第16章
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 20:23:32.70 ID:TrIhuqyG0
第16章 「命が散る意味」
(´・ω・`) 「……」


諸本(No32)は思考を重ねていた。
もちろん、ゲーム開始前に言われた斜近(No7)の『自分を殺せ』という言葉についてだ。


(´・ω・`) 「そんなこと……」


できるわけない、と言おうとして止める。
もちろん日常ではそんな戯言は鼻で笑い、思い返すことも無いだろう。
しかしここの日常は違う。本部を出てから4時間は経っただろうか。
陽は傾きだし、長い影を落とす。陽が落ちるまであと1時間半ぐらいだろうか。
時々、銃声や爆発音が聞こえる。もう始まっているのだ。あの音と共に。


(´・ω・`) 「……僕は、乗るのか、乗らないのか」


斜近のことと共に考えていたのはそれだった。
確かに斜近に対してはゲームに乗るつもりだと言った。
しかしどうしても踏ん切りがつかないでいた。
理性がいくばくの邪魔(この場合を邪魔と言うのかは置いておいて)をしていたのだ。
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 20:27:11.52 ID:TrIhuqyG0
(´・ω・`) 「優柔不断だなあ……」


かねてから自分のコンプレックスであった優柔不断な態度。
それがこんな非日常であるゲームの最中にもはっきりと表れている。
つくづく自分の性格が嫌になる。口では大きいことを言っておきながらそれを実行できないのだ。


(´・ω・`) 「とりあえず斜近と合流しようか……」


合流しても斜近はハッキリした奴だから、殺せと要求するに違いない。
自分はその要求をどうするのか。会うまでに決めておかなくてはならない。
会う時までに――。


(´・ω・`) 「!!」


誰か、いる。
人に見つかる恐れを避けて森を歩いていたが、ここにきて人の気配を感じる。
しかも話し声まで聞こえる。少なくとも2人以上だ。
チームを組んでいる奴らか、それとも『やる気』になっている奴か。
できるならば後者ではあってほしくなかった。
まだ、人が死ぬシーンを見て正気を保てる自信は無い。
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 20:30:13.32 ID:TrIhuqyG0
ノハ;凵G) (ФωФ )


(´・ω・`) (須田さんと杉浦……恋人同士か。チームだな)


普段は恋人同士である2人。
恥ずかしいからかなんなのか、一応隠してはいたが、2人が恋人であるというのは周知の事実だった。


(´・ω・`) (……? なんだか、様子がおかしい)


須田が後ずさっている。杉浦はにじりにじりと須田を追い詰めている。
なんだこれは。2人はチームではないのか――
その刹那、杉浦は須田を押し倒した。杉浦の手にはナイフが握られていて――
それが、須田の首めがけて、振り下ろされた。


(;´・ω・`) (……っ!!)


諸本は思わず目をそらす。
こんなところにはいたくないとばかりに、来た方向へ足を向ける。


(´・ω・`) (いや……)
9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 20:33:19.89 ID:TrIhuqyG0
違う。ここでは、これが日常なのだ。
この先生き残りたいなら嫌でもこんなシーンは見なければならない。
そうでなければ自分が須田のポジションに座ってしまうだけだ。


ノハ ) 「ゴボ……ガハッ……ロマ……ぁ……」

(;´・ω・`) (……)


吐き気がする。須田の首から流れている赤は、本物だろうか。なんだか、フェイクを見ている気分だ。
顔には恋人に対する何とも言えない気持ちが出ているような気がする。
やがて須田の動きはほぼ止まった。


( ФωФ) 「ははははは!! やったぞ!! ふたりめげきつい!!

        さつじんきのしょうり!!」

(;´・ω・`) (二人目……!! もう杉浦は二人も!!)


見通しが、少し甘かったかもしれない。
杉浦はどちらかと言うとおとなしめの人間だったはずだ。
少なくともこんなゲームに参加する奴ではなかった。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/31(土) 20:36:21.17 ID:TrIhuqyG0
(´・ω・`) (見通しが甘いんだ。自分以外は、敵だ。決心がついた)


杉浦は高笑いをしながらどこかへ行ってしまった。
そこには恋人を弔う気持ちなど微塵も感じられなかった。
ああでもしなければ、このゲームは生き残れない。
それを教えてくれた杉浦に感謝する。


(´・ω・`) 「あんたにも感謝するよ、須田さん。あんたのおかげで踏ん切りがついた」


そう須田の亡骸に一礼してから杉浦とは反対の方向に進む。
まずは斜近に会おう。あいつが死なない内に、あいつを殺そう。
踏ん切りがつかないうちは無用の長物でしかなかったバッグの中の拳銃が、今は頼もしい。


(´・ω・`) 「勝つのは、僕だ――」

そう小声で、しかし高々と宣言する。
クラス随一の優等生がゲームに参加した瞬間だった。

【No32 諸本 武器:コルトガバメントM1911(拳銃) 現在位置:B-4】
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