第15章
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 22:11:31.19 ID:2R0QGmtg0
- 第15章 「マーダー2」
( ´_ゝ`) 「……ひとり、殺しちまったのか」
兄者(No5)は自らの右手をなんとなしに眺めていた。
先ほど中嶋の命をこの手で絶った。中嶋とは仲が良かった。
それこそ親友だと思っていたし、きっと高校を卒業してからも付き合う仲になるとは思っていた。
( ´_ゝ`) 「もう、戻れないぞ。流石兄者」
兄者はもう一度、反芻する。
あの時言われた、男の言葉を。 - 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 22:14:10.18 ID:2R0QGmtg0
- それはゲーム開始時、兄者にバッグが渡された後の出来事だった。
兄者の前の黒服は明らかに兄者を本部の上の階へ誘導していた。
( ´_ゝ`) 「おい、黒いの。どこへ行くんだ。外へ行くんじゃないのか」
「流石兄者さんはまずこちらへ誘導するように言われています」
( ´_ゝ`) 「……」
この時からすでに嫌な予感はしていた。
もっとも、ゲームに巻き込まれた時点で嫌な予感もあったものではないのだが。
黒服に最上階の大きな会議室に通される。黒服は動かない。どうやら兄者に入れと要求しているようだ。
ここで反抗するのはあまり利口ではないと判断したので素直に扉を開ける。
( ´ー`) 「やあ。はじめまして。流石兄者君だね」
( ´_ゝ`) 「……誰だ、お前は」
部屋の奥に座っていた40代ぐらいの男は兄者の知らない男だった。
少なくとも、VIP高校の関係者ではないだろう。
- 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 22:16:57.73 ID:2R0QGmtg0
- ( ´ー`) 「ああ、申し遅れた。私の名前は白根。
……まあ、君には必要のない知識だけどね。
君をここに呼んだのは他でもない。君にお願いがあるんだ」
( ´_ゝ`) 「……お願い?」
嫌な予感ほどよく当たる。
兄者はふとそんな言葉を思い出していた。
こんな場面でされるお願いなど、碌なものではないだろう。
( ´ー`) 「君には、クラスメイトを殺して回ってもらいたい。
武器は強力な物を支給しよう。他にも必要なものがあれば用意する」
( ´_ゝ`) 「バカバカしい。断る」
即答だった。兄者は弟に比べ短気ではあったが、こんなゲームに参加しない理性は持っていた。
しかし、目の前の男は主催者側としてゲームに参加しろと言う。
バカバカしい。そんなことをするぐらいなら死んだ方がマシだ。
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 22:19:40.97 ID:2R0QGmtg0
- ( ´ー`) 「おや、そうかい。それは残念だ。
――君にとっても、君の家族にとっても」
( ´_ゝ`) 「脅しのつもりか? 悪いが、うちには最強の母親がいるんでね」
( ´ー`) 「ああ、知っているよ。でも、その母親とて四六時中一緒にいるわけではない」
( ´_ゝ`) 「……」
( ´ー`) 「流石姉者。24歳。出版社勤務。
3年付き合っている彼氏とゴール間近。性格は品行方正。
出勤に使っている電車は海浜美府線。乗車は二英駅。降車は美府駅。
帰りの駅から家への徒歩15分はいつもひとり……夜道には気をつけてほしいね」
(;´_ゝ`) 「……」
( ´ー`) 「流石妹者。14歳。二英中学在籍。
部活は軟式テニス部。実力は県大会準優勝。
成績が良く、友達も多くて先生からの信頼も厚い。
下校時、友達と別れて家に帰るまで7分……最近は幼女を狙う犯罪も多発しているらしい」
(#´_ゝ`) 「ふざけるな!!」 - 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 22:22:07.71 ID:2R0QGmtg0
- 机を叩く。ドン、という大きな音が響くが白根は動ずる素振りすら見せない。
兄者は焦っていた。自分が死ぬのはもはや半分諦めていた。仕方がないと思っていた。
まさか、家族の命も脅かされているとは思わなかった。母者がいるからと安心しきってしまっていた。
( ´ー`) 「怒らないでくれよ。君がこの依頼を聞いてくれればどちらも幸福だろう?
君は家族を守れる。私たちは目的を達成することができる。win-winの関係と行こうじゃないか」
(#´_ゝ`) 「……!!」
( ´ー`) 「それに生き残るのは3人だ。君の弟のためにも、強力な武器は必要とは思わないか?」
(#´_ゝ`) 「おと……じゃ……!!」
( ´ー`) 「7人。7人殺せば、君たち兄弟をこのゲームから解放しよう」
( ´_ゝ`) 「……本当か」
兄者は迷っていた。
クラスメートと家族。断れば(母者はともかく)家族の命はほぼないだろう。
今、クラスメート35人と家族の命。それが天秤に掛けられている。
どちらに、傾く―― - 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 22:24:28.02 ID:2R0QGmtg0
- ( ´_ゝ`) 「……わかった。受けよう。その約束、忘れるな」
( ´ー`) 「その言葉を聞いて安心したよ兄者君。ちなみに、もともとの武器はなんだった?」
兄者はごそごそとバッグの中身を漁る。
武器らしい武器の感触は無い。
( ´_ゝ`) 「なんだこれは。……ハサミ?」
( ´ー`) 「ありゃ、はずれか。まあいい。こちらに武器があるから好きなものを持って行け。
あんまり欲張るとかさばるぞ。厳選して選んで行けよ」
白根が顎でさししめした箱の中には大量の銃器が入っていた。
拳銃から戦争に使う重火器までもが入っている。 - 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 22:25:52.51 ID:2R0QGmtg0
- ( ´_ゝ`) 「……この2つでいい」
( ´ー`) 「ふむ、アサルトライフルと拳銃か。まあ、いいと思うよ。
あと、こいつを持っていくといい」
そう言って白根はゲーム機のような機械を渡してきた。
画面の液晶の中では赤い点がひっきりなしに動いている。その点の上には番号が振られてあった。
( ´ー`) 「首輪探知機だよ。番号は出席番号だ。
普段からいらついていた奴を殺してもいいし、弟君と合流してもいい。それは君の自由だ。
――じゃあ、行ってらっしゃい。『マーダー』」
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 22:26:47.10 ID:2R0QGmtg0
- ( ´_ゝ`) 「……マーダー、ねえ」
殺人者。確かにそうかもしれない。自分は親友を手に掛けた。
しかし仕方がなかった。中嶋は、天秤の秤からこぼれおちた。
ただそれだけのことだ。運が悪かったのだ。自分の前に出てきてしまったから。
( ´_ゝ`) 「何と呼ばれようと、生きてここから出てやるさ
そのためには――あと、6人」
兄者は歩を進める。さらに、秤からこぼれおちたものを探すために。
あと、6人。
【No5 流石兄者 武器:M16A1(アサルトライフル)・ベレッタM92F(拳銃)・首輪探知機 現在位置:F-3】