1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 18:10:42.30 ID:K9YpZPzK0
-
ξ;゚听)ξ「……リンク……解除」
自分とシンクロしたジョルジュの脳が、オーバーロードした。
ツン自身も、まさか人間の脳にこれ程の負荷がかかるとは思ってもみなかったのだ。
思い返してみれば、先程のシャワー室での出来事もそうだった。
自分の観測力をプラスしていたとはいえ、人間の視覚が物質を透過した。
あれは通常では起こり得ないことだった。
ξ゚听)ξ「ジョルジュ……あんた一体……」
オートパイロットに切り替えられた機体の中。
ツンは誰にも聞こえない声を呟いた。
( ゚∀゚)ジョルジュはξ゚听)ξツンとエースになるようです
【第三話】
――開始。
- 3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 18:13:26.19 ID:K9YpZPzK0
- 【第三話:星座】
――第四演習場――
それは、ジョルジュとツンがシンクロ状態に入ったときのことだ。
一瞬とはいえ完全に同調した一人と一機のポテンシャルは、凄まじいものがあった。
そしてそのポテンシャルを目撃した者の一人が、ハインだった。
从;゚∀从「いやー、寝坊しちまったよ、すまんしぃ」
(;゚ー゚)「……」
从 ゚∀从「しぃ?」
おかしいな。
いつものしぃなら自分が寝坊などすれば口うるさく言ってくるのに。
とハインは疑問に思い、しぃの視線の先を見る。
从;゚∀从「!?」
その先は、空だ。
一機の黄色の機体が飛ぶ、朝焼けの空。
その空をただ一直線に飛んでいるだけの機体だが、異変が起きていた。
白雲を纏っているのだ。
从;゚∀从「あれって、ブーン=ホライゾンの……」
適正試験で見せた、一定の速度維持。
- 4 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 18:16:04.78 ID:K9YpZPzK0
- / ,' 3「ほっほ。まったく、負けず嫌いな奴じゃのぅ」
言うのは、アラマキだ。
腰が曲がり始めた老人であるが、空を仰ぐその姿には、そこらの若者以上の熱意が感じられる。
/ ,' 3「あれが、ツンの力じゃよ」
从 ゚∀从「ツンの……」
/ ,' 3「驚いたじゃろう?」
从 ゚∀从「……はい」
ジョルジュの実力は、はっきり言ってブーンには程遠いものがあった。
それが今では、勝るとも劣らない程である、と思えた。
適正試験を自分の眼で見ていたハインだからこそ、驚きも大きかった。
そこで、突然鳴り響いたアラート。
悠然と飛行しているはずの黄色から発せられた、異常な信号。
- 6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 18:19:50.63 ID:K9YpZPzK0
- (;゚ー゚)「!? ジョルジュ君の意識が消失!?」
/ ;,' 3「何!?」
从;゚∀从「マジかよ……」
ただ飛行していただけのジョルジュが意識を失った。
先のようなポテンシャルを知っただけに、予想外だ。
/ ,' 3「なんてことだ……」
アラマキは、自分の開発した技術が裏目に出てしまったことに、動揺していた。
搭乗者第一、安全を極限まで追求した開発を繰り返してきたと自負しているのに、この結果である。
ツンとターミナルも、どんなイレギュラーなトラブルにも対応できるように、という思いで開発したのだ。
/ ,' 3「……とにかく、オートパイロットに切り替えを……」
(;゚ー゚)「……わかりました」
落胆するアラマキ。
- 7 名前: ◆080mxUe5zE :2009/01/12(月) 18:22:10.72 ID:K9YpZPzK0
- そんな彼の様子を眼に収めながらも、ハインは思い出していた。
思い出す先は、幼い頃の記憶だ。
从 ゚∀从(あの飛行……どっかで……)
視線の先を変える。
オートパイロットのまま着陸した黄色の機体を眺める。
気絶したジョルジュの姿と、それを見守るツンの姿。
(;゚ー゚)「ハイン! ジョルジュ君を運ぶの手伝って!」
ジョルジュの状態を確認し、医務室に運ぶ、と叫ぶしぃ。
从 ゚∀从(まぁ、いつかわかんだろ)
と、ハインは半ば諦め気味に思考を停止。
朝日を背に、ジョルジュの身体を抱えた。
- 9 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 18:24:33.78 ID:K9YpZPzK0
- ――大ホール――
(*゚ー゚)『それではこれより、入学式を始めます』
('A`)(あーあ、始まっちまったよ入学式)
ジョルジュが意識を失ってから、しばらくの時間が経っていた。
上級生たちとは違い、落ち着きを隠せない一年生たちのざわめきが、ホール内に響く。
('A`)(結局、ジョルジュは間に合わなかったみたいだな)
ドクオが考えるのは、ジョルジュの置手紙のことだ。
ヤボ用で出かける、と簡潔かつ端的に残された手紙が、彼を思考に走らせる。
('A`)(ヤボ用ってなんだよ……女か?
いやそりゃねーな、だってジョルジュだし)
- 10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 18:27:10.57 ID:K9YpZPzK0
- (´・ω・`)「ねぇったら、ドクオ」
('A`)「んあ?」
(´・ω・`)「僕の話、聞いてた?」
('A`;)「あ、わり」
(´・ω・`)「もう、ちゃんと聞いててよ」
('A`)「わりぃって」
(´・ω・`)「カードに届いてた通達、読んだ?」
('A`)「そんなんあったのか?」
カードに届く通達とは、VIP学園から生徒への連絡メールのことである。
日程の連絡が主であり、緊急時の連絡などでも用いられることがあった。
(´・ω・`)「やっぱり読んでなかったか」
('A`)「てかまず俺のカードは通信機能無いからな」
(´・ω・`)「まったく、なんのためのカードなんだか」
通信機として優秀な機能を有するカード。
それは生徒が個別で購入した製品であり、様々な種類が存在した。
- 17 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 18:57:29.25 ID:lNJqSZV00
- ('A`)「まぁ俺に連絡とってくるような奴いねーし」
(´・ω・`)「だろうね」
('A`)「……で、なんだったんだ? 通達とやらは」
(´・ω・`)「この入学式が終わったあと、"新チーム"のメンバーが発表されるんだって」
('A`)「あー、今日なんか」
(´・ω・`)「うん。楽しみだね」
('A`)「ああ」
新チーム。
それは二年生を含めて現行のチームを再編成することで生まれるものだ。
同じ学年同士で組むのが普通であり、そのまま四年間を共にすることになる。
('A`)「早く"実技演習"したいなー」
(´・ω・`)「絶対足引っ張るんだろうな……」
('A`)「そんな心配すんなよ、お前だって長距離の射撃はそんなに悪くないだろ?」
(´・ω・`)「逆を言えば、それしか能が無いってことだけどね」
('A`)「バカ、それだけありゃ十分だろ。チーム戦なんだからよ」
(´・ω・`)「……うん」
- 18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 18:59:56.64 ID:lNJqSZV00
- (*゚ー゚)『新入生代表、挨拶』
ノパ听)『……』
('A`)「お、始まったな」
(´・ω・`)「毎年恒例の、だね」
新入生の代表。
それはVIP学園の入学試験で最も優秀な成績を納めた者が行うものだ。
('A`)「去年はブーンだったけど、今年は……」
(´・ω・`)「女の子……?」
舞台上に立つのは、長く赤い髪が特徴的な女の子だ。
一般的に操縦技能では女子の平均より男子の平均の方が優れているものである。
周囲も驚いているのか、ざわめき始めていた。
ノパ听)『……』
('A`)「さて、どんな挨拶かな」
- 19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:02:12.03 ID:lNJqSZV00
- ノハ#゚听)『…… お お お お ! 』
(;´・ω・`)「!?」
ノハ#゚听)『こ、こここ今年入学したヒートですッ!
あ、あの、その……好きな食べ物はリンゴで……!』
('A`;)「あがってんなぁ」
何故か自己紹介を始めるヒートと名乗った新入生。
大勢の前に出た緊張からか、明らかに固くなっていた。
ノハ;゚听)『がががが、頑張りますッ!!』
(;゚ー゚)『あ、待ちなさい!』
最後に意気込みを語ったヒートは、ダッシュで舞台から去って行った。
(;゚ー゚)『えと……これで新入生挨拶を終わります……』
('A`;)「なんじゃそりゃ」
入学式は終始微妙な雰囲気のまま、幕が降りた。
- 20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:04:24.46 ID:lNJqSZV00
- ――大ホール前の通路――
ブーン、キュー、トソンの、仲の良い三人が並ぶ。
場所は入学式が行われた大ホール前の通路である。
入学式も終わり、流れる人波がうっとうしい、というトソンの意見で三人は時間を潰していた。
( ^ω^)「おっ、メールかお?」
o川*゚ー゚)o「あ、私もだ」
(゚、゚トソン「あたしも……ってことは通達だね」
カードが振動したことでメールの受信に気づいたブーン。
マナーモードの設定であるが、ブーンにつられて受信に気づいたキュー。
そしてそれが通達であると気づいたトソン。
( ^ω^)「新チームの発表だお!」
o川;゚ー゚)o「うう、緊張する……」
ブーンは文面を読み、そして添付ファイルを指定した。
ファイルの内容は新チームの一覧表である、と文面に表示されている。
- 21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:06:51.54 ID:lNJqSZV00
- 興味が沸き、それを開こうとするブーンを、トソンがとめた。
( ^ω^)「お?」
(゚、゚トソン「せーので開こ?」
( ^ω^)「おー、わかったお」
(゚、゚トソン「じゃあ、せーの!」
合図と同時、三人はファイルを展開した。
掌より小さなカードの画面いっぱいに表示される数多くのチーム。
自分の所属することになるチームには、赤のアンダーライン。
( ^ω^)「僕はアップル社のBチームだお」
o川*゚ー゚)o「あっ! 一緒だ!」
( ^ω^)「おっおっ! やったお!」
(゚、゚トソン「あたしは火狐のAチームか、残念」
(; ^ω^)「……お」
o川;゚ー゚)o「……」
(゚、゚トソン「ん?」
トソンはカードの画面から眼を離し、ブーンとトソンの顔を見た。
二人ともどう対応すればよいのか、という風だ。
- 23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:09:27.65 ID:lNJqSZV00
- (゚、゚トソン「チームくらい、どこでも一緒だよ。
会おうと思えばいつでも会えるんだし」
(; ^ω^)「おー」
o川;゚ー゚)o「そう、だよね」
(゚、゚トソン「うん。別々なのはちょっと寂しいけど、いい経験だし」
o川*゚ー゚)o「じゃあ敵同士になっても、お互い頑張ろうね!」
( ^ω^)「おっ! 例えトソンが相手でも手加減しないお!」
(゚、゚トソン「当たり前だって」
o川*゚ー゚)o「ふふ」
(゚、゚トソン「各チームは指定の集合場所へ、って書いてあるね」
o川*゚ー゚)o「じゃあ行こう! ブーン君!」
( ^ω^)「おっおっ、引っ張るなおキュー」
(゚、゚トソン「……」
キューに手を引かれて行くブーンを、トソンは見送る。
心にぽっかりと穴が開く、とはこのことだろうか。
- 24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:09:58.19 ID:lNJqSZV00
- 入学したときからブーンとキューとの三人で過ごしてきた。
妙に気が合うのは、何故だったのだろうか。
思い返せど、答えなど見つからない。
(゚、゚トソン「残念だね」
呟きは、喧騒に消えた。
- 26 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:12:06.29 ID:lNJqSZV00
- ――火狐社専用ミーティングルーム――
(゚、゚トソン「ここか」
VIP学園内の火狐社専用ミーティングルーム。
トソンはその扉の前に立っている。
(゚、゚トソン(カード認証がいるのか……)
扉の脇にある読み取り機に、トソンはカードをかざす。
赤色に発光していた小さな画面の色が緑色に変わり、ロックが外れた。
開いた扉の先には、二人。
/ ,' 3「お、トソン=エーサかね?」
言葉の主は、老人。
あまり広くない部屋の最奥に設置されたモニターの前に立つ者だ。
肯定の意思を示すと、席に着くように促されたトソン。
(゚、゚トソン「ん?」
('A`*)「……よ、よろしくな」
隣には、何故か頬を染めているドクオ。
(゚、゚トソン「うん。よろしく」
笑顔で言われた言葉に、トソンは短く返した。
- 27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:14:59.54 ID:lNJqSZV00
- / ,' 3「ふむ、それじゃ始めようか」
('A`)「あれ? ジョルジュはどうしたんすか?」
/ ,' 3「彼はちょっとヤボ用でな、遅れるそうじゃ」
('A`*)(てことはトソンと仲良くなるチャンス!)
無駄な思考に走るドクオを他所に、説明が始まった。
/ ,' 3「もうわかってると思うが、火狐Aチームのメンバーは、
ジョルジュ君、ドクオ君、トソンちゃんの三人じゃ」
('A`*)(フラグキタ――!)
/ ,' 3「新設企業の火狐のチームはこのAチームのみなので、
全力でバックアップさせてもらうつもりじゃ」
(゚、゚トソン「……」
('A`;)(笑わないな……トソン)
/ ,' 3「まぁまずはチーム名を決めようか」
チーム名。
それはAチームなどの事務的なものでは無く、所属する生徒が自由に決められる名前だ。
過去にはタイタンズ、ジャイアンツなどの有名チームの他、現在も無数のチーム名が存在している。
- 28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:17:28.12 ID:lNJqSZV00
- / ,' 3「二人の意見はあるかね?
なんならワシが決めてもいいが」
(゚、゚トソン「うーん……どうする? ドクオ君」
('A`*)「え? そ、そうだな……フライヤーズってのは?」
(゚、゚トソン「広告?」
('A`*)「ち、違うって……」
/ ,' 3「"空を飛ぶ者たち"、か?」
('A`)「それっす」
/ ,' 3(温度差を感じる……)
(゚、゚トソン「んー、あたしはRタイプだけど、それでいいかな」
/ ,' 3「フライヤーズで決定でいいか?」
('A`)「チームフライヤーズ! 結成ー!!」
/ ,' 3「おい、それはワシの役目じゃドクオ」
(゚、゚トソン「ふふ」
('∀`*)(笑った……)
- 29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:19:34.55 ID:lNJqSZV00
- / ,' 3「ともあれ、名前も決まったことじゃしな、販売庫へ行くかの」
(゚、゚トソン「実機の購入、ですか?」
/ ,' 3「その通り、今日中に調整を済ませないと、明日はいきなり演習があるからの」
('A`)「初演習……」
/ ,' 3「対戦相手は恐らく同じ二年生のチームだろうな」
(゚、゚トソン「楽しみですね」
/ ,' 3「ああ、初戦初勝利を期待してるよ」
('A`)「任せてくださいっす」
/ ,' 3「それじゃ、行くかの」
ミーティングルームを、アラマキを先頭にして退室する。
目指す先は、販売庫だ。
大半の生徒が使用している機体はそこで購入した物であり、
代金はカードに貯めたポイントによって支払われる。
実機を購入するような大量のポイントを消費するのが初めてなドクオとトソン。
興奮と不安が入り混じった心情のまま、販売庫へ進んだ。
- 30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:21:45.24 ID:lNJqSZV00
- ('A`)「はー、色々あるっすね」
販売庫に着いた、第一声だ。
人数が少ないドクオたちのチームが一番だったようで、妙に昂ぶった。
実機のカタログを表示するモニターを眺め、ドクオとトソンはあれこれ思案する。
/ ,' 3「一年間我慢してきた君たちのポイントなら、選り取り見取りじゃろ?」
(゚、゚トソン「迷いますね……」
/ ,' 3「じっくり選ぶといいの」
アラマキは思う。
長い間に積み重ねたものを一気に消費する機会、というものに対してだ。
シミュレーターの課題をこなしたときなどに支給されるポイント。
それを食事など以外には使わずに一年間を過ごしてきたのが、二年生だ。
積み重ねてきたモノを崩す、ということはつまり、
/ ,' 3(そこで始まりか、終わりか、のどちらかじゃの)
大多数の生徒は、始まりだ、と言うだろう。
だが、そこで満足してしまう生徒も、稀に存在する。
/ ,' 3(上手く、導かんとな) - 32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:24:19.77 ID:lNJqSZV00
- アラマキの眼前。
('A`)「これなんかどうかな」
(゚、゚トソン「うーん……でもやっぱり速度面での不安が……」
('A`)「だったらこれは?」
(゚、゚トソン「あ、イメージ通りかも」
二人の生徒が目の前で思案している様子。
/ ,' 3「ほっほ」
孫ができたかのように思えた。
自分の叶えられなかった夢、願いが、そこに詰まっているように感じた。
- 34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:27:26.00 ID:lNJqSZV00
- ――医務室――
(これは……まさか……)
医務室でジョルジュと一緒にいた。
脳に負担を掛けないようにリンクを最小限に止めてだ。
そんなツンに、嫌な予感が過ぎった。
「やっと起きたわね、バカ」
( ‐∀゚)「あれ?」
白。
視界に入ってくる色が、だ。
どこだ、と思う感情が生まれ、起き上がる。
同時に頭が重くなり、視界が僅かに暗くなる。
(; ゚∀゚)「ッ……」
「まだ起き上がらないで」
( ゚∀゚)「俺は……何してたんだ? てかまず俺誰だ?」
(やっぱりね……)
リンクしていれば、なんとなく伝わってきたことだった。
オーバーロードのショックで、ジョルジュの記憶が失われた、ということが。
- 35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:29:26.31 ID:lNJqSZV00
- ( ゚∀゚)「ああくそ、思いだせない……」
「無理に思い出そうとしないで、落ち着いてゆっくりでいいわ」
ジョルジュが落ち着くのを待って、リンクを再開した。
ξ゚听)ξ「とりあえず、名前は思い出せる?」
(; ゚∀゚)「うわぁ!」
ξ゚听)ξ「何ビビってんのよ」
(; ゚∀゚)「だ、だっていきなり女の子が……」
ξ゚听)ξ「……まぁ良いわ。それより自分の名前はわかる?」
(; ゚∀゚)「えと……ジョルジュ……かな?」
ξ゚听)ξ「そうよ、あんたはジョルジュ。あたしはツン。
そしてここは清潔な医務室。
それじゃあ出かけましょ」
(; ゚∀゚)「ど、どこに?」
ξ゚听)ξ「あんたの仲間の所へよ」
リンクシステムの性質なども考慮し、判断する。
結果は、一時的な記憶の欠落である、というものだ。
ならば、無駄な時間を過ごす必要など無い。
- 36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:31:23.24 ID:lNJqSZV00
- ξ゚听)ξ(ほっとけば思い出すでしょ)
記憶喪失になった旨などを伝えると、ジョルジュはあっさり納得したようだった。
( ゚∀゚)「よ、と」
起き上がったジョルジュに、促すように言う。
ξ゚听)ξ「そこの扉から外へ出て」
( ゚∀゚)「……開かんぞ?」
扉の前で立ちつくすジョルジュ。
ξ゚听)ξ「手をこの装置に当てんのよ」
( ゚∀゚)「おわ……」
しゅ、という音を残し、扉が開く。
VIP学園の扉は、ほぼ全てが自動である。
アラマキのカードから位置情報を読み出した結果、第四格納庫にいるようだ。
それを頼りに、ジョルジュを第四格納庫まで送る。
- 37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:33:56.64 ID:lNJqSZV00
- ( ゚∀゚)「はー、広いなここ。なんの施設?」
ξ゚听)ξ「ここはVIP学園よ」
全て忘れてしまっているジョルジュの為に、説明した。
兵器としての戦闘機の時代は終わりを告げた。
それによって、新しい時代の象徴としてVIP学園が作られたのだ。
そして学園内で行われるのは、戦闘だ。
競技としての戦闘。
それを可能にしたのは、優れた安全性を誇る機体や、
実弾に代わる数々のペイント兵器である。
戦闘機型だけで行われた黎明期。
当時としては画期的な、人型が現れ始めた全盛期。
そしてチーム制が取り入れられ、今なお進化し続ける現代。
ξ゚听)ξ「ま、簡単に言うとこんなとこね」
( ゚∀゚)「ほー、すごいねー最近の技術は」
ξ゚听)ξ「ついさっきまであんたも享受してたものだけどね」
(; ゚∀゚)「何も思い出せないから信じられん……」
と、そこで鳴いた腹の虫。
- 39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:36:57.16 ID:lNJqSZV00
- ( ゚∀゚)「わり、食堂とかねーか?」
ξ゚听)ξ「そういえばあんた朝から何も食べてなかったわね」
現在地から学食への最短コースを選択。
ξ゚听)ξ「こっちよ」
ツンは進行方向を示しながら歩く。
そこで気づいたのだが、
どうやらジョルジュは自分のことを本物の人間だと思っているようだ。
自分との会話を声に出しながら、平然と歩いている。
「「妄想か……若いな」」
「「えーキモー」」
(; ゚∀゚)「なんか、視線が痛い」
ξ゚听)ξ(ま、あたしには関係ないし)
何より、ちょっと嬉しいし。
- 40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:39:11.26 ID:lNJqSZV00
- (*゚∀゚)「やー、いらっしゃい! 何にします?」
( ゚∀゚)「あー、カレーで」
(*゚∀゚)「あれ? 昨日もカレーじゃなかったっすか?」
( ゚∀゚)「……そうなの?」
視線は、ツン。
つーからは視認できない人物に対して問いかけたジョルジュ。
(*゚∀゚)(誰に話してるんだろう……)
ξ‐凵])ξ「……そうよ」
仕方の無いこととはいえ、呆れるツン。
- 41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:39:43.63 ID:lNJqSZV00
- ( ゚∀゚)「じゃあラーメンで」
(*゚∀゚)「あひゃー! ラーメンいっちょう!」
ξ゚听)ξ「代金は胸ポケットに入ってるカードで支払うのよ」
( ゚∀゚)「そうなのか、サンキュー」
(*゚∀゚)「??」
独り言を連発するジョルジュに疑問を抱くつー。
それに気づかず、カードを差し出すジョルジュ。
ξ゚听)ξ(一種の漫才ね)
- 42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:41:31.45 ID:lNJqSZV00
- ジョルジュのカードで代金を処理する。
同時に表示された時間を見て、つーが言った。
(*゚∀゚)「それにしてもどうしたんですかー? こんな時間に」
時刻は、夕刻。
学食の西側の窓からは、赤の陽が射しこんでいた。
(*゚∀゚)「昨日も微妙な時間に来てましたけど」
( ゚∀゚)「あー、ちょっと事情があってなー。
君名前なんていうの?」
(*゚∀゚)「もー、忘れないで下さいよ。つーっていいます」
そう言って、にかっ、と笑うつー。
( ゚∀゚)「そか、俺はジョルジュって言うんだ。
かわいいねー、つーちゃん」
(*///)「やー、照れるっすージョルジュ先輩」
ξ゚听)ξ(記憶が無くなると性格が変わるってホントね)
むしろ今のほうがいいのではないか、と思う。
- 43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:43:19.76 ID:lNJqSZV00
- (*゚∀゚)「せ、先輩はカレー好きなんですかっ?」
( ゚∀゚)「ああ、そうだな。ツンはどうだ?」
(*゚∀゚)「ツン??」
ξ‐凵])ξ「……あたしはいいから、その子に構ってあげなさい」
( ゚∀゚)「そうか。つーちゃんは好きな食べ物とかあるの?」
(*゚∀゚)「あ、あたしはラーメン好きです」
( ゚∀゚)「へー、俺もラーメン好きだぜ」
(*゚∀゚)「一緒っすね!」
( ゚∀゚)「似たもの同士だな」
(*゚∀゚)「嬉しいっす」
ξ゚听)ξ(ちょっといい雰囲気じゃん……)
- 47 名前:>>45訂正:2009/01/12(月) 19:49:08.14 ID:lNJqSZV00
- 「おーい! つーちゃーん! 早くラーメン受け取ってモナ!」
(;゚∀゚)「やば!」
背後の調理場から急いでラーメンを受け取ってきたつー。
彼女は最後に満面の笑みを浮かべ、
(*゚∀゚)「どうぞ召し上がれっす!」
と言った。
- 46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:48:13.53 ID:lNJqSZV00
- ――第四格納庫――
二機の機体。
ドクオのhttp_404F。
トソンのhttp_404R。
全体の体積がほぼ同じの二機が並ぶ姿は、壮観だ。
('A`*)「念願の愛機ー!」
(゚、゚*トソン「……」
銀に輝く機体に、頬ずりするドクオ。
照明を反射する巨体を、黙って見上げるトソン。
/ ,' 3(純粋じゃのう……)
若かりし頃を思い出すアラマキ。
しかし気を取り直し、言う。
/ ,' 3「機体の調整を始めるぞー」
('A`)「うぃす」
(゚、゚トソン「はい」
- 48 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:51:11.56 ID:lNJqSZV00
- / ,' 3「まずはドクオ君の機体からじゃの」
ドクオが選んだ機体は、http_404F。
つまりノットファウンドの戦闘機型である。
そして更に細分化された分類の中でも、改造の余地が多く残された機体だ。
/ ,' 3「どんな風に仕上げたいんじゃ?」
('A`)「俺は……」
(゚、゚トソン(真剣だなぁ)
いつもは少し怠け気味なドクオ。
だが今はその表情も、態度も、引き締まって見えた。
(゚、゚トソン(男の子ってみんなあんなだ)
好きなことには、とことん打ち込める。
バカ、と言い換えてもいいが、羨ましいとも思った。
同時に、
(゚、゚トソン(かっこいいな)
とも。
- 50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:54:38.71 ID:lNJqSZV00
- ( ゚∀゚)「よーっす!」
(゚、゚;トソン「!?」
/ ,' 3「意外と遅かったのう」
突然の声に驚いたが、主はジョルジュだ。
いつもの彼より若干テンションが高く見えた。
興味津々に周りを見回している。
('A`)「なんで遅れてんの? お前」
( ゚∀゚)「寝坊!」
ξ゚听)ξ「まぁ、ある意味ね」
ツンの呟きを無視し、落ち着かない様子のジョルジュ。
/ ,' 3「ちょっと失礼……」
( ゚∀゚)「いたっ」
アラマキがジョルジュの制服からターミナルを引き抜いた。
着ていた白衣からソケットを取り出し、ターミナルと接続する。
- 52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:56:54.79 ID:lNJqSZV00
- 「乱暴ね」
/ ,' 3「悪いのぅ。んで、ジョルジュ君は大丈夫だったか?」
('A`)「おい! 寝坊ってどういうことだジョルジュ!」
(; ゚∀゚)「うわ、叩くなって!」
(゚、゚トソン「ははは」
「残念ながら、記憶が一時的に消失してるわね」
/ ,' 3「やっぱり負荷がかかりすぎたか」
「ええ、それにしても異常だけどね」
/ ,' 3「ジョルジュ君の……特に視力が、か……?」
「あくまで人間の範疇でだけど、尋常じゃないわね」
- 54 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 19:59:33.63 ID:lNJqSZV00
- ('A`)「てめっまてや!」
(; ゚∀゚)「ひゃー! 助けて!」
(゚、゚;トソン「え? ええ!? きゃっ!」
('A`#)「てんめええええ! やりやがったなああああ!」
(; ゚∀゚)「 ぎ ゃ あ あ あ あ ! 」
/ ,' 3「まぁ、それは一度詳しく調べる必要があるとして……」
「問題は今、ね」
/ ,' 3「数日もあれば戻るとしても、その数日を如何にして過ごすか」
「初演習での負けは重いしね」 - 56 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:02:44.62 ID:lNJqSZV00
- (メ゚∀゚)「あれ? そういやツンがいねーな」
(゚、゚トソン「ツン? って誰?」
('A`;)「あ、いや。ツンはジョルジュの妄想で」
(; ゚∀゚)「ちげーよ!」
/ ,' 3「できれば今日中、最悪演習直前までには取り戻さないとな」
「ええ、飛行中に失った記憶だから、飛べば戻ると思うんだけど……」
/ ,' 3「とにかく今は調整じゃな」
「そうね、あんたの腕を見せてやりなさい」
/ ,' 3「だからアラマキ博士と呼べと」
( ゚∀゚)「なぁじいちゃん、早く調整しよーぜ」
/ 3「じいちゃん……?」
「あー、いいから早くターミナルを戻してよ」
/ 3「ああ……」
(; ゚∀゚)「え?」
俯いたまま近寄ってくる老人に、恐怖を覚えた。
- 59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:05:44.43 ID:lNJqSZV00
- 黙って自分の制服を掴み、白色の長方形を左胸のソケットに差し込んだ。
それによって生まれる僅かな頭痛。
( ゚∀゚)「いてっ」
ξ゚听)ξ「ちょっと、じいちゃんはひどいわよ?」
( ゚∀゚)「あれ? いたんだ」
ξ‐凵])ξ「ええ、すぐ傍にね」
( ゚∀゚)「へー……」
lw´‐ _‐ノv「あたしも、すぐ傍にね」
ξ゚听)ξ「は?」
(; ゚∀゚)「誰?」
lw´‐ _‐ノv「あたしの名前はシュー=スナオ、三年生の先輩だよ、ルーキー君?」
ξ゚听)ξ(今この人……あたしたちの会話を……)
- 61 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:08:49.33 ID:lNJqSZV00
- ( ゚∀゚)「あー、先輩っすか」
lw´‐ _‐ノv「そ、整備科だからね、キミタチの機体はあたしが預かった」
( ゚∀゚)「お願いします」
lw´‐ _‐ノv「そこはサスペンス風にね」
(; ゚∀゚)「は、はぁ……」
/ ,' 3「シューちゃん、ジョルジュ君は頼んだぞ?」
lw´‐ _‐ノv「アラマキ博士に頼まれたらやるっきゃない……。
よろしく、ジョルジュ。ツン」
ξ゚听)ξ「……聞こえてるの?」
lw´‐ _‐ノv「バッチシ。微弱な電波でも捉えきれるこのレシーバーがあればね」
と言って、シューは長い髪を掻き揚げる。
露出した耳には、小さな黒い機械。
ξ゚听)ξ(なんでこんな生徒が火狐の技術を……?)
疑問は浮かぶが、どうせ自分にはどうしようもない。
理解したツンは、黙った。
- 62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:11:53.55 ID:lNJqSZV00
- lw´‐ _‐ノv「さーて、整備整備〜〜♪」
鼻唄交じりで機体をいじり始めたシュー。
それをターミナルによる観測を最大にしたツンが監視する。
ξ゚听)ξ(技術に偽りはないようね)
観測によって得たデータを処理する。
機体の性能を示す理論値が、少しずつ上昇していく。
ξ゚听)ξ「ジョルジュ、機体は大丈夫みたいよ」
( ゚∀゚)「おー、なんかテキパキやってんね」
ξ゚听)ξ「あれが終わったら飛ぶんだからね、心の準備しときなさい」
( ゚∀゚)「それでホントに記憶が戻んの?」
ξ゚听)ξ「……今はなんとも言えないわ」
( ゚∀゚)「……そうか」
ξ゚听)ξ「不安?」
( ゚∀゚)「いや……ああ、不安だな」
過去が無い、思い出が無い、自分が無い。
不安ではない、といえば嘘になる。
- 65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:14:25.98 ID:lNJqSZV00
- _
( ゚∀゚)「でもまぁ、俺には空が似合ってる、そんな気がするぜ」
ξ゚听)ξ「!!」
開け放たれた格納庫の巨大な扉から、漆黒の空を見上げるジョルジュ。
リンクしたツンに入ってくる情報量が、増大した。
異常なまでに優れた視力によって、夜空を疾る眼光。
ξ゚听)ξ(視力だけなら、学園内でも郡を抜いてるでしょうね)
_
( ゚∀゚)「……」
視力の良さは先天的に決まるものだ。
後天的な低下は起こり得ても、ベースとなるのは生まれ持ったもの。
ξ゚听)ξ(血筋……かな)
lw´‐ _‐ノv「ごめん。調整が長引いてるから、テストは明日の早朝でいい?」
不意に、背後からのシューの声。
( ゚∀゚)「ああ、いいぜ」
ξ゚听)ξ「そうね、時間も遅いし。無理にやっても意味ないしね」
部屋に戻ろうとしたジョルジュが、振り返った。
夜空を眺め、様々な思考をしている。
自分の処理速度では追いつけない程に、浅く、広く。
- 66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:16:51.45 ID:lNJqSZV00
- ジョルジュの眼が、空に浮かぶ複数の星を追い、繋げる。
浮かび上がったのは、暗い星で構成された、てんびん座。
ξ゚听)ξ「地味ね」
_
( ゚∀゚)「ああ、でも今の俺にはピッタリだと思うんだ」
ξ゚听)ξ「……そう」
まばゆく光る星たちの自己主張の下。
ジョルジュは一度も振り返ることなく、部屋へと歩んで行った。
( ゚∀゚)ジョルジュはξ゚听)ξツンとエースになるようです
【第三話:星座】
――続く。
, - 68 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:19:04.75 ID:ddIB3G/b0
- >( ゚∀゚)「ああ、いいぜ」
先輩にタメ口かよw
それはともかく乙!
- 70 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/12(月) 20:21:56.34 ID:lNJqSZV00
- >>68
記憶を失っているので、
長い間で培ってきた上下関係の精神、
つまり年功序列の考えが崩れている。
という風な感じです。