第20章
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:02:48.45 ID:TrIhuqyG0
- 第20章 「Why?」
(#゚∀゚) 「くそったれ……くそったれくそったれくそったれ!!
あいつら……絶対に許さねえ。殺してやる。絶対に絶対に殺してやる」
長岡(No23)は内藤(No21)らに裏切られたショックからただただ走っていた。
元々野球部に所属し、体力がある方だと自負している。
だから市街地から森に逃げ込むことなど長岡にとっては容易いことだった。
(#゚∀゚) 「武器だ……武器がいる。警棒じゃ殺せねえ。強力な武器がいる」
気の長い性格ではなかった。
友達(だった)とは言っても毒田(No20)とは時々意見のすれ違いからケンカもした。
その時止めていたのはいつも内藤だった。しかし……あの2人はこともあろうに自分を襲おうとしたのだ。
(#゚∀゚) 「俺なら殺せる、ってか……? 上等じゃねえか」
呪詛に近い言葉を紡ぎながらも長岡の足は止まる気配を見せない。
しかしその足は予期しない者の出現によって止まることとなる。 - 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:05:14.19 ID:TrIhuqyG0
- ( ゚∀゚) 「!」
从;'ー'从 「きゃっ!」
猛スピードで走る長岡の前に突然出てきたのは渡辺(No34)だった。
長岡の足は渡辺にとっさに反応することができなかった。
それどころか、予想外の展開に足がもつれてしまった。
当然、長岡の体は渡辺の体に突っ込んでいってしまう。
(;゚∀゚) 「うわっ……」
从;'ー'从 「あいたっ!」
(;゚∀゚) 「な、ナベちゃん……ごめん、大丈……」
そこで長岡は先ほどの出来事を反芻する。
親友だと思っていた者が自分に牙をむいてきた時のあの絶望感……
あんなものは二度と味わいたくはなかった。
从'ー'从 「うん……こっちこそ、急に出てきちゃったから」
そう言って渡辺はぺこりと頭を下げる。
その姿はいつもの、教室での少し天然な渡辺そのままだった。 - 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:07:49.43 ID:TrIhuqyG0
- ( ゚∀゚) 「う、うん……」
長岡は渡辺と仲がいい。
いや、渡辺はその愛らしい容姿と天然さがあいまって男女問わず人気なのだが。
とにかく長岡にとって渡辺は全然信用できない相手と言うわけではなかった。
从'ー'从 「それにしても、ジョルジュ君どうしたの?
なんでそんなに血相変えて……」
(;゚∀゚) 「な、なんでって……」
長岡は少し考える。これは罠なのか。
それにしてもこの状況で『どうして走っていたのか』と言う質問はピントがずれすぎている。
これも天然がなせる技なのだろうか、それとも――
从'ー'从 「?」
( ゚∀゚) 「……」
長岡は結論を出した。『渡辺が人を騙せるわけがない』。
そもそもあの忌々しいゲームの説明の前も最後まで寝ていたのは渡辺だった。
そんな緊張感のない人間なのだから、ゲームに実感がないのも当然だろう。 - 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:10:17.02 ID:TrIhuqyG0
- ( ゚∀゚) 「実は、さ。俺は、このゲームに乗ってる奴がいるとは思わなかったんだ」
从'ー'从 「あ、ごめん。ちょっと」
( ゚∀゚) 「?」
从'ー'从 「その話、長くなる? もしそうなら、どこか入らない?
あたしずっと立ちっぱなしで、くたくたで」
( ゚∀゚) 「あ、ああ。ごめんね、気づかなくて。えっと……」
確かにこんなところで立ちっぱなしで世間話など、的にしてくださいと言っているようなものだろう。
周りを見渡す。人目を避けれて、なおかつ休めるところ……
( ゚∀゚) 「あ、あった。ナベちゃん、あそこでいい?」
从'ー'从 「うん、いいよ〜。ありがとう」
そう言って渡辺はまたもぺこりと頭を下げる。
これは彼女の癖のようなものらしく、教室で友達に何回もこれをしているのを見たことがある。 - 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:12:44.32 ID:TrIhuqyG0
- ( ゚∀゚) 「よいしょっと」
从'ー'从 「はー、疲れたー」
2人が入ったのは小屋、というよりも納屋のようなところだった。
あまり広くはなく、3人入ればいっぱいになるだろうほどのところだ。
しかし座って休むにはちょうどいいところだろう。
从'ー'从 「それで、ジョルジュ君なんで……?」
( ゚∀゚) 「あ、うん。実はさ……」
そう言って長岡はゲームが始まってからのことを渡辺に話した。
1人でゲームに放り込まれて心細かったこと。
武器が警棒でがっくりしたこと。阿部に対しての悪口。
びくびくしながら市街地を徘徊していたこと。そこで内藤らに会ったこと。
その内藤らに裏切られたこと。そして絶望して走っているうちに渡辺にぶつかったこと。
長岡がかかわった全てのことを渡辺に話した。
渡辺は長岡の言葉ひとつひとつに相槌を打ってくれ、「本当に」「辛かったね」と慰めの言葉をかけてくれた。
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:15:10.88 ID:TrIhuqyG0
- 从'ー'从 「その、内藤君のことなんだけどさ……」
(#゚∀゚) 「内藤……」
あのことを思い出すだけではらわたが煮えくりかえる思いをする。
絶対に許せなかった。自分を騙そうとした内藤と、銃を向けてきた毒田は。
从'ー'从 「ジョルジュ君、落ち着いて聞いて。それって、勘違いなんじゃないのかな?」
( ゚∀゚) 「勘違い……?」
从'ー'从 「うん。私はそこにいなかったから詳しくはわからないけど。
内藤君がジョルジュ君を騙そうとするかなあって」
( ゚∀゚) 「それでも、俺は……」
从'ー'从 「それに、銃を向けてきたのは毒田くんでしょう?
あたし毒田くん、嫌いだな。暗いって言うか、理屈っぽくてさ」
( ゚∀゚) 「……」
確かに、そうかもしれない。
あの時は激昂していたのでわからなかったが、内藤は毒田に対して責めの言葉を投げかけていたような気がする。
毒田はともかく、内藤はまだ信じる価値があるかもしれない……少なくとも、話し合いをする価値は。
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:17:57.53 ID:TrIhuqyG0
- ( ゚∀゚) 「……決めた」
从'ー'从 「ふぇ?」
渡辺が気の抜けた声を上げる。
長岡はそれは気にせずに、話す。
( ゚∀゚) 「俺、内藤と話し合ってみる。俺の勘違いなのか、どうなのか」
从'ー'从 「……」
( ゚∀゚) 「毒田は信用できねえ、あいつは俺に銃を向けた。
でも、ナベちゃんの言うとおり話し合いはできる気はするんだ」
从'ー'从 「……うん! いいと思うよ!」
( ゚∀゚) 「……ありがとう、ナベちゃん」
从'ー'从 「それほどでも。……ねえ、私もついていっていいかな」 - 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:20:24.67 ID:TrIhuqyG0
- ( ゚∀゚) 「え?」
从'ー'从 「もし喧嘩になりそうだったら、私が止めるから。みんなが殺し合うのは、見たくないよ……」
( ゚∀゚) 「……うん。よろしく頼むよ」
心強かった。長岡は渡辺に出会って格段に自分が大胆な行動をできるようになったと思った。
もし自分1人なら、確実にうじうじ悩んだ末凶行に走っていただろう。
それを止めてくれた渡辺には感謝してもしきれないぐらいだ。
从'ー'从 「あ、あの、えっと……」
( ゚∀゚) 「どうしたの、ナベちゃん。できれば早く出発したいんだけど」
从;'ー'从 「……お、おトイレ、行ってきてもいいかな?」
(;゚∀゚) 「え、あ、ああ、ごめん! うん、いいよ! 速く行ってきなよ!」
从////从 「……」
渡辺は早足にドアをくぐっていく。
この納屋にはトイレがない。もともと物置として使われていたらしいところだから当然だが。
とすると、渡辺は外で…… - 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:22:55.20 ID:TrIhuqyG0
- ( ゚∀゚) 「はあっ!! いかんいかん!! 俺は恩人の何の光景を……っ!!」
長岡は自分で自分の左ほほをひっぱたく。
顔が右に流れる。
そして、その先にある窓ガラスが割れ、何かこぶし大の石のようなものが入ってくるのが見えた。
( ゚∀゚) 「え」
そのこぶし大は、まっすぐ自分の方へと向かってくる。
そしてそれは、長岡の眼前で、炸裂しようとする。
こぶし大が眩い光を放とうとする瞬間、長岡は見た。
割れた窓ガラスの向こうで、渡辺がぺこりと頭を下げているのを。
( ゚∀゚) 「なんで」
こぶし大――火炎手榴弾――が巻き起こした衝撃と炎は長岡にそれ以上の思考を許さなかった。
狭い納屋は一瞬にして何百、何千もの部品に分解された。 - 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:25:25.36 ID:TrIhuqyG0
- 从'ー'从 「はぁ……使えない。せっかく盾として使ってやろうとしたのにさ」
渡辺はその光景を少し離れたところで見る。
その表情は先ほどの長岡が感じた『いつもの』渡辺とは明らかに違っていた。
渡辺はさらに吐き捨てる。
从'ー'从 「内藤たちと合流されたら狙われやすくなるだろうし……
あんなに怒ってたのに話し合いに行こうとすんなよ、クソが」
渡辺のバッグの中には先ほど長岡に投じられた火炎手榴弾が入っている。
12個。恐らく、尽きることはない。
从'ー'从 「そう……私は、勝つの」
私は、力が弱い。まともに戦ったのでは勝てない。
だから、利用する。相手の良心を、好意を、信頼を、友情を。
それが、このゲーム唯一の攻略法だから。 - 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 22:27:05.05 ID:TrIhuqyG0
- 从'ー'从 「それにしても武器が警棒って……奪う気にもなれなかったよ」
渡辺は、未だパチパチと音を立てる納屋の部品を見ながら、これからどう行動するか思いを巡らせる。
あまり、いい方法は思いつかない。
从'ー'从 「内藤……は騙せるけど、毒田は難しいかな……」
渡辺は更に考えを巡らせる。
その間、長岡に対しての哀悼の意が顔に現れることはひと時たりともなかった。
【No23 長岡 × 残り33名】
【No34 渡辺 武器:火炎手榴弾 現在位置:C-2】