間奏 序曲
18 :Classical名無しさん :09/02/09 13:47 ID:uAaCj1/g
間奏
 
   
    
序曲
 
 
 
ツンとした、あの何とも言えぬ鼻を刺激する仄かな消毒液の匂いが漂ってきた。
カツカツカツと通路に無機質な靴音が鳴り響く。
緑色のランプが点滅する、長く続く薄暗い通路の中を彼は歩いていた。
ボサボサの栗色の髪型に、少々汚れてはいるが白衣を隙なく身に纏った彼は、薄いファイルをわきにはさんでいた。
明かりが少なく暗いため、よく見えないが、黒い字で控えめにこう書かれていた『AIKA』と。
彼はあくびとともに伸びをした。
 
( ^ω^)「ふあぁぁっ……」
 
眠い。とにかく眠い。
最近、あまりにも忙しすぎたため、ろくに睡眠もとれていない。
押し寄せる眠気の波を気力でねじ伏せ、ふと思った。……最後に寝たんいつやろ?
思い出しそうで思い出せない。思い出すために頭をかくと妙齢の男にあるまじき、それなりの量のふけがでてきた。汚い。
彼が覚えているかぎりでは最後に風呂に入ったのは3日前。その前は2日、そしてその前は──
 
( ^ω^)「止めとこ。んなことどぉでもえーお」
 
彼はクリアファイルを開いた。それを見るために下を向くとセルフレームのメガネがずれ落ちる。サイズが合っていないのだろう。
19 :Classical名無しさん :09/02/09 13:49 ID:uAaCj1/g
はたまた、わざとサイズを合わせていないのか。
彼は歩きながら、小脇にはさんでいたファイルを広げ、ペラペラとページをめくっていく。
開けど開けど、そこにはアルファベットなどの文字や複雑な記号が無造作に──無造作と間違えってしまうような並べられかたをしていた。
このファイルを一般人が見たら確実に首を傾げることだろう。何を書いているのか意味がわからない、と。しかし、彼らにはこれで十分だ。
暗くてもしっかり見えているらしく、彼はあるページを開くと立ち止まり、ふむっと考えこむ。
それから約5分間が過ぎた。顔を上げると、おもむろに彼は肩を回した。肩から景気のよい音が鳴る。音が鳴りすぎて腕が折れそうだ。
ファイルから目を離してまた歩き始める。しばらく歩いていくと鉄製の頑丈そうで大きな扉が見えてきた。余談だが、この扉は対爆装備のため、ちょっとやそっとの攻撃では破ることは不可能である。
彼は懐から一枚のグレーのカードを取り出した。何も書いていない、のっぺらなカードだ。それを扉のそばに設置されてあるカードリーダーに通した。
すると、軽いブザー音とともに左右に扉が開く。
20 :Classical名無しさん :09/02/09 13:56 ID:uAaCj1/g
扉の奧には光を灯した何台ものパソコンと数人の研究者風の人たち。男や女関係なしに忙しそうに動きまわっていた。
彼はパソコンの画面を見ながら尋ねた。
 
( ^ω^)「状況はどないなっとるお?」
一番近くにいた研究者風の男が彼の方を向き、手元の資料をめくっていく。
 
(・(エ)・)「システム完成率は約8割程度です。しかし、『こっち』よりも『あっち』のほうが捗ってないらしいです」
 
男は資料をその場に置くと、走るように違う机へと向かった。何個もの仕事を1人で掛け持ちしているらしい。ここの部署は人手があまり足りていないようだ。
 
( ^ω^)「ったく、早よう完全させやんなアカンつってんお。どうなっても知らんお」
 
ため息とも諦めともつかない疲れの混じった声音でつぶやいた。
 
( ^ω^)「『あっち』は『あっち』『こっち』は『こっち』や。さっさとやってさっさと終わらせるお!」
 
研究者風の人たちは疲れきった声で
 
「お―……」
 
と小さく手を上げた。
 
 
   to be contined…
21 :Classical名無しさん :09/02/09 13:57 ID:uAaCj1/g
今日の投下は以上です
ありがとうございました
22 : ◆eLLY9b45z. :09/02/09 14:36 ID:uAaCj1/g
酉つけときます
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