第10章
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 20:59:24.86 ID:2R0QGmtg0
- 第10章 「友情」
(;^ω^) 「はぁ……ドクオ達はどこにいるんだお」
内藤(No21)は焦っていた。
毒田(No20)や長岡(No23)や津出(No17)となかなか合流できないでいるからだ。
てっきりゲートのところで待っていてくれていると思っていたのだが、それは見事に外れた。
そんなわけですでに影が長くなる時間まで市街地を探している。しかし一向に3人は見つからない。
( ^ω^) 「ドクオ―、ジョルジュー、ツンー。どこだおー」
そう言いながら道の中央を歩いていた。
そして小さな路地裏を横目に通り過ぎようとしたところ、強力な力で路地裏に引き込まれた。
(;^ω^) 「う、うわぁ!?」
もしや、『やる気』の人間――内藤は無警戒に歩いていた自分を責めた。
やられる。内藤は体のどこかに訪れるであろう衝撃に備え、目を閉じていた。
しかし一向に衝撃はやってこない。
( ^ω^) 「……?」
訝しげに思い、目を開ける。
目の前には探し求めていた人間の1人が存在した。
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:02:16.40 ID:2R0QGmtg0
- ('A`) 「お前……馬鹿か? 殺されるぞ」
( ^ω^) 「ドクオ……ドクオおおーん!!」
そう言って内藤は全力タックルでドクオに抱きついた。
細身のドクオは「うげ」だか「うぐ」だか声を出しながら内藤に押し倒される。
( ;ω;) 「おおーん!! 心細かったおー!!」
(;'A`) (やめろ! 静かにしろ!! 誰か来る!!!)
( ^ω^) 「!!」
ドクオは路地裏の大きなダストボックスに入った。
内藤もそれに続く。
2人では少々きついが、贅沢は言っていられない。
( ´_ゝ`) 「……」
路地裏を覗き込んでいるのは兄者(No5)だった。
内藤は少しほっとする。
- 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:05:06.84 ID:2R0QGmtg0
- ( ^ω^) (ドクオ、兄者なら安心だお。ここから出るお)
('A`) (やめろ)
(;^ω^) (おっ……?)
('A`) (兄者の手を見ろ)
言われたままに内藤は兄者の手に目を向ける。
兄者の手には何とも馴染まない、いかついアサルトライフルが握られていた。
( ^ω^) (……身を守るため、ってことも)
('A`) (そんなに出たいならここから1人で出ろ。俺と兄者、どちらを信用するか選べ)
(;^ω^) (そ、そんな言い方……)
そうこうしているうちに兄者は路地裏からどこかに歩いて行ってしまった。
遠く離れたと思われるところを見計らってダストボックスから出る。
( ^ω^) 「ドクオ……どういうことだお? 兄者と僕らは友達じゃないのかお」
('A`) 「……俺は、中嶋の死体を見た」
( ^ω^) 「!!」
- 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:08:15.37 ID:2R0QGmtg0
- ('A`) 「腹と頭に銃弾を食らっていて、顔を判別するのもやっとの状態だった」
( ^ω^) 「そんな……もうクラスメートが……」
内藤は頭を抱える。
そんな馬鹿な。いきなりどこともわからない島に連れてこられてどうぞ殺し合ってください。
そんなばかげた状況で本当に殺し合うものがいるなんて思ってもみなかった。
24時間で全員の首輪が爆発すると言っても、24時間以内にこのゲームを倒せばいい話じゃないか。
( ^ω^) 「でも、でもそれに兄者と何の関係が」
('A`) 「兄者だけじゃない、疑っているのは全員だ」
( ^ω^) 「!!」
('A`) 「……まあ、お前は違うだろうけどな。もしお前が中嶋をやったならすぐに俺も殺されるはずだ」
( ^ω^) 「僕は、誰も殺さないお……」
('A`) 「ああ、ああ。お前はれっきとした人間だ。俺もれっきとした人間だ。
でもな、ブーン。人を殺す鬼は確実に残り35人の中にいるんだ。
今まで付き合ってきた人間をいとも簡単に殺す鬼は絶対的に存在するんだ。
だから、安易に人を信じるのはやめろ。本当なら、俺を信じるのも危ない話なんだぜ」
( ^ω^) 「……僕らは、クラスメイトじゃないのかお」
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:11:16.17 ID:2R0QGmtg0
- 内藤はうなだれる。
もう、ゲームは始まっている。鴨志田の死体も、このゲームも、なにもかも遠い対岸の火事のように見えていた。
でも、違う。自分たちを飲み込む業火は、確実に自分たちの眼前に迫っている。
(;゚∀゚) 「……お前ら」
( ^ω^) 「! ジョルジュ! ジョルジュじゃないかお!」
内藤は今ドクオに言われた忠告も忘れ、突如として路地裏の入口に現われた長岡に近づこうとする。
彼の性格の良さは、まだ死の実感が明確に映らないうちは直りそうもない。
しかし。
(#゚∀゚) 「寄るんじゃねえ!! 寄るんじゃねえよ!!」
(;^ω^) 「!?」
(#゚∀゚) 「お、俺は信じない……信じないぞ。俺は見たんだ。中嶋がやられてるのを。
もう誰も信用できねえ……おいドクオ、てめえ拳銃持ってるじゃねえか。
それで中嶋を撃ったんじゃねえのか」
('A`) 「……」
- 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:14:18.77 ID:2R0QGmtg0
- そう言われて内藤はハッとする。確かにドクオは右手に拳銃をぶら下げている。
自分と会話しているときもその身から銃を放さなかったのか。
内藤は何とも言えない感情を覚える。
しかし今は長岡を落ち着かせるのが最優先だ。
(;^ω^) 「ジョルジュ、お、落ち着くんだお」
(#゚∀゚) 「黙れ。そうやって2人で獲物をしとめるのがお前らの作戦か?
結構な作戦じゃねえか」
(;^ω^) 「ジョルジュ!」
内藤は更に長岡に近寄ろうとする。
しかし長岡はそれを許さなかった。
(#゚∀゚) 「寄るんじゃねえって言ってるだろうが!!」
( ^ω^) 「!」
長岡は、支給品だろうか、警棒をやたらめったらに振り回す。
狙いも何もない振りだが、内藤を一歩引かせるには十分なものだった。 - 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:17:13.38 ID:2R0QGmtg0
- ( ^ω^) 「ジョルジュ……」
(#゚∀゚) 「言っただろ、俺は誰も信じないって」
( ^ω^) 「ジョルジュ、聞いて欲しいお」
(#゚∀゚) 「言っただろ、俺は誰も……」
( ^ω^) 「僕らは、このゲームを止めるつもりだお」
(#゚∀゚) 「……」
( ^ω^) 「中嶋がやられたのは本当に許せないことだお。
でも、それをやり返しちゃ、自分も鬼になってしまうお。
僕らが武器を向けるのは、クラスメートじゃなくて主催者だお」
(#゚∀゚) 「んなこと……できるわけねえだろうが」
( ^ω^) 「できるお。みんなを集めれば。
そして、平穏な、あの楽しい日常に戻るんだお」
(#゚∀゚) 「……」 - 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:20:00.38 ID:2R0QGmtg0
- ( ^ω^) 「ジョルジュがエロ本を持ってきて、僕らがそれを読む。
ツンがはずかしがって赤くなるのを僕らはからかうんだお。
怒ったツンは出玲さんに言いつけるんだお。
そして僕らはクラスの女子に総スカンをくらうんだお」
( ゚∀゚) 「……」
( ^ω^) 「戻るんだお。僕らは。あの、楽しい日常に。そのためには、ジョルジュ。
君が仲間にならないといけないんだお。友達を信じないなんて、言わないで欲しいお」
( ゚∀゚) 「内藤……俺……」
長岡はやや平常心を取り戻しつつある。
警棒も今は振り回す気はなさそうだ。
( ゚∀゚) 「俺……怖かったんだ。
中嶋の死体を見て、誰がやったんだろうって。だから、だから俺……」
長岡は地面に崩れ落ちる。
それは緊張感から解放された1人の人間の姿だった。 - 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:22:42.57 ID:2R0QGmtg0
- ( ^ω^) 「おっおっw 気にしなくていいおw」
( ゚∀゚) 「へへ……わりいな……腰が抜けちまったや……」
( ^ω^) 「まったくしょうがないジョルジュだおw ほら、手を握れお」
ジョルジュは、はにかみながら自分の手を取ろうとする。
よかった――これで、3人が揃った。
手と手が触れ合おうとする。――その時。
大きな――乾いた音。
一発の銃声が、響いた。 - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:25:46.43 ID:2R0QGmtg0
- (;゚∀゚) 「ひっ……!! や、やっぱり……やっぱり……。
俺をはめるつもりだったんだな……」
(;^ω^) 「ち、違うお!! ジョルジュ!!
お前、何やってんだお!!
――ドクオ!!!!」
('A`) 「……威嚇射撃だよ。当てるつもりなんて、ないさ」
(#゚∀゚) 「ち、ちくしょう!! ちくしょうちくしょうちくしょう!!!
今度会うときは殺してやる!! 絶対に絶対に殺してやるんだ!!」
そう言って長岡は西へ向けて走り去ってしまった。
足が速い長岡は、既にもう遠くへ行き、追いつけない。
(#^ω^) 「ドクオ!! なんで……なんであんなことを!!」
('A`) 「分かれ、ブーン。あいつを連れたら、足手まといになる」
(#^ω^) 「足手まとい……? 友達を、足手まとい扱いかお!!??」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/24(土) 21:28:34.15 ID:2R0QGmtg0
- ('A`) 「そうだ。あいつは、よく知った俺らでもあんなに怯えていた。
俺ら以外の……『やる気』の奴らに出会えばどうなるかわかったもんじゃない。
下手したら、3人一気に殺される可能性だってあるんだ」
(#^ω^) 「それでも……そんなの……」
('A`) 「ブーン。これは、そういうゲームなんだ。
大体、お前が言ってた主催者って誰だ? 阿部か?
そんなわけない。一介の校長が島を用意して、武器を用意して、賞金を用意する。
そんなことできるわけない。もっと大きいものがこのゲームの裏にいるんだ。
……お前、それを相手にできるのか?」
( ω ) 「う……うう……」
現実を目の当たりにする。
吐き気がする。自分の首にある首輪の冷たさだけがやけにリアルだ。
業火は、自分たちの眼前にあるどころではなかった。
業火は、既に自分たちの体を焼き始めているのだ。
【No20 毒田 武器:トカレフTT33(拳銃) 現在位置:F-2】
【No21 内藤 武器:??? 現在位置:F-2】
【No23 長岡 武器:警棒 現在位置:E-2】