つづき
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 16:45:02.45 ID:8wFe3ne3O
――――そんでもって楽しい楽しい放課後。
無事にテストを乗り切り(裏技使用)、カバンを肩に引っかけながら文芸棟へと歩いていた。その横にはツーがまとわりついている。
VIP高校はまぁまぁな規模を誇り、敷地面積も他の学校に比べると広かった。そんなVIP高校の文芸棟は東校門(正門の次に大きい)に一番近い場所に位置している。この文芸棟からなら、東校門を一望することも可能だ。まぁそんなことをするバカはいないが。
 
(*゚∀゚)「やっぱりでーちゃんはエラいよね―。だって勉強してなくても小テストに合格するんだもん」
 
ζ(゚ー゚*ζ「まぁあれくらいなら大丈夫よ。時間が足りないけど」
 
ツーの歩みが止まった。そして怪しく目を光らせて含み笑いをする。
なんだか怖くなる。
 
ζ(゚ー゚;ζ「ど、どうかしたの?」
 
(*゚∀゚)「んふっふっふっ、あんなテストに時間が足りないって言うなんてお主もまだまだだのぅ」 
ζ(゚ー゚;ζ「さっきと言ってること正反対なんだけど……それに口調がおかしくなってるような……」
 
(*゚∀゚)つ〆「あたしにはこのペンがある限り時間なんて気にしなくていいのだー!」
 
ζ(゚ー゚*ζ「うわ、聞いてねぇよ」
 

4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 16:46:45.04 ID:8wFe3ne3O
あっさりとデレの言葉をスルーするとカバンをガサゴソとあさりだす。しかし、目的の物が見つからないのか、ちょっぴり必死の表情。
 
(*゚∀゚)「あ・あったあった。じゃじゃーん!」
 
といったひと昔前の効果音とともに見せた物は、 
ζ(゚ー゚*ζ「すごく……………赤いシャーペンです」
 
上から下まで真っ赤なシャーペンだった。真っ赤なだけでこれといって全く普通だ。ツーは不敵に笑う。
 
(*゚∀゚)つ〆「ふっ、これさえあれば通常の3倍のスピードで字が書けるんだよ」

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 16:49:18.41 ID:8wFe3ne3O
ポカーンとした顔でデレは無意味にシャーペンをつきつけるツーを眺めた。
呆れはてたように大きなため息を1つ漏らすと、 
ζ(゚Д゚*ζ「マジでっ!?」
 
案外ノリがよかった。
 
ζ(゚ー゚;ζ「くっ、3倍かぁ……赤けりゃ3倍の性能になるのね……」
 
あれ? 本気で信じてません?
ツーはチッチッチッと指を振るうと、
 
(*゚∀゚)「でーちゃんには使いこなせんよ。なぜなら──」
 
とここで一拍開けて、
 
(*゚∀゚)+「坊やだからさ」
 
ζ(゚ー゚*ζ「いや、あたし女だよ」
 
冷静なツッコミが返ってきた。ツーは赤いシャーペンをカバンに戻すと、 
(*゚∀゚)「さぁ、早く行きましょう!」
 
何食わぬ顔で歩き始めた。

6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 16:53:11.25 ID:8wFe3ne3O
しばらく歩いた彼女たちの目の前に、とある部活の部室があった。デレとツーはノックもなしに安っぽい造りの扉を開けた。
 
ζ(゚ー゚*ζ(*゚∀゚)「失礼しまー……」
 
言葉が途切れる。
彼女の目線の先には女子高生がいた。それも黒光りする拳銃を扉に向けて構えた女子高生が。
静寂が部室を支配した。
拳銃を構えた女子高生もデレもツーも一切口を開けようとしない。そよ風が入ってきた。部室の窓が1枚大きく開け放たれており、カーテンがゆらゆらとはためいている。
デレは一歩踏み出すと開口した。
 
ζ(゚ー゚;ζ「何やってるんですか、ペニサス先輩?」
 
デレが困惑した表情で尋ねた。
 
('、`*川「いや、できたら扉しめてくれない? そこに的があるから」
 
ボーイッシュな黒いショートヘアにセルフレームのメガネ。スラリとした長身でスタイルは高校生とは思えない。

7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 16:55:31.31 ID:8wFe3ne3O
太陽とは反対のまるで月のよう。そんな妖艶な美しさを漂わしているおっとりとした完璧お姉さん。ペニサス伊藤は拳銃を構えたままデレに言った。
振り返ると薄っぺらいエアーガン用の的があった。
 
ζ(゚ー゚;ζ「あのですね先輩。それでこの的は止めたほうが……」
 
('、`*川「エアーガンなんだから大丈夫よ」
 
と言い終わないうちに引き金をひいた。パスッという音と何かがめり込む音が鳴った。
 
('、`*川「あら、簡単に貫通してるわ」
 
ζ(゚ー゚;ζ「だってあたしが改造したんですから、そのエアーガン」
 
デレが申し訳なさそうに改造エアーガンを指差した。
 
('、`*川「え、そうなの? 早めに言ってくれればよかったのに」
 
ζ(゚ー゚*ζ「気づくなり言ったんですけど……」 
どうやらデレの声は聞こえてないらしく、ペニサス先輩は普通の教室と変わらない広さの部室にある大きな両扉のタンスを開けた。
その中には大小様々なエアーガンやガス銃が綺麗に整頓されていた。

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 16:57:32.60 ID:8wFe3ne3O
扉に書かれたネームプレートには達筆な字でこう書かれていた。
 
『エアーガン同好会』
 
ありえねーよ。
デレは近くの机にカバンを置くと、
 
ζ(゚ー゚*ζ「ペニサス先輩、あんまり強力なのは室内で使わないほうがいいですよ。今のエアーガンなんて空き缶に穴があくくらいなんですから」 
シャレになってない威力だ。
デレの趣味は困ったことにエアーガンやガス銃の改造と分解なのだ。どこのガンマニアなんだよ!と言いたいが、決定的にガンマニアと違うところがある。
ガンマニアは銃が好きな人のことを言う。しかし、デレは銃が好きなのではない。改造と分解が好きなだけなのだ。ガンマニアはペニサス先輩だが。
 
('、`;川「そんなもんを机の上に置いとかないでよ。先生に見つかったらどうするつもりだったの?」

9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 16:59:35.98 ID:8wFe3ne3O
(*゚∀゚)∩「ペニサス先輩がやりましたって言いま―す」
 
ツーが挙手しながら声高らかに言った。ピクッと青スジが浮き出るペニサス先輩。
 
('、`*川「ふっ、元生徒会長がこんなことするなんて普通は誰も信じないわよ」
 
(*゚∀゚)「普通の元生徒会長なら通用しますが―……ペニサス先輩は……」
 
心底哀れんだ表情でペニサス先輩を見るツー。
 
('、`*川「わかったわ。そんなに言うなら私の誠意のこもった説得を体で教えてやるわ」

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 17:02:47.97 ID:8wFe3ne3O
と言って近接戦──いやいや、説得力増加用の釘バットをつかむペニサス先輩。その姿はまるで修羅である。
その姿からどうすれば誠意のこもった説得などという代物が連想できようか。完全にかけ離れている。
 
(;゚∀゚)「す、すいません」
 
即座に頭を下げるツー。
2人の妙な寸劇を見ながらデレは黙々とエアーガンの分解をするのだった。
 
 
 
 
 

――
―――
 
ここまでは普通の日常だった。
いや、その、普通の常人にしたら普通でもないが、デレたちにしてみれば普通の日常だった。
だが、それも今日までだった…… 
 
 
―――
――

 

11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 17:05:20.56 ID:8wFe3ne3O
ツーとペニサス先輩がオセロで白熱した一進一退の攻防を続け、デレがエアーガンの整備をしていたとき。
 
(*゚∀゚)「そういえばさぁ、日本で一番大きな川ってどこなのかなぁ?」
 
ツーはそう訊きながら、オセロのコマで縦に並んでいた白を数個黒に変えた。整備する手をとめて、ちょっと考えてみる。 
ζ(゚ー゚*ζ「そーいえばあんまりそーゆーこと考えたことないよねぇ。どれだろ?」
 
デレは首を傾げると、また整備し始めた。油を入れてツヤを出すために表面を布でキュッキュッと拭く。
 
(*゚∀゚)「ペニサス先輩知ってます?」
 
ツーが盤から目を離さずに口だけで尋ねた。

12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 17:10:30.59 ID:8wFe3ne3O
('、`*川「あんたたち……地理ちゃんと勉強してるのか? 昔のゆとり教育じゃあるまいし」
 
大量に黒を取ると見せかけて、かねてから張っていた罠にツーをかけた。左上の隅に白が置かれた。ツーは軽く舌打ちする。
ペニサス先輩は嘆かわしい瞳をデレに向けて、ため息混じりで言った。
 
('、`*川「ったく、いくら日本の国土が広大でも──世界一巨大な国だとしてもそれくらい知っときなさいよ」
 
『日本』
それは単なる略称にしかすぎない。
正式名称は大日本帝国。
2083年現在、世界の1/4を統治する世界最大の国家であり、その国土は北米大陸と東アジアとアフリカの1部にも及ぶ。
帝国とはいいながらも、それは建て前だけで、天皇陛下──象徴的な皇帝がいるから国名に帝国という名称がついているのだ。実際は民主主義の国家で、参議院衆議院による二院制を用いている。 
国家が巨大になるにつれ、比例するように軍事力も世界最大になり、反抗勢力はとうの昔に殲滅させられた。首都は『東京』でデレやツーたちが住んでいるのも首都『東京』だ。正式名称は第2東京だが。
よって、その巨大さ故にデレたちは日本一の川が解らないのである。
 
ζ(゚ー゚*ζ「なるほど、その川が一番大きいんですね」
 
本体を重ね、ネジを締めて整備終了だ。

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 17:14:43.53 ID:8wFe3ne3O
('、`*川「そんなこと常識よ常識。あんたたちなんてまだまだだわ」
 
勢いに乗ったペニサス先輩はさらに隅を奪う。盤の上は白黒6:4の割合+隅2つ落ちでツーが劣勢であった。
 
ζ(゚ー゚*ζ〜「さて、トカレフの改造でもしよっかなぁ」
 
と、デレが立ち上がったそのとき、窓ガラスがトントントンと音を奏でた。とっさに固まるデレ。
 
  
 、、、、
今、窓が外側から叩かれたのだ。
デレは無言のまま、カーテンを思いっきり開けた。するとクーが逆さを向きながら吊らされるようにぶら下がっていた。
 
ζ(゚Д゚;ζ「うぬわっ!?」
 
思わずデレが背泳ぎの選手顔負けのスピードでイスから飛び退いた。
それもそうだろう。なんたってここは地上から3階の高さなのだ。そんなところで窓を叩かれたら誰だってビビる。ビビった後にひく。
 
ζ(゚ー゚*ζ「ちょっとクー! いつから覗いてた!?」
 
川 ゚ -゚)「いや、覗いてないから覗いてないから。てか、なんで窓から入ってきたの? とかはないんだ」
 
窓のサッシに腰掛けながらクーはつまんなさそうに口をすぼめた。
 
ζ(゚ー゚*ζ「あんたは日に日に野生化するからな、ちょっとやそっとのことじゃ驚いてられないし」
 
がっくしと肩を落とすクー。


14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/02/15(日) 17:19:57.83 ID:8wFe3ne3O
地味に落ち込むクーを後目にデレはトカレフをタンス(武器庫)から取り出した。
ペニサス先輩たちも奇抜な登場をしたクーには気づいているのだが、オセロが忙しくてクーにかまえない。
ζ(゚ー゚*ζ「窓からやってくるなんてどうかしたの? やっぱり覗きの帰り?」
 
川 ゚ -゚)「だから覗きから離れてって。ちょっとニュースを伝えようかなぁって」 
 
ζ(゚ー゚*ζ「ニュース?」
 
川 ゚ -゚)「うん。東校門から不審者が入ってきて、先生となんか言い争ってるんさ」
 
いやいやいやいや、そんな笑顔でサラッと話すことじゃないでしょーが!
心の中でツッコミを入れるとカーテンを開いて東校門を見下ろした。
ペニサス先輩やツーもオセロを止めて窓に駆け寄る。
確かに──いた。
教師に行く手を阻まれるようにして、1人の男が悠然と立っていた。
  
    to be contined…

15 : ◆eLLY9b45z. :2009/02/15(日) 17:22:17.23 ID:8wFe3ne3O
投下は以上ですありがとうございました
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