- 1 : ◆080mxUe5zE :2009/01/03(土) 20:57:39.00 ID:yM6pDJ8/0
-
空を舞う、二機の戦闘機。
地を踏みしめる、二機の人型機。
無限とも思える数の弾丸と、白煙の軌跡を残す大量のミサイルが、飛び交う。
それは、ジョルジュの遠い記憶。
彼が父親に連れられて行った、VIP学園の公開演習、そこでの記憶だ。
記憶の中のジョルジュは、衝撃を受けていた。
それは音速超過で飛ぶ戦闘機に。
それはまるで人間のように動き回る巨大な人型機に。
やがて、一機の戦闘機が機首を地上に向け、人型機に飛来した。
もう一機の戦闘機も、それに追随する。
それに一瞬遅れ、人型機の持つライフルが、空へと向けられた。
戦闘機を狙う銃口の数は、二つ。
音が響いた。
巨大な人型機が豆粒のように小さく見える距離にいるジョルジュ、彼の耳まで響いた爆音。
戦闘機から、ミサイルと機銃が大量にばら撒かれた。
人型機からは、ライフルの弾丸が無数に発砲された。
一機の戦闘機に、ペイント弾によって淡いピンク色の痕がつく。
一機の人型機に、ペイントミサイルが直撃し、戦闘機と同じく淡い色に染まった。
観客から驚きの声があがる、それはジョルジュも同様だった。
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:00:12.37 ID:yM6pDJ8/0
- 離脱していく、白を基調とした機体色に、淡い装飾を施された、戦闘機。
戦意を失ったかのうように、力なく腕部を下げる、淡いペイントに染まる、人型機。
装飾を免れた戦闘機が、人型機から距離をとった。
戦意を失っていない人型機が、戦闘機を追うように動き、発砲を続けた。
逃げ惑うように飛ぶ戦闘機に、淡い装飾。
同時に、響く歓声。
ジョルジュが見ていた機体を駆るパイロット達は皆、優秀であった。
彼らのように優れた技術を持ち、戦況を一機で覆せるようなパイロットを人は"エース"と呼んだ。
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:02:27.07 ID:yM6pDJ8/0
- そして時が流れ――。
( ゚∀゚)「機体調整開始。ツン、頼むぜ」
ξ゚听)ξ「はいはい。バランサー調整、平行軸を+2に設定……。
……シークエンスファイブを省略……完了よ」
―― 一人と一機が搭乗する、コックピット。
( ゚∀゚)「じゃあ、行くか」
―― 一人は、VIP学園の普通のパイロット、ジョルジュ。
ξ゚听)ξ「うん。さっさと行きましょ」
―― 一機は、新設企業""火狐が開発した高速量子計算機、ツン。
( ゚∀゚)「――ッ!」
――急速に加速する実技戦闘機。
ξ゚听)ξ「第一エナジー……OK、通過。第二エナジーへ針路を……エンジン出力108%まで上昇」
――二人が駆る戦闘機にエネルギーを供給するリングを通過し、戦場へと飛び立つ。
- 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:04:25.92 ID:yM6pDJ8/0
- (,,゚Д゚)『やっと出てきやがったか、ルーキー』
――ジョルジュがキャノピー越しに見るのは、憧れのパイロットたち。
( ゚∀゚)「これが……"実機"か……」
ξ゚听)ξ「そうよ、でも安心しなさい。あたしのサポートは一流よ?」
――戦闘機の実技演習が行われるVIP学園で、二人の物語は始まる。
――戦場に出れば、ただ空を舞うだけ――。
( ゚∀゚)ジョルジュはξ゚听)ξツンとエースになるようです
,
- 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:06:29.94 ID:yM6pDJ8/0
- ――注意――
学園都市さんとかなり設定が被ってます。
パクリ、と捉えられても仕方ない部分もありますのでご注意下さい。
- 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:08:41.82 ID:yM6pDJ8/0
- 【第一話:出会い】
――FT.2009年――
――VIP学園――
('A`)「おいジョルジュ。起きろって」
( ゚∀゚)「あ?」
('A`)「今日から二年なんだから、早めに準備しねーとまずいだろ」
( ゚∀゚)「あー、そうだったか」
二段ベットと小さなテーブルが置かれた簡素な部屋。
ジョルジュは下段のベッドから起き上がると、大きく伸びをして、一息。
窓から見える広大な演習場を眺める。
( ゚∀゚)「いやー、二年か」
('A`)「ああ、下級生も入ってくるし、ついに実技演習の参加も始まるな」
ジョルジュと、同級生のドクオは今日からVIP学園の二年生になった。
六年制の学園ではまだまだ下っ端の学年だが、
一年生のときに下積みの訓練を一通り終えたことにより、戦闘機や人型機による実技演習が始まる学年でもあった。
- 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:10:34.12 ID:yM6pDJ8/0
- ( ゚∀゚)(真剣にやらないと、命に関わることもあるんだよな)
朝の準備をこなしつつ、思う。
( ゚∀゚)(俺の"目標"よりも、まずはやるべきことが沢山あるぜ)
機能性に特化した学園の制服を着込み、通信端末を指定の場所に入れる。
顔を洗い、簡単な食事を済ませ、最後に分厚い操縦マニュアルを担いだ。
( ゚∀゚)「よっしゃ、準備万端だ」
('A`)「おし、じゃあ行くか」
部屋を出て、騒々しい廊下に出て、階下への階段を目指す。
昇降機もあるが、毎朝込み合っているので、階段を使ったほうがずっと早いことは、二人とも承知していた。
('A`)「新入生の入寮はいつからだっけ?」
( ゚∀゚)「去年は確か入学式が終わってからだったと思うぜ」
全寮制をとるVIP学園。
入学者は全員、ここに入寮することになっていた。
- 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:12:31.00 ID:yM6pDJ8/0
- ('A`)「もう慣れたけどさ、ここって初めは居心地悪いよな、人多すぎだっつの」
( ゚∀゚)「だよなぁ、まぁそれさえなければ良い寮だ」
('A`)「ああ、ベッドは暖かいし、キッチンもトイレも風呂もあるし、ちょっと狭いけど最高だな」
( ゚∀゚)「あと校舎まで遠くなければ、だろ」
('A`)「違いねぇ」
(´・ω・`)「やぁ、二人とも」
( ゚∀゚)「おっ、ショボンおはよう」
人波の中から現れた男、ショボン。
ジョルジュやドクオと同じくVIP学園の二年生の生徒だ。
('A`)「相変わらずしょぼくれてるな、お前は」
(´・ω・`) ショボーン
ドクオが毎朝恒例の一言を投げかけ、ショボンが恒例のリアクションをする。
いつもと変わらない、朝の光景だ。
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:14:11.70 ID:yM6pDJ8/0
- (´・ω・`)「二人とも、今日の"適正試験"の自信の程は?」
(; ゚∀゚)「あー、正直言って実機の操縦は不安でならんわ」
(´・ω・`)「そうかい? シミュレーターと大差ないって教官が言ってたじゃん」
(; ゚∀゚)「そうだとしても、機械を相手にするのとは違うって……」
ジョルジュとショボンが話しているのは、一年生のときのシミュレーターによる飛行と、
二年生から始まる実技演習の際の実機飛行の違いである。
限りなく実機に近くなるよう設計されているシミュレーターだが、やはり実機とは別物である、というのがジョルジュの認識だった。
(´・ω・`)「じゃあドクオ君は? 随分余裕そうだね」
('A`)「そう見える? まぁ俺の天才的な技術を持ってすれば"企業特別枠"も夢じゃないっていうかー」
(´・ω・`)「企業特別枠とは恐れ入った。
確かそれに選ばれれば、新開発の試作機を譲渡されるんだっけ?」
('A`)「ああ、それ以外の特典も満載だしな」
- 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:16:05.73 ID:yM6pDJ8/0
- (´・ω・`)「ふーん」
と、少しの間を置き、言う。
(´・ω・`)「まだ夢でも見てるんじゃないの?」
('A`#)「うるせーバカ。俺に勝ってから言えよ、そういうのは」
(#´・ω・`)「うーぜ、お前うーぜ」
(; ゚∀゚)「朝っぱらからケンカすんなよ」
険悪なムードの二人に挟まれ、居心地が悪く感じるジョルジュ。
足を速めたり、逆に遅くしたりして抜け出そうとするが、
まるで彼を壁にしたかのような動きをする二人に挟まれ続けるのだった。
- 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:19:46.52 ID:yM6pDJ8/0
- 人混みの中、長い階段を下り、寮の玄関を抜けた。
天気は晴天。眩しい日差しに照り付けられるのを、ジョルジュは肌で感じた。
('∀`)「で、ショボンはどうなんだよ? 自信の程は?」
不機嫌そうな表情で無言だったドクオが、表情を明るくし、侮るような口調で言う。
(´;ω;`)「ふん。どうせ僕は落ちこぼれですよー」
完全に馬鹿にされたショボンは涙を流す。
十六歳にもなる少年が涙を流している。傍から見ればイレギュラーな光景だろう。
だが、
( ゚∀゚)(これも毎日の恒例だな)
と、慣れた様子でジョルジュは笑った。
前を見れば、視界に入るのは地平線まで続く演習場と、その脇のVIP学園の校舎。
戦闘機のオブジェや、真新しい布に書かれた、巨大な"祝、新入生"の垂れ幕。
- 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:22:14.77 ID:yM6pDJ8/0
- (´・ω・`)「えっと、今日が始業式と適正試験の日で、明日はなんだっけ?」
( ゚∀゚)「明日は新入生の入学式の日だ」
('A`)「忘れんなよな、そんなこと」
(´・ω・`)「いや、確認までにね。じゃあ、明後日は?」
('A`;)「ぜってーお前わかってないだろ」
( ゚∀゚)「まぁまぁ、ここんとこバタバタしてたから仕方ねーって。
明後日は俺ら二年生を加えた新チーム結成式と、初演習だぜ、ショボン」
(´・ω・`)「うん。まぁ知ってたんだけどね」
( ゚∀゚)「……そっか」
('A`#)「……」
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:25:07.27 ID:yM6pDJ8/0
- そんな会話を挟みつつ、校舎の玄関をくぐる。
( ゚∀゚)(慣れたもんだな、何もかも)
一年間毎日のように繰り返したその行為に、安心感すら覚えた。
ずっと続けば、とは思うが、そうはいかないことをジョルジュは知っている。
しかし、残された時間は、あと四年もある。
( ゚∀゚)(あと四年で、目標を達成できますように)
とは願うが、難しいだろう、とも思う。
自身の実力は、自分が一番よく知っている、ジョルジュには大きすぎる目標だった。
('A`)「おい、ボーッとすんなよ、もうすぐ適正試験の説明が始まるぜ?」
( ゚∀゚)「お、すまん」
一言謝り、自分が物思いに耽っていたことに苦笑いを浮かべるジョルジュ。
慣れた動作の中で、安心しきってしまっていたようだ。
( ゚∀゚)(今は、やれることをやる。それだけだな)
- 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:28:07.59 ID:yM6pDJ8/0
- 決意を新たに、前方を見る。
始業式の会場となる、校舎内の大ホール、その最奥に設置されたスクリーンを。
(´・ω・`)「いやはや、いつ来てもこのホールの広さに慣れないね」
('A`)「VIP学園の全校生徒の数千人を収容可能な可変式多目的ホール、だもんな」
( ゚∀゚)「初めて見たときはさすがに度肝を抜かれたぜ」
(´・ω・`)「はは。まぁ滅多に使わないけどね」
('A`)「ちょっともったいない気がするな」
(´・ω・`)「でたね、"貧乏思考のドクオ"」
('A`)「うるせー」
と、雑談していると、突然ホールの照明が落とされた。
周囲で聞こえていた声も、それを合図にピタリとやむ。
( ゚∀゚)(始まったか)
(*゚ー゚)「……」
スクリーンの手前にある舞台に一人の女性が上っていく。
教育科の生徒、しぃである。
- 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:32:46.02 ID:yM6pDJ8/0
- (*゚ー゚)『あー、あー、テステス』
(´・ω・`)「教育科のしぃ先輩、やっぱり威厳があるなぁ」
('A`)「俺たち操縦科には六年生がいねーからな、やっぱり最上級生ってだけあるわ」
そこでしぃが、小声で話をしていたショボンたちを指差しながら言った。
(*゚ー゚)『はーい、そこの二年生! 静かにしなさい!』
マイクを伝わりホールの上部に設置されたスピーカーから聞こえる声は、会場全体に響き渡った。
(;´・ω・`)「は、はい」
('A`;)「すんません」
(; ゚∀゚)("地獄耳のしぃ"先輩、恐ろしいな)
今度こそ静かになった会場に、唯一しぃの声だけが響き、
(*゚ー゚)『春季休暇も終わりましたね、皆さん充実した休暇を過ごせましたか?
今日から始まる新学年での学園生活、気を引き締めていきましょう。
明後日の入学式で新しく入ってくる新入生の模範となる、という自覚を持って今日という日を過ごしてください』
と、手短に話した。
- 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:34:27.83 ID:yM6pDJ8/0
- (*゚ー゚)『時間が迫っているので始業式は終わります。
続いて二年生の適性試験の説明を始めます』
始業式が終わったことにより、二年生以外の生徒が退場を始める。
しかし私語は一切なく、足音や衣擦れ程度の音以外にはしぃの声を遮るものはない。
そして、スクリーンに投影され始めたのは適性試験の概要。
それにしぃがレーザーポインタを合わせて説明を始めた。
(*゚ー゚)『適性試験の目的は、個人の技能に合わせて適切なチーム分けをすることです』
しぃが言うチーム分けは、実技演習が三対三のチーム戦であることにより必要になるものだ。
三人ないし五人一組で編成されるチームで、二学年から五学年までの四年間を共に戦うことになる。
(*゚ー゚)『当然ながら重要な事項なので、各々真剣に取り組むように。
なお、二年生が受けてもらう検査には、"http_404"の実機を使用します』
しぃのレーザーポインタが指し示すのは"実技戦闘機"の外観の画像。
http_404、通称"ノットファウンド"と呼ばれるその機体は、FT.2009年のVIP学園で主流となっている量産機である。
(*゚ー゚)『F/Rタイプでそれぞれ異なった試験を行うので、間違えないようにして下さい
Fタイプの適性試験は第二演習場で、Rタイプの適性試験は第一演習場で行います』
と言い、舞台から下りていくしぃ。
F/Rタイプとは戦闘機であるか、人型機であるか、ということだが、
VIP学園で一年間を過ごしたジョルジュたちには今更確認することでもなく、それぞれの演習場へと向かっていった。
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:37:10.30 ID:yM6pDJ8/0
- (´・ω・`)「じゃあ僕はRタイプだから第一演習場へ行くね」
( ゚∀゚)「頑張れよー」
(´・ω・`)「うん。二人もね」
('A`)「ああ、絶対好成績を収めてやる」
(´・ω・`)「ふふ。期待しとくよ」
ショボンが自分とは別の人波に流れていくのを見届けたジョルジュ。
緊張からかショボンの額に汗が浮かんでいたのを見逃さなかった彼だが、
( ゚∀゚)(頑張れ、としか言えないな)
人のことを気にしていられる程、余裕もなかった。
('A`)「お、見えてきた。第二演習場だ」
( ゚∀゚)「相変わらずでっけー」
('A`)「ああ、ここを飛びまわれるなんて夢みたいだ」
ジョルジュとドクオの二人を含む人波が目指すのは、第二演習場の格納庫である。
そして二人が見ているのは、格納庫に繋がる通路から、ガラス越しに見える風景だ。
地平線まで続く赤茶色の地面、点在する岩場、風が流れているのが砂埃が舞っていることによりわかった。
- 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:39:16.74 ID:yM6pDJ8/0
- ( ゚∀゚)「緊張するぜ」
('A`)「そうか? 自分の実力を出し切るまでだろ?」
( ゚∀゚)「それができたら緊張なんかしねーよ」
それが平然とできるお前が凄いんだ、とジョルジュは内心で呟いた。
( ゚∀゚)「どんな試験なんだろうな」
('A`)「さぁな、まぁ行ってみりゃわかんだろ、もう見えてきたしな」
人波が次々と格納庫に飲み込まれていく。
それに随ってジョルジュたちも格納庫へと入る。
( ゚∀゚)「おお! ノットファウンドがいっぱいあるぜ!」
('A`)「すっげー、実機がこれだけあるなんて……」
眼前に広がっているのは、後退翼を持つ銀色の機体、ノットファウンド。
その数は数十を軽く上回り、百に迫るほどだ。
- 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:41:06.30 ID:yM6pDJ8/0
- 从 ゚∀从「よっしゃお前ら黙りやがれー!」
そこで響いた大声。
スピーカーを介さずとも格納庫全体で聞こえるそれは、女性のもの。
('A`;)「すっげぇ声だな」
(; ゚∀゚)「教育科のハイン先輩か」
从 ゚∀从「今からお前らの適性試験を開始する!
公平を保つために呼ばれた者以外は格納庫内だけで時間を潰せ!」
そして、最後に大音響の声が響く。
从 ゚∀从「 い い な ! ? 」
「「は、はい……」」
二年生全員が竦みあがる声を叫び上げたハインは、今度はスピーカーを介して名前を読み上げていく。
从 ゚∀从『まずは……』
('A`)「あー、こりゃ俺らの順番まで結構かかるんじゃねーの?」
( ゚∀゚)「だな、格納庫の中だけでもぶらつくか?」
('A`)「そうだなぁ、暇だし」
形成されていくグループによって人混みが緩和されていた。
その中をジョルジュとドクオは当てもなく歩く。
- 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:43:05.15 ID:yM6pDJ8/0
- ( ゚∀゚)「あー、誰かいないかね」
('A`)「んー……お、あいつブーンじゃね?」
( ^ω^)「……」
( ゚∀゚)「……一人だな」
('A`)「ああ、珍しいな」
ブーンはジョルジュたちと同じ二年生の生徒だ。
彼は華麗な操縦、柔軟な状況判断力など、上級生にも引けをとらない技術を持っていた。
( ゚∀゚)(そして、それでいて友好的で朗らかな性格を持つ、と)
( ^ω^)「……」
格納庫の片隅で、壁に身を預けるブーン。
そんな彼に歩み寄る者がいた。
o川*゚ー゚)o「ブーン君」
('A`)「おいおい、マジかよ」
ブーンに話しかけたのは、操縦科ではあまり多くない、女子生徒。
- 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:45:50.58 ID:yM6pDJ8/0
- ( ^ω^)「キューかお」
o川*゚ー゚)o「適性試験、楽しみだね」
( ^ω^)「おっおっ、ホントだおね」
o川*゚ー゚)o「ふふ」
('A`)「なんて羨ましいんだ……」
(; ゚∀゚)「立ち聞きはやめろよ」
聞き耳を立てていたドクオを無理やり引き離し、格納庫内を再度歩き回る、
从 ゚∀从『よーし! 次!』
スピーカーを通したハインの叫びを定期的に耳に入れながら。
- 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:47:39.55 ID:yM6pDJ8/0
- ('A`)「早く始まんねーかなー」
( ゚∀゚)「なんか次々とアナウンスされてるから、多分すぐだろ」
('A`)「思ったより短い試験みたいだな」
( ゚∀゚)「だよな、このペースだと昼ごろには終わるんじゃないか?」
と言い、ジョルジュは制服の胸のポケットに入れていた通信機を取り出し、軽く折り曲げた。
カードのような形状の通信機の表面が発光し、時刻を表示する。
( ゚∀゚)「でも、もう三時間も経ってるな」
('A`)「うえ、そんなにか」
- 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:49:24.62 ID:yM6pDJ8/0
- 从 ゚∀从『よっしゃ次! ジョルジュ=タート! ドクオ=ウツダ! ……! ブーン=ホライゾン! ……!』
( ゚∀゚)「お、呼ばれたな」
('A`)「ああ、部屋順かなんかかな」
呼ばれるままにハインの所へ行った。
遅れるように他に呼ばれた者も集まってくる、その中にはブーンもいた。
一度に呼ばれた人数は六。
一室二人である寮の、三部屋分であった。
从 ゚∀从「お前らの試験ではA-30からA-35番機を使用する!」
( ゚∀゚)「はい」
('A`)「はい」
( ^ω^)「はいですお」
指示され、ノットファウンドに乗り込んだジョルジュ。
( ゚∀゚)(これが……実機……)
シミュレーターで慣れ親しんだ計器類。
だが、実機には威圧感のようなものがある、と思った。
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:51:41.53 ID:yM6pDJ8/0
- 从 ゚∀从『よっしゃ! 始めんぞ!』
通信機からハインの声が聞こえたあと、彼女は手に持っていたパネルを操作した。
すると格納庫の巨大な金属製の扉が音をたてながら開かれる。
彼女の指示通りにそこから滑走路へと機体を走らせた。
( ゚∀゚)「やっぱ……広いな」
一人っきりのコックピットで呟く。
眼前には六本の滑走路と、地平線まで望める広大な演習場が広がっていた。
从 ゚∀从『計器類のチェック、制服の耐G装置への接続を一分以内にしろ』
言われ、作業をする。
計器は全て良好、制服を耐G装置の流入機に接続。
発進前の全ての過程を終えると、キャノピーから見える景色が、少し狭くなったように感じた。
从 ゚∀从『お前らが今からする試験はビーコン突破試験だ。
十本を突破するか、失敗した時点で終了。ただし制限速度は1200Fkm/hだ。
A-30番機のジョルジュ=タート、始めろ』
( ゚∀゚)「了解」
ビーコン突破試験。
三次元投影機によって現れた円形のビーコンを通過する試験で、さらに今回は制限速度まで存在する。
その結果は所要時間と正確性などで表され、主に操縦技術を問われるものだった。 - 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:54:11.86 ID:yM6pDJ8/0
- ( ゚∀゚)「……」
スロットルを開くと、加速を始めるジョルジュの機体。
伝わってくる振動は、シミュレーターで再現されたそれと寸分の差も無かった。
( ゚∀゚)(そろそろか)
エンジン出力が一定を超えた時点で操縦桿を引いた。
速度は充分、離陸と同時に投影され始めたビーコンへ向けて一直線に飛ぶ。
やがて一本目のリングを突破したあと、右方に出現したリングへ進路を向けた。
('A`)「へー、ジョルジュやるじゃん」
ドクオが自らの機体の中で呟く。
ジョルジュの機体は順調にビーコン通過していた。
既に中盤を越えた試験は終盤に差し掛かる。
('A`)(でも、難しいのはここからなんだよな)
ジョルジュの試験が終了したのは、ドクオがそう思った少しあとだった。
- 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 21:57:17.13 ID:yM6pDJ8/0
- (; ゚∀゚)「!?」
次に出現したビーコンは、前回の真下。
ジョルジュが必要と判断した操縦動作は、急旋回。
旋回開始と同時に身体に襲い来るGに耐えつつ、加速する。
それが、失敗だった。
('A`;)「あ、バカ!」
慣れない実機でのGに気をとられ、機体の速度が1200Fkm/hを超過するのに気がつかなかった。
寸前で機体の周囲に出現した楕円形の白雲を合図に、試験は終了した。
从 ゚∀从『ジョルジュ=タート、A-30番機の制限速度超過により試験終了だ』
(; ゚∀゚)「やっちまった……」
オートパイロットに切り替わった機体は、自らが離陸した滑走路へと機首を向けた。
( ゚∀゚)(でも……)
結果は悪くは無いはずだ、と思う。
途中まではほぼ完璧な操縦を行えた上、失敗したのも八本目を通過したあとだったからだ。
( ゚∀゚)(まぁ平凡な成績ってところか)
自分の目標までは程遠い結果だ、とも思った。
- 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:00:54.64 ID:yM6pDJ8/0
- 从 ゚∀从『次はドクオ=ウツダ、始めろ』
('A`)「了解」
自機が着陸すると同時、甲高い音を吐きながら加速していくドクオ機を見るジョルジュ。
飛んでいるときは気が付かなかったが、大空を舞う快感、というものがあった。
( ゚∀゚)(手が震えてるな……)
震えが止まらない手。
握りこぶしを作ることで、強引に止めた。
('A`)「……よっ……ほっ」
ジョルジュがようやく視線を空に向けたとき、ドクオは順調にビーコンを突破していた。
親友の成績に迫るかのように飛行する姿は、対抗心に満ちていた。
('A`)「――ッ!」
( ゚∀゚)(ここだ、難しいのは)
ジョルジュのときと同じく、前回の真下に出現したビーコン。
ドクオのとった判断は、ジョルジュと同様の急旋回。
制限速度を超えないよう、慎重に飛行する。
Gの影響も少なからずあったが、ドクオの機体は大したラグも無く通過した。
これで九本目のビーコンだった。
- 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:03:18.51 ID:yM6pDJ8/0
- ( ゚∀゚)(ラストだな……)
('A`)(ラストか……)
ドクオは前後左右を確かめる、だがビーコンを発見できない。
対して、ジョルジュには見えていた、ドクオ機の真上に出現していたビーコンに。
('A`)「……!」
ドクオもビーコンを遅れて発見した。
だが無理だ、と思う。
( ゚∀゚)(あんな鋭角な所にあったんじゃ通過できねーよな)
それはジョルジュも同じであり、充分な加速や旋回を数度繰り返さねばならない位置にビーコンがあった。
そして制限速度を超えないようにそれを成すのは至難の業である。
('A`;)(ちっ……あんなん不可能だろ)
と、ドクオは内心悪態をつきながらも突破しようとするが、上手くいかない。
从 ゚∀从『はい、そこまでー。失敗と見なすぞー』
通信機から終了の言葉が聞こえ、前面のモニターにオートパイロットに移行する旨が表示される。
そして機体はオートパイロットに変わり、操作の一切を受け付けなくなった。
- 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:05:10.18 ID:yM6pDJ8/0
- ('A`)「くっそぉ……」
( ゚∀゚)「……おしぃなぁ」
( -ω-)「……」
悔しがるドクオ。
残念がるジョルジュ。
眼を閉じ、精神統一をするブーン。
そして、それらを見ている者がいた。
- 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:07:47.51 ID:yM6pDJ8/0
- ―― モニタリング室――
/ ,' 3「ほほぅ、このドクオとかいう生徒、なかなか見所あるんじゃないのか?」
「うーん。まぁ及第点ってとこね」
ここはVIP学園内のモニタリング室。
ジョルジュたちがいる第二演習場を、様々な角度から撮影しているモニターが複数あり、
その内の一台が表示しているのはドクオ機が着陸しているところだ。
それに向かう年老いた男と、男の手に握られる一台の長方形の機械。
白色のカバーに包まれた機械からは、声が聞こえる。ただし初老の男だけにしか聞こえない声だ。
「見所があるって言ったら、ブーン=ホライゾンね」
/ ,' 3「お前がそこまで言うなら、楽しみじゃな」
「期待していいと思うわよ」
機械が放つ声は淀みなく、しかし抑揚があり、感情があった。
- 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:10:48.91 ID:yM6pDJ8/0
- / ,' 3「それにしても、パーフェクトが出ないとは面白いのぅ」
「そうね、なかなかバランスが練られてるわね」
男と機械がモニタリングしていた内での最高記録は、ドクオの九本。
他の生徒も全て、ジョルジュのように制限速度超過をしたり、ドクオのようにビーコンの通過に失敗していた。
/ ,' 3「じゃが、暫定的にはドクオ君が一番の候補じゃろ?」
「まったく、あんたがそんなんじゃ"火狐"の科学者の名が泣くわよ?」
/ ,' 3「ワシのことはアラマキ博士と呼べと言ったじゃろう?」
「はいはい」
男――アラマキ――の注意を、クスッと笑い飛ばす機械。
そして、現時点での本当の一番候補は……と言うが、やめる。
/ ,' 3「何故言わんのじゃ?」
「そうね、全てはブーンの結果を見てからでも遅くはないわ」
/ ,' 3「そうかい」
と、そこで会話は途切れ、意識がモニターに集中する。
- 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:13:07.69 ID:yM6pDJ8/0
- 从 ゚∀从『A-33番機のブーン=ホライゾン、始めろ』
( ^ω^)『……了解』
加速を始めるブーンの乗る機体。
滑走路に若干の余裕を残しながら離陸する。
/ ,' 3「スムーズじゃの」
「確かに、ね」
アラマキは戦闘機の操縦などについての知識に優れているわけではない。
しかしブーンの離陸は、そんなアラマキにもスムーズだ、と感じさせるものだった。
/ ,' 3「……」
「……」
やがて、ブーンは文字通り空を舞い始める。
( ^ω^)『……』
顔色ひとつ変えずに次々とビーコンを通過していく。
そして訪れる、九本目のビーコン。
前回の真下に出現したそれをブーンは睨み、呟いた。
( ^ω^)『おっおっ、面白いおね』
そして、加速する。
- 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:15:31.16 ID:yM6pDJ8/0
- / ,' 3「! なんと!」
「……!」
それはあまりにも異質な光景だった。
ブーンの機体が、白雲を纏いながら飛行しているのだ。
飛行物体の速度がある一定に近づくと出現する楕円形の白雲。
今回の試験はちょうどその"一定"に制限速度が設定されており、ブーンはそのギリギリの速度を維持しているのだ。
('A`;)『なんて奴だよ……』
(; ゚∀゚)『すっげぇ……』
ジョルジュやドクオを含む他の生徒の感嘆の声。
白雲を纏いながら、難なく九本目を通過したブーン機。
最後の十本目は、その真上。
( ^ω^)『!』
だが、ブーンの行動は早かった。
素早く視認し、位置を確認した彼は、速度を緩めずに上昇する。
- 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:15:52.54 ID:yM6pDJ8/0
-
「……」
そして通過される十本目。
初めてのパーフェクト。
湧き上がる歓声。
それが、モニターが映し出した最後の光景だった。
/ ,' 3「……決まりじゃの」
「ええ、決まりね、あたしのパートナー……」
アラマキが立ち上がる。
何も映さなくなったモニターから目を離し、退室した。
- 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:18:40.38 ID:yM6pDJ8/0
- ――第二演習場――
从 ゚∀从『まさかパーフェクトとはな、驚いたよ』
( ^ω^)「恐縮ですお」
从 ゚∀从『おもしれールーキーだ』
呼ばれた六人全てが試験を終了した。
キャノピーが自動で開かれたあと、ノットファウンド内の電源が落とされた。
( ゚∀゚)「うーん……」
('A`)「やっぱ地上はいいな」
コックピットから飛び降り、
伸びをしながらドクオは言った。
( ゚∀゚)「いや、空の方がいいな」
('A`)「どっちでもいいって」
必要以上に噛み付いてくるジョルジュを躱したドクオ。
思うのは、ついさっきの試験のこと。
('A`)(俺も自信あったんだけどな)
あっさりと上回られ、そして圧倒的な実力差を見せ付けられた。
ショックだ、と思うのと、悔しい、という感情がぶつかる。
- 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:21:26.04 ID:yM6pDJ8/0
- ('A`)「なぁ、どう思うよジョルジュ」
_
( ゚∀゚)「……」
('A`)「……ジョルジュ?」
( ゚∀゚)「……ん?」
('A`)「まったく、また上の空かよ」
(; ゚∀゚)「ああ、わりぃ」
('A`)(癖……か)
ジョルジュの癖は、実力差を見せ付けられたときなどに、遠くを睨みながら上の空になること。
そして自分の癖は――
('A`)(――まぁ、いいや)
ドクオは、深く考えないことにした。
- 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:23:16.88 ID:yM6pDJ8/0
- ( ゚∀゚)「お、ショボンだ」
ジョルジュたちが格納庫から開放され、休憩室に行くと、そこにはショボンがいた。
大ホールほどではないが、それなりの広さを誇るこの休憩室は、いつも生徒たちが集まる場だ。
(´・ω・`)「やぁ、やっと終わったのかい?」
('A`)「ああ、Rタイプは早かったんだな」
(´・ω・`)「まぁね、なんせ大人数で射撃試験しただけだからね」
( ゚∀゚)「で、結果はどうだったんだ?」
(´・ω・`)「うん、それなりだったね」
(゚、゚トソン「ウソはダメだよ、ショボン君」
(;´・ω・`)「う」
現れたのは、女子生徒。
( ゚∀゚)「おっ、そう言えばトソンもRタイプだったな」
(゚、゚トソン「うん。面白い試験だったよ」
('A`)「トソンも俺と同じで優秀だからなー」
(゚、゚トソン「やだ、一緒にしないで」
('A`)「……」
- 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:25:08.27 ID:yM6pDJ8/0
- (´・ω・`)「まぁ、そんなことよりジョルジュ君たちはどうだったんだい?」
(; ゚∀゚)(こいつ自分のことはノータッチかよ)
('A`)「ああ、ブーンが凄かったな」
( ゚∀゚)「だな」
(゚、゚トソン「Fタイプを駆る二年生では最強と名高い彼ね」
(´・ω・`)「ホント、ライバルが多すぎるよ」
('A`)「お前に似合うライバルなんかいねーよ、低レベルすぎて」
(゚、゚トソン「ドクオ君、最低だね」
('A`;)「……」
( ゚∀゚)「まぁ、とにかく肩の荷が下りたって感じだぜ」
(゚、゚トソン「ホントだねー」
(´・ω・`)「あ、次の生徒も終わったみたいだよ」
休憩室の扉が開かれ、生徒が次々と入ってくる。
o川*゚ー゚)o「やー! ブーン君!」
その中に、キューもいた。 - 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:28:27.25 ID:yM6pDJ8/0
- (゚、゚トソン「あ、キューだ」
( ゚∀゚)「行ってこいよ」
(゚、゚トソン「うん、じゃね、皆」
と行って走り去るトソン。
ブーンに質問を浴びせかけるキューと、その輪に入るトソン。
('A`)「あいつら仲よかったんだな……」
それを羨ましそうに見つめるドクオ。
- 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:28:51.62 ID:yM6pDJ8/0
- (´・ω・`)「へー、ドクオ君……へー」
('A`;)「な、なんだよ」
( ゚∀゚)「トソンか?」
(´・ω・`)「みたいだねー」
(/A/)「ばっか、てめーらアホだろ!」
( ゚∀゚)「赤くなってんぞー」
思わず吹き出すジョルジュ。
頬を染めながら、ジョルジュを叩くドクオ。
(´・ω・`)「ホント、いいライバルだよ」
ショボンの呟きは二人の騒ぎに飲み込まれた。
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:32:15.17 ID:yM6pDJ8/0
- (*゚ー゚)『はーい静かにー!』
しぃの声がスピーカーから聞こえてきたのは、それから暫く経ったあとだった。
(*゚ー゚)『適正試験、無事に終わりましたね。
結果は追ってお知らせします、今日はお疲れ様でした』
そして声の主が変わる。
从 ゚∀从『よーしお前ら! 解散ッ!!』
('A`;)「うるせ」
しぃのマイクとハインのマイクが互いの音を拾い、異音を奏でる。
これ以上いたら鼓膜が破けちまうよ、と各々呟きながら、二年生は休憩室を後にしていく。
しかし、
从 ゚∀从『あー、忘れてた』
というハインの声で、全員が動きをとめる。
- 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:34:42.00 ID:yM6pDJ8/0
- 从 ゚∀从『ジョルジュ=タート、ドクオ=ウツダ、ブーン=ホライゾンは第二格納庫に来い』
( ゚∀゚)「は?」
('A`;)「なんだなんだ?」
呼ばれ、驚くジョルジュとドクオ。
( ^ω^)「……おっおっ」
何でもないように振舞うが、内心では満更でもないブーン。
从 ゚∀从『 さ っ さ と し ろ ! ! 』
そんなそれぞれの感情を刈り取る言葉。
(; ゚∀゚)「恐ろしいな」
(´・ω・`)「へー、いいないいなー」
('A`;)「は、早く行こうぜ」
正直周りの視線も痛いから、と言って駆け出した。
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:36:44.94 ID:yM6pDJ8/0
- ――第二格納庫――
ジョルジュとドクオが駆け足で第二格納庫に駆け込むと、既にブーンは到着していた。
二人より数分前には到着していたであろう彼は、ハインとしぃから説明を受けていた。
从 ゚∀从「いや、だからな……」
( ^ω^)「……」
(*゚ー゚)「それでね……」
( ^ω^)「……」
何やら重要な会話をしているようだ。
呼ばれた身とは言え、あの状況に近づくのは気が引ける、という二人の意見が一致。
なので、邪魔することの無いように遠くから見ていることにした。
('A`)「やべぇ、しぃ先輩とハイン先輩と話すチャンス到来だぜ」
( ゚∀゚)「確かにどっちも美人だよな」
('A`)「ああ、できればお近づきになりたいもんだ」
( ゚∀゚)「トソンはどうした?」
(/A/)「ばっ! てめぇトソンは関係ないだろ!」
( ゚∀゚)「わりわり」
('A`)「まったく……」
- 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:39:53.33 ID:yM6pDJ8/0
- 从 ゚∀从「おいてめぇら」
(; ゚∀゚)「お?」
从#゚∀从「さっさとしろっつったろ!」
('A`;)「は、はいぃ」
ハインに怒声で呼ばれ、二人は慌てて近寄る。
(*゚ー゚)「遅かったじゃない」
(; ゚∀゚)「すんません」
('A`;)「なんか話し込んでたみたいでしたから」
从 ゚∀从「ばっか、余計な気ぃ使ってんじゃねーよ」
(*゚ー゚)「そうよ」
しぃはブーンに視線を送る。
(*゚−゚)「ブーン君はもう行っていいわ」
( ^ω^)「はいですおー」
从 ゚∀从「……」
踵を返し、格納庫の出口へと向かって行くブーンの背中を、ハインは見送った。
そんな彼女にお構いなし、といった感じでしぃは続ける。
- 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:42:08.72 ID:yM6pDJ8/0
- (*゚ー゚)「今日あなたたちを呼んだのは、企業特別枠の件よ」
('A`;)「マジかよ……」
朝のは冗談のつもりだったのに、とドクオは呟いた。
平均以上の実力は擁していたつもりだったが、まさか企業特別枠に選ばれるとは思ってもみなかったのだ。
(; ゚∀゚)「……」
そしてドクオの横に並ぶジョルジュは、困惑していた。
先の試験では、実力以上のものが出せていた。よって選ばれたのも、偶然。
それが、困惑の原因だった。
(*゚ー゚)「まぁ、まだ選ばれたわけじゃないけどね」
と付け足し、遅いなぁ、と呟くしぃ。
誰かを待っているようで、少しの間ができていた。
そこで、ドクオの質問。
('A`)「ところで、ブーンはどうしたんですか?」
(*゚−゚)「ああ、彼?」
しぃは少々不機嫌そうに言う。
(*゚−゚)「企業特別枠の話をしたら、興味無い、って却下されたのよ」
从 ゚∀从「まったく、バカだろあいつ」
ブーンの後姿を見送ったハインは、ジョルジュたちの方へ向き直っていた。
- 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:44:05.56 ID:yM6pDJ8/0
- ('A`)「はは」
愛想笑いを浮かべるドクオ。
その心情は、ブーンへの疑問で満ちていた。
('A`)(……変な奴だな)
何故、企業特別枠を受けないのか。
ドクオが無言でブーンへの質問を飛ばしているなか、現れた男。
/ ,' 3「いやー遅れてすまん」
(*゚ー゚)「アラマキ博士、やっとですか」
現れたのは、白衣を着た老人。
从 ゚∀从「遅ぇ」
/ ,' 3「すまんと言っておるじゃろ? 教育科は口うるさいのぅ」
从#゚∀从「……」
事実なので何も言い返せない、という風にハインは黙る。
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:46:10.30 ID:yM6pDJ8/0
- / ,' 3「ありゃ? ブーン君は?」
(*゚ー゚)「興味ない、って断られちゃいました」
/ ,' 3「なんと! 意味の解らん奴じゃの!」
从 ゚∀从「断るなんて前代未聞もいいとこだぜ」
/ ,' 3「じゃが、"火狐"は新参の企業なのじゃから仕方もなかろうな」
( ゚∀゚)「……」
火狐。
ジョルジュにも聞き覚えがある単語だった。
VIP学園には資金面、技術面を支える数多くのスポンサー企業が存在している。
代表される企業は"マイクロソフト社"、"グーグル社"、"アップル社"などだ。
火狐はそんな企業に近年仲間入りした新設の企業だった。
そんな火狐の周囲の評価は、ノウハウなどが整っていないなどの理由であまり芳しくなく、
ブーンが火狐からであろう誘いを断ったのも、その理由が一枚噛んでいそうだった。
- 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:48:08.81 ID:yM6pDJ8/0
- ('A`)「で、企業特別枠に俺たちが選ばれたってことでいいんですか?」
(*゚ー゚)「それは……」
『まだ決まってないわ』
しぃの言葉に被せるようにして聞こえた音。
否、声。
『ブーン=ホライゾンが抜けちゃったかー』
その発生源は、アラマキの白衣、その胸に付けられたスピーカー。
小さな白色の機械に接続されたそれは、先程のアラマキは付けていなかった物。
ジョルジュたちにはその機械の構造はおろか、概要すら理解できない。
/ ,' 3「ふむ、どうするかの?」
(*゚ー゚)「一応、他の候補者も呼んでいますが……」
『ドクオ=ウツダとジョルジュ=タート、ねぇ……』
从 ゚∀从「ブーンには劣るが、ドクオもなかなかのもんだと思うぜ。
まぁジョルジュは中の上、って感じだがな」
('A`*)「へへ」
(; ゚∀゚)「……」
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:50:40.73 ID:yM6pDJ8/0
- / ,' 3「まぁ、最終的に選ぶのはツン、お前じゃよ」
『そうねぇ……』
ツン。
そう呼ばれた機械は、思考したかのように唸り、そして言葉を続ける。
『ジョルジュ=タート。あんた、目標ってある?』
唐突な質問。
それにジョルジュは、視線を鋭くし、戸惑うこと無く答える。
_
( ゚∀゚)「あります」
『……へぇ』
少し感心したかのような声を出すツン。
白色の機械に繋がれたスピーカーは、続けて質問を発する。
『じゃあドクオ=ウツダ、あんたは?』
それに少し戸惑いながら、ドクオは答える。
('A`;)「えと……あります」
『……そう』
- 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:51:04.35 ID:yM6pDJ8/0
- / ,' 3「決まったか?」
『ええ』
从 ゚∀从「どっちなんだ?」
(*゚ー゚)「……」
(; ゚∀゚)「……」
('A`;)「……」
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:53:09.36 ID:yM6pDJ8/0
-
『あたしのパートナーは――』
――それが、後年にVIP学園で語り継がれることとなる、
一人と一機の名コンビの出会いであった。
( ゚∀゚)ジョルジュはξ゚听)ξツンとエースになるようです
【第一話:出会い】
――続く。
- 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 22:55:49.34 ID:yM6pDJ8/0
- 今日はここまでです。
展開をゆっくり、作風馴染ませて、という感じでやっていますが、
質問などはありますでしょうか。
- 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 23:02:44.90 ID:rgC/GTeN0
- >>78
次回投下はいつ頃の予定ですか?
- 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/01/03(土) 23:03:43.52 ID:yM6pDJ8/0
- >>80
頑張って明日、超頑張って今日中
基本は月曜以降、ですね