij0
- (-_-) 「うーん……ん? ……!!!!」
lw´‐ _‐ノv 「どうした比・正日君」
(-_-) 「比木です!! ていうかそんなこと言ってる場合じゃなくて!!」
比木はこの時にしてようやく気付いた。
ここを着弾点にする赤い悪魔が急スピードで迫っていることに。
そして、それに気づいても対処法はないことを比木の頭脳は理解した。
(-_-) (ああ――死んでもいいって思ったけど、やっぱり怖いな……)
lw´‐ _‐ノv 「あらあら、なんだか変なのが飛んできてるぞ比・イルソン君」
(-_-) (もはや突っ込む気にもなれねえ……)
比木はイグサの上に寝転んだ。そもそも、こんな所で将棋などしていたのが悪かったのだ。
これでは狙われてもしょうがないとしか言いようがない。
比木は今までの人生を振り返りつつ――目を閉じた。
爆発の衝撃はどんなだろうと、想像しながら。
- 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:38:47.63 ID:JsPkaiij0
- lw´‐ _‐ノv 「おーい、比スクチ君起きろー。
まったく、急に寝ちゃって……あれのせいか」
(-_-) (比木だよ、うるさいよ、もう死ぬんだからどうでもいいだろ……)
lw´‐ _‐ノv 「キャッチだ、とう!」
(-_-) (そうそう、キャッチして……キャッチ?)
比木は走馬灯を見るのを止め、シューが放った言葉の意味を探るため、目を開けた。
そして、シューの手には――
lw´‐ _‐ノv 「捕っちゃった」
赤い塗装がなされた、手榴弾が握られていた。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:41:49.80 ID:JsPkaiij0
- (;-_-) 「取った――!!」 ガビーン
lw´‐ _‐ノv 「どうしよう」
(;-_-) 「投げて!! 早く!! できるだけ遠くに!!」
lw´‐ _‐ノv 「あいやわかった。せーの……」
lw´> _<ノv 「とんでけ☆」
(;-_-) 「投げた――!! そしてキモイ顔出た――!!」 ガビーン - 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:44:53.26 ID:JsPkaiij0
- ( ゚д゚ ) 「……なんで爆発しないんだ?」
訝しげに思い、小屋の方を目を細めてみる。
一向に爆発はしない。ちゃんとピンも抜いたし、不備はないはずだ。
――それなのに、なぜ?
( ゚д゚ ) 「説明書説明書……」
未奈は説明書に手を伸ばす。
武器といっしょにかばんに同梱されていたものだ。
そこには、こう記されていた。
『あなたの武器は手榴弾・OTO M35型です。
この手榴弾の他とは違う点は、時限式ではなく、衝撃によって爆発する点です。
よって、十分な衝撃がなければ爆発せず、不発弾となります。注意しましょう。
また、不発弾があまりにも気まぐれに爆発することから敵味方問わず恐れられ、「赤い悪魔」と呼ばれています』
( ゚д゚ ) 「つまり不発ってことか……しゃあねえ。もう一発……」
そして、説明書から顔をあげた未奈は見た。
先ほど自分が投げたのと同じ赤い手榴弾がこちらへ向かってきていることに。
(;゚д゚ ) 「おおおおおおおおおおおおお!!??」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:48:15.04 ID:JsPkaiij0
- 慌ててそこから回避する。
なんかの漫画か映画かで爆発でけがをする範囲は10Mほどだと言っていた気がする……。
ここでそんなおぼろげな知識に頼るのは嫌だったが、仕方ない。
自分が持っている脚力全部を使い、走る。
(;゚д゚) 「ぬわああああああああああああああ!!!!」
衝撃。
今度は不発弾とはならず、手榴弾としての性能を十二分に果たした。
爆風は未奈の体をふっ飛ばし、しかし退避していたことから怪我を負わせることはなかった。
(;゚д゚ ) 「………………他、行くか」
もう一度投げ込む気にはなれないし、第一もう比木達はほかの所に退避しているだろう。
それにしても、あいつらあんな平和ボケして攻撃を仕掛けてくるとは思わなかった。
これからは不発弾にも留意しなければならない。
( ゚д゚ ) 「いつつ……」
爆風で吹っ飛ばされたことによる擦り傷に痛みを感じながら、未奈は海岸エリアを後にするのであった。
周りに焦げくさいにおいを巻き散らかしながら。
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:51:24.77 ID:JsPkaiij0
- (;-_-) 「……」
すごい爆発が起こった。
シューが投げた手榴弾はその性能を十二分に発揮したようだ。
(;-_-) 「あっち、人がいるんじゃあ……」
飛んできた方向に投げた、と言うことはそこに人がいると言うことだ。
自分たちを狙ってきたのだから同情はしないが、やはり気になる。
lw´‐ _‐ノv 「比・マエストロ君……」
(-_-) 「比木です。なんですか」
lw´‐ _‐ノv 「きみ、ずるいな」
シューは足元を指す。
そこには比木が寝転がった時に蹴ってしまい、駒がバラバラに散らばった将棋盤があった。 - 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:54:37.57 ID:JsPkaiij0
- (;-_-) 「いや、ずるいとかそんなんじゃなくて……」
lw´‐ _‐ノv 「汚いな、さすが比上君汚い」
(;-_-) 「比木です。……すいません」
lw´‐ _‐ノv 「ふん、まあいい。靴舐めで許してやる。じゃあ移動しようか、前田君」
(-_-) 「比木です。移動って……?」
lw´‐ _‐ノv 「君は襲撃があった所に居続けるのか、すごいな」
(;-_-) 「……」
確かにそうだ。確かにそうだけど……
シューに言われると、なんだか悔しい気持ちが出てくる。
しかし移動しないといつ復讐に来るかわからない。
比木はその言葉に従うことにした。 - 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/07(土) 20:57:51.38 ID:JsPkaiij0
- (;-_-) 「ここって……」
lw´‐ _‐ノv 「新・砂尾邸だ」
先ほどのこやから10mも離れていない所にある小屋に砂尾は入っていく。
移動することの重要性を今まで話してきたのはなんだったのだ。
lw´‐ _‐ノv 「考えてもみたまえ、逆転の発想だよ」
(-_-) 「逆転……?」
lw´‐ _‐ノv 「ずばり、襲撃されたところの近くにいるとみんな逆に寄ってこない」
……なんだか、考えるのもめんどくさくなってきた。
もう、いいか。さっきの襲撃で一度落とした命だ。
いっそ最期まで楽しんだ方が楽だ。
(-_-) 「……もう、どうでもいいです……」
もう、どうでもいいです。
【No13 砂尾秀 武器:??? 現在位置:H-2】
【No25 比木 武器:靴 現在位置:H-2】
【No28 未奈 武器:OTO M35型手榴弾 現在位置:G-2】